「土地を宅地に変更できず家が建てられない」という状況に悩んでいませんか。
接道義務や農地転用の制限など、宅地にできない理由はさまざまですが、多くの場合は適切な対処法があります。
本記事では、宅地にできない土地の種類や調べ方から、家を建てるための方法、活用・売却の選択肢までをわかりやすく解説します。
宅地にできない土地についての悩みを抱えている方は、本記事で基礎知識や活用法を学ぶことができます。
最後まで読み進めれば、土地の制約に悩まされず、将来の活用や手放しまでを前向きに検討できるようになるでしょう。
宅地にできない土地の種類と調べ方
ここでは主に6つの代表的な土地の種類と、調べ方について具体的に解説します。
土地の種類 | 土地の目的 | 宅地化の可否 | 管轄・調査方法 |
都市公園 | 公園や緑地としての利用 | 不可 | ・都市計画課 ・地図情報システム |
市街化調整区域 | 無秩序な市街化の防止 | 原則不可 | ・都市計画課 ・建築指導課 |
農業振興地域 | 農業の振興 | 原則不可 | ・農業委員会 ・農政課 ・農業振興地域整備計画 |
生産緑地 | 都市農地の保全 | 原則不可 | ・自治体の生産緑地制度の情報 ・市町村の都市計画課 |
甲種農地 | 高度な農業利用に適した土地 | 原則不可 | ・農地台帳 ・登記簿 ・都道府県の農業関係部 |
第1種農地 | 営農に適した土地 | 原則不可 | ・農業委員会 ・役所 |
宅地にできない土地には明確な区分があり、それぞれに異なる法的制限が設けられています。
建物の建築が制限されている理由の把握は、今後の活用や売却を判断する際に必要不可欠です。
都市公園
都市公園に指定された土地は、公園や緑地としての機能を確保する目的があり、原則として建物の建築ができません。
都市計画法に基づき指定されるため、個人の意思での用途変更は困難です。
自治体の都市計画図や用途地域図・地図情報システムなどを閲覧すると、自身の土地が都市公園かを確認できます。
都市公園は原則として、指定解除されなければ宅地化ができません。
市街化調整区域
市街化調整区域は、都市の無秩序な拡大を防ぐために建物の建築が厳しく制限されている区域です。
原則として住宅の新築は認められず、宅地化する場合は厳しい条件をクリアする必要があります。
区域の指定は市町村の都市計画課や建築指導課で確認可能です。
土地を購入・相続する前に、市街化調整区域かを調べておきましょう。
農業振興地域
農業振興地域にある土地は、農業を継続的に推進するために、住宅や施設の建築が制限されています。
さらに、農地法に基づいて保護されており、用途変更は原則として認められません。
農業振興地域であるかは、地域の農業委員会や農政課、都道府県が公開している農業振興地域整備計画で確認できます。
指定された土地を農業以外の用途で活用したい場合は、農用地除外申請が必要です。
ただし許可されるには時間も費用もかかるため、早めの対応が求められます。
生産緑地
生産緑地は、都市部における農業振興と緑地保全を目的に指定されている土地で、30年間は原則として宅地化ができません。
指定を解除するには、農業の継続が困難であることや、相続して農業を続けないと判断するなどの要因が必要です。
また、生産緑地に指定されてから30年経てば指定解除されるため、用途変更申請ができるようになります。
生産緑地の詳細は、自治体の生産緑地制度の情報や、市町村の都市計画課で調べましょう。
甲種農地
甲種農地とは、農地の中でも最も保護が厳しい分類で、原則として転用が認められません。
地目が「田」や「畑」となっており、農業振興地域内にある場合が一般的です。
甲種農地は、市町村が発行する農地台帳や登記簿、都道府県の農業関係部局で確認できます。
第1種農地
第1種農地も甲種農地と同様に、優良農地として保護されており、転用は極めて困難です。
基本的には農地の中でも生産性が高く、農業の継続が優先される区域です。
土地の情報は、農業委員会や地域の役所で確認できます。
第1種農地や甲種農地は宅地化や売却が難しいため、現状のまま農地としての活用を考える方が現実的です。
宅地にできない土地を活用する方法
宅地にできない土地でも、適切に活用すれば収益化や維持管理の負担軽減につながります。
たとえば、農地としての価値を維持しつつ、人に貸すという選択肢は現実的です。
ここでは、宅地にできない土地の代表的な2つの活用法を紹介します。
農家に土地を貸す
農業を継続している近隣の農家に自分の農地を貸せば、収益化できる場合もあります。
農地法により、農地の貸借には農業委員会の許可が必要ですが、正式な手続きを踏めば合法的に貸し出せます。
農地を貸し出すと、草刈りなどの管理コストも軽減され、土地が荒れるリスクも抑えられます。
とくに、高齢化で農地が維持できなくなったケースでは、地域の農業法人や若手農家とマッチングするのが効果的な手段です。
市民農園を運営する
土地の一部を区画分けし、家庭菜園用に一般市民へ貸し出す「市民農園」は、収益と地域貢献を両立できる活用法です。
自治体と連携して農園整備の補助金を得ることも可能で、需要が高いエリアでは早期に満員になるケースもあります。
「建物は建てられないが、土地は人の役に立つ」という視点で考えれば、市民農園は非常に有効な選択肢です。
市民農園を運営すれば維持管理がしやすく、継続的な利益も見込めるでしょう。
家が建てられない土地とは?
「土地を買ったのに家が建てられない」そんな事態は、決して他人事ではありません。
建築基準法や農地法などの法律により、建物の建築が制限されている土地は数多く存在します。
ここでは、よくある「家が建てられない理由」を具体的なケースとともに紹介し、それぞれの土地に潜むリスクや注意点をわかりやすく解説します。
再建築不可の物件
再建築不可とは、一度家を解体すると再び建物を建てられない土地のことです。
土地が再建築不可となる主な理由を次にまとめました。
- 道路に接していない土地(袋地)
- 建築基準法上の道路に接していない
- 路地の長さが規定外
- 接道義務を満たしていない
道路に接していない土地は、再建築が認められません。
さらに、河川や海などの自然により道路とつながらない「準袋地」も原則として再建築不可とされています。
また、接している道路が建築基準法に適していない場合や、路地の長さが規定外の場合も再建築の許可がおりません。
再建築不可の土地は、建物が老朽化しても建て直せないため売却も難しく、資産価値は著しく低くなります。
ただし、隣地の購入・借地やセットバック、建築基準法第43条の但し書き許可などの例外措置を活用すれば、建て直しが可能になるケースもあります。
土地の購入前には必ず「再建築の可否」を役所や不動産会社に確認しましょう。
擁壁がある
擁壁(ようへき)が現行の法律に適合していない場合、建築確認が下りないケースがあります。
がけ地では崩落の危険を防止するために、特定の条件を満たす場合、擁壁の設置が義務付けられています。
しかし、現行の法律の内容に適合していない擁壁を設置しても、その設置した土地に対して建築の許可は下りません。
擁壁の修繕や補強で建築許可が下りる場合もありますが、工事費が数千万円以上になるケースもあり、簡単に住宅を建てられるとは限りません。
建築の可否を確認する場合は、擁壁の構造図や現況写真などをもとに建築士へ相談しましょう。
傾斜がある
傾斜地では、建築そのものが不可能になる場合があります。
たとえば、30度以上の急斜面に建物を建てようとすると、基礎工事が大掛かりになり、擁壁や造成工事も必要です。
結果的に建築費が通常の何倍にも膨らみ、「建てられるが現実的ではない」というケースも少なくありません。
都市部の山沿いなどでは珍しくありませんが、資金的・技術的ハードルが非常に高く、土地の活用が大きく制限される点に注意が必要です。
接道義務を満たしていない
建築基準法では、接道義務を満たしていない土地に新たな建物を建てられません。
接道義務の条文は次のとおりです。
建築基準法第42条第1項
引用:国土交通省「接道規制のあり方について」
建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない。
上記の条件を満たしていないと、「建築確認」が下りず、新築・増改築は不可能になります。
接動義務を満たしていない土地は昔ながらの住宅街に多く、細長い旗竿地や奥まった土地が該当します。
接道を確保するには隣地の一部を買い取る、隣地に通行権を設定するなどの対策が必要となりますが、どちらも現実的には難しいケースが多いです。
高圧線下にある
高圧電線の真下にある土地では、建物の種類や高さが制限されます。
これは「地役権」や電力会社との協定により、一定の距離や高さの建物制限が設けられているためです。
例えば、送電線の下に高い建物を建てようとしても、感電リスクや保守義務を理由に建築不可とされる場合があります。
また、高圧線下の土地は電磁波の健康リスクも敬遠されがちで、資産価値も低下するため注意が必要です。
農地転用していない
地目が「田」や「畑」のままの土地では、建物を建てるには農地転用の手続きが必要です。
市街化調整区域内や農業振興地域の農地は、転用が厳しく制限されており、都道府県知事や農業委員会の許可が必須となります。
農地転用を申請しても、許可がおりなければ宅地として使用できません。
転用には申請から数ヶ月を要し、費用も発生します。
そのため、農地を購入する前には「すぐに宅地として使えるか」を必ず確認しましょう。
家が建てられない土地を宅地にする方法
「このままでは家が建てられない」と言われた土地でも、一定の対策を行うことで宅地として利用できる可能性があります。
ここでは、具体的にどのような方法で建築条件をクリアし、住宅が建てられるようにできるのかを、ケース別に紹介します。
セットバックする
前面道路の幅が4m未満の場合、建物を建てるには「セットバック」が求められます。
これは、道路の中心線から2m後退して建物を配置することで、将来的に道路幅を確保するための措置です。
たとえば、幅3mの道路を挟んで建物がある場合、両側の敷地を0.5mずつ(合計1m)道路として提供しなければなりません。
ただし、セットバックをすると物件の面積が制限され、建築の自由度が下がったり、土地の評価額が下がる点には注意が必要です。
高圧線下・擁壁の場合は建築条件を満たす
高圧線下にある土地でも、地役権の範囲外であれば建築が可能です。
まずは電力会社に確認し、建物の高さや距離などが条件を満たしているかチェックしましょう。
擁壁についても、構造計算書や施工図を確認し、必要に応じて補強や再施工を行えば、建築許可が下ります。
問題のある擁壁を補強する場合、自治体の補助制度(自治体により異なる)が使える場合もあるため、まずは専門家に相談しましょう。
法地は平らにする
傾斜地や法面(のりめん)に家を建てたい場合は、造成工事によって平地に整える必要があります。
工事には切土・盛土・排水設備の設置などが含まれ、土地の広さや傾斜の度合い次第で工事費用が高額になるケースもあります。
さらに、造成後の安定性を確認するための地盤調査も欠かせません。
斜面にある土地でも平らに造成すれば、通常の建築条件を満たせるようになり、宅地としての活用が可能です。
宅地にできない・家が建てられない土地を手放す方法
家が建てられない土地は、維持コストがかかるうえに活用も難しいため、手放すという選択肢が現実的です。
とくに固定資産税の支払いが負担になっている方や、相続によって不要な土地を取得した方は、できるだけ早く処分したほうがよいでしょう。
ここでは土地を手放す5つの方法と、それぞれの特徴を具体的に解説します。
農家・隣人に買取を依頼する
農家や隣接する土地所有者への売却は、現実的な方法の1つです。
市街化調整区域や農業振興地域内の土地であれば、すでに農地を所有している方が購入しやすく、農地法上の手続きもスムーズに進みます。
たとえば、隣接する土地の所有者に売却する場合は、買い手側が「地続きの土地購入」となり、購入意欲が高くなりやすい傾向にあります。
さらに、よく知る間柄であれば不動産会社を通さず個人間で交渉できるため、仲介手数料も必要ありません。
農地を素早く手軽に売却したい場合は、まず地元の農業委員会などを通じて相談してみましょう。
不動産会社・買取業者に依頼する
宅地として価値が低くても、不動産会社や土地買取業者への売却が可能です。
再建築不可や市街化調整区域の土地でも、建築資材置場や駐車場などに使えるケースがあり、業者によっては現状のままで即金買取に応じるケースもあります。
たとえば「家を建てられないが広い土地」は、資材置き場として使用できる場合があります。
インターネット査定で複数の業者から相見積もりを取れば、買取りしてくれる業者を見つけられるかもしれません。
相続土地国庫帰属法を利用する
「相続したが使い道がない土地」は、国に引き取ってもらえる制度があります。
2023年に施行された「相続土地国庫帰属法」※により、一定の条件を満たせば土地を手放し、国に帰属させることができます。
ただし、建物が残っている場合や、崖地・土壌汚染されている土地などは対象外です。
また、申請には手数料や10年分の管理費相当額の負担が必要で、誰もが簡単に活用できる制度ではありません。
活用できない土地を保有している方にはメリットが多い制度のため、まずは法務局を通して条件の確認をしてみましょう。
※参照:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 | e-Gov 法令検索
相続放棄する
不要な土地を相続したくない場合、相続放棄という方法があります。
相続放棄は家庭裁判所で手続きを行い、「最初から相続人ではなかった」とする制度です。
土地以外に債務や不要な不動産が多い場合は、相続放棄も有効な手段といえます。
ただし、相続放棄は他の資産も含めてすべて放棄しなければならないため、安易に活用するのはおすすめできません。
相続放棄の手続きには、原則として相続開始を知った日から3か月以内に申請する必要がある※ため、早めの判断が求められます。
※参照:裁判所 | 相続の放棄の申述
譲渡・寄付する
土地を手放したい場合は、無償で他者に譲渡したり、寄付するのも可能です。
譲渡・寄付をしたい場合は、地域のNPO法人や自治体、寺社、農家、隣地の所有者などが受け取ってくれる可能性があります。
たとえば「家庭菜園に使いたい」「緑地として活用したい」といったニーズがあれば成立するケースもあります。
ただし、相手側に維持管理や税金の負担が生じるため、受け取りを断られるケースも多く、交渉には時間と根気が必要です。
譲渡・寄付する場合は、登記や贈与に関する手続きも忘れずに行いましょう。
宅地にできない土地に関するよくある質問
宅地にできない土地を所有していると、「この土地にどれほどの価値があるのか」「活用できる余地があるのか」といった疑問が尽きません。
ここでは、よくある3つの質問について、専門的な視点を交えながら具体的にお答えします。
固定資産税評価額は下がる?
宅地にできない土地であっても、必ずしも固定資産税評価額が下がるわけではありません。
評価はあくまで「現況」と「地目」に基づいて算出されるため、たとえば地目が「雑種地」のままの場合は、宅地並みの税負担となるケースがあります。
売却価格は相場よりも安くなる?
建築制限がある土地は、通常の宅地と比べて売却価格が大幅に下がります。
再建築不可、市街化調整区域、農地転用困難などの土地では、買い手が限られるため、流通価格は相場の半額以下になるケースも少なくありません。
ただし、相場はあくまでも一般論であり、土地ごとに価値が異なる点を覚えておきましょう。
トレーラーハウスを設置してもよい?
条件を満たせば可能ですが、自由に設置できるわけではありません。
トレーラーハウスは「車両」として扱われるため、タイヤが外れていたり、固定して電気・水道に接続していると「建築物」と見なされ、建築基準法の制限を受けます。
そのため、再建築不可の土地に置く場合でも、役所に設置条件を確認する必要があります。
まとめ
宅地にできない土地には、市街化調整区域や農業振興地域、再建築不可など、さまざまな制限や条件が存在します。
家が建てられない理由を明確にし、それに応じた対処法を検討することが重要です。
宅地にできない理由を明確にすれば、農地転用や擁壁補強で宅地化できる場合や、農家への貸出や不動産会社への売却で利益を得られる場合もあります。
固定資産税や相続のリスクを最小限に抑えるためにも、まずは地目や接道状況、建築基準法・農地法の制限を正しく把握しましょう。
土地の特性に合った最善の対応策を講じれば、不利な条件下でも価値ある資産として活かす道が見えてきます。