不動産の売却方法には「仲介」と「買取」があります。
仲介と買取には多くの違いがあるため、不動産会社に相談する前に理解しておくことが大切です。
この記事では、不動産売却における仲介と買取について、以下のポイントを解説します。
- 仲介と買取の違い
- 売却の流れ
- 仲介と買取のメリット・デメリット
- 仲介を選ぶべき人・買取を選ぶべき人
仲介や買取で後悔しないためのポイントについても解説するので、ぜひ最後までお読みください。
不動産売却の仲介と買取は何が違う?
不動産の売却における「仲介」と「買取」は、以下のポイントが異なります。
- 不動産の売却先
- 不動産会社の役割
- 手数料
- 売却にかかる期間
- 売却価格
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、自身に合った売却方法を選択することが大切です。
仲介と買取について、ひとつずつ以下に解説していきます。
不動産売却の仲介とは?
不動産売却の「仲介」では、不動産会社を通して、個人の顧客に不動産を売却するのが一般的です。
- 不動産の売却先:個人
- 不動産会社の役割:不動産の買い手を見つける
- 手数料:かかる
- 売却にかかる期間:3ヶ月〜6ヶ月ほど
- 売却価格:相場価格
不動産会社に仲介を依頼すると、買い手を見つけるために売却活動をおこなってくれます。
無事に買い手が見つかり、売買契約が完了した場合は、不動産会社にお礼として「仲介手数料」を支払います。
仲介の流れ
仲介の具体的な流れは、以下のとおりです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動をおこなう
- 買い手と売買契約を結ぶ
- 引き渡しのための準備をおこなう
- 買い手に不動産を引き渡す
相談や査定を通して、不動産の売却を依頼する不動産会社を決めたら「媒介契約」を結びます。
媒介契約によって、不動産の売却活動をおこなうことや、売買契約の成立をサポートすることが約束されるのです。
媒介契約の契約書には、売却活動の内容や仲介手数料の金額などが記載されています。
不動産の売却活動とは
不動産の売却活動として挙げられるのは、主に以下の3つです。
- 不動産情報サイトに不動産の情報を掲載する
- REINS(レインズ)に不動産の情報を掲載する
- 内見の対応をする
不動産情報サイトとは「SUUMO(スーモ)」や「at home(アットホーム)」などの、一般向けのサイトを指します。
REINSとは、不動産会社しか見ることができないネットワークのことです。
不動産の情報をREINSに掲載することで、各不動産会社の顧客に不動産を紹介してもらえます。ただし、一般媒介契約の場合はREINSへの掲載の義務はありません。
不動産情報サイトやREINSに掲載する情報は、以下のとおりです。
- 売却価格
- 住所
- 駅からの徒歩分数
- 面積
- 間取り
- 築年数
- 写真
- 図面
掲載作業は、不動産会社が対応してくれます。
内見の際には希望者を迎え入れたり、家の中を片付けたりするなど、売り手の協力が必要です。
無事に買い手が決まったら、不動産会社のサポートを受けながら売買契約を結びます。
引き渡しのための準備とは
不動産を引き渡すためには、以下のような準備が必要です。
- 住宅ローンの完済
- 抵当権の抹消登記
- 荷物の撤去
住宅ローンが残っている場合は、引き渡しまでに完済しましょう。
不動産を引き渡すためには「抵当権抹消登記」によって、抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権抹消登記には、住宅ローンを完済した際に金融機関から届く書類が必要なのです。
必要書類の発行や登記手続きには、時間がかかります。
荷物を仮住まいや新居に運ぶ際には、引越し業者も手配しなければなりません。
不動産会社にスケジュールを相談しながら、余裕を持って準備することが大切です。
仲介のメリット
不動産売却における仲介のメリットは、買取よりも高く売却できる点です。
不動産の売却価格は、査定結果を基に定められます。
査定結果を左右する主なポイントは、以下のとおりです。
- 周辺にある不動産の相場
- 不動産の条件(築年数・間取り・設備のグレードなど)
- 立地(周辺環境・最寄り駅までの距離など)
仲介の売却価格は、相場価格に近くなるケースが多いです。
買取では、売却価格が相場よりも低くなる傾向があるため、基本的に仲介のほうが高く売却できます。
仲介のデメリット
不動産売却における仲介のデメリットは、以下のとおりです。
- 売却までの期間が買取よりも長い
- 手間がかかる
- 仲介手数料がかかる
仲介では、買い手を探すために売却活動をおこなう必要があります。
そのため買取よりも売却期間が長くなるうえに、内見対応などの手間もかかるのです。
また仲介手数料がかかることで、売却費用が増えます。
仲介手数料の計算式は、売却金額にもよりますが、以下のとおりです。
仲介手数料 = ( 不動産の売却金額 × 3% + 6万円 ) + 消費税
不動産の売却金額が3,000万円の場合、仲介手数料は105.6万円になります。
仲介を選ぶべき人
不動産の売却で仲介を選ぶべき人は「売却スケジュールに余裕がある人」です。
仲介における売却期間の目安は、3ヶ月〜6ヶ月です。
人によっては、売却までに1年以上かかることもあります。
スケジュールに余裕がないと、早く売却するために売却価格を下げるなど、不本意な売却となってしまうリスクがあります。
仲介には、買取よりも売却価格が高くなるというメリットがあるため、スケジュールに余裕がある場合は仲介を選びましょう。
不動産会社に支払う仲介手数料の額を差し引いても、買取よりは高く売却できるケースが多いです。
不動産売却の買取とは?
不動産売却の「買取」は、不動産会社に不動産を買い取ってもらう売却方法です。
- 不動産の売却先:不動産会社
- 不動産会社の役割:買い手
- 手数料:かからない
- 売却にかかる期間:1ヶ月〜2ヶ月ほど
- 売却価格:相場価格の70%ほど
「買取保証」と混同されやすいですが、仕組みが異なります。
買取保証は、まず仲介として不動産の売却活動をおこないます。
一定の期間が過ぎても買い手が付かない場合に、不動産会社が買い取る仕組みです。
買取の流れ
買取の具体的な流れは、以下のとおりです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と売買契約を結ぶ
- 引き渡しのための準備をおこなう
- 不動産会社に不動産を引き渡す
査定結果を基にして、不動産会社から買取価格が提示されます。
金額に納得できれば、スケジュールなどの諸条件を確認し、不動産会社と売買契約を結ぶことになります。
住宅ローンの完済や抵当権の抹消など、引き渡しのための準備については仲介と同様です。
買取のメリット
不動産売却における買取のメリットは、以下のとおりです。
- 売却までの期間が仲介よりも短い
- 手間がかからない
- 仲介手数料がかからない
売却までの期間が短い理由は、売却活動をおこなう必要がないためです。
買取では、不動産の買い手が見つからないというリスクもありません。
売却活動をおこなわないことで、周りの住人に売却していることがバレづらいというメリットもあります。
また、内見対応の手間も省けます。
不動産会社の立場から見ても、買い手を探す(仲介する)手間が省けるため、仲介手数料はかかりません。
買取のデメリット
買取には、売却価格が仲介よりも低くなるというデメリットがあります。
買取における売却価格の目安は、相場価格の70%ほどです。
不動産の相場価格が3,000万円の場合、買取の売却価格は2,100万円ほどになるイメージです。
不動産会社は、買い取った不動産をリフォームしてから売りに出します。
買い取った不動産の状態によっては、一度更地にしてから新築することもあります。
買取後のリフォームや建て直しに費用がかかるため、売却価格が低くなってしまうのです。
買取を選ぶべき人
以下のような状況の人は、不動産の売却方法として買取を選ぶべきです。
- 不動産の売却を急いでいる
- 不動産の条件が悪い
- 売却していることを知られたくない
買取の大きなメリットは「早く確実に売却できる」という点です。
急な転勤や離婚などで、不動産を早く手放したい人は、買取が向いています。
不動産の条件が悪い場合も、買取で確実に売却したほうが良いでしょう。
不動産の条件が悪いと買い手が付きづらく、売却期間が長引く可能性が高いためです。
以下のような不動産は、一般的に条件が悪いと見なされます。
- 最寄り駅が遠い
- 嫌悪施設(ごみ焼却施設・墓地など)が近くにある
- 災害リスクが高い
また「売却価格が低くなるよりも、売却していることが周囲にバレるほうが嫌だ」という人も、買取を選ぶべきです。
後悔のない仲介・買取のためのポイント
後悔のない仲介や買取にするためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 不動産会社の得意分野を確認する
- 事前準備をしてから不動産会社に行く
- 複数の不動産会社を比較する
ひとつずつ、詳しく解説していきます。
不動産会社の得意分野を確認する
不動産会社には得意分野があるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
不動産会社のパターンとしては、以下が挙げられます。
- 仲介専門
- 買取専門
- 基本は仲介だが、買取保証の対応が可能
自身が希望する売却方法を得意としている、または実績がある不動産会社を選びましょう。
不動産会社の得意分野や実績は、ホームページに記載されていることが多いです。
仲介か買取かを決められない場合は、どちらも対応可能な不動産会社に相談してみてください。
プロの視点から、状況に合わせた売却方法を提案してもらえます。
事前準備をしてから不動産会社に行く
後悔のない仲介や買取にするためには、事前準備をしてから不動産会社に行きましょう。
事前準備としては、以下の3つが挙げられます。
- 希望条件を家族で話し合っておく
- 必要書類を揃えておく
- 相場を把握しておく
まずは売却の希望条件について家族で話し合い、まとめておくことが大切です。
不動産会社に相談しているときに、同席していない家族への確認が必要になると、売却の話が進まず二度手間になってしまいます。
不動産会社から的確な提案を受けるためにも、希望条件を明確にしておきましょう。
また、必要書類を揃えてから不動産会社に行くことで、スムーズに査定を進められます。
査定をおこなう際には、一般的に以下のような書類が必要です。
- 身分証明書
- 不動産購入時の売買契約書
- 図面
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
必要書類は、不動産会社に来店の予約を入れる際に確認してください。
事前に不動産周辺の相場を把握しておくことも大切です。
相場は「土地総合情報システム」や「レインズマーケットインフォメーション」のサイトで調べられます。
相場を把握しておくと、査定への理解が深まるため、主体的に不動産売却を進められるようになります。
複数の不動産会社を比較する
不動産の仲介や買取を依頼する不動産会社は、複数社を比較したうえで選びましょう。
不動産会社への相談や査定は、媒介契約を結ぶ前におこないます。
そのため、何社に相談しても問題ありません。
複数の不動産会社に相談したうえで、以下のポイントを比較してください。
- 査定結果
- 担当者の対応
- サービス内容
査定結果は「根拠がはっきりしていること」と「納得できること」が大切です。
わからないことがあれば、担当者に説明してもらいましょう。
その際に、担当者の知識量や提案力、態度などもあわせて確認します。
また不動産会社によって、サービス内容が異なります。
自身に必要なサービスを提供してくれる不動産会社が望ましいです。
不動産を売却する際のサービスとしては、瑕疵保証やハウスクリーニング、設備点検などが挙げられます。
まとめ
この記事では、不動産の売却における仲介と買取の違いについて、以下のように解説しました。
売却方法 | 仲介 | 買取 |
不動産の売却先 | 個人 | 不動産会社 |
不動産会社の役割 | 不動産の買い手を見つける | 買い手 |
手数料 | かかる | かからない |
売却にかかる期間 | 3ヶ月〜6ヶ月ほど | 1ヶ月〜2ヶ月ほど |
売却価格 | 相場価格 | 相場価格の70%ほど |
仲介を選ぶべき人は、売却スケジュールに余裕がある人です。
不動産の条件が悪かったり、売却を急いでいたりする人は、買取のほうが向いています。
仲介と買取には、異なるメリット・デメリットがあります。
そのため、自身や不動産の状況に適した売却方法を選ぶことが大切です。
また不動産会社を選ぶ際には、以下のポイントを押さえてください。
- 希望の売却方法を得意とする不動産会社を選ぶ
- 実績も参考にする
- 複数の不動産会社を比較する
相場や必要書類の確認など、不動産会社に行く前に準備をしておくことで、スムーズかつ主体的に売却を進められます。
仲介と買取の違いや、売却のポイントを把握して、後悔のない不動産売却にしましょう。