タワーマンションの売却を検討する際、多くの人が「売りにくいのではないか」と不安を抱えています。
実際、タワーマンションは立地や眺望といった魅力がある一方で、資産価値の維持や流動性に課題があるため、売却に苦戦するケースも少なくありません。
この記事では、売却が難しいとされる背景に加え、タワーマンション特有のメリット・デメリットを整理し、高値で売却するための具体策も解説します。
これからタワーマンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
中古のタワーマンションが売りにくいといわれる理由
中古のタワーマンションは、新築と比較すると築年数の経過や維持費の高さが買い手の不安につながり、売却が難しくなるケースも少なくありません。
中古のタワーマンションが売りにくいといわれる主な理由は次の6点です。
- 売買価格や維持費が高い
- 地震時の揺れを懸念する人が多い
- 大規模修繕時のコストが高い
- 日常生活に支障が出る場合がある
- 騒音やニオイのトラブルが起きやすい
- 競合のタワーマンションが多い
各項目をくわしく解説します。
売買価格や維持費が高い
売買価格や維持費が高額になる点は、中古のタワーマンションが売れにくいとされる一因です。
タワーマンションは立地や眺望、充実した共用施設が魅力ですが、共用施設を維持しなければならず、管理費や修繕積立金も高水準に設定される傾向があります。
そのため、売却を検討する際は、価格設定やターゲット層の十分な検討が必要です。
地震時の揺れを懸念する人が多い
タワーマンションは免震構造や制震工法など特殊な工法を採用しているケースが多く、地震の際に高層階ほど揺れが大きく感じられたり、長時間続いたりすることがあります。
揺れが長時間続き、停電時にはエレベーターが停止するリスクもあるため、災害時の生活に不安を感じる方も少なくありません。
購入希望者の不安を軽減するためにも、免震構造の特徴や災害発生時における管理会社の体制をわかりやすく伝えるなどの対策を講じましょう。
大規模修繕時のコストが高い
大規模修繕時のコストが高い点も、中古のタワーマンションが売れにくいといわれる理由の一つです。
高層階の外壁や設備の修繕では、通常のマンションで使用される足場が設置できないため、特殊な工法や重機の導入が必要になります。
さらに、ラウンジやジムなどの共用施設が多い分、工事範囲が広く工期も長引きやすい点が高額になる理由です。
将来的なコストリスクを考慮し、購入を控える動きが売却の難しさにつながっています。
日常生活に支障が出る場合がある
日常生活における不便さも、中古のタワーマンションが売れにくいとされる要因の一つです。
たとえば、朝夕の混雑時にはエレベーターの待ち時間が長くなりやすく、急いでいるときにストレスを感じる場面が想定されます。
また、停電した際は階段を使わざるを得ない状況になるなど、災害時に生活インフラの影響を受けやすい点も課題の一つです。
日常生活で想定される不便さのリスクが、売却の難易度を高める要素となります。
騒音やニオイのトラブルが起きやすい
騒音やニオイに関するトラブルも、タワーマンションの売却に影響を与える要素です。
住戸数の多いタワーマンションでは、生活音や臭気に関するトラブルが発生しやすい傾向があります。
上下左右に多数の住戸が接している構造上、料理中のニオイや水回りの音が他の住戸に伝わりやすく、実際にクレームへ発展した例も少なくありません。
ディスポーザーや換気システムの設計によっては、階をまたいで影響が及ぶ場合もあるでしょう。
内見時に騒音やニオイといった面で不満を抱く人は一定数存在しており、購入を見送るケースも見受けられます。
競合のタワーマンションが多い
競合のタワーマンションが多い点も、中古物件が売れにくくなる原因の一つです。
都市部では同じエリア内に複数のタワーマンションが存在し、常に一定数の売却物件が市場に出ています。
とくに新築や築浅の物件が多く供給されている地域では、価格や設備の面で中古物件は不利になりやすく、選ばれにくい傾向です。
また、同一マンション内で複数の住戸が売り出されている場合、階数や向きが異なっていると比較されやすく、価格競争に巻き込まれるケースも珍しくありません。
周辺の販売状況をふまえた販売戦略が欠かせないため、売却のタイミングや価格設定には十分な検討が求められます。
売れないタワーマンションの特徴
売れにくいタワーマンションには共通する特徴があるため、あらかじめ把握しておくことが重要です。
具体的な例として、次のような点が挙げられます。
- 低層階で需要が少ない
- 日当たりが悪く室内環境に不満が出やすい
- 駅から遠いなど立地や周辺環境が不便
- 築年数が古く設備が老朽化している
- 学区内の学校が定員を超えている
売れにくい物件の特徴を、くわしくチェックしていきましょう。
低層階
タワーマンションは眺望や採光のよさを求める購入希望者が多く、低層階は眺望や採光が制限されやすい点から需要が限られる傾向があります。
階数による価値の差が大きいため、高層階に比べて売却までに時間がかかりやすいです。
低層階を売り出す際は、階段移動のしやすさや防災面の安全性など、眺望以外の利点を具体的に示し、近隣物件と比較しながら適正な価格を設定しましょう。
日当たり不良
タワーマンションのなかには、周辺の建物や立地条件によって十分な日当たりを確保できない住戸があります。
室内が暗いと居住性の満足度が下がり、購入希望者の選択肢から外されやすくなります。
売却を検討する際は、室内の照明計画や家具の配置で明るさを補う方法を取り入れると効果的です。
内覧では時間帯を工夫して自然光が入る様子を見せるなど、実際の暮らしやすさを伝える工夫もしましょう。
立地・周辺環境が悪い
駅からの距離が遠い、コンビニや郵便局などの施設が少ないといった立地は、購入希望者には大きな不安要素になります。
立地や周辺環境の課題は簡単に変えにくく、需要が限られて売却が長期化しやすいです。
売却活動では、物件自体のメリットや管理体制の良さをアピールしましょう。
最寄り駅までのバスルートや再開発計画など、マイナス面を補える周辺情報も積極的に共有することが重要です。
築年数が古い
築年数が経過したタワーマンションは、設備の老朽化や耐震性への不安から購入希望者に敬遠されやすいです。
新築や築浅物件と比較されると見劣りしやすく、価格交渉が難航して売却が長引くこともあります。
古い物件を売却する際は、リフォームの実施状況や共用部分のメンテナンス履歴を整理し、安心して検討できる材料としてわかりやすく伝えましょう。
学区内の学校の定員がオーバーしている
学区内の小学校や中学校が定員超過となっている地域では、購入をためらうファミリー層も少なくありません。
とくに、子どもを希望の学校に通わせたいと考える家庭にとって、「転入できない可能性がある」「指定校以外の遠方の学校に回されるかもしれない」といった懸念は、物件選びに直結する重要な判断材料です。
通学先が確定しない状態では、教育環境の見通しが立てにくくなるため、購入を見送る世帯が出てくる可能性もあります。
売却を進めるにあたっては、現在の学区の定員状況や、定員超過時の対応方針(抽選制・越境通学の有無・通学バスの有無など)について、事前に調査しておくと安心です。
購入希望者から質問された際に、的確に回答できれば売主としての信頼性にもつながります。
タワーマンション売却におすすめのタイミング
タワーマンションを有利な条件で売却するには、タイミングの見極めが重要です。
売却の検討にあたっては、次の4つの観点を意識しましょう。
- 築年数
- 所有期間
- 税金控除
- 不動産市場
それぞれ売却にどう影響するのか、詳しく解説します。
築年数
築年数が浅いほど、タワーマンションの売却は有利になりやすい傾向です。
物件の築年数が経過するにつれて、外観や設備の老朽化が進み、買い手にとっての資産価値は下がっていきます。
とくに築10年以上の物件は価格の下落する傾向が強いため、売却を検討するなら築10年以内に動き出すのが理想的です。
築年数の経過による資産価値の変化を把握し、早めの売却を検討しましょう。
所有期間
不動産の所有期間によって、売却時の課税額が変わる点も重要なポイントです。
譲渡所得(※1)に対する課税は、所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年を超えると「長期譲渡所得」として区分されます。
なお、この「所有期間」は売却した年の1月1日時点で判定されるため、売却日が5年を過ぎていても、1月1日時点で5年未満であれば「短期譲渡所得」として扱われます。
長期譲渡所得の税率は短期よりも低く、売却後に手元に残る金額が多くなります。
所有期間に応じた課税の違いを考慮しながら売却のタイミングを見極めましょう。
(※1)譲渡所得とは、保有する資産を売却・譲渡した際に得られる利益のことです。
税金控除
税金控除制度の活用は、タワーマンション売却後の手取り額に大きく影響します。
たとえば、居住用財産を売却する場合、一定の条件を満たすと「マイホーム(居住用財産)の譲渡所得特別控除」が適用されると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
この特例を受けるには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 売却する物件が、自分または家族が住んでいた居住用財産であること
- 売却した年の前年・前々年に同じ特例を使っていないこと
- 住まなくなってから3年以内に売却していること(※原則)
詳細な条件は税務署や税理士に確認し、早めに準備することをおすすめします。
適用条件の確認は早い段階で行い、売却スケジュールに反映させることがおすすめです。
不動産市場
不動産市場の動向は、タワーマンションの売却価格に直結します。
市場が活性化しているタイミングで売却すれば、成約価格の上昇を見込めるでしょう。
たとえば、低金利が続いている時期や、住宅需要が高まる年度末は、購入希望者が増える傾向があります。
一方で、景気が悪化したり金利が上昇したりすると、買い控えが進み価格が下がる可能性があります。
後悔のない売却を実現するには、市場動向を見極めたうえでの判断が欠かせません。
タワーマンションを高く売却するコツ
タワーマンションは売却が難しいとされるケースもありますが、次のような適切な対策を講じれば高値での成約も十分に可能です。
- 同じタワーマンション内で売出し中の物件があるか調べる
- タワーマンションを分譲した不動産会社に相談する
- 複数の不動産会社に査定依頼する
- 内覧者にタワーマンションのメリットを正しく伝える
- 自身で相場を調べておく
- 適した媒介契約を選ぶ
- ホームステージングを活用する
ここでは、タワーマンションを高値で売却するために有効な7つの対策を紹介します。
同じタワーマンション内で売り出し中の物件があるか調べる
タワーマンションを高く売却するためには、同じ棟内で売り出されている物件の有無をあらかじめ確認しておくことが重要です。
戸数が多いタワーマンションでは、同時期に複数の住戸が売却されるケースも少なくありません。
競合物件の存在は、価格や条件の比較材料となり、購入希望者の判断に影響します。
現在売り出されている物件があれば、価格、所在階、専有面積、間取りなどの情報を比較し、自身の住戸がどの程度の価格帯で売却できるかを見極めましょう。
タワーマンションを分譲した不動産会社に相談する
タワーマンションを売却する際は、物件の特徴を熟知した不動産会社へ相談する方法が有効です。
分譲を担当したデベロッパーのグループ会社には、仲介をおこなう不動産会社が含まれている場合があります。
関連会社では新築だけでなく中古タワーマンションの購入を検討する顧客情報を把握していることが多く、強みを活用すれば売却を比較的スムーズに進めやすいでしょう。
複数の不動産会社に査定依頼する
タワーマンションを適正価格で売却するには、一社だけに依頼せず複数の不動産会社に査定を依頼することが基本です。
会社によって査定額は異なり、比較しないと相場から外れた条件で進めてしまうリスクがあります。
ただし、査定額が高いだけで決めるのは避けましょう。
査定はあくまで目安であり、提示された価格で必ず売却できるわけではありません。
各社が示す金額の根拠や説明内容を確認し、担当者の提案力や信頼性も含めて総合的に判断してください。
内覧者にタワーマンションの魅力を正しく伝える
内覧では、タワーマンション特有の魅力を十分に伝える姿勢がスムーズな売却につながります。
とくに、高層階からの開放的な眺望や、エントランスラウンジ・ゲストルーム・フィットネスジムといった共用施設の充実度は、一般的なマンションにはない魅力といえます。
さらに、24時間対応のコンシェルジュサービスやセキュリティ体制の充実など、安心・快適な暮らしを支える設備も、購入希望者から評価されやすいポイントです。
設備や環境面のアピールポイントは広告だけでは伝わりにくいため、内覧時に具体的なメリットとして丁寧に説明できるよう準備しておきましょう。
自身で相場を調べておく
タワーマンションを少しでも高く売却するには、市場相場を把握しておくことが大切です。
公的サービスも活用して、居住エリアの取引価格を把握しましょう。
サービス名 | 特徴 |
不動産情報ライブラリ | ・国土交通省が運営しているサイト ・土地・建物の実際の取引価格を調査できる ・取引情報を基にしているため信頼性が高い |
レインズマーケットインフォメーション | ・不動産流通機構が運営しているサイト ・マンション・戸建ての成約価格情報がわかる ・エリアごとの動向を把握しやすい |
事前に相場価格をある程度把握できれば、不動産会社の査定額が妥当なのかおおよそ判断することができます。
また住宅ローンの残債額も確認し、売却によって完済できるかも確認しておくとスムーズです。
相場を踏まえたうえで価格設定を検討し、強気すぎない現実的な売却活動を進めましょう。
適した媒介契約を選ぶ
媒介契約の選び方も、タワーマンションを高く売却するために重要です。
不動産会社に売却を依頼するときは、専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3種類から契約形態を選びます。
媒介契約の種類 | 特徴 |
専属専任媒介 | ・依頼できるのは一社のみ ・売却活動の報告義務あり ・不動産会社が見つけた購入希望者とのみ取引できる |
専任媒介 | ・依頼できるのは一社のみ ・売却活動の報告義務あり ・自分で購入希望者を探して取引できる |
一般媒介 | ・複数社へ依頼できる ・売却活動の報告義務なし ・自分で買主を探せる |
高額物件の場合は、売却活動の報告義務があり販売活動に注力しやすい専属専任媒介や専任媒介を選ぶと安心です。
各契約の特徴を比較し、希望に合わせて適切な媒介契約を選択してください。
ホームステージングを活用する
ホームステージングは、モデルルームのように室内を演出し、購入希望者に好印象を与える手法です。
タワーマンションの魅力をより引き立て、生活をイメージしやすくするため、成約率の向上が期待できます。
家具のレンタルやインテリアコーディネートを活用し、内覧時に印象を高めると売却活動を有利に進められます。
自力での演出が難しい場合は、専門業者へ依頼する方法も検討しましょう。
タワーマンションの売却に関するよくある質問
タワーマンションの売却を検討する方から、よく寄せられる質問をまとめました。
購入時の不安や買い取りの可否、将来の空き家問題など、気になるポイントを確認しておきましょう。
タワーマンション購入は後悔だらけ?
タワーマンションの購入を後悔する声は、立地や階層、周辺環境が自身のライフスタイルに合わない場合に多い傾向があります。
とくに高層階特有の不便さや、管理費・修繕積立金の負担などが負担に感じやすい要素です。
購入後に後悔しないためには、眺望や共用施設だけでなく、通勤・通学、買い物の利便性や将来の管理状況まで確認しておくことが大切です。
不動産会社に買い取りしてもらえる?
条件が整えば、不動産会社による直接買い取りも可能です。
一般的には、築年数が比較的新しく、立地や管理状況が良好な物件が買い取り対象になりやすい傾向があります。
ただし仲介での売却に比べると価格が低くなるケースが多いため、急いで現金化したい場合や、周囲に売却を知られたくないときに活用するとよいでしょう。
複数の不動産会社を比較して、納得できる形で売却を進めることが大切です。
将来的にはタワーマンションは空き家だらけになる?
タワーマンションが将来的に空き家だらけになるという見方は一部にありますが、立地が良く管理状態が適切な物件は需要の継続が見込めます。
ただし、築年数の経過とともに修繕積立金の不足や、住民の高齢化による住み替えなどの課題があるのも事実です。
将来の空き家リスクを考慮して、市場動向や管理状況を十分に確認したうえで、購入や売却のタイミングを見極める姿勢が求められます。
まとめ
タワーマンションは一般的なマンションにはない特徴があり、売却時には魅力を十分に伝えることが高値売却につながります。
売却が難しいといわれるケースもありますが、立地条件や共用施設などのメリットを理解してもらえれば、相場に近い価格でスムーズな成約を期待できるでしょう。
納得できる価格で売却するには、不動産会社選びが大切です。
複数社に査定を依頼し、タワーマンションの売却実績が豊富な不動産会社を選ぶようにしましょう。