専任媒介契約は、一般媒介契約に比べて依頼者にも制約があるものの「不動産会社の積極的な活動を期待できるので選んだ」という方は多いかもしれません。
しかし専任媒介契約を締結しても、早期にマンションを売却できるとは限りません。この記事では専任媒介契約を締結しても売れない理由と、売れないときの対処法を紹介します。
またマンションの売却を検討している方のために、売却を成功させるための7つのコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
専任媒介契約とは?
不動産会社へ売却を依頼する場合は、売買価格や報酬について取り決めて、媒介契約を締結することになります。
媒介契約には3つの種類があり、専任媒介契約の他に一般媒介契約と専属専任媒介契約があります。依頼者は希望や条件に合わせて媒介を選ぶことができますが、それぞれメリットやデメリットがあるため、よく理解したうえで選択したいものです。
なお、3つの媒介契約の特徴や違いについては以下の通りです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数社との契約 | 〇 | × | × |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 任意 | 義務(7営業日以内) | 義務(5営業日以内) |
不動産会社の売主への業務報告 | 任意 | 義務2週間に1回以上 | 義務1週間に1回以上 |
自己発見取引(売主が自ら発見した相手との契約) | 〇 | 〇 | × 必ず媒介契約を結んだ不動産会社を介して契約する必要あり |
契約有効期間 | 法律上の制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
※ 媒介契約とは?
専任媒介契約のメリット
専任媒介契約は、不動産会社の手厚い対応を期待できます。不動産会社はレインズへの登録を、媒介契約の翌日から7日(定休日は除く)以内にする必要があります。また売却活動の業務報告については、2週間に1回以上文書もしくはメールなど、書面による報告が義務付けられています。
専任媒介契約は1社に限定されるため、売却に関する窓口が1つになります。複数社に依頼すると、連絡が入るたびに対応しなければなりませんが、専任媒介契約であれば、内覧がバッティングしないように調整してもらうこともできます。
また不動産会社によっては、専任媒介契約を締結した向けに、独自にサービスを用意していることもあります。たとえばハウスクリーニングや傷のリペア、プロのカメラマンによる撮影などがあります。査定依頼した際は、どのようなサービスがあるのか確認しておきましょう。
専任媒介契約のデメリット
専任媒介契約を選択した場合、不動産会社が1社に限定されます。その不動産会社の広告量やノウハウが売却に影響する可能性があるため、不動産会社の選定が重要になるでしょう。
また専任媒介契約は、「囲い込み」される可能性があります。囲い込みとは、不動産会社が社内両手(売主と買主から手数料を得ること)となるように、他社へ情報提供をせず、内覧希望も受け付けないことを意味します。
囲い込みは売主にとっては不利になることが多いため、信頼できる不動産会社かどうか見極めることが重要になるでしょう。
専任媒介契約はレインズへの登録が義務付けられているため、近隣住民に売却中であることを知られてしまう可能性があります。隠しておきたい場合は、一般媒介契約をおすすめします。
専任媒介契約に向いている人とは?
専任媒介契約は自己発見取引ができるため、親族や知人が買主になる可能性がある人や、買主を自分で見つけられる可能性がある人に向いています。
また専任媒介契約は、不動産会社とのやり取りが1社に限定されます。窓口が1つになるため、煩わしい思いをしたくない人にも向いているでしょう。
依頼したい不動産会社が決まっていて、サービスを利用してなるべく早く売却したい人には、専任媒介契約をおすすめします。
専任媒介契約を締結したのにマンションが売れない理由
マンションを売り出しているのにもかかわらず、思うように成約につながらないときは、何かしらの原因があるかもしれません。
この章では、マンションが売れない原因として考えられる、5つの理由を紹介します。
- 不動産会社に囲い込みをされているから
- 相場価格と比べて高いから
- マンション売却が得意ではないから
- 担当者のスキルや経験が不足しているから
- 内覧時の対応が悪いから
不動産会社に囲い込みをされているから
マンションを売り出してから一定期間経っているのにもかかわらず、内覧数が極端に少ないと感じる場合は、囲い込みされている可能性があります。
不動産会社がレインズへ正しい内容で登録しているのか確認するためにも、レインズの「登録証明書」の提示を求めましょう。証明書に記載されているURLにアクセスし、IDとパスワードを入力することで、登録内容を確認できます。
また囲い込みを疑い、登録証明書の提示や反響数について質問することで、囲い込みをけん制することにもつながるでしょう。
相場価格と比べて高いから
専任媒介契約を選択しても、相場価格より高い価格設定をした場合、売却に苦労する可能性があります。
スムーズな売却には、適正な価格設定をすることが重要です。希望価格で売り出すことは可能ですが、なるべく不動産会社の査定価格を参考にして決定しましょう。
マンション売却が得意ではないから
スムーズに売却できないのは、そもそもマンション売却が得意ではない不動産会社へ依頼しているのかもしれません。不動産会社によって、得意とする分野や強みが異なります。
マンション売却を依頼するときは、マンションの売却実績がどの程度あるのか確認し、マンションが所在するエリアを熟知しているのかどうかもチェックしてみましょう。不動産会社のホームページを見ることで、ある程度判断できることもありますが、直接担当者に聞いてみることをおすすめします。
担当者のスキルや経験が不足しているから
マンション売却の実績が豊富な不動産会社でも、担当者のスキルが不足している場合、スムーズに売却できない可能性があります。
複数の不動産会社へ査定額の根拠や実績の有無を質問することで、力量をある程度判断できます。複数社へ査定依頼して、比較したうえで依頼先を決めましょう。
内覧時の対応が悪いから
内覧数はある程度あるのに、なかなか成約に結びつかないのは、内覧時の対応の悪さが影響していることも考えられます。
内覧者から質問が出た際は快く返答し、購入後の生活がイメージできるような情報を提供するようにしてください。
しかし、アピールし過ぎるのも考えものです。気持ちよく見てもらえるように、自然な対応を心がけましょう。
専任媒介契約でマンションが売れないときの対処法
専任媒介契約を締結しているのにマンションが売れないときは、どのような対処法が有効なのでしょうか。
この章では8つの対処法を紹介しますので、状況に応じて実践してみてください。
- 媒介契約を一般媒介に変更する
- 担当者の変更を希望する
- 不動産会社を変える
- 室内を整理整頓し、念入りに清掃する
- マンションのアピールポイントを見直す
- 写真の見栄えを重視する
- 売り出し価格を見直す
- 買取による売却も視野に入れる
媒介契約を一般媒介に変更する
専任媒介契約でマンションが売れないときは、一般媒介契約への変更を検討しましょう。マンションの条件によっては一般媒介契約に変更し、広告活動する不動産会社を増やすことで、早期売却につながる可能性もあります。
ただし専任媒介契約の期間中に一般媒介契約に変更して他社で成約になった場合、それまでにかかった広告費を請求されることがあります。専任媒介契約を解約、もしくは一般媒介契約に変更する場合は、契約期間が終了するタイミングにしてください。
担当者の変更を希望する
担当者のスキル不足が原因でマンションが売れないと感じる場合は、担当者の変更を希望してみましょう。しかし広告してから反響を得られるまでに時間がかかるため、短期間で不動産会社を変えるのは得策ではありません。
また、かならずしも担当者の変更ができるとは限りません。まずは担当者の上長に状況を説明し、相談することから始めましょう。
不動産会社を変える
不動産会社がマンション売却を得意としていない、もしくはマンションが所在するエリアを熟知していないと感じる場合は、不動産会社の変更を検討します。
媒介契約が終了するタイミングで不動産会社へ申し出るようにし、早めに依頼先を選定して、売却活動に空白期間が生じないように注意しましょう。
室内を整理整頓し、念入りに清掃する
マンション内覧時の印象が重要です。内覧前になるべく室内を整理整頓し、とくに水回りや目につく場所は念入りに清掃しておきましょう。
室内に家財道具が多すぎると、実際の専有面積よりも狭い印象を与えてしまいます。なるべく不用品は処分し、目に見える場所に生活感が出るものを置かないようにしてください。
マンションのアピールポイントを見直す
マンションに住むことで得られるメリットを、内覧の際に上手に伝えてみましょう。1度の内覧で購入するか否かを判断することが多く、印象に残らないマンションは候補から外れてしまいます。
またマンションの特徴やメリットをリストアップし、担当者からも説明してもらうようにします。また広告や図面にも反映してもらうことも、忘れないようにしましょう。
写真の見栄えを重視する
不動産会社のホームページや、不動産ポータルサイトに掲載されている写真を確認し、見栄えが良くない場合は差し替えを依頼しましょう。
撮影時はカーテンを開けて、照明も点灯します。また南向きであればお昼頃、東向きは午前中など、太陽の光が入る時間帯に撮影するように工夫することで見栄えもよくなります。
売り出し価格を見直す
マンションが売れないのは、相場価格と比べて価格が高いことが原因かもしれません。3カ月程度経っても売れないときは、売り出し価格を見直しましょう。
たとえば同じマンション内に売り物件があるときは、かならず比較されてしまいます。価格競争になってしまうこともあるため、割安感のある価格を設定し、なるべく早めに売却することをおすすめします。
買取による売却も視野に入れる
仲介による売却が難しいときは、買取による売却を検討します。相場価格の7~8割程度になることが多いものの、「仲介手数料不要」や「仮住まいの期間を短縮できる」などのメリットもあります。
とくに買い替えを予定している場合は、買取による売却も視野に入れ、資金計画を立てておくと安心です。
マンション売却を成功させるためのコツ
最後に、マンション売却を成功させるコツを紹介します。売却を予定している方だけでなく、マンション売却が思うように売却できないと感じている方もぜひ参考にしてください。
- 複数社に査定依頼して不動産会社を比較する
- マンション売却が得意な不動産会社か見極める
- 不動産会社に任せきりにしない
- 担当者との相性も重視する
- 相場価格や競合物件を把握する
- 生活感を感じさせないように工夫する
- マンションのメリットを上手にアピールする
複数社に査定依頼して不動産会社を比較する
不動産会社へ査定を依頼する際は、1社だけでなく複数社に依頼し、査定価格を比較するようにします。
不動産会社によって査定価格が異なることがありますが、複数の査定価格を確認することで、適正価格を把握しやすくなります。
マンション売却が得意な不動産会社か見極める
不動産会社によって特徴があり、強みも異なります。またマンションの立地や条件によっては、かならずしも大手の不動産会社が向いているとは限りません。
不動産会社の規模だけでなく、店舗の立地や担当者との相性、独自のサービスの有無など総合的に判断して依頼先を決めましょう。
不動産会社に任せきりにしない
専任媒介契約は、1社に限定して売却を依頼することになります。手厚い対応が期待できる一方で、囲い込みされるおそれもあります。
レインズの登録証明書の提示や、反響数の報告をしてもらうようにし、任せきりにしないようにしましょう。
担当者との相性も重視する
マンションが売れるまでに3~6カ月程度かかることが多く、引渡しまでの期間を含めると半年以上かかることもあります。
担当者と売買価格や引き渡し条件など、重要な打合せをすることもあり、担当者と上手くコミュニケーションが取れないと齟齬が生じるおそれがあります。ストレスを抱えないためにも、担当者との相性も含めて売却依頼先を選定しましょう。
相場価格や競合物件を把握する
不動産は需要や供給の影響を受けやすいため、競合となるマンションの価格や動向についても、不動産会社から情報を入手して把握するようにしましょう。
また査定価格で売り出したとしても、成約に結びつかないときは価格の見直しも必要です。相場価格を知っておくことで、不動産会社から値下げの提案があった場合も判断しやすくなり、スムーズに売却することに役立つでしょう。
生活感を感じさせないように工夫する
水回りはとくに念入りに清掃し、不用品はなるべく処分して、生活感が出過ぎないように工夫しましょう。
自分では気が付かないものですが、ニオイにも注意が必要です。内覧前には窓を開けて換気し、必要に応じて消臭スプレーも活用します。シューズクローゼットや押し入れの中も見られることも想定し、カビや汚れがないか確認しておくようにします。
マンションのメリットを上手にアピールする
内覧者は一日に複数の物件を見ることが多く、記憶があいまいになることもあります。マンションの特徴やメリットをリストアップしておき、上手にアピールしましょう。
また内覧時の印象が良い物件は記憶に残りやすいため、気持ちよく見てもらえるような工夫もおすすめです。
まとめ
専任媒介契約は、不動産会社の手厚い対応も期待でき、早期売却したい人に向いています。しかし専任媒介契約を締結しても、早期に売却できるとは限りません。
専任媒介契約であっても不動会社に任せきりにせず、競合物件の動向や成約物件の情報を得るようにしましょう。
また、室内の見栄えや内覧時の対応も重要です。反響や内覧数が少ないと感じる場合は、
不動産会社の担当者と相談し、価格の見直しやアピールポイントの掘り起こし、念入りな清掃をするなど工夫してみましょう。