マンションを売却する前に、まずは価格の目安を把握しておきたいと考える方は少なくありません。
一方で「査定だけを依頼すると、売却を強く勧められるのでは」と不安を抱くケースもあります。
結論を先にお伝えすると、不動産会社へ査定のみを依頼しても問題ありません。
この記事では、マンション査定を依頼する際に押さえておきたい基本情報や注意点を解説します。
さらに、売却までの一般的な流れや必要となる費用についても整理しています。
マンションの売却を検討している方はもちろん、まずは相場を知りたい方にも役立つ内容です。
判断材料の一つとして、ぜひ最後までご覧ください。
マンションは査定だけを依頼してもよい?
マンションの価格を把握するために、売却を前提とせず査定だけを依頼したいと考える方も多くいます。
不動産会社への査定依頼は、売却を予定していない場合でも問題ありません。
ただし、査定の目的や内容によっては注意点もあるため、事前に正しく理解しておくことが重要です。
ここでは「査定後に売却する必要があるのか」「どのような理由で査定だけを依頼する人がいるのか」など、事前に押さえておきたいポイントを紹介します。
査定後に売却が必要とは限らない
不動産会社への査定依頼は、必ずしも売却を前提とするものではありません。
査定は物件の価値を把握するための手段で、査定後に売却を断っても問題はない仕組みです。
実際に、次章の「査定理由はそれぞれ異なる」で解説するような理由で査定を依頼する人も多くいます。
信頼できる不動産会社を選べば、売却の意思がなくても対応してもらえます。
査定理由はそれぞれ異なる
マンション査定を依頼する理由は、売却以外にもさまざまです。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
- 将来的な住み替えを検討している
- 相続や離婚に備えて資産価値を把握しておきたい
- 住宅ローンの残債と比較して売却の可能性を知りたい
- 市場動向を確認し、売却時期の判断材料にしたい
査定の依頼理由は、必ずしも売却と直結するものではありません。
目的に応じて柔軟に利用できる点も、不動産査定の活用価値といえるでしょう。
査定だけの場合は原則無料
不動産会社に査定を依頼するだけで費用が発生することは、原則としてありません。
一般的な「簡易査定(机上査定)」や「訪問査定」といった方法は、どちらも無料で提供されています。
ただし、特殊なケースや有料サービスを希望する場合は例外もあるため、事前に費用の有無を確認しておくと安心です。
マンション査定はおもに4種類
マンションの査定方法には、主に次の4種類があります。
査定方法 | 特徴 | 向いているケース |
AI査定 | ・不動産情報が蓄積されたビッグデータをもとに自動で価格を算出 ・最短数分で結果が得られる | とにかく早く概算価格を知りたいとき |
机上査定 (簡易査定) | ・訪問不要でおこなう査定方法 ・物件資料や周辺相場から算出する | 概要を把握したいが訪問対応は避けたいとき |
訪問査定 | ・担当者が現地を確認して査定する ・室内状況や設備も踏まえて精度の高い価格を提示 | 実際に売却を検討しているとき |
一括査定 | ・少ない工数で複数社の査定額を把握できる | 多くの会社の価格やサービスを比較したいとき |
いずれも無料で依頼できますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。特徴を把握したうえで、自分の希望や条件に合うものを選択するようにしましょう。
AI(匿名)査定
AI技術を活用した査定は、手軽におおよそのマンション価格を把握する方法の一つです。
市場のデータや過去の取引事例をもとに、人工知能が専有面積や階数、方角などの条件を加味して査定価格を算出します。
AI査定は、不動産会社や不動産ポータルサイトで提供されており、わずか1分程度の入力で結果が確認できる点が特長です。
入力時に必要な個人情報も、電話番号やメールアドレスのみで済むケースが多く、匿名性を保ちながら依頼できます。
ただし、実際の物件を確認せずに算出するため、訪問査定と比べて精度が低くなる可能性は避けられません。
正確な売却価格を把握したい場合は、AI査定の結果を参考にしたうえで訪問査定も併用する方法が有効です。
簡易査定(机上査定)
机上査定は、実際にマンションを調査せずに、物件情報のみで査定価格を算出する方法です。
匿名で依頼できる場合もあり、訪問査定と比べて手間がかからないことから、簡易査定とも呼ばれます。
一定の情報を入力するのにかかる時間は1分程度と簡単で、AI査定と同じように手軽に査定依頼できます。
査定結果は早ければ当日、遅くても1週間程度で受け取ることが可能です。
ただし、物件を直接確認しないため、訪問査定に比べて精度はやや低くなります。
相場に近い価格を把握したい場合は、複数の不動産会社に依頼して結果を比較するとよいでしょう。
訪問査定
訪問査定は、担当者が実際にマンションを訪れ、詳細な調査を行ったうえで査定価格を算出する方法です。
室内の状態や設備、周辺環境などを細かく確認するため、机上査定やAI査定よりも精度が高くなります。
調査には1時間程度かかる場合が多く、査定書を受け取るまでに数日から1週間程度かかるのが一般的です。
査定価格を早く知りたい方は、時間がかかりすぎると感じることもあるでしょう。
一括査定
一括査定とは、不動産ポータルサイトなどを経由し、複数の不動産会社に査定依頼する方法です。
一度の情報入力で複数社に机上査定や訪問査定を依頼できるため、どこへ依頼したらよいのか分からない人や、査定の時間を短縮したい方におすすめです。
なお、一括査定を利用した場合、各不動産会社に個人情報が伝わり、電話やメールで連絡が入る点には注意してください。
依頼先が多すぎると対応に時間がかかるため、依頼する会社を選定したうえで申し込みましょう。

マンションの査定だけを依頼する場合の注意点
不動産会社へ査定を依頼する際は、いくつかの点に注意することが大切です。
とくに意識しておきたいポイントは、次の6点です。
- 不動産会社によって査定額が異なる
- 査定額で売却できるとは限らない
- 査定額が高いだけで不動産会社を選ばない
- 査定依頼先が多すぎると電話対応が大変
- 査定だけという意思を表示しない
- 将来売却する際は査定を受け直す必要がある
それぞれの注意点を理解したうえで、適切に査定を活用しましょう。

不動産会社によって査定額が異なる
マンションの査定価格は、不動産会社によって異なります。
同じ会社でも、机上査定と訪問査定では結果が異なるケースも多いです。
参考にするデータの種類や販売戦略、地域での取引実績が会社ごとに違うため、査定額に差が生じるのは珍しくありません。
相場の目安を正確に把握したい場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、各社の査定額や算出根拠を比較してみましょう。
査定額で売却できるとは限らない
査定価格は、あくまで「売却想定価格」として提示されるもので、必ずしも査定額のとおりに売却できるとは限りません。
実際の売却価格は、買主の希望や市場動向などによって変動する可能性があります。
そのため、住み替えや住宅ローンの返済を前提に売却する場合は、資金計画に余裕を持たせておきましょう。
たとえば、売却時期や希望価格が決まっている場合は、早めに不動産会社へ相談し、必要な調整を含めて計画を立てておくことが望ましいです。
査定額が高いだけで不動産会社を選ばない
査定額は不動産会社によって異なる場合がありますが、査定額が高いという理由だけで、取引する不動産会社を選ぶのは避けましょう。
査定価格はあくまでも予想であり、必ずしもその金額で売却できるとは限りません。
また、不動産会社のなかには契約を取るために相場よりも高い査定額を提示し、売却開始後に値下げを促すような悪質な業者も存在します。
査定額の根拠や査定書の内容、担当者の対応などを含めて総合的に判断し、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
査定依頼先が多すぎると電話対応が大変
一括査定サービスを利用する際は、依頼する不動産会社の数に注意が必要です。
多数の会社に査定を依頼すると、各社から希望条件の確認や訪問査定の日程調整などの連絡が入り、電話やメールの対応に追われる可能性があります。
連絡にすべて対応できる場合は問題ありませんが、負担を抑えつつ査定価格を比較したい場合は、2〜3社に絞るのが現実的です。
査定の目的や対応可能な範囲を踏まえたうえで、無理のない件数で依頼しましょう。
査定だけという意思を表示しない
査定だけを希望している場合でも、不動産会社に対して「売却の予定はない」「価格を知りたいだけ」といった意思を最初から明確に伝えるのは避けたほうがよい場合があります。
理由は、不動産会社が売却の見込みがないと判断すると、査定が簡略化されたり、対応を後回しにされたりするケースがあるためです。
実際の売却につながる可能性があると見なされたほうが、担当者も丁寧かつ正確に査定してくれる傾向があります。
あくまでも「売却を検討している」というスタンスで依頼すれば、適切な査定結果を得やすくなります。
将来売却する際は査定を受け直す必要がある
過去に査定を受けた場合でも、実際に売却する際にはあらためて査定を受け直す必要があります。
不動産の価格は市場の動きや近隣の取引状況によって変化するため、数ヶ月前の査定額がそのまま当てはまるとは限りません。
とくに築年数の経過や周辺環境の変化が大きい物件では、短期間でも価格に差が生じる可能性があります。
そのため、売却を計画するときは古い情報に頼らず、売却時期に合わせた査定の見直しが必要です。
マンション査定は不動産会社と不動産鑑定士のどちらに依頼すべき?
マンションの査定は、不動産会社に依頼しましょう。
目的や状況によって適した依頼先が異なるため、それぞれの特徴を把握する必要があります。
一般的に、不動産会社は売却を見据えた査定を行い、不動産鑑定士は法的効力のある評価書を作成します。
このことから、マンション売却を目的としている場合は不動産会社に査定を依頼すべきでしょう。
不動産会社に依頼するメリット・デメリット
不動産会社に査定を依頼する場合は、対応が早く、実務的な売却手続きにもスムーズに移行できる点が特徴です。
とくに売却を検討している段階であれば、最も一般的な選択肢といえるでしょう。
<不動産会社に依頼するメリット>
- 無料で依頼できるケースが多い
- 複数社の価格を比較しやすい
- 売却活動まで一貫して依頼できる
<不動産会社に依頼するデメリット>
- 査定額で売れるとは限らない
- 査定額の根拠が不明確な場合がある
- 売却の意思確認を目的とした連絡が入ることもある
売却を視野に入れた価格の把握を目的とする場合は、不動産会社への依頼がおすすめです。
不動産鑑定士に依頼するメリット・デメリット
不動産鑑定士は、国家資格を持ち、公的かつ中立な立場から価格を評価する専門家です。
相続や離婚、訴訟などの法的手続きが関係する場面や、精度・信頼性が求められるケースに適しています。
<不動産鑑定士に依頼するメリット>
- 不動産鑑定評価書は公的機関への証明に利用できる
- 客観性・中立性が高い
- 相続・遺産分割・訴訟などに対応可能
<不動産鑑定士に依頼するデメリット>
- 鑑定費用が発生する(約20万円〜)
- 売却活動は別途不動産会社に依頼が必要
- 鑑定結果の提示まで時間がかかることがある
不動産の価格に客観的な裏付けが必要な場面では、不動産鑑定士の査定が有効です。
マンションを売却する方法
マンションを売却する方法は、大きく分けて2つあります。不動産会社に仲介を依頼して一般の買主へ売却する方法と、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。
それぞれ売却までの流れや特徴が異なるため、違いを把握したうえで、自身の状況に適した方法を選びましょう。

仲介
仲介とは、不動産会社と媒介契約を結び、買主を探索して物件を売却する方法です。
市場相場に近い価格で売却できる可能性が高いため、より高い金額で物件を売りたい場合に適しています。
媒介契約を締結すると所定の仲介手数料が必要になりますが、不動産会社が広告活動や内覧対応、契約書類の作成、引渡し業務などを代行します。
売却までの期間はおおむね2~3ヶ月程度ですが、買主が見つかるまで価格や時期が確定しない点には注意が必要です。
マンションの条件によっては半年程度かかるケースもあるため、スケジュールに余裕をもって計画しましょう。
買取
買取とは、不動産会社が物件を直接買い取る売却方法です。不動産会社が直接買取する場合、仲介手数料はかかりません。
また、買取価格に応じる場合は、1週間程度で現金化できることもあります。
住み替えなどで売却を急いでいる、仮住まいをしたくないなどの場合は、買取による売却を検討してみましょう。
ただし、買取価格は一般的に相場の7~8割にとどまる傾向があり、仲介に比べて売却額が低くなる点がデメリットです。
なお、一部の不動産会社では「買取保証制度」を設けています。
買取保証制度とは、一定期間仲介で買主を探し、期限内に売却できなかった場合にあらかじめ決めた金額で買い取る仕組みです。
買取保証制度も含めて選択肢を比較し、無理のない資金計画を立てたうえで判断しましょう。
マンション売却の流れ
マンションの査定を依頼した後、売却を依頼する場合はどのような流れになるのでしょうか。
ここでは、売却を不動産会社へ依頼する際の一般的な流れを整理して解説します。
1:査定を依頼する
最初のステップは、マンションの査定依頼です。できれば複数社の査定価格を参考にしましょう。
査定価格の根拠やマンションの販売実績などを確認し、信頼できる不動産会社を選んで依頼先を決定します。
2:媒介契約を締結する
仲介による売却を進める場合、不動産会社と媒介契約を結びます。契約期間は最長3ヶ月で、売却価格を売主が設定するのが一般的です。
媒介契約には3種類あり、希望や状況に応じて選択できます。なお、どの媒介契約を選んでも仲介手数料の金額は同じです。
媒介契約は3種類ある
媒介契約は3種類あります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれ報告義務や契約の自由度が異なるため、目的や売却スケジュールに応じて選択することが重要です。
次の比較表を参考に、自身に合った媒介契約を検討しましょう。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
3:内覧に対応する
媒介契約を締結すると、不動産会社が広告を利用した販売活動を開始します。
早ければ数日以内に内覧希望者からの連絡が入る場合もあるため、常に内覧を想定した準備が必要です。
室内はあらかじめ整理整頓をおこない、清掃も徹底して印象を損ねないよう心がけましょう。

4:売買契約を締結する
売買価格や引渡しの時期などに折り合いがついたら、売買契約を締結します。
契約書や重要事項説明書の作成は不動産会社が対応しますが、売主側でもあらかじめ必要な書類を準備しておく必要があります。
売主が準備する主な書類は、次のとおりです。
- 登記済権利証または登記識別情報通知書
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 実印および印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- 管理規約・重要事項調査報告書(マンションの場合)
- 建築確認通知書や設計図書(保管している場合)
- ローン残債がある場合は、金融機関からの残高証明書
上記の書類を事前にそろえておくと、契約手続きをスムーズに進めやすくなります。
5:引っ越しする
引渡し日までに、すべての荷物を搬出しておく必要があります。引越作業は前日までに完了させるのが基本です。
電気・ガス・水道などのライフラインの解約手続きや、郵便物の転送なども忘れずにおこないましょう。
6:マンションを引渡す
決済日には、買主から残代金を受け取って所有権移転登記をおこない、正式に買主へ所有権を移転します。
引渡し当日に準備すべきものは、主に以下のとおりです。
- マンションの鍵(スペアを含む)
- 管理規約・使用細則
- 設備の取扱説明書や保証書(保管している場合)
- 区分所有者変更届(管理組合または管理会社への提出用)
書類や備品の受け渡しを事前に整理しておき、スムーズな引き渡しを目指しましょう。
7:確定申告をする
マンション売却によって譲渡益が生じた場合は、翌年に確定申告をおこない、譲渡所得税を納付します。
申告期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。
譲渡益が発生しない場合は申告の義務はありませんが、次のような税制上の特例を利用する場合には確定申告が必要です。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 所有期間に応じた軽減税率の適用
- 買換え特例の適用 など
税務署や税理士への相談も視野に入れ、事前に申告要否や必要書類を確認しておくと安心です。
マンション売却にかかる諸費用・税金
マンションを売却する際は、売却価格から差し引かれる諸費用や税金が発生します。
以下の諸費用が数十万円から数百万円に及ぶこともあるため、忘れずに資金計画へ組み込んでおきましょう。
費用項目 | 内容 |
印紙代 | ・売買契約書に貼付する印紙の費用 ・売買価格により変動する |
仲介手数料 | ・仲介を依頼した不動産会社に支払う報酬 ・上限は「(売買価格×3%+6万円)+消費税」 |
登記費用 | ・抵当権抹消登記などの手続きにかかる費用 ・司法書士に依頼するのが一般的(1万円〜) |
譲渡所得税 | ・売却益が出た場合にかかる税金 ・所得税・復興特別所得税・住民税の合計で構成される |
また、住宅ローンが残っている場合には一括返済の手数料が発生する可能性があります。必要に応じて、金融機関へ確認してください。
マンション売却時にかかる、それぞれの諸費用や税金を詳しく解説します。

印紙代
不動産売買契約書は、印紙税法で定められた課税文書です。
契約書を作成する際は、所定の印紙を貼付して印紙税を納める必要があります。
2027年3月31日までは印紙税の軽減措置が適用されており、契約金額に応じた印紙税額は次のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額(2027年3月31日まで) |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
収入印紙の貼付金額が規定の金額より少なかった場合や、貼付を怠った場合は過怠税の対象となるため注意してください。
仲介手数料
マンション売却を不動産会社へ仲介依頼する場合、所定の仲介手数料が発生します。
手数料は売買価格に応じて異なりますが、上限額は法律で定められていて、以下の計算式で算出可能です。
<仲介手数料の上限額>
- A:売却価格が200万円以下の部分:成約価格 × 5%
- B:売却価格が200万円超え~400万円以下の部分:成約価格 × 4%
- C:売却価格が400万円超えの部分:成約価格 × 3%
A + B + C + 消費税 = 仲介手数料の上限額
仲介手数料の上限額は、成約価格を3つに分けて計算し、それぞれを合算したうえで消費税を足すと求められます。
なお、400万円超えの売却価格になる場合は、「速算式」と呼ばれる方法で上限額を求めることもできます。
<速算式>
成約価格 × 3% + 6万円 +消費税
たとえば、マンションを3,000万円で成約した場合は、次のとおり計算できます。
3,000万円×3%+6万円+10%(消費税)=105.6万円(税込)
仲介手数料は成功報酬型であるため、複数社に仲介を依頼していても支払うのは1社のみです。
支払うタイミングに関しては、売買契約締結時に半分、決済時に半分と2回に分けて支払うのが一般的です。

登記費用
マンション売却時に売主が負担する登記費用は、主に抵当権抹消登記費用と住所変更登記費用です。
- 抵当権抹消登記費用:住宅ローンの完済に伴って必要
- 住所変更登記費用:登記簿上の住所と現住所が異なる場合に必要
マンションの所有権を移転する際にかかる所有権移転登記費用は、通常、買主側が負担します。
なお、抵当権抹消登記費用の内訳は次のとおりです。
内訳 | 金額の目安 |
登録免許税 | 不動産1つにつき1,000円 |
司法書士報酬 | 10,000円~20,000円程度 |
住宅ローンの抵当権抹消登記にかかる費用は、2万円程度を想定しておきましょう。
抵当権抹消登記や住所変更登記は、自分で手続きを進めることも可能です。
ただし、決済当日に登記を完了させる必要がある場合は、司法書士への依頼が一般的です。
自力で申請する際は、余裕をもって準備を進めましょう。
譲渡所得税
マンションの売却で利益が発生した場合、譲渡所得税の申告と納税が必要です。
税率は不動産の所有期間によって異なり、長期譲渡所得に該当する場合は15%(住民税5%)、短期譲渡所得の場合は30%(住民税9%)が適用されます。
- 長期譲渡所得:売却した年の1月1日に所有期間が5年を超える場合
- 短期譲渡所得:売却した年の1月1日に所有期間が5年以下の場合
なお、2037年までは基準所得税額の2.1%が復興特別所得税として課税されます。
譲渡所得税は、所得税・住民税・復興特別所得税を合算したものです。
売却益が出た場合は、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が求められます。的に譲渡所得税とは、所得税と住民税を合わせた税額をさし、譲渡所得に対する合計税率は以下の通りです。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
長期譲渡所得(5年を超える) | 15% | 5% | 0.315%(15%×2.1%) | 20.315% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% | 0.63%(30%×2.1%) | 39.63% |
※ 国税庁、短期譲渡所得の税額の計算
※ マンションを売却したら住民税が上がる?税金の計算方法と軽減する方法を解説
※ 2037年までは復興特別所得税として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と合わせて申告し、納付することになります。
所得税・住民税・復興特別所得税を正しく把握し、余裕をもって確定申告できるように準備しておきましょう。
マンションの査定だけを受けるときによくある質問
マンションをすぐに売る予定がなくても、価格だけ知りたいという人は多くいます。
ここでは、「査定だけでも本当に大丈夫?」「営業電話がかかってくるようになるのでは…?」など、査定前に気になるよくある質問をまとめました。
登録不要で査定だけを依頼できる?
不動産査定のなかには、登録不要で匿名のまま利用できるものもあります。
たとえば、AI(匿名)査定であれば、物件情報を入力するだけで大まかな参考価格が算出され、名前や連絡先を入力する必要はありません。
一方、机上査定(簡易査定)や訪問査定、一括査定などは氏名や連絡先を入力する必要があり、査定後に不動産会社から連絡が来ることが一般的です。
査定後にしつこい営業電話がかかってくる?
不動産会社に査定を依頼したあと、営業電話がかかってくるケースもあります。
営業を控えてもらいたいときは、連絡手段や希望する連絡時間を具体的に伝えましょう。
たとえば、申し込み時に「電話よりもメールを希望」「日中は連絡不可」など、希望の連絡手段を記載しておくと負担を軽減できます。
マンション売却がおすすめのケースとは?
以下のようなケースでは、マンションの売却を検討するタイミングとして適しています。
- 築年数が経過し、資産価値が下がる前に売却したい
- 住宅ローンの残債よりも高く売れる見込みがある
- 相続や離婚など、所有名義の整理が必要な事情がある
また、転勤や住み替えなどで住まなくなる予定がある場合も、空き家になる前に売却を検討することで、管理費や固定資産税の負担を減らせます。
上記のような状況が当てはまる場合は、不動産会社に査定を依頼して、マンション売却を検討しましょう。
まとめ
不動産会社にマンションの査定だけを依頼することは可能です。無料で対応してもらえるケースが多く、必ずしも売却まで進める必要はありません。
売却するか迷っている段階でも、査定でおおよその価格を知っておくことには意味があります。
複数の不動産会社に依頼し、査定額の根拠をよく確認したうえで、売却するかどうかを判断しましょう。