土地を売却すると「いったいどれくらい税金がかかるの?」「控除や特例って何があるの?」と不安や疑問を抱えていませんか?
土地を売却して売却益が出た場合、何も知らないままだと、想像以上に税金の支払いが多くなる場合があります。
本記事では土地売却時に活用できる控除の種類や内容、節税につながる特例制度をわかりやすく解説します。
この記事を読めば、「自分がどの控除を使えるのか」「どうすれば税金を軽減できるのか」が明確になり、損をせずに正しく申告・手続きを進められるようになるでしょう。
【一覧】土地売却時の税金に適用できる特別控除
土地売却時には、譲渡所得に対する税金が発生しますが、条件を満たせば控除や特例を適用して税負担を大幅に軽減できます。
以下に代表的な控除制度を一覧で整理し、どのケースにどの特例が適用できるかを明確にまとめました。
マイホーム売却 | |
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特例・税金控除 | 内容 |
3,000万円の特別控除 | ・居住していた家および敷地を売却する際に適用 ・譲渡所得から3,000万円まで控除可能 |
居住用財産買換え特例 | ・マイホームを買い替えた際に適用 ・譲渡益の課税を繰り延べできる |
住居用財産の損益通算・繰越控除 | ・マイホームを買い替えて譲渡損失が出た際に適用 ・譲渡損失をその年の他の所得から控除できる ・損益通算で控除しきれない場合は、3年間繰越控除できる |
所有期間10年超の軽減税率 | ・マイホーム売却で5つの条件すべてに当てはまれば適用 ・長期譲渡所得の税額を通常より低い税率で計算 |
国税庁 No.3362 居住用財産の買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算
国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
相続した空き家の売却 | |
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除 特例・税金控 | 内容 |
相続空き家3,000万円特別控除 | ・相続した土地 ・家を売却して一定の条件に当てはまると適用 ・譲渡所得から3,000万円まで控除可能 |
相続税取得費加算の特例 | ・相続した土地 ・家を3年以内に売却した場合に適用 ・相続税の一定額を譲渡資産の取得費に加算できる |
国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
事業・区画整理での売却 | 公共|
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特例・税金控除 | 内容 |
収用等による5,000万円控除 | ・収用権が認められている公共事業のために土地を売却した場合に適用 ・条件により受けられる控除 ・特例が変化する |
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例 | ・特定の目的のために土地を売却した際に適用 ・売却した条件により定められた控除が適用される |
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例 | |
農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例 |
国税庁 No.3223 譲渡所得の特別控除の種類
e-Gov 租税特別措置法(34条・34条の2・34条の3)
この一覧を確認すれば、「自分が使える控除はどれか」「適用のために何が必要か」がすぐにわかります。
売却前に確認することで、余分な税金を支払うリスクを減らせるでしょう。
土地売却時の税金に適用できる控除の詳細
土地を売ったときに使える控除には、マイホームの売却や相続空き家の処分、公共事業に伴う売却など、状況に応じた特例が複数用意されています。
控除額は数百万円単位におよび、活用の有無で納税額に大きな差が生まれます。
以下では、代表的な控除制度について、それぞれの条件・控除額・注意点を具体的に解説していきます。
マイホームを売ったときの特例
自宅として住んでいたマイホームを売却した場合、「3,000万円の特別控除」が適用できます。この特例は、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける非常に大きな控除です。
たとえば、4,000万円で買った家を5,000万円で売っても、1,000万円の利益に対し控除が上回るため、所得税も住民税も課税されません。
3,000万円の特別控除適用の条件は次のとおりです。
条件 | 備考 |
物件が右記の条件に該当するマイホームである | ・現在住んでいる自宅 ・転居後3年目の年末までの売却 ・土地の売却契約締結が解体から1年以内で土地を賃借していない ・単身赴任中の場合、配偶者が住んでいる |
物件が「特別の関係がある人」に売ったものではないこと | 特別の関係がある人とは、親子や夫婦、生計を同一にする親族などを指す。 |
売却した年の前年か前々年に右の条件に該当する特例の適用を受けていない | ・3,000万円の特別控除 ・マイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算 |
売却した年か前年、前々年にマイホームの買い換えや交換の特例を受けていない | – |
売却した不動産に右の特例の適用を受けていない | ・固定資産の交換特例 ・収容等の特別控除など |
災害により売却する場合、住まなくなった日から3年後の12月31日まで | – |
適用条件は多いですが、3,000万円の税金控除は家計に大きな影響を与えるため、可能性がある方は確かめてみてください。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
5つの条件を満たす物件を売却する場合、通常の税率よりも低い「軽減税率」が適用されます。
軽減税率の適用に必要な5つの条件は次のとおりです。
- マイホームである
- 売却した家や敷地の所有期間が10年以上
- 売却した前年および前々年に同じ特例を受けていない
- 3,000万円の特別控除以外の特例を受けていない
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」以外に売却していない
上記の条件を満たしていれば、前述の3,000万円特別控除との併用も可能です。
たとえば、譲渡所得が5,000万円であれば、控除で2,000万円まで圧縮したうえで、残額に軽減税率が適用され、節税効果は非常に高くなります。
相続した空き家を売ったときの特例
被相続人が亡くなった後、相続した空き家を売却した場合「最大3,000万円の特別控除」が適用されるケースがあります。
特例が適用される条件を次にまとめました。
- 昭和56年5月31日以前に建築された物件
- 区分所有建物登記されていない建物
- 相続の直前に被相続人以外に居住していた人がいない
- 売却期限が「平成28年4月1日~令和9年12月31日まで」に延長されている
※本特例は、相続後に譲渡する期日が令和9年12月31日までに限られています
上記の条件を満たせば、老朽化した家屋を解体し、更地として売却するケースでも、耐震改修や解体など条件をクリアすれば控除が使えます。
空き家問題の対策として創設された制度で、相続後の活用や売却を検討している方に有利な制度です。
特定のマイホームを買い換えたときの特例
今住んでいるマイホームを売って、新たにマイホームを購入した場合「譲渡益への課税を将来に繰り延べる特例」が適用されるケースがあります。
特例が適用されると、売却で発生した利益についてすぐには課税されず、新居を将来売るときまで先送りできます。
特例の適用条件を次にまとめました。
- 令和7年12月31日までにマイホームを売る
- 売却したマイホームと購入したマイホームが日本国内にある
- 売却した人の居住期間が10年以上かつ所有期間が10年以上(売却した年の1月1日)
- 親子や夫婦など「特別な関係がある人」への売却でない
- 売却代金が1億円以下
- 売却した年の前年から翌年までの間にマイホームを買い替える
- 買い替えるマイホームにも条件あり(参照:国税庁)
ただし、あくまでも税金の繰り延べであり、控除できるわけではありません。
支出がかさみがちなマイホーム買い替えのタイミングで、税金の負担は減らせますが、3,000万円の特別控除などに比べると、納める税金が高くなりがちです。
さらに、ほとんどの控除や特例と併用ができないため、「譲渡益への課税を将来に繰り延べる特例」を利用したほうがよい方は限定的といえます。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを売却して損失が出た場合、損失を給与所得や事業所得などと「損益通算」できる特例があります。
また、通算しきれなかった損失は翌年以降(最長3年)に繰り越して控除も可能です。
たとえば、住宅ローンの残債が多く、売却価格がローン残高に満たない場合、特例を適用して税金の還付を受けられる可能性があります。
特例の適用条件は次のとおりです。
- 売却した資産が指定された条件に該当する
- 売却した年の1月1日に家や敷地の所有期間が5年を超えている
- 譲渡した家の売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローンの残高がある
- 譲渡価格が住宅ローンの残高を下回っている
なお、売却した資産が次の条件に当てはまらなければ、この特例は適用されません。
- 自身が住んでいる家
- 以前に住んでいた家
- 以前に住んでいた家と同時に売却した敷地や借地権
- 以前に住んでいた家を取り壊した場合の家及び敷地(条件あり)
この特例には、「譲渡価格が住宅ローンの残高を下回る」という条件があり、マイホームを売却して損失が出た場合にのみ適用できます。
一方、マイホームを売却して利益が出た場合には適用できないため、利用できるケースは限られているでしょう。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買い換えた際、旧居を売却して損失が出た場合でも、一定の条件を満たせば、上記と同様に損益通算・繰越控除が使えます。
ただし、特例を適用させるには次の条件を満たす必要があります。
- 現在住んでいる、住まなくなってから3年以内の家を売却した
- 家と同時に売却する敷地や借地権
- 上記条件に当てはまる家を取り壊した場合の土地
- 指定された時期までに災害で滅失した場合
災害で滅失した場合は、次の条件に当てはまらないと特例は適用されません
- 災害の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
上記の制度も3年間繰越が可能ですが、ローン控除との併用ができない点に注意が必要です。
住宅ローンの返済負担が重い場合は、活用すると大きな節税が期待できます。
公共事業・区画整理で売却した場合の特例
土地が公共事業や区画整理の対象となり売却する場合、通常の譲渡所得とは異なる優遇措置が受けられる可能性があります。
国や地方自治体の施策としての売却であれば「5,000万円の特別控除」や「税率軽減」などが適用されるケースもあります。
「5,000万円の特別控除」の適用条件を次にまとめました。
- 売却した土地が固定資産
- その年に公共事業のために売却した資産の全てが収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていない
- はじめに買取等の申請を受けた日から6ヵ月以内に土地建物を売却している
- 公共事業の施行者からはじめに買取等の申し出を受けたものが譲渡している
公共事業や区画整理で売却した場合に適用できる控除は、比較的細かな条件が設定されています。
たとえば、買取の申請を受けた日から6ヶ月以内に売却できなければ、特例の適用ができません。
条件を満たせば大幅な節税ができる場合もあるため、特例を適用できる可能性がある方は、専門家に相談してみましょう。
土地売却時の税金に適用できる控除を受ける際の注意点
土地売却にともなう特別控除や節税特例は非常に有利ですが、適用にはいくつかの注意点があります。
制度の内容を誤解したまま申告すると、控除が無効になったり、税務署からの修正指導を受ける可能性もあります。
代表的な「併用できない特例の組み合わせ」や「確定申告が必要なケース」など、実際によくある注意点を事前に確認しておきましょう。
併用できない特例がある
複数の特例を同時に利用できないケースがあり、優先順位を間違えると損をする可能性があります。
たとえば、「マイホームの3,000万円特別控除」と「マイホーム買い換えの譲渡損失の繰越控除」は併用できません。
併用制限は特例や控除ごとに定められており、条件の重複があると選択制になります。
そのため、「どの特例が最も節税効果が高いか」を事前に試算し、選択する必要があります。
複数の控除に該当しそうなケースでは、税理士や専門家に相談し、最適な組み合わせを判断するとよいでしょう。
売却益があれば確定申告が必要
土地売却で利益(譲渡所得)が出た場合、たとえ特例で非課税になる場合でも、原則として「確定申告」が必要です。
申告を忘れると税務署から指摘され、延滞税や過少申告加算税が発生する可能性があります。
たとえば、3,000万円特別控除を使って実質的に課税ゼロになるケースでも、申告書に控除を適用した記載がなければ控除は認められません。
また、損失が出た場合でも損益通算や繰越控除を利用したいなら、確定申告が必要です。
売却後の納税や還付を正しく受けるためにも、控除や特例を使う予定がある場合は、確定申告を忘れないようにしましょう。
土地売却時にかかる税金の種類
土地を売却すると、売却益に対してさまざまな税金が発生します。
主にかかる税金は次の4種類です。
- 印紙税
- 登録免許税
- 所得税
- 住民税
税金をどのタイミングで誰に支払うものかを理解すれば、売却時の資金計画や節税対策がスムーズに進みます。
それぞれの税金について詳しく解説するため、売却前に確認しておきましょう。
印紙税
印紙税は、売買契約書に課税される税金です。
土地の売買契約書には原則として印紙を貼付し、印紙税は売却価格により異なります。
不動産売買に適用される印紙税を次の表にまとめました。
不動産売却価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
1万円以下のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円を超え10万円以下のもの | 200円 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億万円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 200,000円 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
印紙税は契約書1通ごとに課税され、売主・買主のどちらが負担するかは契約で決める点に注意が必要です。
不動産売買の契約をする際は、印紙税の負担についても交渉しましょう。
印紙を貼らずに契約書を提出した場合は、過怠税が課されるので、事前に税額を確認して正しく納めてください。
登録免許税
登録免許税は、土地の所有権移転登記にかかる税金です。
土地売買における登録免許税の税率は次のとおりです。
対象となる不動産 | 登記の種類 | 税率 |
土地 | 売買(所有権移転登記) | 1,000分の20(2.0%) |
土地 | 相続(所有権移転登記) | 1,000分の4(0.4%) |
仮に評価額が2,000万円の土地を売買する場合であれば、登録免許税は40万円です。
登録免許税は買主が負担するケースが多い税金ですが、売却価格や登記状況によって相談を求められるケースもあります。
売主としては直接支払う税金ではないものの、契約交渉の中で「売主側で一部負担してほしい」と求められる場合もあるため、費用感を理解しておきましょう。
なお、売却する土地を購入した際のローンが残っている場合は、抵当権抹消のための登録免許税を売主が負担する必要があります。
ただし、抵当権抹消の際の登録免許税は一律1,000円(土地と建物の場合は2,000円)のため、大きな負担にはならないでしょう。
所得税
所得税は、土地売却によって得た「譲渡所得」に課される税金です。
利益が出た場合のみ課税され、所有期間が5年超か以下かで税率が変わります。
たとえば、所有期間が5年超の「長期譲渡所得」であれば、所得税15%が課されます。
一方、5年以下の「短期譲渡所得」の場合は30%と倍の税率が適用されます。
また、2037年(令和19年)までは「復興特別所得税」として、所得税額の2.1%が加算されます。
適用できる特例や控除の有無により課税額が変動するため、売却前に税率や控除を試算しておくと安心です。
住民税
住民税も、所得税と同様に譲渡所得に課されます。
税率は、長期譲渡所得で5%、短期譲渡所得で9%となっており、所得税と合わせると負担額は小さくありません。
たとえば、譲渡所得が1,000万円で長期譲渡に該当する場合、住民税だけでも50万円の納税義務が発生します。
住民税は翌年の6月以降に市区町村から通知が届くため、売却時の資金計画に入れておかないと支払い時に資金不足となる可能性があります。
実際に、通知が届いてから住民税について認識する方も多く、見落としがちな落とし穴になりがちです。
無理な資金繰りを強いられないためにも、事前に納税スケジュールも確認しておきましょう。
土地売却時にかかる税金の計算方法
土地売却で発生する税金は「譲渡所得」を基に算出されるため、控除対象になる費用や計算方法を事前に理解する必要があります。
所有期間によって税率が大きく異なるため、間違った計算をすると、予測よりも高い納税を求められる方もいるでしょう。
ここでは、譲渡所得の基本的な計算式から、取得費や譲渡費用、税率、シミュレーション方法まで、順を追って解説していきます。
譲渡所得の計算方法
土地売却時の税金は、利益にあたる「譲渡所得」に対して課税されます。譲渡所得は以下の式で求められます。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
たとえば、1,500万円で購入した土地を3,000万円で売却し、売却時の仲介手数料などが200万円かかった場合、譲渡所得は以下の通りです。
3,000万円-(1,500万円+200万円)=1,300万円
上記の計算で求めた1,300万円が課税対象となり、特別控除などを差し引いて税額が決まります。
計上できる取得費・譲渡費用
取得費や譲渡費用として計上できる経費を正確に把握すれば、効率よく節税できます。
取得費・譲渡費用としてできる主な費用を次にまとめました。
▼取得費として計上できる費用
- 土地や建物の購入代金
- 購入手数料
- 設備費
- 改良費
- 各種税金(登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税)
- 立退料
- 造成費用
- 測量費
- 訴訟費用
など
▼譲渡費用として計上できる費用
- 仲介手数料
- 売主が負担した分の印紙税
- 立退料
- 取り壊し費用と建物の損失額
など
上記を見てわかるとおり、取得費、譲渡費用として計上できる費用は豊富です。
上記の計上にはレシートや請求書などの証明書類が必要になるため、売却時には忘れず保管しておきましょう。
なお、古い不動産で取得費が不明な場合の取り扱いについては、次の見出しで詳しく解説します。
所有期間による税率の違い
土地の所有期間によって適用される税率が大きく異なる点にも注意が必要です。
所有期間が「5年超」であれば長期譲渡所得となり、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%の計20.315%が課税されます。
一方、「5年以下」の短期譲渡所得に該当すると、所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%の計39.63%と、実に約2倍の税率が適用されます。
5年という基準は「売却した年の1月1日時点」で判定されます。
たとえば2019年12月に購入して2025年1月に売却しても、まだ5年未満の扱いです。
タイミングひとつで数十万円以上の差が出るケースもあるため、事前の確認が重要です。
取得費がわからない場合
取得費の証明書類が見つからない場合でも、控除を適用できる場合があります。
方法の一つとして有効なのが「概算取得費」としての計上です。
概算取得費として取得費を計上すると、譲渡価格の5%を取得費としてみなされます。
たとえば、2,000万円で売却した土地なら、100万円(=2,000万円×5%)が取得費として計上可能です。
とくに相続や贈与で受け継いだ土地では、取得時の価格が不明なケースも多いため、過去の登記情報や税務署への確認など、早めに調査しておくと安心です。
譲渡所得税額をシミュレーション
実際の譲渡所得税額を事前に把握しておけば、控除や特例の適用判断もしやすくなります。
譲渡所得額の計算に有効なのが、国税庁の公式サイトや税金計算ツールの活用です。
計算の一例として、3,000万円で土地を売却したケースをシミュレーションしてみましょう。
3,000万円で土地を売却し、取得費と譲渡費用を合計1,500万円とした場合、譲渡所得は1,500万円です。
長期譲渡所得なら20%で約300万円、短期譲渡なら39%で約585万円が税額となります。
上記の金額に3,000万円特別控除などが使える場合、税額は大幅に下がります。
控除の効果を正確に見積もるためにも、早い段階でシミュレーションをしておきましょう。
土地売却時の税金に適用できる控除に関するよくある質問
土地を売却する際、どのような控除が使えるのか、またそれ以外に節税対策はあるのかなど、多くの方が共通して抱く疑問があります。
ここでは、「50万円の特別控除」「控除以外の節税策」「譲渡・相続・贈与の違い」など、実務で特に多い質問を取り上げてわかりやすく解説します。
50万円の特別控除は適用できる?
「50万円の特別控除」は、通常の土地売却では適用されません。
「株式や事業用資産などの譲渡損失が出た場合」に損益通算で使用されるケースがほとんどです。
土地売却において主に使われるのは「マイホームの3,000万円特別控除」や「空き家特例」などで、50万円の控除は制度の対象外となります。
制度名称が似ているため混同されがちですが、土地売却に関する特別控除は用途や状況ごとに設けられた個別の特例であることを理解しておきましょう。
控除以外にできる節税対策は?
特別控除以外にも、土地売却にともなう税負担を軽減する方法はあります。
たとえば、不要な土地を親族間で共有名義にしておくと、譲渡所得が分散されるため、個人あたりの税額を抑えられます。
また、売却時期を「長期譲渡所得」扱いになる年以降にずらして、税率を20%に引き下げる方法も有効な手段です。
さらに、売却の前後で資産の損益通算を行い、他の収益と相殺すれば節税につながります。
いずれにせよ、事前に税理士などの専門家と相談し、自身に合った方法の見極めが重要です。
譲渡・相続・贈与の違いとは?
「譲渡」「相続」「贈与」はいずれも財産を他人に移す行為ですが、それぞれに税制上の取り扱いが異なります。
3つの意味を次にまとめました。
名称 | 意味 | 課税される税金 |
譲渡 | 土地などを有償で第三者に売却 | ・譲渡所得税 ・住民税 |
相続 | 死亡により財産を無償で引き継ぐ | ・相続税 |
贈与 | 生前に無償で財産を渡す | ・贈与税 |
上記の違いを理解することは、売却後の控除適用や計画的な資産移転にも大きく影響します。
とくに「相続した空き家を売却する」場合には、譲渡所得が発生するため、譲渡と相続の両方の税制を正確に理解しておく必要があります。
まとめ
土地を売却した際に発生する税金は、譲渡所得税や住民税などが中心ですが、正しく控除を活用すれば、負担を大きく軽減できます。
特に「3,000万円特別控除」や「空き家の特例」「マイホームの買い換え特例」など、条件に合致すれば節税効果は非常に高くなります。
ただし、控除や軽減税率は併用できない場合もあるため、自身の状況に適した制度を見極めなければなりません。
また、売却益がある場合は確定申告が必須となる点にも注意しましょう。
売却前にシミュレーションを行い、必要な書類をそろえれば、余計な手間や税負担を防げます。
不安がある方は、早めに税理士など専門家へ相談しましょう。