中古マンションは、築30年になると売れないのでしょうか?確かにマンションは築30年にもなると、設備や内装は劣化し、外観の見栄えも悪くなります。
しかし成約事例のデータを見ると、築30年であっても他の年代のマンションと同じように売却できているように思えます。
この記事では、築30年のマンションが一般的に売れないといわれる理由と、築年数が古くてもスムーズに売却するコツを紹介します。
築30年のマンションの需要と供給や、資産価値についても解説しますので、売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
成約した中古マンションのうち、築30年超は全体の30%超
まず築30年超のマンションが、どの程度成約に至っているのか見てみましょう。以下の表は、2023年1月~12月の首都圏の中古マンションの成約状況の割合を、築年帯別に集計したものです。
築31年~35年は全体の6.9%、築36年~40年は7.0%、築41年以上は18.0%です。
つまり築31年超の中古マンションは、全体の約32%を占めていることになります。
この数字を見て、「築が古いマンションも売却できる」と安心した方も多いのではないでしょうか。
築30年のマンションのストック数は全体の約半分
次に築30年超のマンションのストック数を上の表から見てみましょう。2023年の1年間にレインズに新規に登録されたマンションの割合は、築31年~35年が11.5%、築36年から40年が10.8%、築40年超が27.3%です。
つまり築30年超のマンションは、全体の約半数を占めることになります。
築30年の中古マンションの資産価値
築30年の中古マンションの資産価値は、分譲当時と比べてどの程度残っていると考えたらよいのでしょうか。売却できたとしても資産価値が低ければ、住宅ローンの返済や諸費用を差し引いた後、手元に残る現金は少なくなるかもしれません。
下記は、中古マンションの成約物件と新規登録物件の平均価格を、築年帯別に表にしたものです。
中古マンションは築21年以降に価格の下落率が大きくなるものの、築31年以降は底値になり、横ばいの状況です。これはマンションの建物の評価はほとんどなくなり、土地値になっていると考えられます。つまり築30年以降は、資産価値が大きく下落しないともいえます。
築30年のマンションが売れない理由とは?
築30年のマンションは、なぜ売れにくいのでしょうか。理由がある程度わかれば、対処の仕方も考えられるでしょう。
この章では、築30年の中古マンションが売れない5つの理由について解説します。
- 中古マンションのストック数が多いから
- 耐震性を不安視する人がいるから
- 住宅ローンが組みにくいから
- 購入後のリフォーム代が高額になるから
- 外観の見栄えが悪いから
中古マンションのストック数が多いから
不動産が売れるかどうかは、需要と供給が影響します。中古マンションのストック数が多くても、購入を希望する人が多ければ成約に至ります。築30年の中古マンションが売れ残るということは、そのストック数に比べて需要が少ないことが考えられます。
国土交通省が公表したデータによると、2021年末の時点で中古マンションのストック数は685.9万戸です。そのうち築40年以上の中古マンションは114.6万戸あり、10年後には249.1万戸(2.2倍)、20年後には425.4万戸(3.7倍)になると試算しています。
今後築古マンションがさらに増加することになれば、築30年のマンションはますます売却しにくくなるかもしれません。
「築30年以降は資産価値が大きく下落しない」と説明しましたが、ストック数が増えることで資産価値にも影響が出るでしょう。売却を検討しているのであれば、早めの行動をおすすめします。
耐震性を不安視する人がいるから
築30年のマンションが売れない理由として、耐震性を不安視する人が一定数存在することも考えられます。
マンションには旧耐震基準で建てられたものと、現行の新耐震基準のものがありますが、それぞれの基準にはどのような違いがあるのでしょうか。
旧耐震基準と新耐震基準とは
建築基準法は、大きな地震が起きるたびに見直されてきました。1978年の宮城県沖地震の被害状況を教訓に建築基準法の改正があり、1981年6月1日以降は新しい耐震基準になりました。※1、2
新耐震基準では、震度6強~7程度の揺れが起きても、建物が倒壊しない構造であることが求められます。それ以前の基準で建てられたマンションや建物は旧耐震基準と呼ばれ、新耐震基準と区別されています。
旧耐震基準では、震度5強程度の揺れが起きても建物が倒壊や損壊しないことを基準にしていました。つまり大きな地震に対しては耐震性が不足するおそれがあり、耐震補強工事などにより補強することが望ましいとされています。
1981年6月1日以降は新耐震基準
1981年6月1日以降の建物は新耐震基準であるといえます。しかし1981年6月1日以降に建築確認申請をする場合は、新耐震基準である必要があったため、厳密には建築確認申請の時期で判断できます。
住宅ローンが組みにくいから
住宅ローンは、契約者の収入や年齢だけでなく、購入する物件の担保評価も審査されます。築30年のマンションは担保評価が低いため、希望するローン額を借入できない可能性があります。借入れが難しいことを理由に、購入を断念することもあるでしょう。※3
金融機関は、住宅ローンの返済が滞ったときは不動産を売却して、現金を回収することになります。つまり担保評価は相場価格ではなく、相場価格の70%程度で設定されることがあります。ただし、契約者の収入によっては、マンションの担保評価以上に借入できることもあり、その条件は案件ごとに異なります。
住宅ローン控除の要件は緩和
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用要件が緩和されたことで「耐火住宅は築25年以内」から「1982年以後に建築された住宅」に緩和されました。つまり築30年のマンションも、一定の条件を満たすことで住宅ローン控除を受けられます。※4
また、改正以前は、耐火住宅については築25以内であることが適用条件だったため、中古マンションは築25年を過ぎると売りにくいといわれていました。
購入後のリフォーム代が高額になるから
築30年のマンションは水回りや内装が劣化しているため、購入後に高額な費用をかけてリフォームしなければならないケースが多く、その費用がネックになることがあります。
もしリフォームや改修をしている場合はプラスの要因になるため、工事を実施した時期が説明できるように契約書や領収書を探しておきましょう。
基本的に、売却するためにリフォームを実施する必要はありません。もし検討する場合は、不動産会社の担当者に相談することをおすすめします。
外観の見栄えが悪いから
築30年のマンションは、2度目の大規模修繕工事をしているか否かで、外観の見栄えが異なります。もし2回目の修繕をしていない場合は、外観の印象が悪いために売却に苦労するかもしれません。
もし売却の時期を後ろ倒しできる場合は、大規模修繕工事後に売り出すか、工事の予定があることを説明するようにしましょう。
築30年のマンションを売却するコツ
築30年であっても、成約に至っているマンションは数多く存在します。つまり条件や工夫次第でスムーズに売却することは可能です。
この章では、築30年のマンションを売却する7つのコツを紹介します。
- インスペクションを実施する
- 瑕疵担保保険をつける
- リフォームはせず割安感のある価格設定にする
- マンション売却が得意な不動産会社に依頼する
- 専任媒介契約を選択する
- 空き家の状態で売却する
- 2回目の大規模修繕工事後に売却する
インスペクションを実施する
築30年のマンションの劣化や不具合を心配する人への対策として、インスペクションの実施を検討しましょう。
インスペクションとは建物状況診断のことで、建築士などの有資格者がマンションの基礎や構造上主要な部分に劣化や不具合がないか調査することをいいます。
インスペクションの相場は、マンションの場合は5~7万円です。費用はかかりますが、購入を希望している人にとっては安心材料になり、売主にとっては他のマンションとの差別化になります。
インターネットで検索して、インスペクションを行う業者を探すこともできますが、不動産会社に斡旋を依頼することも可能です。まずは実施するか否かも含めて、担当者に相談してみましょう。
瑕疵担保保険をつける
既存住宅売買瑕疵保険に加入することで、引渡し後に瑕疵(欠陥や不具合)が見つかった場合は、補修にかかる費用として保険金が保険事業者から支払われます。※5
既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、専門の建築士による建物状況調査(インスペクション)が必要になります。調査費用を含めて7~15万円程度が相場ですが、依頼先やプランによって費用は異なります。
保証付きであることで、買主も安心して購入できるでしょう。また1982年以前に建築されたマンションも、瑕疵担保保険に加入することで、住宅ローン控除の対象になるメリットもあります。
リフォームはせず割安感のある価格設定にする
マンション購入後にかかるリフォーム代を考慮して、割安感のある価格で売り出しましょう。築30年超のマンションのストック数が多くても、価格次第でスムーズに売却できるでしょう。
成約までに時間がかかってしまうと、多くの場合売るために値引きすることになります。結局は早期に売却することが高値での売却につながるため、売り出し価格の値段設定が重要になるでしょう。
マンション売却が得意な不動産会社に依頼する
マンションをスムーズかつ希望する価格で売却できるかどうかは、不動産会社の力量によるところが大きかったりします。
マンション売却が得意な不動産会社に、仲介を依頼しましょう。ぜひ複数社に査定を依頼し、それぞれ実績や特徴を比較してから、売却依頼先を決めるようにしてください。
専任媒介契約を選択する
不動産会社に仲介を依頼するときは、媒介契約を締結します。媒介には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約があり、自分の希望や条件に合うタイプを選ぶことができます。
一般媒介契約は複数の不動産会社と契約できますが、きめ細かい対応を期待するのであれば、依頼先を1社に限定する専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を選ぶことをおすすめします。
また不動産会社によっては、一般媒介契約では受けられない付加サービス(プロのカメラマンによる写真撮影やCGによるリフォーム後のイメージ写真の作成など)を用意しているケースもあります。
3つの媒介契約の違いは、以下の通りです。どの媒介契約を選んでも、不動産会社に支払う仲介手数料は同じです。また、一般媒介契約を選んで複数社に依頼しても、報酬を支払うのは成約に導いた1社のみです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
空き家の状態で売却する
住宅ローンを完済している場合は新居へ引越しをして、空き家の状態にしてから売り出しましょう。空き家であればオープンルームを開催することもできるため、多くの人に気軽に見てもらうことができます。
また、空き家であれば不動産会社に鍵を預けておくことができるため、内覧希望者とスケジュールが合わずチャンスを逃すということもないでしょう。
2回目の大規模修繕工事後に売却する
マンションの外観の見栄えも影響するため、もし大規模修繕工事が予定されているのであれば、共用部分もきれいになった後に売り出しましょう。内覧時の印象がよくなるため、売りやすくなります。
またマンションの外観写真の見栄えもよくなるため、ホームページからの反響が増えることも期待できます。
まとめ
築30年のマンションが売れないといわれることがありますが、コツを押さえることでスムーズに売却することも可能です。この記事で紹介したコツを参考にして、マンション売却を成功させましょう。
今後、中古マンションのストック数が増えることが予想されます。築30年超のマンションの資産価値を、底値や土地値と表現することがあります。しかし今後築古マンションのストック数が増えることで、さらに築年数が古いマンションは売却が難しくなるおそれがあります。
築30年のマンションの売却を検討しているのであれば、なるべく早く行動に移し、早期売却を目指しましょう。
※1:国土交通省、住宅・建築物の耐震化について
※2:東京都、その他の建物の耐震化
※3:住宅ローンの担保評価額とは無関係な融資額の理由について徹底解説
※4:国土交通省、住宅ローン減税
※5:国土交通省、既存住宅売買瑕疵保険について