マンションが思うように売れない場合、もしかしたら修繕積立金の高さが原因になっているかもしれません。何気なく毎月支払っている方も多いかもしれませんが、修繕積立金はマンションによって金額は異なり、年数に応じて段階的に値上げとなることもあります。
この記事では、修繕積立金が高いマンションが売れにくい理由と、修繕積立金が高くてもスムーズに売却する方法を紹介します。
修繕積立金の相場や、修繕積立金が高いマンションの特徴についても解説するので、この機会に修繕積立金について理解を深めておきたい方はぜひ参考にしてください。
そもそも修繕積立金とは?
マンションは経年により劣化をするため、外壁や屋根に対しては一定期間ごとに改修工事を実施し、共用施設であるエレベーターやオートロックなども点検の上修繕する必要があります。
こうした大規模な工事や修繕は、マンションを所有する区分所有者で構成した管理組合が行うことになります。マンションは規模が大きいため工事費も高額となり、数千万円~億単位の費用がかかります。
しかし工事を実施するタイミングごとに、各区分所有者が一括して負担することは難しく、修繕積立金として毎月一定額を積み立てるのが一般的です。※1
ちなみに同じマンションでも、部屋の広さによって修繕積立金は異なり、専有面積が広い部屋の方が修繕積立金の額は大きくなります。
修繕積立金の相場
修繕積立金は各住戸の専有面積の大小だけでなく、マンションごとにも違いがあります。同じ築年数で同等規模のマンションでも、エレベーターの台数や共用施設の充実度でも異なります。
国土交通省が5年ごとに公表しているデータによれば、修繕積立金の平均額は11,243円(駐車場の使用料等から充当額を除く場合)です。※2
ちなみにマンションの形態によっても修繕積立金の平均額も異なり、単棟型の平均額は11,060円、団地型の平均額は12,152円です。
また同じ単棟型でもマンションの階数によって修繕積立金の平均額は異なり、4~5階建は13,147円、20階建て以上は12,305円となっています。マンションの規模によっても、修繕積立金額が異なることがわかります。
管理費との違い
マンションに住む場合、修繕積立金以外に毎月支払う費用として管理費があります。管理費は共用部分や共用施設の電気代や清掃代のほかに、インターネットの使用量などが含まれています。
マンションによってはコンシェルジュが各種サービスの取次などを行うマンションもありますが、こういったマンションは管理費が高くなる傾向があります。
また極端に戸数が少ないマンションは、1戸当たりの負担が増えるため、やはり管理費が高くなるケースが多いでしょう。
国土交通省が公表しているデータによれば、管理費の平均額は10,862円(駐車場の使用料等から充当額を除く場合)で、形態別に比較すると単棟型の返金額が 10,970 円、団地型の平均額が 10,419 円です。※3
マンションに住むことでかかる可能性がある費用は?
マンションに住むと、修繕積立金や管理費以外にどのような費用がかかる可能性があるのでしょうか。この章では、マンションに住むことでかかる可能性がある費用を紹介します。
- 駐車場代
- 駐輪場代
- 専用庭・ルーフバルコニー使用料
- トランクルーム使用料
駐車場代
車を所有している場合は、駐車場代がかかります。一方戸建ての場合は、敷地内に駐車スペースが確保できれば駐車場代はかかりません。
マンションの場合は駐車場がかかるため、毎月かかる費用として想定しておく必要があります。
マンションの立地によって駐車場が足りないケースもあり、その場合は敷地外で月極駐車場を探して借りる必要があるでしょう。
駐輪場代
バイクや自転車を所有している場合は、バイク置き場や駐輪場をそれぞれ借りる必要があります。敷地に余裕があるマンションは使用料がかからないケースもありますが、費用がかかるケースがほとんどです。
またマンションによっては十分な台数を確保できないこともあり、マンションを購入する場合は空き区画有無を確認しておく必要があります。
専用庭・ルーフバルコニー使用料
マンションの住戸によっては、専用庭やルーフバルコニーが付設されていることがあります。それぞれ共用部分ではありますが、付随する住戸には専用使用権があり、独占して使用できるのがメリットです。
専用庭やルーフバルコニーの面積に応じて使用料がかかるケースが多く、使わない場合でも支払わなければなりません。
トランクルーム使用料
マンションによっては、専有部分とは別にトランクルームがあるタイプがあります。住戸の玄関付近に隣接するように設けられている場合は、使用料がかからないケースが多いです。
しかしトランクルームが全住戸分ない場合などは、希望者が使用料を支払って借りるタイプのマンションもあります。
修繕積立金が高いマンションが売れにくい理由
修繕積立金が高いマンションは、なぜ売りにくいのでしょうか。売れにくくなる原因として考えられる、2つの理由を解説します。
月々の支出が家計の負担になるから
住宅ローンを借入れてマンションを購入する場合、通常住宅ローンの返済のほかにかかる費用や支出を考慮して資金計画を立てることになります。
つまり住宅ローンの借入れができたとしても、月々支払う修繕積立金などが負担になり、マンションの購入自体を断念することもあるでしょう。
マンションの価格や条件が同じ場合、修繕積立金が安い方のマンションを選択する可能性もあるかもしれません。
利回りが下がり投資物件に向かないから
マンションを買う人の中には、自分で住むためではなく、賃貸物件として貸し出すことを前提に購入する方もいます。
投資家は利回りに対してシビアなため、家賃収入に対してどの程度支出があるのか計算して、マンション購入を検討することになります。
つまり同等のマンションであれば、修繕積立金が安い方を選ぶ可能性が高く、結果的に購入物件の候補から外れることになるでしょう。
修繕積立金が高いマンションの特徴
他のマンションと比べて修繕積立金が高いとしたら、マンションにはどのような特徴があるのでしょうか。この章では、修繕積立金が高いマンションの特徴について紹介します。
築年数が古い
マンションは築年数が古くなるほど、補修や大規模修繕工事にかかる費用が高額になるため、年が経つにつれて修繕積立金も高くなる傾向があります。
国土交通省のデータによると、2015年以降に完成したマンションの修繕積立金の平均額は6,654円ですが、1995年~1999年に完成したマンションの平均は12,024円とあり、倍近く高いことがわかります。※2
住戸数が極端に少ない
マンションの住戸数が極端に少ない場合、修繕積立金が高くなる傾向があります。マンションの規模が比較的小さくても、大規模修繕工事にかかる費用はある程度かかるため、1戸当たりの負担が大きくなるためです。
国土交通省のデータを参考にすると、総戸数は501戸以上のマンションの修繕積立金の平均額が11,967円であるのに対し、20戸以下のマンションの平均額は14,722円となっており、3,000円近く高いことがわかります。※2
修繕積立金は年数とともに高くなる?
マンションは、年数とともに劣化します。新築当初は建物や設備はあまり劣化しないため、それほど修繕費用はかかりません。しかし築年数が古くなればなるほど維持管理にかかる費用が高額になる傾向があり、それに合わせて修繕積立金が高くなることがあります。
分譲マンションの修繕積立金の積み立て方には大きく2種類の方法があり、基本的には以下のどちらかの方式がとられています。
ちなみにマンション全体ではほぼ同じ割合で採用されていますが、新しいマンションほど「段階増額積立方式」が選択されています。
- 段階増額積立方式
- 均等積立方式
段階増額積立方式
修繕積立金を、段階的に上げていく積立方式です。分譲からしばらくの間は、それほど修繕工事が必要ないため低額にしておき、コストがかかる時期に合わせて修繕積立金の金額を徐々に上げる方法です。
均等積立方式
分譲当時から修繕積立金を均等額にして積み立てる方式です。将来かかる費用を試算し、一定額を積み立てる方法です。
修繕積立金が高いマンションをスムーズに売却する方法
修繕積立金が高いマンションは売りにくいといわれることがありますが、工夫することでスムーズに売却することも可能です。
この章では5つの解決方法を紹介するので、マンションの売却を検討している方だけでなく「売れなくて困っている」という方もぜひ参考にしてください。
- 相場価格よりも少し安めに売り出し価格を設定する
- 値下げをして購入しやすい価格設定にする
- 大規模修繕工事が実施済みなど建物の状態の良さをアピールする
- マンション売却実績が豊富な不動産会社へ依頼する
- 買取による売却も視野に入れる
相場価格よりも少し安めに売り出し価格を設定する
もしすでに「修繕積立金が高い」ことを把握している場合は、近隣の競合となりそうなマンションよりも、少し安めに売り出し価格を設定しましょう。
中には「安くしたくない」と思う方もいるでしょう。しかし売却できなければ結局値下げせざるを得なくなることもあります。
早期に売却することが、結局は高値での売却につながることもあります。早期成約のためには売り出し価格の設定が重要です。不動産会社の担当者とよく相談して、売り出し価格を設定しましょう。
値下げをして購入しやすい価格設定にする
マンションを売り出してから3カ月経っているのにもかかわらず、内覧件数が極端に少ないと感じるときは、値下げを検討しましょう。
競合マンションの成約状況も確認しながら検討し、状況によってはある程度反響を得られるような価格を設定しましょう。
大規模修繕工事が実施済みなど建物の状態の良さをアピールする
修繕積立金が高いということは、管理組合が正常に運営されている証でもあります。一見修繕積立金が安いマンションはよく見えますが、将来大規模修繕工事をするための資金が足りなくなり、区分所有者がそれぞれ負担することになる可能性もあります。
大規模修繕工事をすでに実施している場合は、その旨を説明するようにし、建物の状態が良好であることをアピールしましょう。
マンション売却実績が豊富な不動産会社へ依頼する
マンションが売れないのは、修繕積立金が高いことだけが理由ではない可能性もあります。3カ月程度経っても売れる兆しが見られないときは、不動産会社の変更も検討してみてください。
不動産会社によって得手不得手があり、マンション売却を得意とする不動産会社もあれば、戸建分譲に注力している不動産会社もあります。
不動産会社のホームページなどを確認し、マンション売却実績を確認してみましょう。実際に、近隣のマンションの売却実績を聞いてみるのも1つの方法です。
買取による売却も視野に入れる
住み替えをしたいのに希望するタイミングでマンションが売れないときや、なるべく早期に売却したいときは、買取による売却を検討しましょう。
仲介による売却は、相場価格に近い金額で売却できるのがメリットですが、成約時期がいつになるのかはわかりません。
買取による売却は、相場価格の7~8割程度になるともいわれていますが、引渡しの時期を相談できることもあり、仮住まいの期間を短縮することも可能です。また不動産会社と直接取引することで、仲介手数料も節約できます。
不動産会社によっては、仲介だけでなく買取を相談できるケースもあります。査定を依頼するときは、買取価格も提案してもらいましょう。
まとめ
修繕積立金は、将来の大規模修繕工事に備えて積み立てるものです。したがって安すぎる金額設定は、自分たちの首を絞めることにもなりかねません。工事費用に対して修繕積立金総額が足りないときは、負担金として一括で納めることもあります。
しかし、マンションを購入する人にとっては住宅ローンの返済もあるため、大きな負担になる可能性もあります。金額によっては、マンションを売れにくくする要因にもなりえます。
購入希望者には、修繕積立金が過不足なく積み立てられていることをアピールし、それでも売却が難しい場合は価格の見直しを検討します。
また売却したいタイミングが決まっている方は、不動産会社の変更や買取も検討し、早期成約を目指しましょう。
※1:国土交通省、マンションの修繕積立金に関するガイドライン
※2:国土交通省、平成30年マンション総合調査 管理組合向け調査の結果
※3:国土交通省、Ⅱ 平成30年度マンション総合調査結果