マンションの売り出し価格は、希望価格にどれぐらい上乗せして設定したらよいのでしょうか。「高く売りたい」「でも高すぎると売れない」とジレンマに陥っている方もいるかもしれません。
この記事では、マンションを売却する方のために、値下げを考えるべきタイミングや価格交渉の流れ、希望価格で売るコツを解説します。値下げするときの注意点や、売れないときの対処法も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
マンションの値下げは何割程度が一般的?
中古マンションには定価がないため、売主の希望価格で売り出すことができます。しかし高すぎると売れないため、通常は不動産会社の査定価格を参考にして、売り出し価格を設定していることが多いでしょう。
そして売り出した価格で売却できることもあれば、査定価格で売り出しても、大幅に値下げ交渉されることがあります。
つまりいろいろなケースが考えられますが、一般的に5~10%の値下げ交渉をされることが多く、通常はこの指値を想定して売り出し価格を設定します。
想定している範囲内の指値であればそのまま受け入れることがあり、極端な値下げ交渉に対しては、一部値下げに応じる方法もあります。たとえば3,000万円に対して300万円の指値が入った場合、150万円まで値下げに応じると返答することも可能です。
しかし交渉決裂となることもあるため、購入希望者の真意を見極める必要があります。不動産会社の担当者に感触や意見を求めてみましょう。
マンションの値下げをするタイミングは?
マンションの値下げを検討するのは、一般的にはどのようなときでしょうか。この章では、代表的ともいえるタイミングを3つ紹介します。
購入希望者から値下げ交渉されたとき
まず内覧対応後、不動産会社経由で購入申込書(買い付け証明書)を受け取ったときです。想定した範囲内の指値であれば、基本的には値下げに応じましょう。
たとえば売出し直後にもかかわらず大幅な価格交渉だった場合などは、様子をみることもできます。不動産会社の担当者と相談し、返答の仕方を検討します。
売り出して3カ月経っても売れないとき
売り出しから3カ月経っても売れない場合、相場価格よりも高い可能性があります。スムーズに成約しているマンションは、3カ月以内で成約に至っていることが多いため、3カ月を一つの区切りと考えて値下げを検討しましょう。※1
また媒介契約書は3カ月以内の期間を定めて契約するため、更新のタイミングで不動産会社から値下げを提案されることがあります。
買い替え先が見つかったとき
住み替えを予定している場合は、買いたい新居が見つかったタイミングで値下げして、早めに売却できるようにしましょう。
新居を買い先行で購入できるとしても、自宅マンションに住宅ローンの残債がある場合は、ダブルローンになってしまいます。また残債がない場合でも、固定資産は二重にかかりますので、資金計画に無理がないように計画して進めましょう。
一般的な価格交渉の流れ
内覧対応から価格交渉、そして売買契約締結までの流れをおおまかに把握しておきましょう。この章では6つのステップでその流れを紹介します。
①内覧対応
不動産会社と媒介契約締結後、早ければ翌週に内覧希望者が現れる可能性があります。土日をすべて内覧のためにおけておく必要はありませんが、チャンスを逃さないように心がけましょう。
また内覧は第一印象が重要です。いつでも内覧に応じられるように室内は整理整頓し、きれいな状態を維持するようにします。
②購入申込書(買い付け証明書)を受け取る
内覧した人が購入を希望する場合、購入希望価格や引渡し条件を記載した書面を、不動産会社経由で提出することになります。購入申込書や買い付け証明書と呼ばれることがありますが、基本的には同じ意味です。
記載内容に明確なルールはありませんが、購入希望者の氏名や住所、手付金額のほかに、ローン借り入れ予定額や希望引渡し時期などが記載されています。
③不動産会社の担当者と相談する
相手側が値下げを希望している場合はそれに応じるか検討し、引き渡し条件(時期)に無理がないかなど確認します。指値に応じる場合は、不動産会社の担当者と相談し、条件や契約日などのすり合わせをします。
決めるのは売買価格や手付金の額、契約日、引渡しの時期などです。指値に応じられない場合は断ることになりますが、できれば値下げに応じられる売買価格の下限を返答しましょう。相手側がその価格に応じる可能性はあります。
④希望価格や条件を返答する
購入希望者が提出する購入申込書に対して、売主側が提示するのは「売渡承諾書」です。売買価格に歩み寄りを希望する場合、希望価格を記載します。※2
相手側の指値にそのまま応じる場合でも、トラブルをさけるために売り渡し価格や条件を記載して書面化するのが一般的です。購入申込書と同じように、不動産会社経由で相手側に提示します。
⑤売買価格決定
お互いに売買価格や条件に折り合いがついたら、売買成立です。1度のやり取りで売買価格が決まることもあれば、複数回やり取りすることもあります。
不動産会社が売買契約書や重要事項説明書を準備するのにある程度時間がかかることもあり、契約日を1週間後とするケースが多いです。売主は売買契約に際して必要になる書類があるため、不動産会社の担当者に確認して契約日までに準備します。
⑥売買契約締結
通常不動産会社の、事務所や店舗で売買契約を締結します。必要書類は不動産会社が基本的にすべて用意しますが、売主が用意する書面に物件状況報告書と付帯設備表があります。
通常ひな型が用意されているので、契約日までに内容を確認しながら丸を付けたり該当する内容を記載しておき、売買契約日に買主に説明して渡します。
宅地建物取引士による重要事項説明と売買契約書への署名押印後、買主から手付金を受領し、買主に手付金の領収書を渡します。
また契約日に不動産会社へ仲介手数料を半額支払うケースが多いため、仲介手数料を支払うタイミングも確認しておきましょう。
マンションを希望価格で売却するコツ
マンションがいくらで売却できるか、実際のところわからないものです。不動産会社の査定額よりも高く売却できることもあれば、下回ることもあります。
少しでも高く売るためには、どのようにしたらよいのでしょうか。この章では希望価格で売却するためのコツを6つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①相場価格を把握して適正価格で売り出す
不動産会社によって得意とするエリアや強みが異なり、査定額が異なることがあります。不動産会社に査定を依頼する前に、ある程度マンションの相場価格を把握しておきましょう。
不動産会社による査定額が適正なのか判断する材料になり、また指値に応じるか決めるときにも役立ちます。
マンション価格が高すぎると売却までに時間がかかってしまい、現金化したい時期が決まっている場合などは、売却するために安くせざるを得なくなることがあります。
なるべく高く、そしてスムーズに売却したいのであれば、なるべく適正価格で売り出すことが重要といえます。
②不動産の繁忙期に合わせて売り出す
不動産は需要と供給の影響を受けやすく、需要がないときに売り出すと、売却までに時間がかかる可能性があります。売却に時間がかかると売れ残り感が出てしまい、値下げせざるを得なくなる可能性があります。
なるべく多くの人が捜し求めている時期に売り出しましょう。一般的に不動産の繁忙期といわれるのは1~3月です。
新生活や新入学などのライフイベントが多い、4月を前に引越しを希望する人が多いのが理由です。タイミング的に難しい場合は、気候がよく需要も比較的高くなる、秋頃を検討しましょう。
③かならずしも値下げに応じる必要はない
売り出してすぐに購入申込書を受け取ったからといって、そのまま指値に応じて売却する必要はありません。見極めが難しいところですが、相場価格を考慮しても安すぎると感じるときは、断ることも考えましょう。
もちろんすぐに断らず、こちらの希望の価格を伝えることもできます。不動産は大きな金額のため値下げ交渉も数百万単位になることが多いですが、「逃した魚は大きかった」と思わずに済むように慎重に検討しましょう。
④希望価格よりも高めに価格を設定しておく
売り出し価格で売却できる可能性は低く、ほぼ価格交渉されるものと心得ましょう。したがって売却したい金額に、ある程度の上乗せして売り出し価格を設定します。
想定していた金額よりも高く売れればプラスになりますし、価格交渉されたとしても、納得して応じられるでしょう。
どのくらい上乗せするかについては、ぜひ不動産会社や相場価格を考慮して決めるようにしてください。
⑤マンション売却価格の最低ラインを決めておく
購入申込書を受け取ったときにすぐ返答できるように、マンション売却価格の最低ラインを決めておきましょう。間違っても、住宅ローンが完済できないことがないように注意しましょう。
住宅ローンの残債がある場合は、決済時に受領した売買代金で完済することになります。不足する場合は自己資金や買い替えローンなどで充当しなければなりません。買い替えする場合はとくに、綿密な資金計画を立てておきましょう。
⑥ハウスクリーニングやホームステージングを実施する
一度の内覧で購入するか否かを決める買主が多いため、マンション売却は第一印象が重要です。買主がリフォームすることを想定していたとしても、室内が汚れていると印象が悪くなり、成約につながりません。
なるべく不要な家財道具は処分しておき、室内の物を減らしておきましょう。整理整頓しやすくなり、部屋も広く見えます。
とくに水回りが汚れていると目につきやすいため、念入りな清掃をしておきます。綺麗にするのが難しい場合は、ハウスクリーニングを検討しましょう。
また最近ではプロに家具の配置やインテリアの飾りつけを依頼し、モデルルームのような見栄えにしてもらう「ホームステージング」を利用する方が増えています。
費用はかかりますが写真映えが良くなるため、インターネット経由での反響増加が期待できます。直接ホームステージング専門会社を探すか、不動産会社で紹介してもらえるか相談してみましょう。
マンション売却で値下げするときの注意点
マンションの値下げをするときに、後悔しないために注意すべきポイントを3つ紹介します。
閑散期に値下げしない
7~8月は不動産の閑散期ともいわれ、マンションを探す人が少なくなります。したがって問い合わせ数や内覧希望者が減るため、値下げをしてもそれほど反響を得られない可能性があります。※3
もしタイミング的に問題がなければ、9月以降の需要が増える時期に値下げを検討しましょう。
内覧希望者が多いときは様子を見る
内覧希望者が多いときは値下げせず、少し様子をみるようにしましょう。内覧してすぐに購入申込書が提示されることもありますが、いくつかのマンションを内覧して、比較検討してから申込することもあります。
一度価格を下げてしまうと、基本的には値上げできません。値下げした価格に対し、さらに指値が入るおそれがあります。値下げするのであれば、ある程度内覧希望者が途絶えたタイミングにしましょう。
少額ではなくまとまった金額を値下げする
もし早期に売却したいときなど、売り出し価格を見直す場合は、ある程度まとまった金額を値下げするようにしましょう。
数十万円程度の値下げは印象が薄く、効果が感じられないかもしれません。マンションの価格にもよりますが、たとえば端数の80万円や数百万単位の値下げを検討しましょう。
マンションを値下げしても売却できないときの対処法
最後に、マンションを値下げしても、売却できないときの対処法を3つ紹介します。
一般媒介に切り替える
もし専任媒介契約(専属専任媒介契約)を選択していて売却できないときは、複数社に依頼できる一般媒介契約に切り替えてみましょう。
専任媒介契約を選択しても、他社と協力して売買契約を締結することはできますが、物理的に窓口を増やすことで、成約につながることもあります。
不動産会社を変える
3カ月近く経っても売却できない場合は、不動産会社の変更を検討しましょう。ただし媒介契約の途中に売主の都合で解除した場合、それまでにかかった費用を請求される恐れがあります。
不動産会社の変更を希望するときは、媒介契約が終了するタイミングにその旨を伝えましょう。
買取で売却する
マンションを現金化したい時期が決まっている場合など、確実に売却したいときは「買取」による売却がおすすめです。
不動産会社は、マンションを再販することを想定して買取価格を提示します。したがって相場よりも2~3割程度安くなってしまうのがデメリットです。
しかし不動産会社が直接買い取る場合は、仲介手数料がかかりません。また買取価格について折り合いがつけば、1週間程度で現金化できることもあります。仲介での売却が難しい場合に備えて、買取についても相談しておけると安心できるでしょう。
まとめ
マンションを売り出してもなかなか購入希望者が現れないと、不安に感じて値下げを考えるかもしれません。しかしタイミングや値下げ額によっては、効果があまり感じられない可能性があるので注意が必要です。
また売れない理由は価格ではなく、室内の状態や閑散期であることが理由かもしれません。希望価格で売却するコツや対処法を参考にして、早期売却を目指しましょう。
※1:首都圏不動産流通市場の動向(2022年度)
※2: 売渡承諾書と買付証明書の効力
※3:マンション買取価格相場の調べ方は? 仲介との違いや不動産会社選びのコツも紹介