ワンルームマンションの売却では、はじめに相場観を掴むことが大切です。
今回は、東京都のワンルームマンションにおける売却相場や、自分で売却相場を調べる方法について解説します。
また、ワンルームマンションの売却で損しないためには、いくつかの注意点を押さえる必要があります。
売却にかかる期間や、スケジュールを把握しておくことも大切です。
注意点やスケジュールについても、売却相場とあわせて解説していくので、売却計画を立てる際の参考にしてください。
ワンルームマンションの売却相場はどのくらい?
ワンルームマンションの売却価格は、築年数や立地など、さまざまな要素によって決まります。
2023年7月〜9月に売却された東京都のワンルームマンション(築30年以内)の売却価格は、以下のとおりです。※1
No. | 所在地 | 駅徒歩分数 | 面積 | 築年 | 売却価格 |
1 | 中野区 | 11分 | 30㎡ | 2022年 | 3,300万円 |
2 | 北区 | 2分 | 30㎡ | 2019年 | 4,000万円 |
3 | 江東区 | 9分 | 25㎡ | 2010年 | 2,300万円 |
4 | 墨田区 | 5分 | 35㎡ | 2008年 | 4,200万円 |
5 | 港区 | 7分 | 15㎡ | 2004年 | 2,500万円 |
6 | 武蔵野市 | 5分 | 25㎡ | 2003年 | 2,900万円 |
7 | 中央区 | 3分 | 20㎡ | 2002年 | 2,500万円 |
8 | 墨田区 | 3分 | 30㎡ | 1997年 | 2,800万円 |
9 | 杉並区 | 5分 | 15㎡ | 1996年 | 1,600万円 |
10 | 墨田区 | 5分 | 15㎡ | 1995年 | 520万円 |
10軒の売却価格を平均すると、2,662万円となります。
ワンルームマンションの売却相場を自分で調べる方法
ワンルームマンションの売却相場を自分で調べる方法としては、以下の4つが挙げられます。
- 不動産情報サイトを利用する
- 土地総合情報システムを利用する
- レインズマーケットインフォメーションを利用する
- 計算する
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
不動産情報サイトを利用する
不動産情報サイトには、売り出し中のワンルームマンションが掲載されています。
大手の不動産情報サイトである「SUUMO(スーモ)」を例にして、活用の流れを説明します。
- SUUMOのサイトを開く
- 「買う」の中にある「中古マンション」をクリックする
- 売却するワンルームマンションと同じ条件(エリア・駅徒歩分数など)を選択する
- 「検索する」をクリックする
検索結果には類似不動産が表示されるため、そのなかでも条件が近い不動産を探しましょう。
販売価格を相場として参考にします。
ただ、不動産情報サイトの販売価格は売り主の希望価格であるため、注意が必要です。
実際の売却価格は、購入希望者との交渉を経て決まるため、販売価格とは異なる可能性があります。
土地総合情報システムを利用する
土地総合情報システムとは、国土交通省が運営するサイトのことです。
一般の人でも、無料で利用できます。
土地総合情報システムで調べられるのは、過去におこなわれた不動産取引における売却価格です。
以下の流れで活用します。
- 土地総合情報システムを開く
- 「不動産取引価格情報検索」をクリックする
- 「種類」を中古マンションに限定する
- 「地域」を売却するワンルームマンションと同じにする
- 「この条件で検索」をクリックする
検索結果の項目にある「間取り」は、「▼」マークから「1R」に絞ることが可能です。
条件が近い不動産の「取引総額」を相場として参考にします。
条件が近い不動産が出てこなければ、1つ前の画面に戻り、取引時期を過去2年間分に設定してみてください。
売却時期が昔すぎる場合、相場としての正確性は下がりますが、参考までに見ておきましょう。
レインズマーケットインフォメーションを利用する
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するサイトです。
不動産会社しか閲覧できない「レインズ」とは異なり、一般の人でも無料で利用できます。
レインズマーケットインフォメーションのトップページにある「マンション」の都道府県と地域を選び、検索します。
「取引情報一覧」から条件が近い不動産を探して、「価格」を相場の参考にしてください。
取引情報一覧の上に表示されている「直近1年の取引情報グラフ」では、築年数に応じた売却価格の分布がわかります。
検索条件を追加して絞り込んでいけば、相場を視覚的に理解できるでしょう。
計算する
ワンルームマンションの売却相場は、計算で求めることもできます。
主な計算方法は、以下の3つです。
- 原価法:同じ家を建てる場合にかかる費用から計算する
- 取引事例比較法:過去におこなわれた不動産取引と比較して計算する
- 収益還元法:将来的に生み出されるであろう利益から計算する
このなかでも収益還元法は、ワンルームマンションの売却価格を計算する際によく用いられます。
収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」があります。※2
DCF法は計算が複雑なので、今回は直接還元法を詳しく見てみましょう。
直接還元法は、以下の式で計算します。
( 1年間の総収益 – 1年間の総経費 ) ÷ 還元利回り = 売却価格
総収益とは、ワンルームマンションを貸し出した際に入る賃料や、更新料などの収入を合計したものです。
総経費は、ワンルームマンションの維持管理費や税金といった諸経費の合計です。
たとえば月々の賃料が9万円(年間108万円)、月々の諸経費が2万円(年間24万円)、還元利回りが5%の場合、以下のように計算します。
( 108万円 – 24万円 ) ÷ 5% = 1,680万円
この場合、ワンルームマンションの売却価格は、1,680万円となります。
ワンルームマンションを売却する際に注意すべきポイント
ワンルームマンションを売却する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
具体的には、以下の5つです。
- 不動産会社選び
- ローンの残債
- 譲渡所得税
- 仲介手数料
- 売却のタイミング
詳しく解説していくので、売却で損しないためにも頭に入れておきましょう。
不動産会社選び
不動産会社選びは、複数社を比較したうえで慎重におこなってください。
以下の条件を満たす不動産会社だと、スムーズな売却となりやすいです。
- ワンルームマンションの売却実績が豊富
- 売却するワンルームマンションが建つエリアに強い
- 担当者の対応に不安がない
売却の相談や査定を通して、信頼できる不動産会社を選びましょう。
また「仲介と買取のどちらにするか」についても考えなければなりません。
仲介では、不動産会社がワンルームマンションの買い手を探してくれます。
買取は、不動産会社がワンルームマンションを直接買い取る売却方法です。
売却価格は買取よりも仲介のほうが高くなりやすく、売却完了までのスピードは買取のほうが早いです。
「ワンルームマンションの売却において何を重視するか」によって、仲介か買取かを選択してください。
ローンの残債
売却するワンルームマンションの、住宅ローンや不動産投資ローンを完済していない場合も、注意が必要です。
ワンルームマンションの売却では、引き渡しまでにローンを完済し、抵当権抹消登記をおこなう必要があります。
抵当権抹消登記とは、ワンルームマンションに付いている抵当権を外す手続きのことです。
ローンは一般的に、ワンルームマンションの売却代金を使って完済します。
売却代金よりもローンの残債のほうが大きくなってしまった場合は、足りない分を自己資金で補わなければなりません。
予想外の出費で生活が苦しくなってしまわないように、ローンの残債は早めに確認しておきましょう。
譲渡所得税
ワンルームマンションの売却で利益が出た場合、譲渡所得税を納める必要があります。
譲渡所得税の注意点は、ワンルームマンションの所有期間によって税率が変わる点です。
ワンルームマンションの所有期間が5年以下の場合、譲渡所得税の税率は39.63%です。
所有期間が5年を超えると、20.315%に下がります。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 0.315%(15%×2.1%) | 20.315% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 0.63%(30%×2.1%) | 39.63% |
※ 国税庁、短期譲渡所得の税額の計算
※ マンションを売却したら住民税が上がる?税金の計算方法と軽減する方法を解説
※ 2037年までは復興特別所得税として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と合わせて申告し、納付することになります。
所有期間は売却時点ではなく、売却した年の1月1日時点でカウントされるため、気を付けましょう。
譲渡所得税は、一定の条件を満たすと控除の対象になります。
控除の適用条件は、国税庁のホームページから確認してください。
また、ワンルームマンションの売却時にかかる税金は、譲渡所得税だけではありません。
抵当権抹消登記などの登記をおこなう際には「登録免許税」、売買契約書を作る際には「印紙税」を納める必要があります。
納める税金の額は、ワンルームマンションの状態や売却条件によって変わるため、不動産会社に計算してもらいましょう。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼した場合、仲介手数料を支払う必要があります。
ワンルームマンションの売買契約時と、引き渡し時に半額ずつ支払うのが一般的です。
仲介手数料は、以下の式で計算します。
( ワンルームマンションの売却価格 × 3% + 6万円 ) + 消費税 = 仲介手数料
ワンルームマンションを3,000万円で売却した場合の仲介手数料は、105.6万円です。
( 3,000万円 × 3% + 6万円 ) + 消費税 = 105.6万円
仲介手数料は、ワンルームマンションの売却にかかる諸費用のなかでも、金額が大きくなりやすいです。
ワンルームマンションの売却には、仲介手数料に加えて以下のような諸費用がかかります。
- 登記を手伝ってくれた司法書士への報酬
- ローンの繰り上げ返済手数料
- 各書類の発行手数料
売却代金から諸費用が差し引かれることを頭に入れて、資金計画を立てましょう。
売却のタイミング
ワンルームマンションを売却する際には、タイミングにも注意しましょう。
需要があるタイミングで売却しないと、売れ残ってしまったり、売却価格が安くなってしまったりするためです。
以下のようなタイミングは、ワンルームマンションが売れやすいと言えます。
- 金利が低い
- エリアの利便性が高い
- 同じエリアでほかのワンルームマンションが売り出されていない
金利が低いと、ローンにかかる利息が小さくなるため、ワンルームマンションを購入しやすくなります。
再開発などで利便性が高まれば、エリアの人気も高まるため、購入希望者が現れやすいです。
また、同じエリアでワンルームマンションがいくつも売り出されている場合、ライバルになってしまいます。
より安いほうに購入希望者が流れてしまったり、希少価値が下がったりとデメリットが多いため、ほかのワンルームマンションが売り出されていないタイミングのほうが良いでしょう。
ワンルームマンションの売却スケジュール
ワンルームマンションの売却には、3ヶ月〜6ヶ月ほどの期間がかかるのが一般的です。
以下のようなスケジュールで売却を進めます。
- 売却の目的・希望条件を整理する
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動をおこなう
- 売買契約を結ぶ
- ワンルームマンションを引き渡す
- 入居者に通知する
- 確定申告をおこなう
はじめに、ワンルームマンションを売却する目的を整理しましょう。
ライフプランを思い浮かべながら、売却における希望条件(時期・価格など)の優先順位も固めていきます。
相談や査定を通して、売却を依頼する不動産会社を選び、媒介契約を結びます。
不動産会社による売却活動の開始から、買い手と売買契約を結ぶまでの日数は、2023年の首都圏の平均で80.1日です。※3
売買契約を結んだら、1ヶ月ほどの準備期間を経て、ワンルームマンションを引き渡します。
売却したワンルームマンションに入居者がいる場合は、引き渡し後に所有者が変わった旨を通知します。
ワンルームマンションの売却で利益が出たり、控除を受けたりした場合は、確定申告が必要です。
確定申告は、売却翌年の2/16〜3/15におこないます。
まとめ
ワンルームマンションの売却価格を決める要素は、築年数や立地などさまざまです。
今回は、自分で売却相場を調べる方法として、以下の4つを紹介しました。
- 不動産情報サイト
- 土地総合情報システム
- レインズマーケットインフォメーション
- 収益還元法等による計算
売却の検討材料として、活用してください。
また、ワンルームマンションの売却を進める際には、以下のポイントを押さえることが大切です。
- 実績があり信頼できる不動産会社を選ぶ
- ローンの残債を確認しておく
- 売却にかかる諸費用を計算しておく
- 需要が高いタイミングで売却する
不動産会社への相談から、ワンルームマンションの引き渡しまでには、一般的に3ヶ月〜6ヶ月ほどの期間がかかります。
ライフプランを考えながら、余裕のある売却スケジュールを立てましょう。
※1:土地総合情報システム、中古マンション、各区検索の一部を紹介。 2023年3四半期。
※2:不動産の鑑定評価
※3:首都圏不動産流通市場の動向(2023年)