離婚することが決まると、いろいろな手続きが必要になります。その中でも財産分与は、優先度が高い手続きの1つでしょう。
離婚後も共有名義のマンションをそのままにしておくと、トラブルになることがあるので、売却することをおすすめします。
この記事では、共有名義のマンションを売却した方が良い理由について解説します。売却が難しい方のために、共有名義を解消する方法も紹介するのでぜひ参考にしてください。
そもそも共有名義とは?
1つの不動産を複数名の人が所有している状態を共有名義、もしくは共同名義といいます。一方で、1人で不動産を所有していることを、単独名義といいます。
たとえば、2人で資金を出し合って不動産を購入した場合は共有名義となりますが、相続が原因で共有名義になることもあります。
共有名義の不動産を登記する際は、それぞれの所有権の割合を数字で表します。たとえばマンションの購入代金の70%を夫が、30%を妻が支払ったときは、夫の持分は7/10、妻は3/10とします。
ちなみに共有名義でマンションを所有する場合は、以下のようなケースが考えられます。
マンションを共同で購入したケース
たとえば夫婦で資金を出し合ってマンションを購入した場合、共有名義になります。出資の割合で持分を設定して、所有権の割合を定めて登記します。
住宅ローンが共有名義になっているケース
夫婦が各々住宅ローンを組んでマンションを購入する場合は、共有名義になります。1つの不動産を購入するために、夫婦(もしくは親子)がそれぞれ契約者となってローンを組むことを「ペアローン」といいます。
ペアローン・連帯債務・連帯保証とは?
夫婦二人が協力して住宅ローンを借りる場合、ペアローン以外に「連帯債務型」や「連帯保証型」があります。
- ペアローン
- 連帯債務(収入合算)
- 連帯保証(収入合算)
ペアローン
1つの不動産を購入するのに、夫婦がそれぞれ契約者となって住宅ローンを借り入れることをいいます。別々のローンになるため、夫婦それぞれが団体信用生命保険に入ることになり、事務手数料もそれぞれかかります。住宅ローン控除を、それぞれ受けることができるのがメリットです。
連帯債務(収入合算)
夫婦のうち一方が主債務者となり、もう一方が連帯債務者となって住宅ローンを借り入れることをいいます。連帯債務者は、主債務者と同等の返済義務を負います。フラット35で収入合算する場合は連帯債務となりますが、民間の金融機関で連帯債務とできるのはごく一部です。
夫婦ともに住宅ローン控除を受けられますが、団体信用生命保険に加入できるのは、主債務者のみです。
ただし、連帯債務の夫婦両方とも保険の対象となる「夫婦連生型」という団信に加入できるケースもあります。この場合はどちらか一方が死亡すると保険金でローンの全額が完済されます。夫婦連生型の団信はフラット35を借りるときに利用できるほか、民間金融機関の住宅ローンでも利用できる場合があります。※2
連帯保証(収入合算)
夫婦のうち一方が債務者として住宅ローンを借りて、一方が債務を保証する方法です。万が一債務者が支払えなくなったときは、連帯保証人であるもう一方が返済することになります。主契約者のみが住宅ローン控除を受けることができ、団体信用生命保険に加入できます。
財産分与のルールとは?
財産分与とは、結婚後に夫婦で築いた財産を公平に分配するための制度です。割合について法律上の決まりはなく、夫婦で協議して金額や分配方法を決めますが、財産を1/2ずつで分配するのが一般的です。
なおこの財産分与の割合を定めるうえで収入は関係なく、一方が専業主婦(夫)の場合であったとしても、財産を築くのに内助の功として相手を支えたものと考えます。
なお離婚前でも後でも財産を分与できますが、離婚後2年を経過すると家庭裁判所に申し立てできなくなるため、遅くなり過ぎないように注意しましょう。
離婚時にはマンションを売却すべき理由
離婚する際は後々のトラブルを避けるためにも、共有名義のマンションは売却することをおすすめします。おもな4つの理由について解説します。
- 相手が住宅ローンを滞納するリスク
- 相手の同意がなければ売却ができない
- 相続時にトラブルになるおそれがある
- 住宅ローンを借りている場合は賃貸できない
相手が住宅ローンを滞納するリスク
離婚の際に「住宅ローンは払い続ける」と約束したとしても、相手がローン完済まで払い続ける保証はありません。
もし相手側が住宅ローンを滞納した場合は、連帯保証人が債務を負うことになり、状況によっては金融機関から一括返済を求められることがあります。最終的に競売になるおそれもあるため、返済リスクを回避するためにも売却することを検討しましょう。
相手の同意がなければ売却ができない
共有名義のマンションは、相手の了承なしに売却できません。自分の持ち分のみを売ることは可能ですが、他人と共有名義であるマンションを個人が買う可能性は低く、買取業者に相談することになるでしょう。持分のみを相場価格で売却するのは、かなり難しいといえます。
相手が所有することを望むのであれば、マンションの評価額を参考にして、相手に持分を買取ってもらう方法があります。
相続時にトラブルになるおそれがある
もし相手が亡くなり、相続が発生したときは、相手側の相続人とマンションを共有することになります。
離婚後は相手に連絡しにくくなることが多く、いつのまにか相続人とマンションを共有することになっていたということも少なくありません。相続人が多いときはますます売却も難しくなるため、早めに共有名義の財産は処分するようにしましょう。
住宅ローンを借りている場合は賃貸できない
共有名義のマンションにどちらも住まないけれど、売却が難しいときは賃貸物件として貸し出そうと考えるかもしれません。
しかし住宅ローンが残っている状態で、貸し出すことはできません。もし賃貸を考えるのであれば金融機関に相談し、投資用ローンやフリーローンに変更しましょう。
共有名義を解消する方法とは?
マンションの共有名義を解消したい場合、どのような方法があるのでしょうか。この章では、代表的な方法を4つ紹介します。
- 住宅ローンがなければ、名義を変更する
- 住宅ローンを借り換えて単独名義にする
- 住宅ローンを完済して単独名義にする
- マンションを売却して財産分与する
住宅ローンがなければ、名義変更する
マンションが共有名義でも、住宅ローンが残っていなければ名義を変更するだけで、単独所有にすることができます。
たとえば1/2ずつ財産分与するのであれば、マンションの評価額の半額を相手側に支払い、所有権移転登記をします。
マンションの評価額は、不動産鑑定士に依頼してマンションの価額を求める方法がありますが、依頼するのに20~40万円かかるのが一般的です。他にも不動産会社へ査定依頼する方法もありますが、何を基準するかについてはお互いによく相談した上で決めるようにしましょう。
ちなみに財産分与については、お互いの話し合いで決めることができるため、金銭のやり取りは必ずしも必要ではありません。
住宅ローンを借り換えて単独名義にする
夫婦でペアローンを借りている場合でも、住宅ローンを1本化して単独名義にできれば、単独で所有することができます。
なお住宅ローンを借りている場合は、金融機関に名義変更について了承を得る必要があります。名義だけを変更すればよい訳ではありませんので、くれぐれも注意しましょう。
住宅ローンを完済して単独名義にする
住宅ローンの残高によっては完済し、マンションの評価額の半額を相手側に支払うことで単独名義にできます。資金にゆとりがあればそのまま住むことができ、財産として残すこともできます。
しかし相手がマンションを手放さない可能性があり、その場合は話し合いが必要です。
マンションを売却して財産分与する
マンションを売却して、共有名義を解消する方法です。2人の意見が合わなければ売却できませんが、売ることで住宅ローンを解消でき、財産分与することもできます。
売買価格や住宅ローンの残債額によっては手元に現金が残らないこともあるため、事前に不動産会社に査定を依頼して、手元に残る金額を試算しておきましょう。
共有名義のマンションを売却するメリットとデメリットとは?
共有名義のマンションを、売却するメリット・デメリットを紹介します。売却を検討する場合は、デメリットもあることを確認しておきましょう。
メリット
共有名義のマンションを売却することで、相手の連帯保証人という立場も解消できます。つまり関係性を断ち切ることができるので、相手の債務を負うリスクはなくなり、将来相続問題に巻き込まれることもなくなります。
またマンションを売却することで、まとまった資金を手にすることができ、新しい生活を始める資金にできます。
デメリット
マンションの売値が住宅ローンの残高以下になる場合は、自己資金を持ち出すことになります。売却が決まってから後悔しないためにも、査定額を参考に手元に残る金額を確認しておきましょう。
またマンションを売却する際は、不動産会社へ支払う仲介手数料や引っ越し代もかかります。売却するために手数料がかかることを、ぜひ想定しておいてください。
共有名義のマンションに関するよくある質問
最後に、共有名義のマンションにまつわるよくある質問をQ&A形式で紹介します。
財産分与すると税金はかかる?
離婚による財産分与は、夫婦で築いた財産を分配することになります。つまり贈与とはみなされないため、基本的に贈与税はかかりません。※3
しかし一定の場合は、贈与税がかかる可能性があるため注意しましょう。たとえば以下のようなケースでは、贈与税が課される可能性があります。
- 分与した財産が、夫婦で築いたことを考慮しても多すぎると判断された場合
- 贈与税や相続税の課税を免れることを目的に、財産分与したとみなされた場合
マンションに住み続けたい場合はどうする?
離婚後も共有名義のマンションに住み続けたい場合は、どうしたらよいのでしょうか。たとえば子どもの学区を変えたくない場合や、住宅ローンの残高によっては、そもそも売却したくてもできないケースもあるでしょう。
相手側の了承があれば、共有名義のまま住み続けることは可能です。しかし相手側が、離婚後も住宅ローンを返済を続ける保証はありません。相手が滞納し続けると、競売になる可能性もあり、その場合は立ち退きを余儀なくされます。
収入にゆとりがある場合は、金融機関に相談して住宅ローンを1本化し、単独名義にすることも検討しましょう。また住宅ローンの残高によっては完済し、抵当権を抹消して名義を単独にする方法もあります。
話がまとまらないときの解決法は?
お互いの希望が異なる場合は、話がまとまらずトラブルになる可能性もあります。話し合いが長期化すると日常生活にも支障が出てしまいますので、なるべく早く解決するようにしましょう。
もし離婚による財産分与や共有名義のマンションについて話がまとまらないときは、家庭裁判所の調停手続きをする方法や、弁護士へ相談する方法があります。
しかし金銭的に弁護士への相談が難しい場合は、まず「法テラス」へ相談してみましょう。法テラスとは、国が設立した法的なトラブルを解決するための総合案内所です。経済的に余裕がない方に対しては、無料の法律相談を行っており、弁護士費用の立て替え制度(民事法律扶助)などもあります。
なお法テラスでは、収入に関係なく解決に役立つ法律や相談窓口の情報を得ることもできます。以下の通り、電話やメールの他、対面での相談も可能です。
まとめ
離婚後にも共有名義のマンションを所有し続けることで、住宅ローンの返済リスクや、相続問題に巻き込まれる可能性があります。とくに住宅ローンの残高がある場合は、共有名義を解消するためにも、売却することをおすすめします。
マンションを売却することで関係性を解消することができ、売却価格によっては新生活に必要な資金を作ることも可能です。
まずはマンションの資産価値を知るためにも不動産会社へ査定依頼し、売却にかかる手数料を試算して、手元に残る金額を確認しましょう。
※1:連帯債務・ペアローン・連帯保証(所得合算)の違い
※2:連帯債務と連帯保証の違いは? 夫婦で組む住宅ローンの方法と注意点
※3:No.4414 離婚して財産をもらったとき