【VCインタビュー】金融業界のスタートアップでこそ活きる「ファンズらしさ」と今後への期待

2023/10/06インタビュー
【VCインタビュー】金融業界のスタートアップでこそ活きる「ファンズらしさ」と今後への期待

インタビュイー:
グローバル・ブレイン株式会社
Investment Group/General Partner
立岡 恵介 様


Fundsのサービスが開始された2019年当時にベンチャーキャピタル(以下「VC」という。)として当社に資本参加し、その後の資金調達ラウンドでも継続して追加出資をして頂いているグローバル・ブレイン様。
これまで数々のスタートアップの成長に伴走してきたVCから見たファンズは、果たしてどのような特徴を持った企業に見えているのか。そして、ファンズのどのようなところに期待を抱いてくださっているのか、お話を伺いました。


ーグローバル・ブレイン様のVCとしての特徴を教えてください

比較的規模の大きいVCです。AUM(※1)は2500億円程、組織で見ると、投資担当者の他、出資先の経営をモニタリング・支援するなどのバリューアップを専門に行うチームも有しており約120名の従業員が在籍しています。

また、フラッグシップファンドの運用のみならず、事業会社や機関投資家からの支援をいただきながら多数のCVCファンド運営(※2)・共同投資事業をしている点も特徴です。

編集注※1:運用資産残高の意
編集注※2:事業会社が社外のスタートアップ企業等に投資するVCのことをCVCといい、事業会社とともにVCとして社外のスタートアップ企業等に投資するファンドをCVCファンドといいます。


出会い~出資に至るまでの印象 -ツーサイドの “より難しい方” にDay1から優位性を持っていたファンズ

ー初めてご出資いただいたのは2019年となりますが、当時なぜファンズに目を留めていただいたのでしょうか?

たまたま藤田さん(ファンズ代表)と私の共通の友人がいて、彼から藤田さんを紹介してもらったのが始まりでした。

出会った当時はFundsのサービス開始前で、「クラウドポート」という旧社名で貸付投資の比較検討webメディアを運営していた頃でした。
「貸付投資の比較検討webメディア」と聞いた時は非常にニッチな印象を持ちましたが、実はこれも後のFundsを成長させていくためのマイルストーンであったことがわかり、興味を持ちました。

貸付投資の事業を始めるには、第二種金融商品取引業のライセンスを取得する必要があり、これには一定の期間がかかります。
このライセンス取得までの期間を活用し、まずはメディアを通して「個人投資家との接点・関係性を構築する」ということがクラウドポートの狙いだったのだと理解しています。

実は当時すでにグローバル・ブレインで貸付投資サービスを行う別のスタートアップの支援実績がありました。その経験から振り返ると、企業側の資金調達ニーズを獲得するよりも、個人投資家を集めることに苦戦を強いられていた印象を持っていたため、サービス開始の時点で個人投資家との接点を有していることは優位性になると感じました。

Fundsのような「ツーサイドプラットフォーム(※3)」の性質を持つ事業がスケールする重要なポイントの1つとして、「ツーサイドのどちらかに強みを持っていること」があると思っています。この点において、特に難しい方に事業開始当初から優位性を持っていたことは、非常に印象的でしたね。

編集注※3:「売り手」と「買い手」に代表されるような、2つのユーザーグループに対して提供されるプラットフォームの意


ーご興味をお持ちいただいてから初回の出資検討にあたり、困難だと感じていたポイントはありましたか?

これは非常にシンプルで、「十分な市場創出ができるか?」ということです。

Fundsが対象としているのは社債を代替するような市場であると理解しており、確かに日本では白地のあるポジショニングだと思っています。

ただ、企業側からすると日本は比較的低コストで銀行などから資金調達ができてしまう。そのような環境において複数の企業がFundsを通して一定規模の調達を継続して行うような状態を実現するには、Fundsでの調達コストが他の金融機関と比較し「意味のある水準」であり続けなければならない。この点が未知数でありながら重要であると感じています。

現状一定の企業に対しては兆しが見えてきていると思うので、ニーズが合致する企業をどれだけ拡大していけるか、というところが今でもチャレンジングな点だと思っています。



出資の決め手は「人」と「戦い方」

ー今伺ったような「チャレンジングな点」もありながら、出資をしていただいた決め手はどのような点だったのでしょうか?

複数ありますがここでは2点お話します。

1つはファンズの創業者である藤田さん・柴田さんの存在。私は根幹として『人に投資する』というスタンスを取っているのですが、ファンズにおいてもこの点が一番大きいです。

藤田さんは、過去に起業~売却までを経験している起業家であり、金融の知見もある。これだけの経験をしていながらも非常にマイルドな人柄で、「組織を作れる人」という印象があります。
一方の柴田さんは、プロダクト創りに長けている印象。連続起業家である彼の実績を見ていると、リスク許容度合なども含めて非常にバランス感覚を兼ね備えた方。
この2人の相性は非常にいいと感じました。もし彼らが別の事業を立ち上げていたとしても、この2人であれば投資をしていた可能性が高いとすら思います(笑)

もう1つは、これまでに見てきた貸付投資のサービスとの戦い方の違い。

当時既に貸付投資のサービスがいくつか存在していましたが、他社のサービスは利回り5-10%程度のものが多く、Fundsと比較すると高利回りな傾向にありました。
利回りが高いほど、一般的には運営者側が受け取る手数料としてのリターンは大きくなります。
一方、リターンが大きいということは「リスク」を負っているということ。つまり、正常償還に至らないケースも出てきやすくなります。この正常償還に至らないケースが発生したとき、発生した事象に対する対応には膨大なリソースを必要とするし、その時の組織の雰囲気はどうしても暗くなってしまいがちです。そうするとコンディションを立て直すことも必要ですよね。
このような事例を見てきた私としては、有事の時に発生しうる副次的な影響まで鑑みると、リスクとリターンのバランスを取ることが難しいビジネスモデルだと感じていました。

一方Fundsは、平均の利回りが1~3%です。今お話したような他社サービスと比較すると利回りは低いものの、借り手企業の多くは上場企業であり、今日までの正常償還率は100%。(※4)
先ほど申し上げた事例を踏まえ中長期的に考えると「Fundsの戦い方は筋がいいのでは」と感じました。

特に日本の場合、社債の流動性が低いこともあり、グロース市場を中心に「財務状況は優良でポテンシャルもあるが、十分な成長資金が流れていきづらい」という構造があります。そういった市場の特徴も考慮すると、Fundsはリスクリターンのバランスを取りうるポテンシャルのあるモデルなのではないか?と考え、出資を決めました。

編集注※4: ①2023年10月6日時点 ②将来の運用成果を保証するものではありません


ー1点目で「組織を作れる人」という藤田の印象のお話がありました。
様々な起業家を見て来られた中でそのように感じていただいたポイントを教えてください

まずは「誠実」であること。特にスタートアップにおいては従業員にも透明性高く情報の伝達をしていかなければならない。それが彼にはできると思いました。

加えて「素直」であること。藤田さんは起業家らしく、新しいトライを次々仕掛けたいという思いを持った起業家である印象です。ただ、同時にしっかりと周りの意見も聞ける方。周りの意見を聞きながら物事を前へ推し進めるので、周囲も一緒に進めている感覚を持つし、「藤田さんの力になりたい」という気持ちも出てくるのだと思います。

実は金融業界においてはこの点は特に重要だと思っています。

スタートアップの組織は、代表がパワフルであれば一定のフェーズまで到達できてしまうことも多いんです。ただ、こと金融業界においては、規制への対応等もあり代表だけの力で牽引していくことが極めて難しい。このような業界特性もある中で、非常に早いタイミングから高い専門性を有した取締役メンバーを上手に巻き込めたのは藤田さんならではだと思います。



ファンズの強みは「金融業界のスタートアップ」でこそ大きく活きる2つ

ーこれまで数々のスタートアップの成長に伴走してこられた立岡さんから見る、ファンズの強みはどのようなところだと感じられますか?

強みの1つは藤田さんを筆頭とした「巻き込み力」だと感じます。先ほど申し上げた話と関連しますね。

株主の顔ぶれを見ても非常に多種多様ですよね。ファンズは非常に難しいビジネスに取り組んでいるし、収益性という観点ではまだやらなければならないこともたくさんある。
そのような中でも、藤田さんの夢にbetしている人、ファンズというチームのことを強く信じている人が多い。これは強みだと思います。

他の観点だと、「新しいことをやろうとするスタンス」。

これまでも、個人投資家だけでなく機関投資家向けのファンド組成を始めたり、大手金融機関との販売連携を行ったり、Fundsのユーザー層を活かした拡張サービスを作ったり、様々な新しいトライをしてきましたよね。
実はスタートアップの中でも、規制産業である金融業界においてこのスタンスをとる企業は珍しいんです。ルールとどう向き合うか、という難しさに起因して、新しい挑戦をし続ける企業はあまり前例がなかったと思います。

これは経営者や会社としての性格もありますし、とりわけCLO(Chief Legal Officer)である髙尾さんの存在が大きいと思いますね。金融業界という難しい環境の中で、攻めと守りを的確に融合させるバランスを備えている。(※5)

この点に関しては、これまであまり前例が無いため「強み」になるのかは正直なところ私たちにもまだ分かりません。ただ、「強みへと昇華させてほしい」という期待感があります。
働くメンバーにとっても、新しい挑戦をし続ける会社はきっと働き甲斐が大きいですよね。

編集注※5:【参考記事】「スタートアップなら、事業に全集中せよ」はもう古い?CxO2人の“社外活動”でMoatを築いた、ファンズの成長ストーリー | FastGrow

今後のファンズへの期待 ー成長企業にとっての「投資銀行」のような存在になったら

ー反対に、ファンズが乗り越えなければいけないと感じる点や、将来的な期待についてはいかがでしょうか?

「出資検討の際に困難だと感じていたポイント」のところでもお話した通り、「十分な市場創出ができるか?ニーズの合致する企業をどれだけ拡大していけるか?」という点だと考えています。

私個人としては、中長期的には現在ファンズが相対しているような成長企業にとっての「投資銀行」のような存在になっていけるとよいのではないかと考えています。

現在Fundsの仕組みで提供できているのは企業の資金需要のうちのごく一部であって、企業には他にもたくさんの資金需要や事業課題を抱えています。そのニーズを汲み上げて新たなサービスを作ったりすることは今もやっていますよね。このアプローチを続けていくことをベースに、Fundsという既存の仕組みに閉じない複数の手段で企業の成長を促していけるような存在になっていくのではないかなと思っています。

ファンズに限らず、スタートアップは「長い目線で見て正しく、且つ新しいこと」をやっています。少なくとも当社が出資している企業はそう。
ただ、その過程では必ずと言っていいほど数字が停滞する時期にも直面する。その時に、長い目線で見て「自分たちは正しいことをしている」という信念を持ち続け「やり続ける」ということが非常に重要だと思っています。ファンズは既にこのような局面を乗り越えてきた実績もあると思いますが、今後また同じような壁にぶつかったとしても、「やり続ける」プレイヤーであってほしいなと思います。


※本記事は、特定の株主へのインタビューで得られた意見を一例として取り上げたものです。当該株主の声を例として示したもので、必ずしもFundsのサービスから得られるメリットを客観的に示すものではありません。
ファンドへの投資は、重要事項説明書をよく読み、ご自身の責任と判断で行ってください。


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