任意売却は一般的に、不動産会社に相談し住宅ローン残高を確認、債権者の許可を得て手続き開始、買主と売買契約を結び決済の流れでおこなわれます。
任意売却完了までの期間は、7~10か月ほどとなるケースが多いです。
任意売却には、売主の意思が反映される、市場価格に近い価格で売却できるなどのメリットがある一方で、債権者の許可がないと手続きできないデメリットもあります。
本記事では、任意売却の流れや期間、メリットとデメリットについて詳しく解説します。
併せて、任意売却に関する手続きをおこなう際の注意点にも触れるため、ローンの返済が難しい住宅の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
任意売却とは?

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった方向けの売却方法です。債権者の許可を得て不動産を売却し、売却代金を住宅ローンの返済に充てます。
裁判所主導の競売と違い、任意売却は売主の意思が反映されやすい売却方法で、相場に近い価格で売れる可能性が競売よりも高いです。
任意売却の流れについて触れる前に、任意売却の仕組み、競売との違いを解説します。
任意売却の仕組み
任意売却とは、ローンの返済が困難になった不動産を債権者の許可のもと売却し、売却代金はローンの返済に充当する仕組みです。
通常、不動産売却時にローンの返済が完了していない場合、残債を一括返済して抵当権を抹消する必要があります。
一括返済が困難な場合、債権者は抵当権を行使し裁判所に競売開始の手続きを取り、ローン残債を回収します。
しかし、競売は市場価格よりも低い価格での売却になるケースが多く、回収額が少なくなるため、債権者としては不利益な売却方法になりかねません。
そこで、債権者はより多くの残債を回収するため、一定の条件を満たす不動産に限り、競売よりも高い金額で売却できる可能性のある任意売却を許可します。
売却代金を充てても残るローンは、無理のない少額での返済が認められやすいです。
任意売却は、いくつかの条件を満たして債権者の許可を得ることが前提ですが、売主に有利な条件で売却できる可能性が高い仕組みです。
任意売却と競売の違い
任意売却と競売の大きな違いは、売主の意思を反映しやすいかどうかです。可不可により売却価格や、退却するタイミングに影響が出ます。
不動産会社が介入する任意売却の場合、売主の希望はある程度反映可能です。具体的には、退去時期の相談です。
対して、裁判所主導でおこなわれる競売に売主の意志が反映されることはほぼなく、相場より安い価格での売却にも従わなくてはなりません。
つまり、売主が売却に意見できるかできないかが、任意売却と競売の大きな違いです。
任意売却の流れと期間

ローンを滞納してから任意売却が完了するまでには、一般的に7~10か月ほどの期間がかかります。
任意売却の流れは、次のとおりです。
- 金融機関から督促状が届く
- 不動産会社に相談する
- 住宅ローンの残高を確認する
- 債権者の同意を得る
- 任意売却の手続きを開始する
- 買主と売買契約を締結する
- 決済をおこなう
- 所有権を移転する
- 引っ越し・残債の返済開始
ステップごとにやるべき内容を詳しく解説します。
1:金融機関から督促状が届く
住宅ローンの返済が滞ると、まず金融機関からハガキや電話にて支払いを督促されます。
督促から3~6か月ほど滞納が続くと、次は住宅ローンを分割で支払う権利が失われたことを知らせる「期限の利益の喪失通知」が届き、一括での返済を求められます。
任意売却の申請が可能になるタイミングは、期限の利益の喪失通知が届いたあとです。
任意売却を希望する場合、金融機関から督促状が届いたらすぐに不動産会社に相談し、準備を進めるとよいでしょう。
2:不動産会社に相談する
不動産会社に相談する際は、任意売却の経験が豊富で、成功実績が多い不動産会社を選びましょう。
相談に行く際、金融機関からの督促状やローン契約書、土地の所有権を証明する登記済権利証などを持参すると、話し合いがスムーズです。
3:住宅ローンの残高を確認する
不動産売却後の返済計画を作成するため、住宅ローンの残高は正確に把握する必要があります。
ローン残高は、残高証明書やローン契約後に郵送される返済予定表などで確認可能です。
書類を紛失したなどの理由でローン残高が把握できない方は、金融機関に連絡して残高証明書の再発行を依頼しましょう。
住宅ローンの残高確認に必要な情報は、不動産会社に初回相談する時点で揃えておくことが望ましいです。
4:債権者の同意を得る
任意売却の絶対条件となる同意を得るために、債権者と交渉しましょう。
交渉の際には、不動産会社の協力のもと作成した売却価格の分配案や、生活状況を説明する資料などを持参します。
あまりにも非現実的な計画では、債権者の同意を得ることは難しいです。実現可能かつ具体的な返済計画の作成が必要です。
一般的には、不動産会社に依頼すれば、債権者との交渉を代行してくれます。
債権者との交渉における対応は、不動産会社ごとに異なるため、媒介契約締結前に忘れずに対応内容を確認してください。
5:任意売却の手続きを開始する
債権者の許可が得られ次第、不動産会社は物件の売却活動を開始します。任意売却の場合、売買開始から2~6か月の間に売却を済ませる必要があります。
これは、競売になる前に売却を完了させる必要があるためです。
不動産会社が物件の購入希望者を募集している間、売主は売買契約に必要になる書類の準備を済ませましょう。
具体的には、次のような書類が必要になります。
- 身分証の写し
- 固定資産税納付書または固定資産評価証明書
- 登記識別情報または権利書
売買契約にはさまざまな書類や証明書が必要になるため、不備がないように十分注意して揃えましょう。
6:買主と売買契約を締結する
購入希望者が売却希望価格に納得した場合、買主は不動産会社が作成する買付証明書に必要事項を記入し、売主は内容を確認します。
双方が合意した際は、債権者に買付価格を報告し、物件売却可否の判断を求めましょう。
債権者から任意売却の承諾が得られたあとは、買主と売買契約を締結し、決済日を決定します。
7:買主が決済をおこなう
一般的に、売買契約締結から1か月以内に決済されるケースが多いです。
希望がある場合は伝えて、売主と買主の双方が都合のよい日程で調整するとよいでしょう。
8:所有権を移転する
専門知識が必要になる所有権の移転は、司法書士が進めるケースが一般的です。
決済終了後、司法書士は委任状や必要書類を法務局へ持参し、不動産の所有権移転登記をおこないます。
書類の不備や不足、法務局の混雑などイレギュラーがない限り、所有権の移転は1~2週間程度で完了します。
9:引っ越し・残債の返済開始
所有権移転登記が済めば、物件の引き渡しは完了です。物件の引き渡しは、決済後すぐにおこなわれるため、売主は決済前に引越しを済ませましょう。
新たな住居での生活をスタートしたあとも残債の支払いがある場合は、事前に作成した計画書どおり返済開始となります。
任意売却のメリットとデメリット

任意売却は、売主の意思が反映される、市場価格に近い価格で売却できる可能性が高い、住宅ローンの滞納が周囲に知られないなどが大きなメリットです。
一方、債権者の許可が不可欠、タイミング次第では競売になる、任意売却に対応できる不動産会社が少ないなどのデメリットもあります。
任意売却のメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
任意売却のメリット
任意売却の主なメリットは、次のとおりです。
- 売主が売却に関して意見できる場合がある
- 競売よりも高価格で売却できる可能性がある
- 経済事情を周囲に知られずに済む
- 売却代金の一部を引越し費用に充てられる可能性がある
- 債務返済の負担を軽減できる
任意売却は、売主の意見がある程度反映されるため、退去のタイミングを主張できます。
通常の不動産売却と同じように売りに出されることで、市場価格を大幅に下回る可能性が減り、競売より多くの金額を返済に充当できるケースが多いです。
競売に出ると住宅の外観写真が掲載されるうえ、債務不履行が原因だと気付かれますが、任意売却であれば経済事情が周囲に知られる心配は低いと考えてもよいでしょう。
相談次第では、売却代金の一部を引越し費用に充てられたり、月々の残債返済額を少額にできたりするケースもあります。
任意売却は、売主のメリットが多い売却方法といえるでしょう。
任意売却のデメリット
任意売却は売主によい条件で売却しやすい方法ですが、次のようなデメリットもあります。
- 債権者や連帯保証人などの同意がないと任意売却できない
- 競売までの期間が短いと競売になる可能性がある
- 任意売却に対応できる不動産会社が限られる
そもそも任意売却は、債権者の許可がなくては手続きを進められません。また、連帯債務者や連帯保証人、共有名義人がいる場合は全員の同意が不可欠です。
任意売却は、ローンの滞納から引き渡しまでに、7~10か月ほどかかる場合があります。
また、通常の売却活動に加えて、債権者とのやり取りがある任意売却は、対応できる不動産会社が限られ、すぐに依頼先が見つからないケースもあります。
動き出しが遅いと競売が開始される可能性もあるため、任意売却を希望する方は早めに行動を起こしましょう。
任意売却する際の注意点

債権者の許可がなくては手続きできない任意売却は、経験豊富で的確なアドバイスができるスタッフが在籍する不動産会社に仲介を依頼したほうがよいでしょう。
また、不動産会社がすぐに見つかるとは限らなかったり、不動産の査定に時間がかかったりするケースもあるため、余裕をもったスケジュールで進めることが大切です。
任意売却する際に意識すべき2つの注意点について、詳しく解説します。
実績豊富な不動産会社を選ぶ
任意売却は、債権者の許可が得られるか否かが非常に重要になるため、確かな実績のある不動産会社を選びましょう。
債権者との交渉は基本的に売主が自らおこないますが、有識者に事前相談し打ち合わせを済ませることで、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
余裕をもったスケジュールで進める
任意売却は動き出しが早ければ早いほど、成功する可能性が高まるため余裕のあるスケジュールで準備を進めましょう。
たとえば、競売開始決定通知が届いてから動き出した場合、債権者はすでに裁判所に競売の申し立てを済ませているため交渉の難易度が格段に上がります。
開札がおこなわれると不動産の所有権が入札者へ移転し任意売却はできなくなり、引渡しに応じない場合、一般的には落札者が強制退去の手続きを開始します。
当然ながら、強制退去の手続きが認められる可能性は高く、所有者が一定の期日内に退去しない場合、強制的に退去させられます。
不動産会社への相談は、金融機関から住宅ローン返済の督促状が届いたタイミングが望ましいです。
住宅ローンが払えなくなった時点で任意売却を検討する場合は、督促状が届く前に相談してもよいでしょう。
準備に時間がかかる任意売却は、早めに動き出すことが非常に重要です。
任意売却のご相談はファンズ不動産へ
任意売却は、金融機関との調整や手続きが多く、流れを正しく理解して進めることが大切です。
しかし、初めて経験する方にとっては「どこから手をつければいいのか」「どれくらい時間がかかるのか」と不安を感じる場面も多いものです。
そんな時は、まず専門家へ相談することで、状況に合わせた進め方や注意点を把握しやすくなります。ファンズ不動産では、不動産売却に関する悩みを気軽に相談できる環境が整っています。
スムーズに任意売却を進めたい方は、早めの相談をおすすめします。
リノベ前提の物件や土地売却も。専門チームが対応
ファンズ不動産は、一般的なマンションや戸建てだけでなく、専門知識が求められる不動産の売却にも対応しています。
社内には土地売買のプロが在籍しているほか、2025年10月からはリノベーションのワンストップサポートも開始しました。
そのため「リノベーション前提」といった付加価値を付けた売却提案や、複雑な権利関係が絡む土地の売却も、窓口一つでスムーズに進められます。
他社では取り扱いが難しいと言われた物件でも、まずは一度相談してみる価値があるでしょう。
オンライン面談から開始。LINEで完結する売却プロセス
ファンズ不動産での売却活動は、忙しい方でもストレスなく進められる「手軽さ」が特徴です。
最初の相談は店舗に出向く必要のない「オンライン面談」からスタートします。その後の担当者とのやり取りや進捗確認も、主にLINEでおこなうため、日中の時間を拘束されません。
仕事や家事で忙しい方でも、自身のペースで効率的に売却活動を進めたい方に最適です。
売却査定から引渡しまで、安心のワンストップ対応
ファンズ不動産は、LINEを活用した効率的なプロセスと、幅広い専門知識でスムーズな不動産売却を実現します。
相談は「オンライン面談」から始まり、やり取りもLINEメインでおこなうため、店舗へ足を運ぶ手間も最小限です。
また土地のプロやリノベーションの専門家も在籍しているので、専門知識が必要な相談も窓口一つで完結します。忙しい方でも、スムーズで安心な売却活動が可能です。
日中は仕事で時間が取れない方や、複雑な手続きをまとめて任せたい方でも、ストレスなく売却活動を進められます。
任意売却で弁護士が必要になるケース

任意売却を希望する方で、任意整理、個人民事再生、自己破産などの手続きも検討している場合、弁護士に相談したほうがよいケースがあります。
任意売却で弁護士が必要になる3つのケースについて、それぞれ詳しく解説します。
任意整理
債務者と債権者が交渉をおこなう任意整理は、弁護士に仲介を依頼したほうが好条件で調整できる可能性が高まります。
任意整理とは、債権者に返済期間の延長や利息や遅延損害金のカットなどを交渉する協議で、個人民事再生や自己破産と異なり、裁判所は介入しません。
任意整理はうまくいくと返済の負担が軽減されますが、専門知識がないと、具体的な返済計画の提示や効果的な交渉は困難です。
しかし、弁護士ならば、任意売却しなくても済むよう交渉できる可能性があります。
自身で交渉するより有利な内容の協議になる可能性が高まるため、任意整理する際は弁護士への仲介依頼を推奨します。
個人民事再生
住宅ローン以外に借金があり、個人民事再生により借金額を大幅に減らしたい場合は、弁護士に手続きを依頼しましょう。
個人民事再生は裁判所をとおしておこなう法的手続きで、申し立てには専門知識が不可欠です。
申し立てが認められると借金の大幅な減額につながるため、返済が厳しい場合は弁護士に相談しましょう。
自己破産
自己破産は裁判所を介しておこなう手続きであり、一般的には弁護士に手続きの代行を依頼します。
引き渡し後に残った債務は、債権者と相談して分割返済していくのが一般的です。
しかし、債務者によっては、残った債務を払えない場合もあるでしょう。
そのような場合は自己破産の手続きをして、裁判所に債務を免責してもらう方法があります。
ただし、自己破産をするには、目ぼしい財産を売却する必要がある点には注意が必要です。
たとえば、原則として時価で20万円以上の財産は処分しなければなりません。
生活に必要なものは処分する必要はありませんが、何を処分しなければならないのかについては弁護士にきちんと確認する必要があります。
任意売却の流れに関するよくある質問

最後に、任意売却の流れに関する3つの質問に詳しく回答します。
任意売却ができないケース、できる期間、任意売却物件を購入した際のトラブル例について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
任意売却できないケースとは?
次のケースでは、任意売却できません。
- 住宅ローンの残債を返済できる
- 不動産が国や自治体に差し押さえられている
- 債権者の許可を得られていない
- 連帯保証人や共同名義人全員の同意を得られていない
任意売却は、住宅ローンの支払いが困難な方向けの売却方法のため、返済能力のある方は活用できません。
住宅ローンの支払い能力がない方でも、税金の滞納により差し押さえられている不動産は任意売却不可となる可能性があります。
また、債権者の許可、連帯保証人や共同名義人全員の同意を得ていることも、任意売却の絶対条件です。
任意売却できる期間はいつまで?
原則として、任意売却のタイムリミットは、競売の結果が開札される前日までです。
ただし、裁判所から競売開始決定通知が届いた時点で、任意売却の難易度は格段に上がるため、開札日前日までは大丈夫と油断せず、早めに準備を進めましょう。
任意売却物件の購入で起こるトラブル例は?
任意売却物件の購入で起こる可能性があるトラブルの一例は、次のとおりです。
- 売主が夜逃げし売買契約が白紙になる
- 購入後に見つかった欠陥や不備の修繕費を求められない場合がある
- 境界が明確に定められていない場合がある
任意売却は、住宅ローンの返済が困難な方がおこなう方法です。
そのため、不動産を売却しても返済の見通しが立たない、複数の借金があるなどの経済的な困窮を理由に、売買契約成立前に夜逃げするリスクもゼロではありません。
また、任意売却に出される不動産は、売主の経済的な理由で契約不適合責任が免責されているケースが多いです。
契約不適合責任の免責特約が設定されていると、欠陥や不備にかかる補修費の請求ができない可能性が高く、買主の自己負担が増えます。
さらに、任意売却は物件をそのままの状態で引き渡す現況有姿での売却になりやすいです。
現況有姿で売買がおこなわれた場合、境界が曖昧でもそのまま引き渡されるため、購入後に隣地との境界線に関するトラブルが発生する可能性があります。
任意売却物件の購入を検討する方は、購入後のトラブル回避のためにも必ずリスクや契約内容の詳細をよく確認しましょう。
まとめ

任意売却の期間は、住宅ローンを滞納してから売却完了まで、7~10か月ほどになるケースが多いです。
住宅ローンの残高確認、債権者の許可を得る、任意売却の手続き開始、売買契約締結、決済、残った住宅ローン返済開始が、基本的な任意売却の流れです。
任意売却は準備や手続きに時間がかかるうえ、競売開始決定通知が届いてからでは交渉の難易度が上がるため、余裕のあるスケジュールで進めましょう。
具体的には、住宅ローンの督促状が届いた時点ですぐに、不動産会社に相談すると、落ち着いて準備を進められます。
任意売却には、債権者の許可がないと手続きできない、任意売却に対応できる不動産会社が少ないなどのデメリットがあります。
しかし、売主の意思が反映されない競売よりも好条件で売却できる可能性が高いため、住宅ローンの返済が困難な方は任意売却を検討するとよいでしょう。


