マンションを売却する際、「できる限り失敗は避けたい」「不動産取引で後悔したくない」と考える方もいるでしょう。
物件の売却に失敗すると多額の損失が出るおそれもあり、不安になるときもあるのではないでしょうか。
マンションの売却はよくある失敗例を把握して、事前に対策をしておくと後悔する可能性を下げられます。
本記事では、マンションの売却に関する失敗例と対策、成功させるためのポイントを解説します。
自宅のマンションを売却する予定の方や、不動産取引の失敗を回避したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
マンション売却の流れをまずは正しく把握する
マンションの売却を成功させるためには、全体の流れを正しく把握する必要があります。
マンション売却の大まかな流れは、次のとおりです。
1:査定 | 1~3週間 |
2:媒介契約締結、売り出し価格の決定 | |
3:売却活動 | 1~3か月 |
4:内覧の対応 | |
5:購入申込、価格交渉 | |
6:売買契約 | 1か月 |
7:決済、引き渡し | |
8:確定申告 | 翌年2月16日~3月15日 |
マンション売却の期間は一般的に4か月程度で、長いと6か月以上かかるケースもあります。
売買契約を締結しても買主はローンの審査があり、引き渡しまでに1か月はかかります。
マンション売却に失敗しないためには、上記の全体の流れを把握しておき、タイミングを逃さないようにしましょう。
マンション売却前に後悔した失敗例と対策
まずはマンション売却前に後悔した失敗例を紹介します。
対策も解説するため、今後マンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
不動産会社を比較しなかった
マンションの売却を決めた場合、まずは不動産会社に査定をお願いしますが、必ず複数社に依頼してください。
1社のみの査定依頼だと、自身に最適な不動産会社かどうかがわからず、損をする可能性があります。
複数の不動産会社に査定依頼をするメリットは、次のとおりです。
- 適正な査定額がわかる
- マンションの販売実績を比較できる
- 不動産会社の対応を比較できる
- 相性のよい担当者を見つけられる
不動産の査定は査定額のほかにも、実績や対応などを比較して、売却を任せられる業者を選ぶ目的もあります。
マンションを売却する際は、目安として4~6社程度に査定依頼をして、安心して依頼できる不動産会社を見つけましょう。
訪問査定のときの印象が悪かった
中古のマンションでも、見た目や清潔感は大切です。訪問査定のときに掃除や片付けができていないと、査定額に影響する可能性があります。
基本的には部屋が多少汚れていることが原因で、査定額が大きく下がるとは考えづらいため、過度に心配する必要はありません。
しかし、ひどく汚れていたり臭いが残っていたりする場合は、物件の印象が悪くなり、査定額に影響するケースもあるでしょう。
訪問査定を受ける前には、次の対策が効果的です。
- 部屋や水回りなどを掃除しておく
- 整理整頓をしておく
- 不用品はできる限り処分する
- 部屋のなかを消臭しておく
訪問査定時は部屋の隅々まで確認されるため、不動産会社の担当者が見やすいように、整理整頓や掃除をしておきましょう。
査定額が適切でなかった
不動産会社から提示された査定額が適切ではないと、売り出し価格の設定を誤り、買い手が見つからないおそれがあります。
マンションは査定額どおりに売却できるとは限らないため、査定結果のみで不動産会社を選ばないようにしてください。
査定依頼をするときのコツは、次のとおりです。
- 複数の不動産会社に査定依頼をする
- 査定結果の根拠を確認する
- 自身でも相場を調査しておく
複数の不動産会社に査定依頼をして根拠を確認すれば、適正な査定額がわかります。
マンション売却での失敗を回避するために、査定額の根拠に納得できる不動産会社を選びましょう。
自身の判断でリフォームしてしまった
自身の判断でリフォームするのも、マンション売却でよくある失敗です。
高額なリフォームをしても、必ず物件の売却価格に上乗せできるわけではなく、結果的にリフォームしないほうがよかったと後悔する可能性があります。
また売主と買主でデザインや色などの好みも異なり、リフォームが原因でマンションが売れづらくなるケースもあるため注意が必要です。
リフォームをしたほうがよいか悩む方は、不動産会社の担当者に工事が必要かを相談しましょう。
購入後にリフォームしたいと考える買主もいるため、自身の判断のみで決めるのは避けてください。
マンション売却活動中に起こる主な失敗例と対策
次にマンションの売却活動中に起こり得る主な失敗例と対策を解説します。
場合によっては不動産会社を変更したほうがよいときもあるため、事前に防げる失敗は回避してください。
売却活動の時間が足りなかった
マンションの売却活動を成功させるためには、十分な時間を確保する必要があります。
売却活動の時間が足りていないと、不動産会社を変更できない、売り出し価格を大幅に下げざるを得ないなどの可能性が高くなります。
一般的にマンションの売却は4~6か月程度かかるため、売却活動の時間を十分に確保するようにしてください。
またマンション売却の全体の流れを把握して、一番不動産取引が活発なタイミングに売却活動をすると物件が売れやすくなります。
詳しくは「マンションが売れやすい時期から逆算する」の章で解説しているため、ぜひ参考にしてください。
売り出し価格が不適切のため買い手が付かなかった
売り出し価格が相場からかけ離れていると、買い手がなかなか見つからず、売却に時間がかかるおそれがあります。
相場より高すぎるとほかの物件に買い手が流れ、低すぎると売却できても自身が損をするため注意が必要です。
自身でも同等のマンションの相場を調べて、適切な売り出し価格を設定してください。
また、マンションの売り出し価格で悩む場合は、不動産会社の担当者に相談するのもおすすめです。
売り出し価格をはじめ、さまざまな相談ができるため、マンションの売却実績が豊富な不動産会社を選びましょう。
依頼先の担当者との相性が悪かった
売却を依頼した不動産会社の担当者との相性が悪いと、マンションの売却に失敗しやすくなります。
相性が悪いと気になる点や不安点などを質問しづらく、わからないことがあるまま売却活動が進むためです。
不動産会社選びをする際は、担当者と自身の相性がよいか、コミュニケーションが取りやすいかを必ず確認しましょう。
担当者との相性を確認する際は、次の点もチェックしてください。
- レスポンスが早いか
- 質問に対しての回答はわかりやすいか
- 提案やアドバイスに納得できるか
- 仕事に対する熱意はあるか
担当者との相性に加えて上記がよければ、マンション売却に失敗するリスクを大きく抑えられます。
囲い込みをされた
不動産会社から囲い込みをされるのも、マンション売却での失敗事例です。
囲い込みとは売主と買主の両方から仲介手数料を得るために、ほかの業者に情報を公開しない、他社からの問い合わせに対応しないなどの行為を指します。
不動産会社の利益は大きくなる一方で、売主側は物件の売却に時間がかかる、値下げせざるを得なくなるなどデメリットしかありません。
囲い込みをされないためには、不動産会社を選ぶ際に口コミや評判を確認して、怪しい業者には依頼しないようにしましょう。
また、囲い込みが疑われる場合は不動産会社を変更するか、複数社に依頼できる一般媒介契約にすると、業者選びの失敗を避けやすくなります。
担当者に任せきりにしてしまった
マンション売却を依頼する不動産会社を選んだあと、担当者に任せきりにするのはおすすめできません。
物件の宣伝活動や内覧の日程調整などの売却活動は、不動産会社の担当者がおこないます。
ただし、担当者は常時複数の物件を担当しており、自身や会社の利益の高いほうを優先しているケースも考えられます。
そのため、担当者に任せたままにせず、積極的にコミュニケーションを取りましょう。
宣伝活動のやり方や問い合わせ状況などを確認し、一緒に対策を考えていけば熱意が伝わり、積極的に売却活動をするでしょう。
とくに築古や利便性がよくないなど、何かしら不利な条件がある中古マンションほど担当者に任せきりにせず、こまめな連絡を取るようにしてください。
内覧のときの印象がよくなかった
内覧のときの印象がよくなく、物件がなかなか売れないのもマンション売却での失敗例です。
条件がよいマンションでも内覧時の印象が悪ければ、物件が売れる可能性は大きく下がります。
内覧に対応する際に失敗する主なケースは、次のとおりです。
- 玄関が整理されていない
- 物件内の臭いが気になる
- 部屋の掃除や整理整頓がされていない
- 部屋の雰囲気が暗い
内覧が実施される日には掃除や整理整頓、消臭などをしておき、買主候補の方に物件の魅力が伝わるようにしましょう。
基本的にホームクリーニングは必要ありませんが、気になる汚れがある場合は、不動産会社の担当者に相談するのもおすすめです。
マンション売却後に起こり得る失敗例と対策
最後にマンションの売却後に多い失敗例と対策を解説します。
事前に失敗例を把握しておき、マンションの売却で後悔のないようにしてください。
需要が低いタイミングで売却してしまった
中古マンションの需要が低いタイミングで、物件を売却するのも失敗事例の一つです。
需要が低い時期にマンションを売却すると、物件がなかなか売れずに、売却価格が安くなる可能性があります。
また売り出している期間が長いと、「何か問題のあるマンションかも知れない」と疑われることもあるでしょう。
不動産取引が活発になるのは2~3月で、不動産の売却には4~6か月程度かかります。
そのため、需要が高いタイミングを狙いたい方は、目安として10~11月頃から動き出すとよいでしょう。
需要の高い時期にマンションの売却活動をできれば、希望どおりの条件で物件を売却しやすくなります。
売却したあとに周辺相場が上がった
自身のマンションを売却したあとに周辺相場が上がり、後悔するケースも考えられます。
周辺相場が上がれば、売り出し価格の引き上げが可能になり、時期を遅らせたほうがより高値で売却できるためです。
周辺の相場が上がる要因の一例は、次のとおりです。
- 再開発によって住みやすくなる
- 近隣に大規模施設ができ住環境がよくなる
- 道路の開通によって不動産需要が増した
- 新しい駅ができて利便性が向上した
中古マンションを欲しい方が多くなる要因があれば、周辺物件の相場も需要に比例して上がります。
近い将来自身が住む地域に上記のような要因が起こるかを確認して、相場が上がりそうならマンションの売却時期を遅らせるのも選択肢です。
ただし中古マンションは基本的に、築年数が古いほど価値が下がるため、不動産会社の担当者と相談しながら進めてください。
諸費用が想像よりもかかった
マンション売却にかかる諸費用を把握しておらず、結果的に資金が足りなくなる、家計が苦しくなるなどの失敗例もあります。
不動産取引にはさまざまな手数料や税金などがかかるため、早めの段階で諸費用を把握しておきましょう。
マンションを売却する際に発生する諸費用は、次のとおりです。
諸費用 | 金額の一例(売却価格が5,000万円の場合) |
登録免許税 | 2,000円 |
印紙税 | 2万円 |
譲渡所得税 | 要確認 |
仲介手数料 | 171.6万円 |
司法書士への報酬 | 1万円〜3万円 |
新居への引っ越し費用 | 10万円〜20万円 |
合計 | 200万円程度 |
※消費税がかかる費用は税込表記です。
不動産取引にかかる諸費用は、売却価格が大きく影響するため、売却してみないと正確な金額はわかりません。
早めに不動産会社の担当に相談して、マンション売却の諸費用の概算を出してもらいましょう。
オーバーローンになってしまった
オーバーローンとは、マンションの売却で得られる資金で、住宅ローンを完済できない状態を指します。
現在の住宅ローンを物件の売却で完済しようとしていた場合、オーバーローンになると資金計画を立て直す必要があるため注意が必要です。
オーバーローンになりたくない方は、住宅ローンの残高を確認して、完済できる金額で最低売却価格を設定しましょう。
価格交渉をされた際、自身が設定した最低売却価格を下回らなければオーバーローンを回避できます。
なお、マンションを売却する際は、住宅ローンを完済する必要があります。
仮に売却金額で住宅ローンを完済できない場合は、自己資金を利用するか、別のローンを組んでお金を用意しましょう。
契約不適合責任を負うことになった
契約不適合責任とは、物件引き渡し後に契約書とは異なる状態や欠陥が見つかった場合、売主側が負う責任を指します。
買主は売主に対して損害賠償請求、契約の解除などができ、引き渡し後でもトラブルになる可能性があります。
たとえば売主が把握していなかったシロアリ被害だとしても、引き渡し後に発覚すれば、売主が責任を負うため注意が必要です。
契約不適合責任を避けたい方は、物件の劣化状況や補修箇所の調査をする、ホームインスペクション(住宅診断)を実施しましょう。
ホームインスペクションをすれば、マンションの状態が明らかになり、契約不適合責任を回避しやすくなります。
マンションの売却に失敗しないための5つのポイント
マンション売却に失敗しないためには、信頼できる不動産会社を選ぶ、マンションが売れやすい時期から逆算するなどの対策が効果的です、
自身の物件の売却に成功したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
住宅ローンの残高を把握する
自宅マンションの売却を検討する際は、住宅ローンの残高を把握するようにしてください。
住宅ローンの残高がある場合でも、マンションの売却は可能ですが、ローンは完済しなければなりません。
マンションの売却で得た資金で住宅ローンを完済できればよいですが、ローン残高が残るケースも考えられます。
売却後に次の物件を購入する方で、マンションを売却してもローン残高が残る場合は、住み替えローンを検討しましょう。
一定期間借り入れができる「つなぎ融資」のほうがよいときもあるため、金融機関に相談するのをおすすめします。
必ず査定額の根拠を確認する
複数の不動産会社から査定価格を提示された際、必ず査定額の根拠を確認しましょう。
根拠がないにもかかわらず高い査定額を提示してくる業者を選ぶと、売り出し価格の設定を誤りやすく、売却活動がスムーズに進みません。
一方で査定額の根拠がある不動産会社であれば、納得のいく説明を受けられるため、安心して任せられます。
査定額の根拠で不明な点があれば担当者に確認し、対応のよさや相性をチェックする方法もおすすめです。
査定価格を提示されたら、査定額の根拠や担当者の対応を確認して、売却活動を依頼する不動産会社選びの判断材料にしましょう。
実績があり信頼できる不動産会社・担当を選ぶ
マンションの売却を成功させるためには、不動産会社選びが重要です。
不動産会社を選ぶ際はマンションの売却に強いのか、実績は豊富なのかをチェックする必要があります。
検討している不動産会社の得意な業務や実績は、公式サイトで確認するか、担当者に聞いてみましょう。
また不動産会社の担当者のスキルや自身との相性も、業者選びの大切なポイントです。
マンションの売却は6か月程度かかるケースもあり、やり取りも多くなるため担当者との相性は必ずチェックしてください。
相性がよい担当者や実績が豊富で信頼できる不動産会社を選べれば、マンションの売却に成功しやすくなります。
マンションが売れやすい時期から逆算する
中古マンションの取引が活発になるのは、4月からの新生活がはじまる少し前の2~3月です。
マンションの売却には一般的に4か月程度かかり、逆算すると10~11月から動きはじめれば、物件が売れやすい時期に売却活動をおこなえます。
長いと6か月程度かかるケースもあるため、不安な方は9月頃からはじめてもよいでしょう。
査定依頼や不動産会社選びなどをはじめたら、マンション売却の全体の流れを意識して、スムーズに進んでいるかをこまめに確認してください。
「マンション売却の流れをまずは正しく把握する」の章で紹介した全体の流れを参考に、売却活動を進めれば、需要の高いタイミングで売り出せます。
最低売却価格・売却の期限を決めておく
物件価格を下げすぎて損をしないため、事前に最低売却価格を決めておきましょう。
売りに出したマンションに申し込みがあった際、価格交渉をされる可能性があります。
売却を急いでいる方は、最低売却価格を決めていないと値下げしすぎてしまい、後悔するときもあるため注意が必要です。
また、売り出してもなかなか売れないケースに備えて、事前に売却の期限を決めておきましょう。
「1年で売却できない場合は不動産会社の買取を利用する」と決めておけば、次の住居や資金などの計画が立てやすくなります。
あらかじめ売却の期限や最低売却額を決めておけば、焦って安く売るリスクを抑えられ、マンションの売却に失敗しづらくなるでしょう。
まとめ
マンションの売却で多い失敗例と対策、不動産取引を成功させるためのポイントを解説しました。
事前に失敗しやすい点を把握して対策をしておけば、マンション売却で後悔する可能性を大きく下げられます。
また物件の売却に成功するためには、実績があり信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
マンションの売却に失敗したくない方は、本記事で解説した失敗例や対策を参考に、満足できる不動産取引をしましょう。