不動産の売却を検討する際「ベストなタイミングはいつなのだろう」「できる限り高く家を売りたい」と考える方もいるでしょう。
反対に売却すべきではない時期に手放してしまい、不動産売買で損をするのは避けたいと思うときもあるのではないでしょうか。
不動産を売却するタイミングは築年数や税金、ライフスタイルなどさまざまな要因によって変化するため、総合的に判断する必要があります。
本記事では、不動産の売却時期を測る要素や売るべきではないタイミング、進める際のポイントや注意点などを解説します。
不動産の売却を検討している方や、できる限り物件を高く売りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
不動産売却のベストタイミングは人によって異なる
不動産を売却する際のベストタイミングは人によって異なり、自身に最適な時期を見極める必要があります。
家族構成やライフスタイル、税金の優遇措置を受けられるかなどが一人一人異なるため、家を売却したほうがよい時期も人それぞれです。
たとえば、購入したマンションの価格が上昇しているときは、売却せずに住み続けるのも選択肢の一つです。
次章から不動産売却のタイミングを測る要素を解説するため、できる限り高く家を売りたい方は参考にして時期を決めてください。
今家を売るべきか?不動産売却のタイミングを測る7つの要素
不動産の売却のタイミングを決める要素は、以下の7つです。
- 不動産価格指数
- 築年数
- 周辺環境
- 金利
- 税金
- 季節
- ライフスタイル
それぞれの要素ごとに「売り時」があるため、売却のタイミングを決める前に、頭に入れておいてください。
不動産売却のタイミングを測る要素をそれぞれ詳しく解説します。
不動産価格指数
家を売るベストなタイミングを知りたいときは、国土交通省が発表している不動産価格指数を確認しましょう。
不動産価格指数は、不動産価格の動向を数字化したデータがまとめられており、大まかな傾向がわかります。
令和7年5月30日に公表された不動産価格指数は、次のとおりです。

上記のとおり、マンションは不動産価格が右肩上がりですが、戸建ての指標は横ばいの状態が続いています。
基本的に不動産価格指標が右肩上がりであれば待つのが有利です。
横ばいか右肩下がりであれば早く売却したほうがよいとされています。
ただし、不動産価格は地域や築年数などによっても異なるため、大まかな傾向を把握するのに役立つ指標だと知っておきましょう。
築年数
一般的に不動産の価値は築年数が古くなるほど下がり、次第に売れにくくなります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」で公表されている成約率(%)は次のとおりです。
中古戸建て | 中古マンション | |||
2023年 | 2024年 | 2023年 | 2024年 | |
築0〜5年 | 18.7 | 19.2 | 30.2 | 31.9 |
築6〜10年 | 25.1 | 24.6 | 32.1 | 35.6 |
築11〜15年 | 25.3 | 26.0 | 31.1 | 36.2 |
築16〜20年 | 22.6 | 22.1 | 24.8 | 26.7 |
築21〜25年 | 22.1 | 22.2 | 20.5 | 23.2 |
築26〜30年 | 19.7 | 18.9 | 15.0 | 16.6 |
築31〜35年 | 16.6 | 16.4 | 11.0 | 11.6 |
築36〜40年 | 17.5 | 15.0 | 11.8 | 11.1 |
築41年〜 | 13.8 | 13.8 | 12.0 | 13.2 |
戸建てとマンションでは傾向が異なりますが、一般的には築浅のほうが成約率が高い傾向があり、築26年をすぎると売れにくくなることがわかります。
築年数の面からみれば、できる限り早めのタイミングで売却したほうがよいでしょう。

周辺環境
不動産の周辺環境は売買価格を左右するため、売却のタイミングを決める重要な要素です。相場を左右する主な要因は、次のようなものがあります。
相場が上がる要因 | 相場が下がる要因 |
新たな商業施設の建設予定がある道路の整備により住環境がよくなる鉄道の駅の建設予定がある | 過疎化が進んでいるスーパーや病院、学校などの生活インフラが撤退する災害のリスクがある |
相場の上昇が予想される場合は、不動産の売却を一定期間待つのも選択肢です。
一方で相場が下がる可能性が高い不動産は、早めのタイミングで売却したほうがよいでしょう。
不動産の売却を検討する際は、周辺環境の変化によって物件の価値が上がりそうか下がりそうかを意識してください。
金利
金利の状況によって、不動産を売却するタイミングを決めるケースもあります。
一般的に、金利が低いときのほうが、不動産は売却しやすくなります。
住宅ローンにかかる利息が少なくなり、返済総額が安くなることで、不動産を購入する人が増えるためです。
不動産の買い手が増えると、売却価格などの条件も良くなります。
そのため「金利が低い = 売り時」と言えます。
金利を予測することは難しいですが「現時点で金利がどの程度なのか」は把握しておきましょう。
税金
以下のような税金関係も、不動産を売却するタイミングを決める要素のひとつです。
- 軽減税率
- 控除の特例
たとえば、不動産の売却による利益に課せられる「譲渡所得税」は、不動産の所有期間が長いほど税率が低くなります。
具体的には以下のとおりです。
不動産の所有期間 | 譲渡所得税の税率 |
5年以下 | 39.63% |
5年超〜10年以下 | 20.315% |
10年超 ※ | 14.21%(6,000万円超の部分は20.315%) |
さらに「3,000万円の特別控除の特例」など、譲渡所得税から一定の金額が控除される特例もあります。
軽減税率や特例には、適用期限が設けられているケースがよく見られます。
税負担が小さいタイミングで不動産を売却するためには、軽減税率や特例について理解しておくことが大切です。
季節
不動産を売却するタイミングを決める要素として、季節も挙げられます。
春は進学や人事異動が多く、不動産の需要が高まります。
新生活に向けて4月には引っ越しを済ませておきたい人が多いため、2月〜3月は売り時です。
一方で真夏や真冬は、内見をするには暑かったり寒かったりするため、不動産の需要が低くなります。
またお盆や年末年始などイベントが多い、人事異動が少ないなどの時期も、不動産が売れにくくなる季節です。
上記のような時期を避け、不動産の需要が高い季節に売却活動をおこなうと、不動産を高い価格かつスピーディーに売却できる可能性があります。
ライフスタイル
所有している不動産を売却するベストタイミングは、自身や家族のライフスタイルも関係してきます。
よい物件に住み替える場合は売却を急ぎませんが、誰も住んでいない相続物件を処分したいときは、できる限り早く売りたいケースも多いでしょう。
他にも結婚や転勤、離婚や返済が困難になったなど、不動産を売却する理由によってベストなタイミングが異なります。
不測の事態が発生して家を売らなければならないときもあるため、状況にあわせて不動産を売却する時期を決めてください。
不動産を売却すべきでないタイミング
不動産を売却する際にベストなタイミングもあれば、避けるべき時期もあります。
家を売却しないほうがよいタイミングを解説するため、損をしたくないと考える方は参考にしてください。
相場価格の上昇が予想されるとき
「不動産価格指数」の章で解説したとおり、不動産の価格が上昇しているときに家を売却すると、損をする可能性があります。
物件の価値が右肩上がりであれば、上昇が落ち着くまで待って売却したほうが高く売れ、手元のお金を増やせる可能性があるからです。
自宅の相場価格が上がっている、または上昇が予想される場合は、できる限り高く売れるタイミングを見極める必要があります。
ただし、不動産価格の相場は読みにくいため、信頼できる不動産会社にアドバイスをもらいながら進めてください。
税制優遇が受けられない時期
解説したとおり、不動産の所有期間に応じて譲渡所得税の税率が異なります。
所有期間が5年以下のタイミングで家を売却すると、約40%もの税金がかかるため注意が必要です。
不動産の所有期間が5年超〜10年以下になれば、半分程度の税金で済みます。余程の理由がなければ、5年以下での家の売却は避けたほうがよいでしょう。
ただし、税金が発生するのは売却したときに利益(譲渡所得)が出るときのみのため、購入した価格より安い金額で売る場合は関係ありません。
不動産を売却するタイミングの決め方
売却のタイミングを決める要素や、売却・購入の期間と流れを把握したら、不動産を売却するタイミングを決めましょう。
不動産の売却は「何を重視するか」によって、適切なタイミングが変わります。
この章では、以下のパターンに分けて、適切なタイミングを解説します。
- スピードを重視する場合
- 利益を重視する場合
- ライフプランを重視する場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
スピードを重視する場合
不動産の売却でスピードを重視するなら、不動産の需要が高いタイミングで売却しましょう。
すでに解説したとおり、不動産の需要が高い2月〜3月は、買い手が付きやすい傾向にあるため、早く売りたい方にはおすすめです。
なお、買い手に見つけてもらいやすくするためには、2月〜3月に「新着」として、不動産情報サイトに掲載されることが大切です。
前年の秋までには不動産会社に相談し、計画的に売り出しましょう。
利益を重視する場合
物件の売却で利益を重視したいと考えている方は、築年数や周辺環境、金利や税金の面から売る時期を決めましょう。
周辺環境がよくなる、税制優遇が受けられないなどの場合は、一定期間売却を待つのも選択肢の一つです。
反対に相場が下がり続けている、すでに軽減税率の特例を利用できるなどの方は、早めのタイミングでの売却が適しています。
不動産の売却でできる限り利益を残したい場合は、上記の要素を意識して物件を売る時期を見極めましょう。
ライフプランを重視する場合
不動産の売却でライフプランを重視するなら、希望時期から逆算したタイミングで売却しましょう。
まず、次のようなライフイベントの時期を書き出します。
- 子供の進学や独立
- 転職
- 定年退職
売却には半年ほどかかるケースが多いです。それを前提にして、売却時期を逆算しましょう。
なかなか買い手が見つからない可能性もあるため、余裕を持って動くことが大切です。
住み替えの場合、新居探しや引っ越しの時期についても、不動産会社に相談しておきましょう。
不動産の売却・新居の購入にかかる期間と流れ
不動産を売却するタイミングを決める際には、売却にかかる期間と流れを把握しておくことが大切です。
期間と流れを把握することで、売却のタイミングだけでなく「今やるべきこと」も見えてきます。
また住み替えを検討している場合は、新居の購入にかかる期間や流れもあわせて把握しておきましょう。
売却と購入にかかる期間や流れ、新居を探し始めるタイミングについて、以下に詳しく解説していきます。
不動産の売却にかかる期間・流れ
不動産の売却にかかる期間の目安は、半年から1年ほどです。
不動産は以下の流れで売却します。
- 不動産の査定をおこなう
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動(広告・内見)をおこなう
- 売買契約を結ぶ
- 買い手に不動産を引き渡す
不動産を査定してから売却活動を始めるまでに1ヶ月ほどかかりますが、最も個人差が出るのは、売却活動を始めてから契約を結ぶまでの期間です。
平均は3ヶ月程度ですが、すぐに買い手が見つかるケースもあれば、1年以上かかるケースもあります。
売買契約を結んでから引き渡しまでの期間は、1ヶ月〜2ヶ月ほどが目安です。
新居の購入にかかる期間・流れ
不動産を購入してから年月が経っている場合、購入時の記憶があいまいになっていることもあるでしょう。
そこで、不動産を購入するまでの流れをおさらいします。簡潔に述べると、次のとおりです。
- 購入したい不動産の条件をまとめる
- 不動産会社に探してもらう
- 気になる不動産を内見する
- 不動産の購入を申し込む
- 住宅ローンの事前審査を受ける
- 売買契約を結ぶ
- 住宅ローンを申し込む
- 決済・不動産の鍵を受け取る(引き渡し)
また契約から引き渡しまでの期間は、次のとおりです。
- 注文住宅:8ヶ月〜1年ほど
- 建売や中古住宅(すでに建物がある場合):1ヶ月〜3ヶ月ほど
新築マンションの場合は、建物が完成する時期に左右されるため、入居時期を明確にしたうえで、不動産会社と相談しながら進めてください。
売却と並行して新居を探し始めるタイミング
住み替えの場合、売却活動の開始と同時に、新居を探し始めましょう。
なぜなら不動産の売却と購入は、同じくらいの期間がかかる可能性が高いためです。
売却と購入のタイミングがずれてしまった場合、次のようなことが考えられます。
- 不動産の引き渡し日を延ばす交渉をしなければならない
- 仮住まいの賃貸を探さなければならない
売却による利益が確定したあとに、新居を購入する予算を考えたい場合も、前もって自身が現在住んでいる不動産の相場価格を調べておきましょう。
さまざまな不動産を見ることで、相場が掴めるため、適切な新居を選べるようになります。
また、不動産の売却と新居探しを同時におこなう場合は、同じ不動産会社に依頼するとスムーズです。
不動産会社と売却を進める際のポイント
不動産を売却するタイミングが決まったら、希望どおりに売却できるように動きましょう。
不動産会社に任せきりにするのではなく、主体的に動くことが大切です。
この章では、不動産会社と売却を進める際のポイントとして、以下の3つを解説します。
- 不動産会社に相談する
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
- 情報収集・事前準備をしておく
それぞれ見ていきましょう。
まずは不動産会社に相談する
不動産会社に相談するタイミングは「売却の希望時期を決めたとき」です。
不動産会社は、売却の希望時期に基づいて、売却方法を提案してくれることが多いため、時期が少し先の場合でも早めに相談しておくと安心です。
また、不動産を売却しやすいタイミングは、エリアによって変わる可能性もあります。
不動産会社はエリアの情報に詳しいため、相談することで「今やるべきこと」が明確になることもあるでしょう。
売却活動の前に、不動産会社を選ぶ期間も必要なため、早めに動きましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
信頼できる不動産会社を選べれば、物件の売却をスムーズに進められます。
不動産会社を複数社の中から選ぶときには、以下のポイントを比べましょう。
- 売却実績が多いか
- 不動産の広告方法は適切か
- サービス内容が自分に合っているか
- 担当者の対応に安心できるか
とくに不動産会社の担当者とのやり取りは長期間続くため、対応が誠実で信頼できるかは大切なチェック項目です。
また不動産の売却が得意で実績の多い業者を選ぶと、さまざまな相談も気軽にでき、安心して物件の売却を任せられます。

情報収集・事前準備をしておく
不動産の売却をする際は、業者にすべて任せるのではなく、情報収集や事前準備をしておきましょう。
物件の相場や売却の大まかな流れ、発生する諸費用などを把握して、準備しておけばスムーズに売却活動を進められます。
不動産の相場は、レインズマーケットインフォメーションや不動産情報ライブラリで、誰でも調べられます。
他にも必要になる書類を事前に準備しておけば、提出を依頼されたときに慌てずに、売却の手続きができるでしょう。
不動産を売却する際の注意点
所有している、または相続した不動産を売却する際の注意点を紹介します。
紹介するポイントに注意して、不動産の売却をスムーズに進めてください。
故人名義の場合は相続登記が必要
不動産の名義が亡くなった方の場合、売却するために相続登記をする必要があります。
相続登記とは登記簿上の所有者を故人から相続人に名義変更する手続きを指し、法務局で所有権移転登記申請を提出します。
相続した不動産は3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が課される可能性があるため注意が必要です。
相続登記のやり方がわからない、申請する時間がないなどの方は、司法書士事務所に相談しましょう。
待ちすぎるとタイミングを逃す
解説してきたとおり、不動産を売却するタイミングはさまざまな要素が関係します。
金利が下がったり、物件の価格が上昇したりするのを待ちすぎていると、売り時を逃す可能性があります。
売却のタイミングを自身で測るのもよいですが、不動産の知識や経験が豊富なプロの力を借りるのもおすすめです。
不動産の売却時期は信頼できる不動産会社の担当と相談して、アドバイスを受けながら進めるとよいでしょう。
不動産売却のタイミングに関するよくある質問
不動産売却のタイミングに関して、よくある質問と回答をまとめました。
相続した家や投資用不動産を売るタイミングを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
相続した家を売るタイミングはいつがよい?
相続した家を売るのによいタイミングは、相続したときから3年以内です。3年以内であれば、空き家の譲渡所得税3,000万円の特別控除を利用できます。
また相続した家を売却して、譲渡所得税が発生した場合に利用できる取得費の特例は、相続開始から3年10か月以内に譲渡していれば利用可能です。
相続した家を売るタイミングは3年以内と認識しておき、控除や特例の利用は専門家のアドバイスを受けながら進めてください。
家の売却でやってはいけないことは?
家の売却でやってはいけないことの一例は、次のとおりです。
- 独断でリフォームする
- 自身で相場を把握していない
- 1社にしか査定依頼をしていない
- 相場からかけ離れた価格を設定する
- すべて不動産会社に任せようとする
相場やかかる諸費用など自身で調べ、信頼できる不動産会社と相談しながら売却活動をすれば、トラブルは回避しやすくなります。
まずは3〜5社に査定を依頼し、担当者が信頼できて関係性を築けそうな不動産会社を選んでください。
投資用不動産を売るベストなタイミングは?
投資用の不動産を売るベストなタイミングは、次のとおりです。
ベストなタイミング | 理由 |
物件の価格が上昇しているとき | 高く売れる |
金利が低いとき | 購入検討者が増える |
減価償却が終わる前 | 終了したら税金が増える |
保有期間が5年超 | 譲渡所得税率が下がる |
またマンションの場合、大規模修繕の検討がはじまると修繕積立金の値上げや一時金の徴収が発生し、購入を見送る方が増える傾向があります。
そのため、大規模修繕の検討がはじまる前に、投資用不動産の売却活動をすると売れやすいでしょう。
まとめ
不動産売却のタイミングを測る要素や売るべきではない時期、意識したいポイントや注意点などを解説しました。
家を売却するベストなタイミングは人によって異なるため、築年数や金利などのさまざまな要素から総合的に判断する必要があります。
ただし、不動産の価格の上昇が予想されるときや税制優遇が受けられない時期は、節税の観点では、税制優遇が受けられる時期まで待つのが得策です。
不動産をよいタイミングで売却したいと考える方は、本記事の内容を参考にして、信頼できる不動産会社にも相談しながら売却活動をしましょう。
※1:国税庁、主な減価償却資産の耐用年数表
※2:国税庁、土地や建物を売ったとき
※3:レインズ Market Watch サマリーレポート. 2023 年 3 月度
※4:首都圏不動産流通市場の動向(2022年度)
※5:SUUMO、購入から入居まではどれくらいの期間が必要?