住宅ローンの返済期間は、数十年にわたるケースがほとんどです。
そのため、住宅ローンの残債がある状態でマンションの売却を検討する人は少なくありません。
結論として、住宅ローンの残債があるマンションの売却は可能です。
しかし、条件や注意点があります。
この記事では、住宅ローンの残債があるマンションを売却する方法や、注意点について解説します。
マンションを高く売却するためのポイントも紹介するので、参考にしてください。
住宅ローンの残債があるマンションは売却できるのか?
住宅ローンの残債がある状態でも、マンションを売却することは可能です。
ただ、買い手にマンションを引き渡す前に、抵当権を抹消しなければなりません。
この章では、抵当権の抹消が必要な理由と、抹消手続きの流れについて解説します。
マンションを売却する際には、抵当権の抹消について必ず理解しておきましょう。
抵当権の抹消が必要な理由
抵当権の抹消が必要な理由は、抵当権が付いたままのマンションには買い手が付きづらいためです。
抵当権が付いているマンションには、以下のようなデメリットがあります。
- 新たなローンを組みづらい
- 強制的に売却される可能性がある
そもそも抵当権とは、金融機関が持つ権利のことです。
金融機関は、住宅ローンとして融資したお金を回収できなくなるリスクを抱えています。
そのようなリスクの備えとして、マンションなどの不動産に抵当権を設定するのです。
住宅ローンの返済が滞ると、金融機関によって抵当権が実行され、不動産は強制的に売却されます。
これを「競売」といいます。
不動産の売却代金を、住宅ローンの残債として金融機関が回収する仕組みです。
そのため、抵当権が付いているマンションは「差し押さえられるリスクがある不動産」と見なされてしまいます。
またマンションに抵当権が付いていると、住宅ローンや不動産担保ローンを新たに組めない可能性があります。
「担保にする不動産に抵当権が付いていないこと」を融資条件としている金融機関があるためです。
このように、抵当権が付いているマンションにはデメリットが多いため、買い手が付きづらくなります。
マンションを売却する際には、必ず抵当権を抹消しましょう。
抵当権の抹消手続きの流れ
抵当権を抹消するためには「抵当権抹消登記」をおこなう必要があります。
抵当権抹消登記の流れは、以下のとおりです。
- 住宅ローンを完済する
- 融資を受けていた金融機関から必要書類が届く
- 「登記申請書」を記入する
- 法務局に申請する
- 「登記完了証」を受け取る
抵当権抹消登記をおこなうためには、住宅ローンを完済しなければなりません。
先に解説したとおり、住宅ローンの残債があるマンションを売却するための条件は「買い手にマンションを引き渡す前に、抵当権を抹消すること」です。
つまり、マンションの引き渡しまでに住宅ローンを完済したうえで、抵当権抹消登記をおこなう必要があるのです。
マンションの引き渡しまでに住宅ローンを完済する方法は、次の章で解説します。
また抵当権抹消登記の申請書は、法務局のホームページからダウンロードが可能です。
金融機関から届く必要書類と、登記申請書をあわせて、売却するマンションを管轄している法務局に申請します。
抵当権抹消登記が正しくおこなわれた場合、通知として法務局から登記完了証が交付されます。
住宅ローンの残債があるマンションを売却する方法
住宅ローンの残債があるマンションを売却するためには、引き渡しまでに住宅ローンを完済し、抵当権を抹消しなければなりません。
住宅ローンを完済する方法は、以下の2つです。
- マンションの売却前に住宅ローンを完済する
- マンションを売却して得たお金で住宅ローンを完済する
どちらの方法も「繰り上げ返済」によって住宅ローンを完済することになります。
具体的な売却の流れや、繰り上げ返済について、詳しく見ていきましょう。
マンションの売却前に住宅ローンを完済する
マンションの売却前に住宅ローンを完済する場合、預金などの自己資金で「繰り上げ返済」をおこないます。
繰り上げ返済とは「住宅ローンを予定よりも前倒しで返済すること」です。
具体的には、以下の流れで売却と繰り上げ返済を進めます。
- 金融機関に住宅ローンの残債を確認する
- マンションの買い手と売買契約を結ぶ
- 金融機関に繰り上げ返済を申し込む
- 繰り上げ返済によって住宅ローンを完済する
- 抵当権抹消登記をおこなう
- 買い手からマンションの購入代金を受け取る
- 買い手にマンションを引き渡す
マンションの売却における繰り上げ返済では、住宅ローンの残債をまとめて返済します。
金額が大きくなりやすいため、はじめに正確な金額を把握しておくことが大切です。
繰り上げ返済をおこなう場合、返済総額が予定よりも小さく済む可能性があります。
返済期間が短くなることで、支払う利息が小さくなるためです。
一方で金融機関によっては、繰り上げ返済のときに手数料がかかるというデメリットもあります。
住宅ローンの契約書を見返したり、金融機関に相談したりして、繰り上げ返済の条件を確認しておくことが大切です。
マンションを売却して得たお金で住宅ローンを完済する
自己資金が少ない場合は、不動産を売却して得たお金で「繰り上げ返済」をおこなうのが一般的です。
具体的には、以下の流れで売却と繰り上げ返済を進めます。
- 金融機関に住宅ローンの残債を確認する
- マンションの買い手と売買契約を結ぶ
- 金融機関に繰り上げ返済を申し込む
- 買い手からマンションの購入代金を受け取る
- 買い手にマンションを引き渡す
- 繰り上げ返済によって住宅ローンを完済する
- 抵当権抹消登記をおこなう
上記の4〜7は、ほぼ同時におこないます。
ひとつ前に解説した「マンションの売却前に住宅ローンを完済する」ケースとの違いは、買い手から購入代金を受け取ったあとに住宅ローンを完済する点です。
マンションを売却して得たお金で住宅ローンを完済する場合、オーバーローンに気をつけましょう。
オーバーローンについては、次の章で解説します。
オーバーローンの注意点
オーバーローンとは、不動産の売却金額が住宅ローンの残債よりも小さくなることです。
反対に、不動産の売却金額が住宅ローンの残債よりも大きくなることを「アンダーローン」といいます。
オーバーローンとなった場合、マンションを売却して得たお金だけでは住宅ローンを完済できません。
売却代金と残債の差額は、自己資金で埋める必要があります。
オーバーローンかつ、売却代金と残債の差額が用意できない場合は、以下のような方法を取るのが一般的です。
- アンダーローンになるまで売却を延期する
- 住み替えローンを利用する
- 任意売却をおこなう
マンションの売却を急いでいない場合は、引き続き住宅ローンを返済していき、アンダーローンの状態になるまで待つのがおすすめです。
アンダーローンの状態で売却すると利益が出るため、新生活に金銭的な余裕ができます。
住み替えローンと任意売却は、マンションの売却を急いでいる人に向いている方法です。
それぞれについて、以下に詳しく見ていきましょう。
住み替えローンとは
住み替えローンとは、名前のとおり「住み替えの際に利用できるローン」のことです。
以下の費用をまとめて借り入れられます。
- 売却するマンションの住宅ローンを完済するための費用
- 新居の購入にかかる費用
住み替えローンの融資金によって、マンションの住宅ローンを完済できます。
そのため、オーバーローンかつ自己資金がない状態でも、売却を進められるのです。
ただ住み替えローンは、以下の点から返済総額が大きくなる傾向があります。
- 住宅ローンに比べて金利が高く設定されている
- ローン完済と新居購入の費用を借り入れるため、元金が大きくなりやすい
家計の状況やライフプランをよく考えたうえで、無理のない返済計画を立てることが大切です。
また住み替えローンは、住宅ローンよりも審査が厳しい傾向があります。
審査に落ちてしまった場合のことも想定しておきましょう。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの残債がある状態で不動産の抵当権を抹消してもらい、そのまま売却することです。
売却代金を住宅ローンの返済に充てることを金融機関に約束し、合意を得る必要があります。
任意売却は、基本的に住宅ローンの返済が難しくなった債務者が、競売を避けるためにおこなうものです。
そのため、以下のような場合は、任意売却を認めてもらえない可能性があります。
- 住宅ローンの返済が一度も滞っていない
- マンションの管理費や修繕積立金を滞納している
競売は強制的ですが、任意売却は所有者の意思による売却です。
不動産の売却金額は、競売よりも任意売却のほうが高くなる傾向があります。
ただ任意売却をおこなった結果、売却金額が住宅ローンの残債よりも小さくなる可能性もあります。
売却代金でまかなえなかった分の残債は、返済しなければなりません。
住宅ローンを滞納したうえで任意売却をおこなった場合は、信用情報に傷がつくというデメリットがあります。
オーバーローンにならないためのポイント
オーバーローンにならないためには、住宅ローンの残債と、マンションの売却金額の目安を把握しておくことが大切です。
売却金額の目安は、不動産会社の査定によって把握します。
査定には「机上査定」と「訪問査定」があり、基本的にどちらも無料です。
机上査定は、以下のような情報を基にして、マンションの大まかな売却金額を計算します。
- マンションの条件(立地・広さ・築年数など)
- エリアの相場
- 条件が近いマンションの売却事例
一方で訪問査定は、不動産会社の担当者が実際にマンションを見たうえで、売却金額を計算します。
机上査定よりも訪問査定のほうが時間はかかりますが、精度は高いです。
査定結果は不動産会社によって異なるため、複数社に査定を依頼し、比較しましょう。
オーバーローンになると売却にかかる費用が増えるため、家計が圧迫されてしまう可能性があります。
住宅ローンの残債とマンションの売却金額を把握し、オーバーローンになりそうであれば、売却のタイミングを調整してください。
マンションを高く売却するためのポイント
住宅ローンの残債がある場合は、オーバーローンにならないためにも、マンションを高く売却する必要があります。
マンションを高く売却するためのポイントは、以下のとおりです。
- 実績がある不動産会社を選ぶ
- 需要が高い時期に売却する
- 周辺の相場が高い時期に売却する
それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
実績がある不動産会社を選ぶ
不動産会社の実績は、マンションを高く売却するための重要なポイントです。
ホームページに記載されている実績を確認したり、担当者に実績を聞いたりしましょう。
実績がある不動産会社は、売却のノウハウが豊富なため、適切なアドバイスや売却活動をおこなってくれます。
また実績から、不動産会社の得意分野も見えてきます。
マンションの売却を得意としている不動産会社を選んでください。
大手の不動産会社だけでなく、地元の不動産会社に相談することも大切です。
地元の不動産会社は、大手にはないような独自のネットワークを持っていることがあります。
需要が高い時期に売却する
不動産の需要が高い時期は、マンションを高く売却できる可能性があります。
とくに2月〜3月は、不動産の需要が高くなります。
転勤や子どもの進学などで、4月から新生活を始める人が多いためです。
ただエリアによっては、2月〜3月以外の時期に不動産の需要が高くなるケースもあります。
需要が高い時期にマンションを売り出せるよう、売却を決めた段階で不動産会社に相談し、準備しておくことが大切です。
周辺の相場が高い時期に売却する
マンションを高く売却するためには、周辺の相場が高い時期に売却しましょう。
相場は、以下のような要素の影響を受けます。
- エリアの再開発
- 生活に必要な施設(スーパー・病院など)の数
- 治安
- 最寄り駅の乗り入れ路線
一般的に、利便性が高いエリアは人気があるため、相場も高くなりやすいです。
再開発などで周辺の利便性が上がりそうな場合は、現在よりも数年後のほうが、マンションを高く売却できる可能性があります。
もしマンション周辺の相場が上がりそうにないのであれば、できるだけ早く売却したほうが良いでしょう。
マンションなどの不動産は、一般的に築年数が古くなるほど価格が下がってしまうためです。
まとめ
住宅ローンの残債がある状態でも、マンションを売却することは可能です。
ただ、買い手にマンションを引き渡すまでに「住宅ローンの完済」と「抵当権の抹消」をおこなわなければなりません。
住宅ローンを完済するためには、自己資金またはマンションの売却代金によって、繰り上げ返済をおこないます。
オーバーローンにならないためには、住宅ローンの残債と、マンションの売却金額の目安を把握しておくことが大切です。
もしオーバーローンになってしまう場合は、住み替えローンや任意売却の選択肢もあります。
いずれもデメリットがあるため、家計の状況やライフプランをよく考えたうえで計画を立ててください。
不動産会社や金融機関に相談しながら、住宅ローンを適切に完済し、マンションの売却をスムーズに進めましょう。