首都圏の中古マンションの成約価格は、11年連続して上昇を続けています。
また新築マンションの価格高騰もあり、中古マンションに注目が集まっています。しかし何も対策をせず売り出してしまうと、せっかくの機会を活かせないおそれもあります。
この記事では、中古マンションの売却を成功させるコツと売却時の注意点を紹介します。
また、中古マンションが売れないときの対処法や税金の特例についても解説しますので、売却を検討している方はぜひお役立てください。
中古マンションを高く売るコツ4選
まず中古マンションを、より高く売るためのコツを4つ紹介します。
仲介で売却する
中古マンションを売るのであれば、買取ではなく仲介で売却しましょう。仲介とは、不動産会社に売却を依頼して買主を探してもらい、不動産の売買を成立させる方法です。
基本的に個人へ売却することになり、相場価格で売却できる可能性が高いのが魅力です。一方買取による売却は、基本的に再販を想定している不動産会社が買うことになるので、相場価格よりも2~3割程度安くなるといわれています。
相場価格より少し高めに価格を設定する
中古マンションは、売り出し価格に対して値引き交渉されることがほとんどです。相場価格で売り出してしまうと、そこから値引き交渉をされ、結果的に相場よりも安く売却することにもなりかねません。
中古マンションの成約価格が上昇していることも考慮すれば、査定価格よりも少し高めに売り出し価格を設定しても、十分に反響は得られるでしょう。
しかし売り出し価格の設定については、不動産会社の担当者とよく相談したうえで、決定することをおすすめします。
中古マンションの売却実績が豊富な不動産会社を選ぶ
中古マンションの売却実績が、豊富な不動産会社へ仲介を依頼しましょう。売却実績が豊富な不動産会社ほど、高く売却するためのノウハウやスキルを備えているため、高値での売却を期待できます。
依頼先をどこにするかの判断が難しいと感じる場合は、実際に近隣マンションの売却実績を聞いてみましょう。複数の不動産会社に質問することで、自ずと売却実績の豊富な不動産がみつかります。
中古マンションの需要が高まるタイミングで売却する
中古マンションの需要が高まっている今は、売り時ともいえます。さらに不動産の需要が高まるタイミングで売り出すことができれば、さらに高く売ることができる可能性があります。
一般的に新生活が始まる前の1~3月は、一年の中でも需要が高まる時期です。もしタイミングを合わせられるのであれば、この時期に合わせて売り出すようにしましょう。
中古マンションを早く売るコツ4選
次に中古マンションを、より早く売るためのコツを4つ紹介します。
相場価格を把握して適正価格で売り出す
中古マンションを早く売却することを優先するのであれば、なるべく適正価格で売り出すことを心がけましょう。
中古マンションを探している人は相場価格を把握していることが多く、価格設定が高すぎるとまず簡単には売却できません。
マンションを仲介で売却するときは、査定価格が高いことだけで依頼先を選ばないようにしましょう。
室内を整理整頓して念入りに清掃する
中古マンションは、内覧した際の第一印象が大切です。早期に売却できるか否かは、見た目にかかっているといっても過言ではありません。
売却のためにリフォームする必要はありませんが、内覧に備えて不要な家財道具は処分し、念入りに清掃をしておきましょう。
自分で掃除をしてもきれいにならないときや、忙しくて清掃する時間を確保できないときは、プロによるハウスクリーニングを検討してみてください。
内覧時の対応に気を配る
中古マンションの内覧は、基本的に不動産会社の担当者が対応します。売主はアピールをしすぎないように注意し、自由に見てもらえるような雰囲気作りに努めます。
しかし住環境などについて質問が出た際は快く答えるようにし、引っ越し後の生活がイメージできるような情報を伝えましょう。
また室内に人数が多すぎると、相手に窮屈な印象を与えかねません。対応するのは1~2人にとどめ、小さい子どもがいる場合は外出しておくとよいでしょう。
専任媒介契約を選択する
不動産会社に仲介を依頼する場合は、媒介契約を締結します。3種類の媒介契約がありますが、専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を選択することをおすすめします。
レインズへの登録や不動産会社が業務報告することが義務付けられており、きめ細かい対応を期待できます。また一般媒介契約の物件よりも、社内で優先される傾向があります。
中古マンションを売却する流れ
中古マンションを売却する場合の、一般的な流れを8つのステップで紹介します。
相場価格や売り物件などの情報収集をする
まず相場価格把握するために、同じマンション内で売り物件があればチラシなどを保管しておき、不動産ポータルサイトなどで競合物件になりそうなマンションの価格を確認しておきましょう。
なお以下のサイトでは、マンションの成約価格を検索できます。会員登録なども必要なく、簡単に調べられます。
不動産総合情報システムとは国土交通省が運営しているサイトで、中古マンションはもちろん、宅地や戸建ての成約価格を調べられます。
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営しているサイトで、マンションと戸建ての成約事例を検索できます。
売却に必要な書類を準備する
不動産会社に査定を依頼する前に、必要書類を準備しておきましょう。すべて揃わなければ査定できないというわけではありませんが、売買契約締結の際に必要になる書類でもあるため、早めに準備しておけると安心です。
【準備しておきたい書類等】
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- 固定資産税等納税通知書もしくは課税明細書
- 購入時のパンフレット・間取り図
- 管理規約・使用細則
- 不動産会社に査定を依頼する
相場価格を把握し、書類の準備ができたら、不動産会社に査定を依頼します。すぐに査定価格を知りたい時は机上査定、精度が高い査定額を知りたいときは訪問査定を依頼しましょう。複数社の査定価格を参考にするためにも、少なくとも2~3社へ査定依頼することをおすすめします。
媒介契約を締結する
不動産会社へ仲介を依頼するときは、媒介契約を締結します。複数社に依頼する場合は一般媒介契約、1社に限定するときは専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約です。
媒介契約には3つの種類がありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。下記の表を参考にして、ぜひ自分の希望や条件に合う媒介を選んでください。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
内覧に対応する
不動産会社と媒介契約を締結したら、売却活動が始まります。内覧希望者が希望する日時になるべく内覧対応ができるようにしましょう。
内覧は土日や祝日が希望されることが多いため、家族で外出するのが難しくなりますが、売却までの辛抱と心得ましょう。
売買契約締結
売買価格や引き渡し条件について、購入希望者を折り合いがついたら、契約日を定めて売買契約を締結します。手付金を受領する日です。
残代金決済・引渡し
遅くとも前日までに引っ越しを終えておきます。買主から残代金(売買代金から手付金を差し引いた額)を受領し、所有権を移転します。住宅ローンを完済し、マンションの鍵を渡すのもこの日です。
確定申告をする
マンションを売却し、利益(所得)が発生したら譲渡所得税がかかります。また税金の特例を利用する場合も、翌年の確定申告を忘れないようにしてください。
中古マンション売却時の注意点
中古マンションを売却するときは、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。とくに気をつけたいポイントを3つ紹介します。
不具合や傷は隠さず告知する
中古マンションを少しでも高く、また早く売りたいと思うばかり、たとえば設備の不具合やフローリングの大きな傷を隠したくなるかもしれません。
しかし買主に不具合や目立つ傷があることを隠して売却すると、契約不適合責任を問われるおそれがあります。
契約不適合責任とは、契約で定めた内容や数量、状態でないことが引渡し後に発覚した場合に、売主が負う責任です。
不具合や傷の程度にもよりますが、売買代金の減額請求や損害賠償を請求される可能性があり、契約解除に至ることもあります。不具合や傷があれば正直に説明するようにし、買主に納得してもらったうえで売買契約を締結しましょう。
無理のない資金計画を立てる
住宅ローンが残っている状態でもマンションは売却できますが、所有権を移転する前に完済する必要があります。マンションを売却するのにかかる諸費用や、新居を購入するための資金なども含めて、綿密に資金計画を立てておきましょう。
諸費用がいくらかかるのか判断が難しいときや、計算方法が分からないときは、不動産会社に資金計画も含めて相談することをおすすめします。
忘れずに翌年確定申告をする
マンションを売却して売却益が発生したときは、譲渡所得として確定申告をしなければなりません。税金の特例を利用する場合も、確定申告が必要になるため、翌年の確定申告を忘れないようにしてください。
中古マンションの売却で使える税金の特例
自宅マンションを売却しても、利益が生じなければ税金はかかりません。もし売却益が発生したとしても、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。この特例を「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。※1
居住用財産であれば、所有期間に関係なく控除できます。しかし適用を受けるためには、ある一定の要件があり、また、翌年の確定申告で申告する必要があります。
もしこの3,000万円の特別控除を利用しても、譲渡所得税がかかる場合は、所有期間に注意しましょう。
中古マンションを売却した年の1月1日に所有期間が5年を超えるときは、長期譲渡所得となり、5年以下の短期譲渡所得の1/2程度の税率になります。
また、居住用の財産でさらに所有期間が10年を超えるときは、譲渡所得金額の6,000万円までが、一定の条件を満たすことで長期譲渡所得よりもさらに低い税率が適用になります。
なおこの軽減税率の特例の適用を受ける場合も、確定申告が必要です。
所有期間※1 | 所得税 | 復興特別所得税※2 | 所得税合計 | 住民税 | 譲渡益に対する税金の合計 | |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 0.63%(30%×2.1%) | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 0.315%(15%×2.1%) | 15.315% | 5% | 20.315% |
10年超軽減税率(6,000万円以下) | 10年超 | 10% | 0.21%(10%×2.1%) | 10.21% | 4% | 14.21% |
※2:2037年までは復興特別所得税として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と合わせて申告し、納付することになります。
※ 国税庁、長期譲渡所得の税額の計算
※ 国税庁、短期譲渡所得の税額の計算
※ 国税庁、No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
※ マンションを売却したら住民税が上がる?税金の計算方法と軽減する方法を解説
中古マンションが売れないときの対処法
首都圏の中古マンションの成約価格は、ここ10年以上右肩上がりに上昇していますが、すべてのマンションがスムーズに売却できるとはかぎりません。
最後に、中古マンションが売れないときの対処法を5つ紹介します。
売り出し価格を値下げする
中古マンションを売りに出してから、3ヶ月近く経っても成約に至らないときは、相場価格よりも高い可能性があります。不動産会社の担当者と相談し、売り出し価格の値下げを検討しましょう。
不動産会社を変更する
不動産会社には得手不得手があるため、仲介を依頼している不動産会社がマンションの売却に向いていない場合は、売却に苦労する可能性があります。
もし苦戦していると感じる場合は、不動産会社の変更を検討しましょう。ただし媒介契約終了のタイミングで変更することをおすすめします。
売却時期を見直す
マンションを売り出したものの、内覧数が少ないときは、需要が少ない時期なのかもしれません。また同じマンションで複数の住戸が売りに出ているときは、価格競争に陥りがちです。
もし売却のタイミングを後ろ倒しできるのであれば、売る時期を見直すことも1つの方法です。
ハウスクリーニングやホームステージングを検討する
内覧が極端に少ないと感じる場合は、広告用に撮影した写真の見栄えが悪い可能性があります。
多くの購入希望者は、不動産ポータルサイトなどに掲載されている写真を見て、内覧するか否かを判断しています。
写真の印象が暗いと感じる場合や、汚れが気になる場合は、ハウスクリーニングやホームステージングの実施を検討してみましょう。
不動産会社によっては、ハウスクリーニングやホームステージング専門業者と提携していることがあります。まずは実施するか否かも含めて、不動産会社に相談してみてください。
買取による売却を検討する
中古マンションが思うように売れないときは、買取による売却を検討しましょう。前述のとおり相場価格の2~3割程度安くなる可能性はありますが、早ければ1週間程度でマンションを現金化できます。
契約不適合責任の免除や引渡しの時期を相談できるケースが多く、不動産会社へ直接売却する場合は、仲介手数料もかかりません。
まとめ
物価高や建築資材の高騰もあり、新築マンションだけでなく中古マンションの成約価格も上昇しています。
中古マンションの売りどきともいえますが、より高くかつスムーズに売却するためにも、売却のコツや注意点をおさえておきましょう。
そして売れないときの対処法も参考にして、ぜひ中古マンションの売却を成功させましょう。