「田舎の土地を売りたいけれど、なかなか買い手が見つからない」「長年放置しているが、手放し方が分からない」と悩んでいませんか?
田舎の土地は都市部と違って需要が限られており、売却が難航するケースも少なくありません。
しかし、ポイントを押さえて準備を進めれば、成約の可能性を高めることは十分に可能です。
本記事では、田舎の土地が売れにくい理由や適切な売却方法、相談先、売却を成功させるための具体的なコツを解説します。
読了後には、どんな土地でも状況に応じた最適な手放し方が分かり、自信を持って売却に進めるようになるでしょう。
田舎の土地は売れにくい?
田舎の土地は、都市部の不動産と比べて買い手がつきにくく、売却まで時間がかかる傾向にあります。
実際に、長期間買い手が現れず、固定資産税の負担だけが続いている事例も少なくありません。
田舎の土地が売れにくいのは購入希望者が少ないからです。しかし、使用目的やニーズを理解して訴求すれば、買い手を見つけることは可能です。
ここでは、田舎の土地が売れない主な原因や、ニーズを把握する重要性、そして所有し続けることによるリスクについて詳しく解説します。
田舎の土地が売れにくい理由
売却が難しい主な理由は、購入ニーズの少なさにあります。
とくに人口減少が進む地域では需要が限られ、買い手が現れるまでに長い期間を要することが一般的です。
また、公共交通機関や商業施設が少ないエリアでは「住むメリット」を感じにくく、都市部のような即決購入は期待できません。
農地・山林など用途に制限がある場合は、売却にあたって法的な手続きが必要となるケースもあります。
売却までに時間がかかりやすい点が、田舎の土地の特徴です。
ニーズの把握が重要
成約を実現するには、土地の活用ニーズを的確に捉えることが重要です。
需要が限られる地域でも、用途や購入者像を絞り込めば売却の可能性は高まります。
たとえば、近年はセカンドハウスや太陽光発電の設置用地としての活用が注目されており、これらの目的に合う土地には一定の需要があります。
立地や広さ、地目や価格などを踏まえて、どのような価値があるかを把握し、買い手の視点で訴求内容の見直しをおこないましょう。
地元不動産業者に意見をもらい、第三者の視点を取り入れることも効果的です。
売れない土地を所有し続けるリスク
売れない土地を長く所有し続けると、さまざまな負担が発生します。代表的なのが固定資産税です。買い手が見つからなくても毎年の税金は変わらず発生し続けます。
ただし、空き家付きの住宅用地であれば「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されているケースもあります。老朽化などで特例が外れると税額が大きくなる点に注意が必要です。
また、空き家が老朽化すると倒壊や火災などのリスクが高くなり、近隣トラブルや責任問題に発展するケースもあります。
さらに、相続発生時には相続税の課税や相続放棄などの判断も求められ、将来的に家族へ負担を残してしまう可能性も考えられます。
土地は所有しているだけでコストがかかる資産です。経済的・心理的負担を減らすためにも、早めに行動を起こしましょう。
田舎の土地を売りたい!どこに相談すべき?
田舎の土地をスムーズに売却したいなら、最初の一歩として「適切な相談先」を見極めることが重要です。相談先によっては、売却までの期間・価格・手間に大きな差が出ます。
ここでは、不動産会社・買取業者・自治体・近隣住民など、それぞれの相談先の特徴や向いているケースを解説します。
自分の土地の状況に合ったパートナー選びが、売却成功の近道です。
不動産会社
不動産会社への依頼は、土地売却において最も一般的な手段です。
とくに地元に根差した不動産会社は、周辺のニーズや買い手の傾向に詳しいため、的確な価格設定や効果的な販売戦略に期待できます。
なお、田舎の土地売却に関しては、大手よりも地域密着型の不動産会社が適しているケースが多いです。都市部の会社は販売に積極的でない場合もあるため注意してください。
複数社に査定を依頼し、担当者の対応姿勢や査定の根拠を比較検討しながら、信頼できるパートナーを見つけましょう。
買取業者
「とにかく早く土地を売りたい」あるいは「相続した土地の使い道がない」といった場合は、不動産買取業者への相談が有効な選択肢です。
不動産会社は売り手と買い手を仲介するのが業務ですが、不動産買取業者は自身が買主となり、土地を直接買い取ってくれます。
不動産買取業者を使う場合は買い手を見つけるまでの時間が不要なため、早ければ数日〜数週間で現金化できる点がメリットです。
ただし、市場価格よりも安価な金額での買取になることが多く、「高く売りたい」という方には不向きな面もあります。
金額よりも、スピードや手間の削減を優先したい方に適した売却方法ということを理解しておきましょう。
自治体
地方自治体を通じた売却活動は、田舎の土地を売却する際の有効な手段です。
近年では、空き家バンクや移住促進事業の一環として、土地や空き家の売買を支援する取り組みが各地で進められています。
行政によるサポートは、買主とのマッチングや手続きの支援など、公的機関ならではの安心感がある点が特長です。
とくに、移住希望者や農地を求める方に向けた情報提供が充実しており、通常の不動産取引では出会えないニーズとつながる可能性もあります。
ただし、対応スピードや積極性は自治体によって異なるため、まずは問い合わせて詳細を確認することが大切です。
隣家・近隣住民
隣接地を所有する近隣住民は、有力な売却先の一つです。
たとえば、「敷地を拡張したい」「駐車場として使いたい」と考える方が近隣にいることもあり、早期の売却につながるケースも見られます。
境界や日照、騒音といった懸念点についても共通認識があるため、取引後のトラブルが発生しにくいことも特徴です。
まずは軽く声をかけてみる、または地元の不動産会社を通じて間接的に打診してもらうなど、柔軟にアプローチしてみましょう。
田舎の土地を売り切るコツ
田舎の土地は「売り方」を工夫すれば、売却の成功率を高めることができます。
とくに需要が限定される地域では、価格や見た目、土地の分け方など、少しの工夫が大きな違いを生みます。
ここでは、田舎の土地を確実に売り切るための実践的な方法を紹介します。
買主の視点に立ち、選ばれる条件を整えて他の物件と差別化することで、早期の売却を目指しましょう。
適切な価格で売り出す
田舎の土地は、相場よりも高値で売り出すと売却が難しくなります。
需要が少ない分、価格にシビアな買い手が多く、少しでも「高い」と感じると検討対象から外されてしまうのが理由です。
まずは不動産会社に査定を依頼し、周辺事例と照らし合わせて現実的な金額設定をおこないましょう。
売却期間が長引くほど価格交渉が入りやすくなるため、初期価格はとくに慎重に検討してください。
売れ残っている周辺の土地と比較されることが多いため、価格面で見劣りしないことも売却成功の条件です。
売却活動期間に余裕をもつ
田舎の土地は売却までに時間を要するのが一般的です。
都市部のように1〜2ヶ月で売れるケースは少なく、半年から1年以上を見込む必要があります。
田舎の土地を売却する際は、短期間での現金化を目指すのではなく、時間をかけて適正な価格での売却を目指すことが重要です。
売却開始時期を調整したり、春の転勤期や夏の移住希望者が増える時期を狙うなど、計画的に動くことが成功の鍵です。
建物が古い場合は解体する
築年数の経過した家がある土地は、買主から敬遠されやすくなります。
「建物付き=解体費用がかかる」と認識されることが多く、購入のハードルが上がる傾向があります。
解体費用は数百万円以上かかることもありますが、売却価格に反映できることもあるため、事前にシミュレーションして判断しましょう。
また、空き家を放置していると景観や防犯上の問題も懸念され、購入意欲を下げる要因になります。
安全面や印象の観点からも、解体を前向きに検討するのが得策です。
土地の状態をよくする
土地の管理状態は、購入希望者の第一印象を左右する重要な要素です。
雑草が生い茂り、ゴミや不用品が放置されたままの土地は、たとえ立地に恵まれていても「管理が行き届いていない」と見なされ、購入対象から除外される可能性があります。
特別な整地工事までは不要ですが、最低限の清掃と整備は必須です。
草刈り、不要物の撤去、簡単な整地だけでも「管理されている土地」として好印象を与えられるでしょう。
管理されている土地だと思われればインターネット掲載時の視覚的な印象が向上するため、問い合わせにつながりやすくなることが期待できます。
清掃や整備を事前に実施することで、売却できる可能性を少しでも高めましょう。
広すぎる場合は分割する
土地が広すぎる場合は、分筆(分割)して販売することも検討しましょう。面積が大きすぎる土地は、個人が購入するにはハードルが高くなります。
大きい土地は田舎だと「管理が面倒」「固定資産税が高くなりそう」と敬遠される傾向があります。
しかし、分割して販売すればそう思われる心配はありません。家庭菜園用、別荘用地、駐車場用など用途別に分けて販売すれば、ターゲット層を拡大することも期待できます。
ただし、分筆には測量や登記の手間・費用が発生します。あらかじめ費用や手間がどれくらいかかるのかは調べておきましょう。
田舎の土地が売れない場合の対処法
田舎の土地は、売却にこだわらず手放す方法を検討することが重要です。
無償譲渡や寄付などの手段を活用して土地を手放せば、長期保有による固定資産税や管理の負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、買い手が見つからない土地をどのように処分するか、具体的な対処法を解説します。
不要な資産を抱え続けないためにも、早めの対応を心がけましょう。
無償譲渡する
買い手が見つからない場合は、「無償譲渡」を検討するのも一つの手段です。
とくに隣接地の所有者や地元の事業者など、土地を活用したいと考える相手であれば引き取りに応じる可能性があります。
なお、譲渡を成立させるには登記の名義変更が完了していることが前提です。
手続きが不十分なままだと、固定資産税や管理責任が引き続き発生し、所有者の負担が残ってしまうので注意してください。
契約書の作成を含め、無償譲渡するための法的手続きを確実におこないましょう。
譲渡先を自力で見つけることが難しい場合は、地元の不動産会社に相談するのもおすすめです。
なお、評価額の高い不動産を無償譲渡すると、受け取った側に贈与税が課税される場合がある点には注意が必要です。相手に迷惑を掛けないよう、事前に贈与税についても話し合っておきましょう。
寄付する
売却や譲渡が難しい場合は、土地を寄付するという選択肢もあります。
対象となるのは公共団体やNPO、地域の学校法人、寺社などです。
ただし、土地の管理にはコストがかかるため、受け取りを拒否されることも少なくありません。
寄付の目的や土地の活用方法を明確に示したうえで、ニーズのある相手を見極めましょう。
また、登記や境界の整理をあらかじめ済ませておくと、受け入れ側の負担が軽減され、話が進みやすくなります。
相続放棄する
相続開始前であれば、不要な土地に対して「相続放棄」という選択肢を取ることができます。
ただし、土地だけでなく、他の遺産もすべて放棄することになるため、慎重な判断が必要です。
相続放棄をおこなうには家庭裁判所への申し立てが必須で、期限は「相続があったことを知った日」3ヶ月以内と法律で定められています。
3ヶ月以内に土地の価値や処分の可否を見極めて判断しなくてはいけないため、不安な場合は弁護士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。
相続土地国庫帰属法を利用する
「相続土地国庫帰属法」は、令和5年(2023年)に施行された新制度です。
一定の条件を満たせば、相続した土地を国に引き取ってもらえるため、不要な土地の処分方法として注目されています。
ただし、建物が残っている土地や土壌汚染がある土地などは対象外です。
また、申請には10年分の管理費相当額(宅地・田・畑の場合は土地の面積に関わらず原則20万円)を負担する必要があります。ただし、山林や雑種地などの他の地目では個別に負担金額が定められる場合もあるため、申請前に法務局に確認することをおすすめします。
条件や手続きに制約はあるものの、相続後の土地処分に悩む方にとっては、現実的な解決策の一つといえるでしょう。
収益化する
売却が難しい土地でも、活用方法によっては収益を生み出すことが可能です。
たとえば、太陽光発電の用地として賃貸する、キャンプ場やドッグランなどの用途に転用する方法があります。
初期投資や手間はかかりますが、固定資産税以上の収入が得られれば「持っていても損にならない土地」に変わります。
自分で管理することが難しい場合は、地元業者と提携して運用を委託するなど、専門家の力を借りて実現することも可能です。
今すぐ売れなくても、将来的な価値創出を見据えて動くことが重要です。
田舎の土地を売りたいときの手順
田舎にある土地を円滑に売却するためには、事前に一連の流れを把握しておくことが重要です。
準備不足や手続きの遅延が原因で、買主との交渉が進まなくなるケースは少なくありません。
ここでは、測量や査定から売買契約、引き渡し、確定申告までの流れを具体的に解説していきます。
1:測量・査定
最初におこなうべきは、土地の正確な状況を把握するための測量です。
とくに田舎の土地では、隣地との境界が不明確なケースが多く、売却前に「確定測量」を実施することが望まれます。
境界線が曖昧なままだと、買主にとって大きな不安要素となり、購入の妨げになってしまいます。
測量後は、不動産会社へ査定を依頼し、周辺相場と照らし合わせて適正価格を見極めましょう。
高額すぎる価格設定は売れ残る原因につながるため、現実的な金額を意識することが重要です。
2:媒介契約の締結
査定額に納得できたら、不動産会社と媒介契約を結びます。
契約の種類は「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3つに分かれ、それぞれ依頼の範囲や制約が異なります。
契約形態 | 特徴 |
一般媒介 | 複数の不動産会社に売却を依頼できる |
専任媒介 | ・一社の不動産会社にのみ売却依頼できる ・売主が自分で買主を見つけた場合、不動産会社を通さずに直接取引可能 |
専属専任媒介 | ・一社の不動産会社にのみ売却依頼できる ・売主が自分で買主を見つけた場合でも、不動産会社を通して取引する必要がある |
田舎の土地は都市部に比べて流通量が少ないため、販売力や地域に詳しい不動産会社と専任契約を結ぶケースも多いです。
契約前は、必ず広告の掲載媒体、販売方針、報告の頻度なども確認しましょう。
3:売却活動の開始
媒介契約後は、不動産会社による売却活動がスタートします。
主な取り組みは、自社Webサイトや不動産ポータルサイトへの掲載、折込チラシの配布、店頭での売り物件情報の掲示などです。
田舎の土地では需要層が限られるため、「別荘やセカンドハウスを探す都市部の購入希望者」や「農業目的で土地を探す地域住民」など、特定のターゲットに向けた広告戦略が効果的です。
また、現地看板を立てるだけでも地元住民の目にとまり、問い合わせが入るケースもあります。
売却活動中は、不動産会社からの報告や反応を定期的に確認し、反響が薄い場合は価格やアプローチ方法の見直しを検討しましょう。
4:買主と交渉
購入希望者が現れたら、価格や引き渡し条件などを交渉します。
田舎の土地では、初めから価格交渉が前提となるケースも珍しくありません。
住宅建築を目的とする買主であれば、地盤調査の実施状況や、上下水道の整備状況などが交渉の焦点になります。
あらかじめ土地の状態を整理しておき、交渉がスムーズに進むように準備しておきましょう。
価格の引き下げに応じる際は、許容できる最低価格を決めておき、冷静に判断することが重要です。
5:売買契約の締結
条件面の合意が得られたら、売買契約の締結に進みます。
契約時に手付金を受領し、売主・買主の双方が契約書へ署名と押印をおこなう流れです。
契約書には土地の面積や価格、引き渡し日、境界明示の有無などが明記されます。
契約後のトラブルを防ぐためにも、不明点や曖昧な表現がないかをよく確認しましょう。
また、契約の直前には不動産会社から「重要事項説明書」の読み合わせが実施されます。
法的効力を持つ内容であるため、しっかり理解したうえで署名してください。
6:境界の明示
売買契約後は、実際に土地を引き渡す前に境界を明確にする作業が必要です。
買主が住宅や施設の建築を予定している場合、隣地との境界線が明確になっていないと、設計や施工に支障をきたすリスクがあります。
確定測量を実施していれば、境界杭の設置や立ち会いによる説明が円滑に進み、買主の不安を軽減できます。
引き渡し後のトラブルを防ぐためにも、境界の明示は早い段階で済ませておきましょう。
7:引き渡し
買主から残代金が支払われたら、所有権の移転登記と土地の引き渡しをおこないます。
登記手続きは通常、司法書士を介して進められ、登記完了をもって売買は正式に成立する仕組みです。
引き渡し当日は、登記関係書類や印鑑証明書、委任状など、必要書類を揃えておきましょう。地方では司法書士の訪問が難しい場合もあるため、事前に日程調整が必要です。
また、固定資産税や公共料金の精算もあわせて済ませておくと、引き渡しがよりスムーズに完了します。
8:確定申告
土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年の2月〜3月に確定申告が必要です。
利益が出なければ申告の義務はありませんが、特別控除や軽減税率が適用されるケースもあるため、申告することで結果的に節税につながる可能性もあります。
たとえば、売却した土地がかつて自分や家族の居住用であった場合、「居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除」が適用できるケースがあります。
「居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除」とは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、条件を満たせば相続した実家の売却にも適用可能です。
制度の適用条件や必要書類は複雑なため、税理士など専門家のサポートを受けながら進めましょう。
なお、確定申告を怠ると追徴課税が発生する恐れもあります。売却後は早めに税務手続きを確認し、期限内に申告を済ませましょう。
農地・山林を売りたいときの注意点
農地や山林の売却は、通常の宅地とは異なる法律や手続きが関係してくるため、事前の確認と準備が不可欠です。
買い手が見つかっても、手続きの不備や法的制限によって契約が成立しないケースもあるため、売主自身が基本的なルールを理解しておく必要があります。
ここでは、農地・山林を売る際に押さえておくべき注意点について具体的に解説します。
農地を売却する際の注意点
農地を売却する場合、最も重要なのは「農地法」の制限です。
農地として売却する場合は、買主が農業従事者であり、農地として適正に利用できることが前提となります。
買主が農業に従事していなかったり、宅地化が目的だったりする場合、農業委員会の許可が下りず、売買が成立しない可能性もあります。
宅地や資材置場などに転用してから売るには「農地転用許可」が必要です。
市街化区域であれば届け出のみで転用できますが、市街化調整区域では厳格な審査があり、申請から許可までに時間がかかります。
農地は面積や立地にかかわらず、法的手続きが複雑な資産です。
スムーズな売却を実現するためには、自治体や専門家と連携し、慎重に計画を立てることが欠かせません。
山林を売却する際の注意点
山林を売却する場合は、境界や面積の不確かさが大きな課題となります。
山の土地は登記簿の面積と実際の広さが異なることが多く、買主が不安を抱きやすいのが現実です。
たとえば、「木が生い茂っていてどこまでが自分の土地かわからない」といった状況は、買い手が購入を避ける要因になります。
売却に向けて、事前に専門業者による測量と境界確認をおこなうことが重要です。
また、森林法に基づき、売却後の所有者変更については買主による「森林の土地の所有者届出」が必要です。提出を怠ると罰則の対象となるため注意しましょう。
山林は自然資源としての魅力を持つ一方で、災害リスクや維持管理の負担が伴います。
購入希望者に不安を与えないためにも、懸念点はあらかじめ整理し、情報を丁寧に伝えておくことが大切です。
田舎の土地を売却した際の節税対策
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得として課税されます。
ただし、相続や長期保有のケースが多い田舎の土地では、条件を満たせば節税が可能です。
特別控除や軽減税率を正しく活用すれば、納税額を大幅に抑えられる可能性があります。
譲渡所得・税金の計算方法
土地や建物を売却して得た利益は、給与や年金などの他の所得とは別に「譲渡所得」として課税されます。
譲渡所得を求める計算式は、次のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用) |
譲渡所得に対する税率は、土地の所有期間が5年を超えているかどうかによって異なります。
所有期間 | 区分 | 税率(所得税+住民税) |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39% |
5年以上 | 長期譲渡所得 | 20% |
※確定申告の際には、所得税と併せて基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を申告・納付することになります
所有期間は譲渡した年の1月1日時点で判定されます。
長期間保有している場合は税率が下がるため、売却のタイミングを検討する際の参考にしましょう。
なお、取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算で使う「概算取得費」が適用されますが、取得費が少なく計算されるため税額が高くなりがちです。
登記事項証明書や購入時の契約書が残っている場合は、できるだけ実額で取得費を算出することをおすすめします。
適用の可能性がある特別控除
土地の売却では、一定の条件を満たせば譲渡所得に対する税負担を大幅に軽減できます。
とくに相続や長期保有に関連する土地は、次の特例が適用される可能性があります。
特例 | 内容 |
居住用財産の3,000万円特別控除 | ・本人または家族が居住していた土地 ・建物を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除 ・相続した実家を売却する場合も条件を満たせば対象 ・控除額が譲渡益を上回れば、課税対象は発生しない |
相続空き家の譲渡特例 | ・昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の空き家が対象 ・空き家を解体または耐震改修し、一定の要件を満たして売却した場合、3,000万円の控除が適用 ・譲渡所得の大半が非課税になるケースもある |
所有期間10年超の軽減税率特例 | ・譲渡する土地の所有期間が10年を超えている場合に適用 ・譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に14%の税率が適用 ・通常の長期譲渡所得税率(約20%)より低く抑えられる |
特別控除は適用条件や必要書類が複雑なため、税理士や不動産会社と相談しながら早めに準備するのが得策です。
田舎の土地を売りたいときによくある質問
田舎の土地は都市部と違い、売却のルールや方法に迷う方が多いです。
「国に売れる?」「個人売買できる?」「ローンが残っていたらどうなる?」など、よくある疑問について実例を交えながら解説します。
土地を国に売ることはできる?
基本的に、個人が国に土地を直接売却することはできません。
ただし、使い道がなかったり管理が困難だったりする土地については「相続土地国庫帰属制度」を利用して手放すことが可能です。
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を一定の条件のもとで国に引き渡せる仕組みで、2023年から施行されました。
対象となるのは境界が確定し、建物がない、抵当権などの権利が付いていない土地です。
申請には審査があり、負担金(目安として10年分の管理費相当額)が必要になります。
すべての土地が適用対象とは限らないため、まずは法務局に相談しましょう。
個人売買してもよい?
個人間で土地の売買をおこなうこと自体は法律上問題ありません。
ただし、契約書作成や登記手続きなど、専門知識が求められるため慎重な対応が必要です。
たとえば、契約書の不備や必要な説明を怠った場合、売却後にトラブルへ発展する可能性があります。
買主から損害賠償を求められるケースもあるため、司法書士や不動産会社に仲介してもらうのが安全です。
相続によって不動産を取得した場合は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記することが法律上の義務となっています。仲介を省略したい場合でも、最低限の契約書チェックと登記申請はプロに依頼しましょう。
ローンが残っている土地は売れる?
土地にローンが残っている場合でも売却は可能ですが、抵当権を抹消することが前提です。
抵当権が付いたままの土地は買主にとってリスクが大きいため、取引が成立する可能性はほぼありません。
たとえば、売却代金でローンの残債を完済できる場合は、決済と同時に抵当権を外して売却する流れになります。
売却額がローン残債に届かない場合は、不足分を自己資金で不足分を補うか、金融機関の同意を得て「任意売却」を利用する方法があります。任意売却なら金融機関の合意があれば抵当権を抹消した上で売却でき、競売より相場に近い価格で売れやすいものの、事前の調整や手続きが不可欠です。
売却を考える段階で、まずは金融機関に相談し、売却の意思を共有しておくことが大切です。
自己判断で勝手に進めてしまうと、金融機関と買主の両方から信頼を失い、取引が破談になるリスクがあります。
まとめ
田舎の土地は、都市部に比べて買い手がつくまでに時間がかかることが多く、価格設定や需要の見極めが重要です。
適正な価格の提示や土地の整備、地域に詳しい不動産会社へ相談するなど、販売戦略を工夫してスムーズな売却を目指しましょう。
農地や山林を相続した場合には、通常の宅地とは異なる法的な制限や手続きにも目を向けておく必要があります。
もし売却が難航する場合は、無償譲渡や相続土地国庫帰属制度の活用を検討することもおすすめです。
不要な土地を売る・手放すには計画性と情報収集が欠かせません。
本記事の内容を参考に、自分に合った方法を見つけて納得のいく形で土地問題を解決していきましょう。