急な転勤が決まったり、相続したマンションを相続税の納付期限に間に合うように売却したい、など、マンションをすぐに売りたいとなることもあります。
ただ、マンションを早く売却するために、どうすればよいか分からない人も多いと思いますし、そもそも売却にどれくらいの時間がかかるの?という人もいるでしょう。
マンションの場合、売れなければ、住んでいなくても固定資産税や管理費、修繕積立金の負担がかかり続けます。
マンションをすぐに売るには、売り出し価格や広告の出し方など、注意すべき点がいくつかあります。
この記事では、マンションをすぐ売るためのコツについて解説します。
早く売却するために必要な準備、気をつけるポイントが分かりますので、是非参考にしてください。
マンション売却の流れ・期間
最初に、マンション売却の準備から引渡しまでの流れ、かかる期間について解説します。
マンション売却の流れ
マンションを売却する流れは、以下のようになります。
- STEP1:必要書類を準備
- STEP2:不動産会社に査定を依頼
- STEP3:売却を依頼する不動産会社を決める
- STEP4:不動産会社と媒介契約を締結
- STEP5:物件調査・写真撮影など販売活動の準備
- STEP6:売却活動開始
- STEP7:不動産購入申込
- STEP8:売買契約締結
- STEP9:決済・引渡し
不動産会社に査定を依頼する前に、マンションを購入したときの売買契約書や重要事項説明書のほか、図面や設備の仕様書、固定資産税納税通知書など必要書類を準備しましょう。
査定結果を受け取り、売却を依頼する不動産会社が決まれば、媒介契約を締結します。
媒介契約書には、売却活動における不動産会社や売主の義務や報酬などについて規定されていますのでしっかりと確認しましょう。
売却活動をスタートすると、入居中であれば、内覧にもしっかりと対応する必要があります。
早期売却を狙うのであれば、内覧時間にもできるだけ柔軟に対応することが大切です。
購入希望者が現れると不動産購入申込書を書面でもらいます。価格や引渡し時期などの条件について、売主・買主双方が合意すれば、売買契約を締結します。
その後、決済・引渡しにすすむという流れです。
マンション売却にかかる期間
では、マンション売却にはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
以下の表は、首都圏の中古マンションについて、レインズ※登録から成約までの日数をまとめたものです。
※レインズとは、国の指定機関が運営する不動産取引を円滑に行うためのシステム。売却依頼を受けた不動産会社は、レインズに物件を登録し、全国の不動産会社が閲覧できることで不動産取引が促進されます。
年度 | レインズ登録から成約までの日数 |
2018 | 79.4日 |
2019 | 82.4日 |
2020 | 87.0日 |
2021 | 72.1日 |
2022 | 73.0日 |
年度による違いはあるものの、レインズ登録から成約まで、概ね80日前後を要しています。
レインズ登録までの準備や決済・引渡しまでの期間を考えると、売却を依頼して引渡しが完了するまでに、平均で3~4か月程度を要するといえるでしょう。
マンションの売却期間に影響するもの
物件によって需要の大きさや売れやすさに違いはあるものの、すぐに売却したい場合、売却期間に何が影響するか把握しておくことが大切です。
価格設定
マンションの価格設定は、反響・問合せ数に影響しますので、売却期間にも影響します。
価格が相場より高過ぎる設定だと、物件に興味はあっても問合せや内覧につながりにくくなります。
また、購入者は、不動産ポータルサイト(スーモ、アットホーム等)で、価格帯を含めた条件を設定して物件探しをしますので、閲覧数への影響も考えて価格設定をすることが大切です。
マンションの状態・売却時の状況
室内が清掃されていない、残置物が多いなど、物件の状態が悪いと売却期間がかかりやすくなる傾向です。
また、補修、修繕箇所が多く、サイト上で見た部屋の印象と異なると、内覧はあってもなかなか成約まで至らないことがあります。
室内の状態が悪いと、広告の掲載もしづらくなるため、問合せ数自体に影響する可能性があります。
不動産会社選び
売却を依頼する不動産会社、あるいは担当者によって、売却期間は変わることがあります。
不動産を早く売却するには、いかに多くの人に情報を拡散できるかが重要です。
広告を掲載する数や掲載の仕方によって集客数や問合せ数が変わりますし、内覧時の営業マンの対応の仕方によって、成約率も変わることがあります。
マンションの売却実績や地域の不動産市況に強いか、担当者のコミュニケーション力などを確認し、依頼する会社を決める必要があります。
マンションをすぐに売る10のコツ
マンションの売却には、いくつかポイントがあります。ここでは、マンションをすぐ売るためのコツを紹介します。
1.相場と需要を踏まえ、売り出し価格にこだわる
マンションをすぐ売るためには、相場と需要を踏まえた価格設定が大切です。
今では、一般の購入者の方でも、手軽にマンションの相場を知ることができ、不動産ポータルサイトでは、エリア内で競合する物件同士を比較しやすくなっています。
そのため、購入者の価格に対する意識は厳しくなっているといえるでしょう。
また、立地や築年数、所在階などでマンションの需要、売れやすさは異なります。
需要が高い物件だと、強気の価格設定であっても、買主が競合するなどで早期に売却できるケースもあります。
ただ、需要がそれほど高くない物件の場合、慎重に価格設定をしないと、物件の鮮度が最も高い売り出し直後のタイミングで問合せ数や閲覧数が伸びず、早期売却が難しくなることもあります。
2.サイトの掲載画像など広告にこだわる
不動産ポータルサイトや不動産会社のホームページに掲載する画像や数など、広告にこだわることが大切です。
マンションの場合、一般的に、室内写真のほか、エントランスや駐輪場などの共用部、建物の外観、周辺環境・施設の写真、間取り図などを掲載します。
閲覧者が生活をイメージできるよう写真や図面は多いほうがよいでしょう。
他の物件と比べ写真が少ない、写真のイメージが暗いとなると反響数に影響する可能性があります。
入居した状態で売却する場合、室内写真を掲載したくない場合もあるかもしれませんが、早期売却を狙うのであれば、リビングやキッチンなど可能な範囲だけでも掲載したほうがよいでしょう。
3.マンション売却・販売エリアに強い会社に依頼する
マンション売却の実績が豊富で販売エリアに精通している不動産会社に依頼することが大切です。
時間をかけずにマンションを売りたい場合、そのエリアの市況を踏まえた売り出し価格の設定が重要になります。
エリアの不動産市況に詳しい不動産会社であれば、どれくらいの問合せが見込めるか、販売期間を要しているかなど、過去の取引事例から予測しやすいでしょう。
また、地域の物件や生活情報に精通している担当者であれば、内覧時の対応にも慣れており、成約率が上がることが期待できます。
4.不動産会社に専任媒介または専属専任媒介で契約する
不動産会社と締結する媒介契約には3つの種類があり、それぞれの特徴を比較したものです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
一般媒介契約では、売主は売却を複数社に依頼できます。そのため、不動産会社は、広告費をかけ営業活動を行っても、自社で契約できるかは分かりませんので、販売活動を積極的にしてもらえない可能性があります。
また、一般媒介契約は、レインズの登録義務や販売状況の報告義務が任意であるため、売主は不動産会社の動きや販売状況が把握しづらくなります。
需要が高い人気物件などを除き、専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約で信頼できる不動産会社1社に依頼するほうがよいでしょう。
5.部屋の掃除や片付け
早く売却するためには、内覧からの成約率を上げることが必要です。
部屋の掃除や片付けができていないと、新しい生活のイメージがつきにくいだけでなく、これまでの部屋の使われ方についても印象が悪くなります。
そのため、間取りや広さなど物件自体は気に入ったとしても、購入判断に悪影響を与えることがあります。
買主の方が内覧しやすいように掃除や片付けをし、収納の大きさなども見てもらいやすいよう、しっかりと準備しておきましょう。
6.内覧時の対応に注意する
物件を気に入った人に購入してもらうためには、内覧時の対応も大切です。
室内やマンション共用部などを見て物件が気に入った購入検討者は、次に、実際に生活している人しか分からない情報などを知りたいと考えます。
周辺環境や買い物施設、駅からのアクセス、学校の評判、隣接住戸の情報など、質問を受けることを想定して、答えられるように準備しておきましょう。
7.内覧会を開催する
マンションを早く売るために、週末を利用して内覧会を開催する方法もあります。
特に、売り出し直後など、物件情報の鮮度が高いタイミングでは反響がとりやすく、他の見学者が訪れることによって購入判断を促す効果が期待できます。
内覧会をするかは不動産会社と相談しながらすすめる必要がありますが、早期売却のための1つの方法として検討してもよいでしょう。
8.購入申込の条件(買主の与信)に注意する
マンションを早く売却するには、購入申込の条件をしっかりと決めておくことが大切です。
特に、買主が住宅ローンを利用する場合、住宅ローンの事前審査の結果を購入申込の条件とし、融資を問題なく受けられそうな買主であるかを確認しましょう。
万一、購入申込から売買契約にすすんだあと、住宅ローン審査が通らず契約が解除されると(融資特約による解除)、そこから新たに買主を探す必要がありますので、売却期間は長引いてしまいます。
9.価格交渉に対し準備しておく
できるだけ高く売却するためには、買主からの価格交渉はできれば避けたいと思われるかもしれません。
ただ、早く売却するためには、買主からの価格交渉にもうまく対応する必要があります。
- ・価格交渉を踏まえた売り出し価格を設定するのか
- ・反響や問合せを増やすためにできるだけ低い価格設定にするのか
- ・いくらまでの価格交渉を受け入れるのか など
価格交渉に対する対応を準備しておきましょう。
10.不動産会社に買取してもらう
マンションを早く売るための方法として、仲介ではなく、不動産会社に買取してもらう方法があります。
問合せが少なく、希望する期間内で売ることが難しいとなった場合、仲介よりスピーディにすすめられるのが買取です。買取については、次の章で詳しく解説します。
1か月以内の売却も可能、不動産買取とは?
一般的に3~4か月はかかる仲介と比べて、買取だと1か月以内の売却も可能です。ここでは、仲介との違いやメリット、デメリットについて解説します。
不動産仲介と買取の違い
不動産仲介は、売却の依頼を受けた不動産会社が買主を探し、売主と買主の間を仲介し、売買契約を成立させる手続きです。
一方、買取は、不動産会社が買主となって、売主から直接不動産を買い取る方法です。買主を探す必要がなく、内覧対応も必要ありません。
買取のメリット
不動産買取のメリットとして、以下のようなものがあげられます。
- 売却期間が短い
- リフォームやハウスクリーニングなどが不要
- 契約不適合責任※が免責
- 内覧対応が不要
- 契約後の解除のリスクがほとんどない
- 売却しにくい物件でも買い取ってもらえる可能性がある
- 仲介手数料がかからない
※契約不適合責任とは、引き渡された不動産の種類や品質、数量について、契約内容に適合しないときに負う売主の責任
物件の状態が悪い場合でも、そのままの状態で売却しやすい方法です。
買取のデメリット
一方、買取のデメリットは、売却価格が低くなる点です。
マンションを買い取った不動産会社は、リノベーションやリフォームを実施し、付加価値をつけたうえで再度販売します(買取再販)。
そのため、買取再販で利益を出すには、できるだけ安く不動産を仕入れる(買い取る)必要があり、買取金額は市場価格の6~8割程度と低くなります。
仲介での売却も狙える買取保証とは?
買取保証は、売却を依頼された不動産会社が、仲介で買主を探し、一定期間経過しても売れなかった場合に、あらかじめ約束していた金額で不動産会社が買い取る方法です。
早く売りたいものの市場価格に近い金額で売りたい、限られた期間だけでも仲介で売却をすすめたい場合などに利用できます。
すぐに売ることが難しいマンションの特徴
マンションを早く売却するには、売れにくいマンションの特徴を知って、その点を踏まえた価格設定や販売方法を選ぶことも大切です。
ここではすぐに売ることが難しいマンションの特徴について紹介します。
立地条件がよくない
一般的に、マンションは、一戸建てと比べ、駅周辺など立地条件のよい場所に建てられることが多く、立地条件が悪い物件はすぐに売ることが難しくなります。
不動産サイトで物件情報を検索する際にも、検索されにくく、閲覧数が伸びにくくなります。
また、将来の売却や住み替えを考え、マンションの資産価値を重視する人も少なくありません。立地条件がよくないと資産価値が低いと判断されやすいでしょう。
物件の状態が悪い
- ・壁やフローリングの補修箇所が多い
- ・キッチンやバスルームなどの水回りの設備に故障がある
- ・サッシ周りや壁にカビが発生している など
物件の状態が悪いマンションは、早期の売却は難しくなる傾向です。
購入後にかかる費用が分かりにくい、すぐに住めるイメージをもちにくいと、購入判断が難しく、売れにくくなります。
築年数がかなり経過している
築年数がかなり経過しているマンションは、現在では一般的に備わっている設備や機能がついていなかったりすることもあり、早期の売却が難しくなりやすいといえます。
- エレベーターが各階に停止しない
- オートロック、宅配ボックスがない
- 天井高が低い、梁や柱が出ている
- 床暖房や浴室乾燥機などが付いていない
- デザインや仕様が古い など
また、昭和57年以降に建築された(新耐震基準適合)マンションでなければ、原則として住宅ローン控除の利用が難しくなりますし、耐震性に不安を感じる人もいるでしょう。
管理状況がよくない
マンションを選ぶ際、快適に生活するためにも、資産を維持する意味でも、管理状況は大きな判断基準です。
そのため、共用部分の管理状況がよくないマンションは、売れにくくなります。
- ゴミ置き場や駐輪場が荒れている
- エントランスやロビーの清掃が行き届いていない
- 掲示板の情報が更新されていない
- 共用部分の廊下に私物が置かれている
- マンション内に住民トラブルの問題がある
- 管理費や修繕積立金の滞納の割合が高い など
マンション管理は管理組合全体の問題であり、1人で何とかなる問題ではないため、管理状況が悪いと判断されると、早期の売却は難しくなります。
管理費・修繕積立金が高い
管理費や修繕積立金が高いと、ローン返済に加えて購入者の毎月の負担が大きくなりますので、問合せ数自体が減るなど、なかなか売れない場合があります。
築年数の経過にともない修繕積立金が増える「段階増額積立方式」を採用しているマンションも多く、将来的にさらに負担が増えると考える購入者もいるでしょう。
マンションを売る時にかかる費用や税金
最後に、マンションを売却するときにかかる費用や税金について解説します。
マンション売却でかかる費用
マンション売却でかかる費用として、不動産会社の仲介手数料のほか、住宅ローンがある場合は、ローンの繰り上げ完済の手数料、抵当権抹消を司法書士に依頼した場合の費用があります。
項目 | 費用 |
仲介手数料(上限) | 【売買価格400万円超え】物件価格×3%+6万円+税 【売買価格200万円超え400万円以下】売買価格×4%+2万円+税 【売買価格200万円以下】売買価格×5%+税 |
住宅ローン繰り上完げ返済手数料 | 0~5万円程度※金融機関、繰り上げ返済の方法、適用中の金利タイプなどで異なります |
抵当権抹消登記の司法書士報酬 | 1~3万円程度※依頼する司法書士によって異なります |
また、売却しやすくするためにハウスクリーニングなどを実施した場合、広さや空き家かなどで変わりますが、6~8万円程度(3LDK・4DKの場合)の費用がかかります。
マンション売却でかかる税金
マンション売却でかかる税金には、印紙税、登録免許税(住宅ローン抹消登記)、譲渡所得税があります。
印紙税は、売買契約書など課税文書を作成したときにかかる税金です。
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額(2027年3月31日まで) |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
登録免許税は住宅ローン等の残債がある場合に、抵当権の抹消登記にかかる税金です。
税額は、不動産1個につき1,000円となり、マンションの場合、敷地1個と建物1個それぞれで2,000円となることが一般的です。
複数に分筆されている土地上に建てられているマンションなどでは、不動産の個数に対して登録免許税がかかります。
不動産譲渡税(譲渡所得税)は、マンションを売却して、譲渡所得が発生したときにかかる税金です。
譲渡所得の計算は以下の通りです。
・譲渡所得=譲渡価格(売却収入)-取得費-譲渡費用
マンションの売却収入からマンションの取得にかかった費用(建物については居住期間に応じて減価償却費を控除)、売却時の仲介手数料などの譲渡費用を差し引いたものが譲渡所得となります。
譲渡所得が発生しても、居住用財産の3,000万円の特別控除などの特例を適用し、譲渡所得税がかからない場合があります。
なお、新築マンションを購入して間もなく売却する場合などは、住宅ローン残高が売却収入を上回る、いわゆるオーバーローンになる可能性については注意しましょう。
築浅といえども、新築購入時の価格より売却価格は下がる可能性はありますし、購入時に頭金や諸費用を含めた借入をしていると、オーバーローンになりやくなります。
オーバーローンの状態で売却するには、売却収入以外の自己資金を準備する必要があります。
まとめ
マンションをできるだけ早く売却するには、相場や売れやすさをしっかりと把握し、価格設定や販売方法を最適にする必要があります。
そのためには、マンション売却の実績や経験が豊富で、販売エリアに精通している不動産会社に依頼することが大切です。
一括査定などを活用しながら複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格や販売方法、担当者との相性などを比較し、信頼できる不動産会社を選びましょう。
お伝えしたマンション売却のコツを、不動産会社選びに役立てていただければと思います。