マンションの売却について調べると「5年以内」のワードを目にします。
同じ「5年以内」でも、「築5年以内」と「購入してから5年以内」では見え方が異なります。
本記事では、マンション売却の「5年以内」のワードについて、次の2つのケースを解説します。
- 「築5年以内」のマンションを売却する場合
- 「購入してから5年以内」のマンションを売却する場合
あわせて、税金の節税に役立つ特例や、マンション売却で押さえておくべきポイントについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
5年以内のマンション売却は税金が高い?
5年以内のマンション売却は、税金が高くなるといわれています。理由は譲渡所得税の税率が高くなるためです。
まずは、譲渡所得税についてと、譲渡所得税の5年以内の税率について解説します。
譲渡所得税が発生する
譲渡所得税とは、譲渡所得にかかる所得税です。譲渡所得は、不動産の売却価格からさまざまな経費を差し引いたときに出る利益を指します。
そのため、マンションを売却して利益が出た場合には、譲渡所得税が発生します。
なお、譲渡所得には住民税や復興特別税もかかり、すべてを総称して譲渡所得税という場合もあります。
5年以内の場合は税率が高い
譲渡所得税は売却した不動産の所有年数が5年以内と5年越えで、次のとおり異なります。
| 所有期間が5年以内 (短期譲渡所得) | 39.63% |
| 所有期間が5年超え (長期譲渡所得) | 20.315% |
上記のとおり、所得期間が5年以内の短期譲渡所得は税率が高くなり、納めなければならない税金が高くなります。
ただし、所有期間の捉え方には注意が必要で、売却した年の1月1日を基準とします。
たとえば、2020年7月1日に購入したマンションを2025年8月1日に売却する場合、物理的な所有期間は5年を超えています。
しかし、税法上の判定は「売却した年(2025年)の1月1日時点」で行うため、この時点での所有期間は「4年6か月」となり、短期譲渡所得(5年以内)に区分されます。
5年以内のマンション売却にかかる税金の計算方法
マンションの売却にかかる税金は、次の式で計算できます。
課税譲渡所得×税率=税金額
上記計算をするためには、譲渡所得を明確にしなければなりません。
ここでは、譲渡所得や譲渡所得の計算に必要な費用について解説し、実際に5年以内のマンション売却にかかる税金を計算します。
譲渡所得
まずは、マンション売却の譲渡所得を計算します。計算式は、次のとおりです。
譲渡価格-取得費-譲渡費用=譲渡所得
上記からわかるとおり、譲渡所得を計算するためには、譲渡価格と取得費を明確にする必要があります。
取得費
取得費とは、売却するマンションの購入代金や、購入にかかった費用を合計したものです。
主に次のものが取得費に含まれます。
- マンションの購入代金
- マンション購入時にかかった仲介手数料
- マンション購入時にかかったリフォーム費用
- 購入時にかかった税金(印紙税や登録免許税など)
- 住宅ローンの借り入れから入居までにかかった利子
取得費の計算には、購入時の売買契約書や納税証明書、ローン契約書などが必要です。
また、細かい費用を明確にできない場合は、売却価格の5%(概算取得費)とみなして計算する方法もあります。
また、マンションの購入代金はすべてを取得費に加算できないことに注意が必要です。
マンションの建物部分の不動産価値は経年により減少していくため、購入代金から年数に応じた一定の金額を差し引かなければなりません。
取得費に加算する際のマンションの購入代金の計算には、減価償却費が使用され、計算式は次のとおりです。
購入代金×償却率×経過年数=減価償却費
償却率は建物の用途や構造により定められています。住居用の鉄筋コンクリートマンションは0.022のため、償却率の部分に当てはめて計算しましょう。
譲渡費用
譲渡費用とは、マンションの売却にかかった費用のことです。
譲渡費用には主に次のものが含まれます。
- 売買契約時の印紙税
- 売却に伴う広告費用
- 売却時の仲介手数料
- 不動産の登記費用
譲渡費用に含まれるものはすべて金額がわかるように明細などを取り置いておきましょう。

税金額をシミュレーション
ここでは、5年以内のマンション売却の税金額を、次の条件を用いてシミュレーションします。
| マンション売却費用 | 4,000万円 |
| 購入金額 | 3,200万円 (土地:1,000万円・建物:2,200万円) |
| 譲渡費用 | 150万円 |
| 購入時にかかった費用 | 300万円 |
| 所有年数 | 3年 |
建物部分の減価償却費と購入代金の計算は、次のとおりです。
| 減価償却費 | 2,200万円×0.022×3=145.2万円 |
| 建物の購入代金 | 2,200万円 – 145.2万円 = 2,054.8万円 |
上記に、土地の値段と購入時にかかった費用を加えて、マンションの購入代金と取得費を計算すると、次のとおりです。
| マンションの購入代金 | 2,054.8万円+1,000万円=3,054.8万円 |
| 取得費 | 3,110.9万円+300万円=3,410.9万円 |
つづいて、譲渡所得を計算します。
| 譲渡所得 | 4,000万円-3,410.9万円-150万円=439.1万円 |
上記から、課税対象の譲渡所得は439.1万円になります。
最後に、課税譲渡所得に所有5年以内に売却した場合の税率を掛けて税金を導き出します。
| 税金 | 439.1万円×39.63%=約174万円 |
今回の条件の場合にかかる譲渡所得税は、約174万円です。
【節税】5年以内のマンション売却で使える特例
5年以内のマンション売却では譲渡所得税が高くなりますが、特例を使うことで節税できるケースがあります。
ここでは、5年以内のマンション売却で使える特例を紹介します。

3,000万円の特別控除の特例
3,000万円の特別控除の特例は、譲渡所得から3,000万円までの金額を差し引ける特例です。※4
5年以内であれば、マンションの所有期間は問われません。
3,000万円の特別控除の特例を使うための条件は、以下のとおりです。
- 自身が住んでいたマンションを売却する
- 売却の前年・前々年に3,000万円の特別控除の特例や損益通算及び繰越控除の特例を使っていない
- 売却年と売却の前年・前々年に買換えの特例や交換の特例を使っていない
- マンションの売却にあたって、ほかの特例を使っていない
- 買い手が親族ではない
節税効果が大きいため、条件に当てはまる場合は必ず使いましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、マンション売却後に住宅ローンの借り入れをして新居を購入した場合に使えます。
年末時点での住宅ローン残高の0.7%の金額を所得税や住民税から控除できる制度です。源泉徴収している方は、税金の還付が受けられます。
特例の注意点
マンションの売却で特例を使う際には、次の2点に注意しましょう。
- 住宅ローン控除との併用はできない
- 確定申告が必要
3,000万円の特別控除の特例と住宅ローン控除は併用できません。節税効果や利用条件を踏まえて、自身に合った節税方法を選びましょう。
またマンションの売却で特例を使った場合、利益の有無にかかわらず確定申告が必要です。
確定申告は、マンションを売却した翌年の2/16〜3/15の間におこないます。
申告書を作成し、必要書類とあわせて税務署に提出しましょう。申告先は、売却したマンションを管轄する税務署ではなく、現住所を管轄する税務署です。
確定申告の際は、譲渡所得の内訳書が必要になるため用意しておきましょう。
サラリーマンの場合も、マンションを売却した翌年には、確定申告をおこなわなければならないことに注意が必要です。
5年以内のマンションを売却するメリット
5年以内のマンション売却には、特例が使えること以外にもメリットがあります。
つづいて、5年以内のマンションを売却するメリットを解説します。
売却価格が高い
5年以内のマンションを売却するメリットは、5年超えのマンションに比べて売却価格が高いことがメリットです。
マンションは一般的に新しいものほど高く売れる傾向です。
首都圏のマンションの築年数別の売却価格の相場は、次のとおりです。
- 5年以内:7,619万円
- 5~10年:7,342万円
- 11~15年:6,698万円
- 16~20年:6,336万円
※出典:首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況 【2024年10~12月】
築年数により売却価格は大きく異なるため、少しでも高く売りたい場合は早めの売却がおすすめです。
地価高騰で高く売れる可能性がある
5年以内のマンション売却は、時勢や市況により地価高騰で高く売れる可能性があります。
日本では万博の開催に伴い、関西圏を中心に不動産価格は上昇傾向です。
しかし、今後の金利の動向によっては将来的な上昇に陰りが出る可能性もあるため、好況の間にマンションを売る手もあります
リフォームが必要ない
5年以内のマンションは、基本的に故障や破損している場所がないケースが多く、リフォームの必要がないこともメリットです。
5年以上のマンションを売却する際は、リフォームや清掃費用が必要な場合が多く、費用がかさみます。
また、業者を探したり申し込んだりする手間もかかるため、リフォームの必要がないことは大きなメリットといえます。
5年以内のマンションを売却する際の注意点
マンションを売却する際には、築年数や所有期間にかかわらず、押さえておくべきポイントがあります。
具体的には、以下の5つです。
- 不動産会社選びに力を入れる
- 売却価格は相場に合わせる
- 売却前後の資金計画を具体的に立てる
- 売却理由を明確に説明する
- なるべく早く売却活動を開始する
ポイントを押さえることで、損をしたり、買い手が見つからなかったりなどの事態を避けられる可能性が高くなります。
ひとつずつ見ていきましょう。
不動産会社選びに力を入れる
媒介契約を結ぶ(売却を依頼する)不動産会社は、力を入れて選びましょう。
不動産会社により、次の3つの違いが発生します。
- 買い手の付きやすさ
- 売却金額の高さ
- サービスの手厚さ
マンションを早く・高く売却するためには、マンション売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。
実績が豊富な不動産会社には、効果的な売却活動のノウハウがあります。不動産会社の実績は、ホームページや口コミ、担当者の話から確認しましょう。
またマンション売却におけるサービスには、瑕疵保証や買取保証など、さまざまな種類があります。
自身に必要なサービスの提供がある不動産会社を選ぶことが大切です。
選ぶ際は、複数の不動産会社に相談し、実績やサービス内容、担当者の対応などを比べましょう。
売却価格は相場に合わせる
マンションの売却価格を相場に合わせることも、押さえておくべきポイントのひとつです。
相場よりも高すぎる売却価格を設定すると、買い手が付きづらくなります。
同じような条件のマンションが売り出されている場合、価格が安い方に買い手は流れます。
またマンションを早く売りたいがため、売却価格を安くしすぎることも、おすすめできません。
利益が小さくなるだけでなく、買い手に問題があるマンションかもしれないと疑われる可能性があるためです。
売却するマンションの相場を把握し、適切な売却価格を設定しましょう。
売却前後の資金計画を具体的に立てる
マンションの売却前後の資金計画は、具体的に立てましょう。
資金計画がルーズな場合、売却後の生活が苦しくなったり、売却が頓挫したりする原因となります。
具体的な資金計画を立てるためには、マンションの売却活動を始める前に、次の4点を把握しましょう。
- 住宅ローンの残高
- 売却に使える資金の上限額
- 売却後の生活に必要な資金
- 売却にかかる費用
とくに不動産を購入してすぐに売却する場合は、オーバーローンに気をつけましょう。
オーバーローンとは、住宅ローンの残高が、マンションの売却による利益を上回る状態を指します。
オーバーローンになる場合、資金計画が崩れるケースがあります。
住宅ローンの残高と売却による利益の差額を、自己資金で埋めなければならないためです。
資金計画は、不動産会社や金融機関に相談しながら、具体的に立てることが大切です。
売却理由を明確に説明する
5年以内のマンションを売却する場合は、売却理由を明確に説明することも大切です。
5年以内のマンションの売却は、新しいにもかかわらず手放すことに疑問を持たれるケースも少なくありません。
急な転勤や経済的な問題など、理由を明確に説明することで買い手は安心して購入できます。
とくに事故物件の場合は、心理的瑕疵に該当するため、宅地建物取引業法第47条に基づき、事前に買主へ告知する義務があります。そのため、隠さず正確に伝えるようにしましょう。
なるべく早く売却活動を開始する
マンションは時間が経つほど価値が低下するため、なるべく早く売却活動を開始しましょう。
同じ5年以内でも、1年と5年では、1年のほうが高く売れます。とくに、築年数の節目を超えると売れる値段が大きく下がるため注意が必要です。
マンションの売却には3~6カ月程度かかるといわれているため、売却を決めたらすぐに売却活動を開始することが大切です。
5年以内のマンション売却に関するよくある質問
最後に、5年以内のマンション売却に関するよくある質問をまとめました。
5年以内のマンション売却を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
マンション売却におすすめの時期は?
5年以内のマンション売却は、なるべく早い時期に売却することがおすすめです。
マンションは時間がたつほど価値が低下し、売却価格が下がる傾向です。
とくに、築年数の節目を超えると、売却価格が大きく下がるため注意しましょう。
売却価格の相場の調べ方は?
売却価格の相場を調べるおすすめの方法は、不動産会社の公式サイトから売却したいマンションと似た条件の物件を探す方法です。
また、国土交通省のWebサイト不動産情報ライブラリや、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するREINS Market Informationでも相場を調べられます。
そのほかにも、マンション販売のチラシに似た物件があればチェックする方法もあります。
売却損失があれば税金はかからない?
売却により損失が出た場合は、税金はかかりません。
また、売却により利益が出なかった場合は、確定申告の必要もありません。
まとめ
マンション売却で「5年以内」というワードが出てくる理由は、1つではありません。
築5年以内のマンションを売却する場合、売却価格が高くなりやすいメリットがあります。
いっぽうで、購入してから5年以内のマンションを売却する場合は、譲渡所得税が高くなるというデメリットもあります。
5年以内のマンション売却は、目的により良し悪しが変わります。
マンションの売却時に使える特例や控除、築年数に応じた売却価格などを総合的に考えて、自身に適したタイミングでの売却が大切です。
ぜひ、本記事で紹介した「押さえておくべきポイント」も参考に、満足できるマンション売却をしましょう。
※1:国税庁、主な減価償却資産の耐用年数表
※2:国税庁、「減価償却費」の計算について
※3:国税庁、No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
※4:国税庁、No.3302 マイホームを売ったときの特例
※5:国税庁、No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例


