不動産の売却は、タイミングが重要です。
適切なタイミングは、売却の目的によって異なります。
自分に合った「売り時」を見つけ、計画的に不動産を売却することが大切です。
この記事では、自分に合った「売り時」を見つけるためのポイントとして、以下を解説します。
- 売却のタイミングを決める要素
- 不動産の売却にかかる期間と流れ
- 新居の購入にかかる期間と流れ
- 不動産を売却するタイミングの決め方
売却のタイミングを決めたあとに、不動産会社と売却を進める際のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
不動産売却のタイミングを決める5つの要素
売却のタイミングを決める要素は、以下の5つです。
- 築年数
- 周辺環境
- 金利
- 税金
- 季節
それぞれの要素ごとに「売り時」があるため、売却のタイミングを決める前に、頭に入れておくことが大切です。
ひとつずつ詳しく解説していきます。
築年数
不動産は、一般的に築年数が古くなるほど価値が下がります。
築年数の面では、できるだけ早いタイミングで売却したほうが良いでしょう。
早いタイミングで売却すると買い手が付きやすく、売却価格も高くなります。
木造の一戸建ての場合、鉄筋コンクリート造のマンションよりも耐用年数が短く、価値が下がりやすいです。
耐用年数とは、不動産の価値を計算するためのものです。
住宅の耐用年数は、木造が22年、鉄筋コンクリート造が47年と定められています。
耐用年数を超えた不動産は、使えなくなるというわけではありません。
しかし不動産としての価値は無いものとみなされてしまいます。
周辺環境
不動産の周辺環境は売却価格を左右するため、売却のタイミングを決める重要な要素です。
たとえば不動産の周辺で再開発が計画されている場合、現在よりも再開発後のほうが相場が上がる可能性があります。
以下のような要因により、エリアの人気が高まりやすいためです。
- 新たな商業施設・学校・病院が建てられ、利便性が上がる
- 道路の整備により住環境が良くなる
相場が上がってから売却することで、不動産を高く売却できる可能性が高まります。
売却を急いでいない場合は、じっくり待つことも視野に入れてみてください。
一方で、以下のような状況の場合、相場が下がっていく可能性があります。
- 不動産が建つエリアで過疎化が進んでいる
- 生活に必要な施設がなくなってしまう
相場が下がっていく可能性がある場合は、早めに売却したほうが良いでしょう。
金利
金利の状況によって、不動産を売却するタイミングを決めるケースもあります。
一般的に、金利が低いときのほうが、不動産は売却しやすくなります。
住宅ローンにかかる利息が少なくなり、返済総額が安くなることで、不動産を購入する人が増えるためです。
不動産の買い手が増えると、売却価格などの条件も良くなります。
そのため「金利が低い = 売り時」と言えます。
金利を予測することは難しいですが「現時点で金利がどの程度なのか」は把握しておきましょう。
税金
以下のような税金関係も、不動産を売却するタイミングを決める要素のひとつです。
- 軽減税率
- 控除の特例
たとえば、不動産の売却による利益に課せられる「譲渡所得税」は、不動産の所有期間が長いほど税率が低くなります。※2
具体的には以下のとおりです。
不動産の所有期間 | 譲渡所得税の税率 |
5年以下 | 39.63% |
5年超〜10年以下 | 20.315% |
10年超 | 14.21%(6,000万円超の部分は20.315%) |
さらに「3,000万円の特別控除の特例」など、譲渡所得税から一定の金額が控除される特例もあります。
軽減税率や特例には、適用期限が設けられているケースがよく見られます。
税負担が小さいタイミングで不動産を売却するためには、軽減税率や特例について理解しておくことが大切です。
季節
不動産を売却するタイミングを決める要素として、季節も挙げられます。
春は進学や人事異動が多く、不動産の需要が高まります。
新生活に向けて4月には引っ越しを済ませておきたい人が多いため、2月〜3月が売り時です。※3
一方で真夏や真冬は、以下の理由から引っ越す人が少ないため、不動産の需要が低くなります。
- 内見するには暑すぎる、または寒すぎる
- お盆や年末年始などのイベントが多い
- 人事異動が少ない
不動産の需要が高い季節に売却活動をおこなうと、不動産を高い価格かつスピーディーに売却できる可能性があります。
不動産の売却・新居の購入にかかる期間と流れ
不動産を売却するタイミングを決める際には、売却にかかる期間と流れを把握しておくことが大切です。
期間と流れを把握することで、売却のタイミングだけでなく「今やるべきこと」も見えてきます。
また住み替えを検討している場合は、新居の購入にかかる期間や流れもあわせて把握しておきましょう。
売却と購入を計画的に進め、スムーズに住み替えるためです。
売却と購入にかかる期間や流れ、新居を探し始めるタイミングについて、以下に詳しく解説していきます。
不動産の売却にかかる期間・流れ
不動産の売却にかかる期間の目安は、半年から1年ほどです。
不動産は以下の流れで売却します。
- 不動産の査定をおこなう
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動(広告・内見)をおこなう
- 売買契約を結ぶ
- 買い手に不動産を引き渡す
不動産を査定してから、売却活動を始めるまでに1ヶ月ほどかかります。
最も個人差が出るのは、売却活動を始めて、売買契約を結ぶまでの期間です。
平均は3ヶ月程度ですが、すぐに買い手が見つかるケースもあれば、1年以上かかるケースもあります。※4
また、売買契約を結んでから引き渡しまでの期間は、1ヶ月〜2ヶ月ほどが目安です。
新居の購入にかかる期間・流れ
不動産を購入してから年月が経っている場合、購入時の記憶があいまいになっていることもあります。
この機会に、おさらいしておきましょう。
不動産を購入する際の流れは、以下のとおりです。
- 購入したい不動産の条件をまとめる
- 不動産会社に探してもらう
- 気になる不動産を内見する
- 不動産の購入を申し込む
- 住宅ローンの事前審査を受ける
- 売買契約を結ぶ
- 住宅ローンを申し込む
- 決済・不動産の鍵を受け取る(引き渡し)
良い不動産が見つかるまでの期間は、人によって大きく異なります。
そのため、スケジュールに余裕を持たせて探し始めることが大切です。
また契約から引き渡しまでの期間は、以下のとおりです。※5
- 注文住宅:8ヶ月〜1年ほど
- 建売や中古住宅(すでに建物がある場合):1ヶ月〜3ヶ月ほど
新築マンションの場合は、マンションが完成する時期に左右されます。
売却と並行して新居を探し始めるタイミング
住み替えの場合、売却活動の開始と同時に、新居を探し始めましょう。
なぜなら不動産の売却と購入は、同じくらいの期間がかかる可能性が高いためです。
売却と購入のタイミングがずれてしまった場合、以下のようなことが考えられます。
- 不動産の引き渡し日を延ばす交渉をしなければならない
- 仮住まいの賃貸を探さなければならない
売却による利益が確定したあとに、新居を購入する予算を考えたい場合も、前もって不動産を調べておきましょう。
さまざまな不動産を見ることで、相場が掴めるため、適切な新居を選べるようになります。
また、不動産の売却と新居探しを同時におこなう場合は、同じ不動産会社に依頼するとスムーズです。
不動産を売却するタイミングの決め方
売却のタイミングを決める要素や、売却・購入の期間と流れを把握したら、不動産を売却するタイミングを決めましょう。
不動産の売却は「何を重視するか」によって、適切なタイミングが変わります。
この章では、以下のパターンに分けて、適切なタイミングを解説します。
- スピードを重視するなら
- 利益を重視するなら
- ライフプランを重視するなら
それぞれ詳しく見ていきましょう。
スピードを重視するなら
不動産の売却でスピードを重視するなら、不動産の需要が高いタイミングで売却しましょう。
先に解説した「売却のタイミングを決める5つの要素」の中では、季節が大切です。
不動産の需要が高い2月〜3月は、買い手が付きやすい傾向にあります。
4月頃までに売却できる可能性が高いため、売却後のスケジュールも立てやすくなります。
買い手に見つけてもらいやすくするためには、2月〜3月に「新着」として、不動産情報サイトに掲載されることが大切です。
前年の秋までには不動産会社に相談し、計画的に売り出しましょう。
利益を重視するなら
不動産の売却で利益を重視するなら、不動産が高く売れるタイミングで売却しましょう。
先に解説した「売却のタイミングを決める5つの要素」の中では、周辺環境・金利・税金が大切です。
以下のような場合、今すぐに売却するのではなく、少し様子をみましょう。
- 不動産の周辺で、再開発や新たな施設の建設が予定されている
- 金利が高い
- 活用できる軽減税率や控除がない
現在よりも数ヶ月・数年先のほうが、不動産の価値や相場が上がったり、節税効果が高くなったりする可能性があります。
築年数の経過による価値の低下も踏まえたうえで「いつまで待つか」を考えることも大切です。
また以下のような場合は、今すぐに売却したほうが良いでしょう。
- 周辺環境に変化がない、または悪化が予想される
- 金利が低い
- 軽減税率や控除を活用できる
とくに住宅ローンが残っている場合、売却による利益が低いと、住宅ローンを完済できません。
家計や売却後の生活も考えると、利益を重視しなければならないケースは多いのです。
ライフプランを重視するなら
不動産の売却でライフプランを重視するなら、希望時期から逆算したタイミングで売却しましょう。
売却には半年ほどかかるケースが多いです。
以下のようなライフイベントの時期を書き出したうえで、売却時期を逆算します。
- 子供の進学や独立
- 転職
- 定年退職
なかなか買い手が見つからない可能性もあるため、余裕を持って動くことが大切です。
住み替えの場合、新居探しや引っ越しの時期についても、不動産会社に相談しておきましょう。
不動産会社と売却を進める際のポイント
不動産を売却するタイミングが決まったら、希望どおりに売却できるように動きましょう。
不動産会社に任せきりにするのではなく、主体的に動くことが大切です。
この章では、不動産会社と売却を進める際のポイントとして、以下の3つを解説します。
- 不動産会社に相談するタイミング
- 不動産会社の選び方
- スムーズな売却のための工夫
それぞれ見ていきましょう。
不動産会社に相談するタイミング
不動産会社に相談するタイミングは「売却の希望時期を決めたとき」です。
時期が先の場合でも、まずは相談しましょう。
不動産会社は、売却の希望時期に基づいて、売却方法を提案してくれることが多いです。
不動産を売却しやすいタイミングは、エリアによって変わる可能性もあります。
不動産会社はエリアの情報に詳しいため、相談することで「今やるべきこと」が明確になります。
また売却を依頼する不動産会社は、複数社を比較したうえで決めることが大切です。
売却活動の前に、不動産会社を選ぶ期間も必要なため、早めに動きましょう。
不動産会社の選び方
不動産会社を複数社の中から選ぶときには、以下のポイントを比べましょう。
- 売却実績が多いか
- 不動産の広告方法は適切か
- サービス内容が自分に合っているか
- 担当者の対応に安心できるか
広告方法としては、不動産情報サイトやレインズへの登録、チラシのポスティングが挙げられます。
不動産情報サイトは、一般向けの「SUUMO(スーモ)」や「at home(アットホーム)」をイメージしてください。
レインズは、不動産会社専用のネットワークのことで、顧客に不動産を紹介する際に使います。
広告の掲載イメージを教えてもらい「不動産の魅力を引き出してもらえるか」を確かめることが大切です。
サービス内容は、仮住まいや引っ越しのサポートから買取保証まで、不動産会社によってさまざまです。
サービスによって、不動産の売却にかかる総費用やリスクが変わるため、内容をよく見ておきましょう。
また以下のような観点から、担当者の対応も確認してください。
- 要望を汲み取ってくれるか
- 質問に対して的確に回答してくれるか
- 連絡のスピードに不安はないか
不動産を希望どおりに売却できるかは、不動産会社次第です。
安心して売却を任せられる不動産会社を選びましょう。
スムーズな売却のための工夫
不動産をスムーズに売却するためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 相場よりも高すぎず、安すぎない価格を設定する
- 壁のひび割れや設備の故障などがあれば、不動産会社と相談の上修理しておくを直す
- 広告に多くの写真を載せる
- 余裕を持って必要書類を用意する
価格が相場と離れていたり、建物の劣化が目立っていたりすると、買い手が付きにくくなります。
不動産が買い手の候補から外されてしまわないように、価格や建物の状態を整えたうえで、広告を掲載してください。
買い手が不動産の購入を検討する際には、売却条件だけでなく広告の写真も確認します。
明るくきれいに撮れた写真を多く載せておくことで、イメージが湧きやすくなり、内見につながる可能性が高まります。
また査定や売買契約の際には、多くの書類が必要です。
発行に時間がかかる書類もあるため「どのタイミングで、どの書類が必要になるのか」を把握しておきましょう。
余裕を持って書類を用意しておくことで、慌てずスムーズに売却を進められます。
まとめ
不動産を売却するタイミングを決める要素は「築年数・周辺環境・金利・税金・季節」です。
スピードや利益など、売却で重視するポイントによって、参考にする要素は異なります。
不動産の売却や新居の購入にかかる期間・流れを把握したうえで、自分に合った「売り時」を見つけることが大切です。
売却のタイミングを決めたら、不動産会社に相談したうえで売却の計画を立てます。
必ず複数社に相談し、安心して任せられる不動産会社を選んでください。
スムーズな売却のための工夫も忘れずに、希望のタイミングで売却できるようにしましょう。
※1:国税庁、主な減価償却資産の耐用年数表
※2:国税庁、土地や建物を売ったとき
※3:レインズ Market Watch サマリーレポート. 2023 年 3 月度
※4:首都圏不動産流通市場の動向(2022年度)
※5:SUUMO、購入から入居まではどれくらいの期間が必要?