投資用や1人で住むために購入したワンルームマンション。
ライフスタイルの変化や、収益が出ていない関係で、売却を考える人は少なくありません。
「どうやって売れば良いの?」
「いくらくらいで売れる?どんな費用がかかる?」
このような疑問が生まれやすいのが、ワンルームマンションの売却です。
この記事では、ワンルームマンションの売却について、以下の4つを解説します。
- 売却の流れ
- 相場を調べる方法
- 手数料や費用
- 押さえておきたいポイント
疑問を解消して、納得のいく売却にしましょう。
ワンルームマンションを売却する際の流れ
ワンルームマンションを売却する際の流れは、以下のとおりです。
- 査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- ワンルームマンションの広告を出す
- 売買契約を結ぶ
- 住宅ローンを完済する
- ワンルームマンションを引き渡す
- 確定申告をおこなう
各ステップの詳細や期間の目安、必要書類について、詳しく見ていきましょう。
査定を依頼する
まずは、不動産会社に査定を依頼します。
売却したいワンルームマンションのエリアにある不動産会社を選びましょう。
査定の種類や内容は、以下のとおりです。
査定方法 | 内容 | 精度 |
簡易査定(机上査定) | 不動産の情報のみで査定する | 低い |
訪問査定 | 不動産の情報を基に、担当者が実際に不動産を見たうえで査定する | 高い |
不動産の情報としては、築年数や間取り、立地などが挙げられます。
簡易査定よりも、訪問査定のほうが精度は高いです。
手軽に一括で査定をおこなえるサイトもありますが、簡易査定のため精度が低くなります。
不動産会社に直接相談し、訪問査定をおこなってもらいましょう。
査定結果は不動産会社によって異なるため、複数社に依頼することが大切です。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定結果を基に不動産会社を選んだら「媒介契約」を結びます。
媒介契約とは、ワンルームマンションの売却活動や契約のサポートを、不動産会社に任せるための契約のことです。
媒介契約には、以下の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
一般媒介契約が、最も自由度が高い契約です。
買い手を自身で見つけたり、複数の不動産会社に売却を依頼したりできます。
自由度の高さは「一般媒介契約 > 専任媒介契約 > 専属専任媒介契約」の順番です。
自由度が低い媒介契約は、売却活動の報告頻度が上がるなど、手厚いサポートが受けられるというメリットがあります。
各媒介契約の特徴は、以下のとおりです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
レインズとは、不動産会社専用のネットワークのことです。
不動産の情報をレインズに登録することで、全国の不動産会社に共有され、多くの顧客に不動産を紹介してもらえます。
自由度やサポート内容から、自身にあった媒介契約を選びましょう。
ワンルームマンションの広告を出す
不動産会社と媒介契約を結んだら、ワンルームマンションの広告を出し、売却活動を始めます。
広告を出す場所は、レインズや不動産情報サイトです。
不動産情報サイトとは、一般向けの「スーモ」や「アットホーム」などを指します。
チラシをポスティングすることもあります。
広告を出す際には、売却金額を設定しなければなりません。
査定結果を参考にして、相場に合わせた売却金額にすることが大切です。
内見希望者が現れたら、不動産会社が間に入り、日程調整をおこないます。
事前に掃除をおこなうなど、丁寧に対応しましょう。
売買契約を結ぶ
ワンルームマンションの買い手が現れたら、売買契約を結びます。
個人ではなく、ワンルーム販売業者が買い手となることもあります。
契約当日の流れは、以下のとおりです。
- 買い手との挨拶
- 売買契約書や重要事項説明書の読み合わせ
- 署名捺印
- 手付金の受領
住宅ローンを完済する
住宅ローンが残っている場合、ワンルームマンションを引き渡す前に完済します。
住宅ローンを完済するには、金融機関に「繰り上げ返済」を申し込む必要があります。
申し込みや支払いの方法について、余裕を持って確認しておきましょう。
また住宅ローンを完済したら「抵当権抹消登記」によって、登記簿上から抵当権を外します。
抵当権抹消登記には、住宅ローン完済後に金融機関から届く書類が必要です。
必要書類と申請書をあわせて、マンションを管轄する法務局に提出します。
申請書は、法務局のホームページからダウンロードしてください。
抵当権抹消登記の手続きは、司法書士に依頼することも可能です。
ワンルームマンションを引き渡す
ワンルームマンションを引き渡す際におこなうことは、決済や所有権移転登記です。
買い手から、手付金の分をマイナスした購入代金を受け取ります。
所有権移転登記とは、マンションの所有者を買い手に変更することです。
手続きは、基本的に司法書士が代行します。
投資用のワンルームマンションで人に貸している場合は、所有者や家賃の振込先が変更したことを、入居者に書面で伝える必要があります。
確定申告をおこなう
以下に当てはまる場合は、確定申告をおこなう必要があります。
- ワンルームマンションの売却で利益が出た
- 控除を受けたい
確定申告の期間は、ワンルームマンションを売却した翌年の2月16日〜3月15日です。
サラリーマンの場合も、年末調整ではなく確定申告が必要になるため、気を付けましょう。
確定申告をおこなう際には、申告書を作成して税務署の窓口に提出します。
オンラインでの申告も可能です。
売却にかかる期間の目安
ワンルームマンションの査定から引き渡しまでは、一般的に半年ほどかかります。
期間の内訳は、以下のとおりです。
流れ | 必要な期間の目安 |
査定依頼〜媒介契約の締結 | 1ヶ月 |
売却活動の開始〜売買契約の締結 | 3ヶ月 |
売買契約の締結〜引き渡し | 2ヶ月 |
売却活動を始めても買い手が見つからず、契約を結ぶまでに時間がかかることもあります。
とくに住み替えの場合は、新居探しのスケジュールも考えながら売却を進めることが大切です。
売却に必要な書類
ワンルームマンションを売却する際には、以下のような書類が必要になります。
- 身分証明書(免許証・パスポートなど)
- 印鑑証明書
- 住民票
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 登記済権利書(登記識別情報)
- 住宅ローンの返済表
- マンション購入時の書類(売買契約書・重要事項説明書・パンフレットなど)
- 管理規約
- 図面
- 管理費・修繕積立金がわかる書類
- 納税通知書(固定資産税・都市計画税)
- 耐震診断・リフォームなどの履歴がわかる書類
必要書類には有効期限があるものや、発行に時間がかかるものもあります。
提出のタイミングを不動産会社に確認したうえで、余裕を持って用意しておきましょう。
また契約時には実印を使うため、用意しておいてください。
ワンルームマンションの売却相場を調べる方法
ワンルームマンションの売却相場は、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で調べられます。
土地総合情報システムを使った売却相場の調べ方は、以下のとおりです。
- トップページの「不動産取引価格情報検索」をクリック
- 時期:最新を選択
- 種類:中古マンションをクリック
- 地域:売却するワンルームマンションと同じ地域を選択
- 「この条件で検索」をクリック
- 間取りで「1R」を選択
検索結果の中から、売却するワンルームマンションに条件が似ている不動産を探してください。
所在地や面積、築年数などは並べ替えが可能です。
条件が似ている不動産の「取引総額」を、売却相場の参考にします。
不動産会社に査定を依頼する前に、売却相場を把握しておくと、査定結果を比べる際に役立ちます。
ワンルームマンションの売却にかかる手数料や費用
ワンルームマンションの売却には、以下のような費用がかかります。
費用 | 金額の目安・計算式 | 支払うタイミング |
仲介手数料 | 売却金額 × 3% + 6万円 + 消費税 | 売買契約 |
印紙税 | 1万円〜6万円 | 売買契約 |
住宅ローンの返済手数料 | 1万円〜2万円 | 住宅ローンの完済 |
登録免許税 | 2,000円 | 登記の手続き |
司法書士への報酬 | 2万円 | 引き渡し |
引っ越し費用 | 10万円〜20万円 | 引っ越し業者の利用 |
譲渡所得税 | 課税譲渡所得 × 税率 | 確定申告 |
諸費用の中でも「仲介手数料」と「譲渡所得税」は、金額が大きくなりやすいため、大まかに計算しておくことが大切です。
以下に詳しく解説します。
仲介手数料の計算方法
ワンルームマンションの売却金額が2,000万円だった場合、仲介手数料は以下のように計算します。
2,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税 = 72.6万円
仲介手数料は、不動産会社に支払う費用です。
ワンルームマンションの買い手を探してくれた(=仲介してくれた)ことに対するお礼として支払います。
売却金額が高くなるほど、仲介手数料も高くなります。
不動産売買価格 | 仲介手数料の上限額 |
400万円超 | 物件価格×3%+6万円+消費税 |
200万円超400万円以下 | 物件価格×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 物件価格×5%+消費税 |
売却金額 | 仲介手数料 |
1,000万円 | 39.6万円 |
3,000万円 | 105.6万円 |
4,000万円 | 138.6万円 |
5,000万円 | 171.6万円 |
仲介手数料の式で計算される上記の金額は、不動産会社が受け取れる上限額です。
上限額を支払うのが一般的ですが、不動産会社の中には割引してくれるところもあります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算方法は、やや複雑です。
まず、以下の式で「課税譲渡所得」を計算する必要があります。
売却金額 – 取得費 – 譲渡費用 = 課税譲渡所得
取得費とは、ワンルームマンションの購入時にかかった費用のことです。
マンション自体の購入代金や税金、リフォーム費用などが含まれます。
建物は、時間が経過すると価値が下がることから、取得費から「減価償却費」をマイナスします。
また譲渡費用とは、ワンルームマンションの売却時にかかった費用のことです。税金や仲介手数料などが含まれます。
課税譲渡所得が計算できたら、不動産の所有年数に応じて、以下の税率をかけます。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 0.315%(15%×2.1%) | 20.315% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 0.63%(30%×2.1%) | 39.63% |
※ 国税庁、短期譲渡所得の税額の計算
※ マンションを売却したら住民税が上がる?税金の計算方法と軽減する方法を解説
※ 2037年までは復興特別所得税として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と合わせて申告し、納付することになります。
課税譲渡所得に上記の税率をかけた額が、譲渡所得税です。
課税譲渡所得 × 税率 = 譲渡所得税
自身が住んでいたワンルームマンションを売却する場合、控除によって譲渡所得税が安くなる可能性があります。
シミュレーションサイトを活用したり、不動産会社に相談したりしながら、大まかな金額を把握しておきましょう。
ワンルームマンションの売却で押さえておきたいポイント
ワンルームマンションの売却で押さえておきたいポイントは、以下の3つです。
- ワンルームマンションの売却に特化した不動産会社を選ぶ
- オーバーローンにならないように気を付ける
- 需要が高いタイミングで売却する
それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
ワンルームマンションの売却に特化した不動産会社を選ぶ
売却を依頼する不動産会社は、ワンルームマンションの売却に特化したところを選びましょう。
ワンルームマンションには、以下のような特徴があります。
- 買い手のほとんどが単身者または投資目的の人
- どのマンションも間取りが似ている
この特徴から、ワンルームマンションの売却には、以下のようなノウハウが必要です。
- 限定的な買い手に響く広告を作る
- ほかのマンションとの差別化を図る
不動産会社にノウハウがないと、ほかの不動産に埋もれてしまい、買い手が付かない可能性があります。
不動産会社を探す段階で、実績や得意分野について、ホームページから確認しておくことが大切です。
査定時にも話を聞き、ワンルームマンションの売却に特化した(=ノウハウがある)不動産会社を見極めてください。
オーバーローンにならないように気を付ける
ワンルームマンションを売却する際には、オーバーローンにならないように気を付けましょう。
オーバーローンとは、不動産の売却による利益よりも、住宅ローンの残金のほうが高くなる状態のことです。
とくに購入から数年で売却する場合、住宅ローンが多く残っているケースは少なくありません。
住宅ローンは、ワンルームマンションを買い手に引き渡す前に、一括で返済する必要があります。
オーバーローンになった場合、売却後の資金計画が崩れてしまうことがあります。
売却による利益と返済額の差額を、自己資金で補わなければならないためです。
ワンルームマンションを売却する際には、はじめに住宅ローンの残金を確認しておきましょう。
オーバーローンになりそうで、自己資金が少ない場合、売却の延期も検討してください。
需要が高いタイミングで売却する
ワンルームマンションは、需要が高いタイミングで売却しましょう。
需要が高いと買い手が付きやすく、売却金額も高くなりやすいためです。
以下のタイミングは、一般的に需要が高くなります。
- 住宅ローンや不動産投資ローンの金利が低い
- エリアの人気が高まっている
- 引っ越しシーズンの2月〜3月
ただ売却のタイミングを待ちすぎると、築年数の経過によって、不動産の価値が下がってしまう可能性があります。
不動産会社に相談しながら、需要と築年数のバランスを考えることが大切です。
まとめ
ワンルームマンションの売却には、半年ほどの期間がかかります。
流れや費用を把握したうえで、余裕のあるスケジュールを立てることが大切です。
不動産会社は、査定結果を比較したうえで選んでください。
あらかじめ売却相場を調べておくと、査定結果の良し悪しがわかりやすくなります。
買い手を見つけるノウハウが豊富なのは、ワンルームマンションの売却に特化した不動産会社です。
ワンルームマンションを売却する際には、オーバーローンに注意する点と、需要が高いタイミングで売却する点も覚えておきましょう。