土地を売却する際、「どの程度税金がかかるのかを知りたい」「いつ納税するのかわからない」と考える方もいるでしょう。
不動産売買は金額が大きくなるケースもあるため、できる限り節税したいと思うときもあるのではないでしょうか。
土地売却で多額になるケースがあるのは所得税と住民税ですが、特例を利用できれば課税されない可能性もあります。
本記事では、土地の売却で発生する税金の種類や納税のタイミング、納付額の計算方法や節税になる特例などを解説します。
実際にシミュレーションした結果も紹介するため、土地の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
土地売却時の税金の種類は?いつ払う?
土地を売却すると、いくつかの税金が発生します。それぞれ支払うタイミングや納付方法が異なり、初めての方には非常にわかりにくいのが実情です。
ここでは、土地売却時に関係する主な税金「印紙税」「登録免許税」「所得税」「住民税」の4種類について、具体的な内容と支払いのタイミングをわかりやすく解説します。
印紙税
売買契約書を作成する際に発生するのが印紙税です。印紙税は契約金額によって異なるため、次の表を参考にしてください。
契約金額 | 印紙税 | 軽減税率 |
50万円超〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超〜5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超〜5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
印紙税は、印紙を契約書に貼付し、消印することで納税が完了します。
契約書は売主用と買主用の2通を作成するため、印紙も2枚必要になり、それぞれが1枚ずつ負担するケースが一般的です。
登録免許税
売却する土地に抵当権が設定されている場合は、登記を抹消するために登録免許税の支払いが発生します。
抵当権とは住宅ローンを組むときに、金融機関が債務者の不動産を担保にする権利を指します。
売却する土地に、マイホームを建てるための住宅ローンを利用していない場合は、登録免許税は発生しません。
抵当権抹消登記のために支払いが必要な登録免許税は、土地1筆あたり1,000円です。また手続きは、司法書士に依頼するケースが一般的です。
そのため、1.5〜2万円程度の司法書士への報酬も必要になります。
所得税
土地の売却で利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税が課税されます。税率は次のように、所有期間によって異なります。
不動産の所有期間 | 所得税の税率 |
5年以下(短期譲渡所得) | 30% |
5年超(長期譲渡所得) | 15% |
また上記に加えて、東日本大震災の被災者支援を目的とした「復興特別所得」も課税されます。復興特別所得税の税率は、所得税額×2.1%です。
所得税と復興特別所得税は、売却した翌年の2月中旬から3月中旬にかけておこなう「確定申告」で納付します。事前に譲渡所得の金額を計算し、必要書類を準備しておくことでスムーズに手続きができます。
住民税
所得税と同様に、譲渡所得に基づいて課税されるのが住民税です。こちらも所有期間により、次の税率が適用されます。
不動産の所有期間 | 住民税の税率 |
5年以下(短期譲渡所得) | 9% |
5年超(長期譲渡所得) | 5% |
納付は所得税と異なり、確定申告後に市区町村から送られてくる納付書に基づいて支払う形式です。支払いは通常6月頃から開始となり、分割払いとなるケースもあります。
土地売却時の税金はいくら?
土地売却で実際にかかる税額は、「譲渡所得」に対して課される所得税・住民税の合計です。売却価格=課税対象ではないため、正確に計算するには譲渡所得の仕組みを理解することが不可欠です。
ここでは、譲渡所得の計算方法や、必要経費として差し引ける費用、所有期間による税率の違いなど、実際の税額を正しく把握するための知識を詳しく解説します。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得=売却価格−取得費−譲渡費用 |
たとえば、2,000万円で土地を売却し、取得費が800万円、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は1,000万円となります。
この譲渡所得に対し、所有期間に応じた税率で所得税・住民税が課税される仕組みです。計算式を理解しておくことで、手元に残るお金を正確に予測できます。
取得費・譲渡費用になるもの
取得費や譲渡費用にできるものの一例は、次の表を参考にしてください。
取得費 | 譲渡費用 |
・登録免許税 ・不動産取得税 ・印紙税解体費(購入後おおよそ1年以内に解体した場合) ・測量費(購入時に支払った場合) | ・仲介手数料 ・売主負担の印紙税 ・解体費(売却を目的に解体した場合) ・測量費(売却時に支払った場合) ・借家人に支払う立退料 |
これらを適切に計上することで課税対象が圧縮され、結果的に納める税金を減らすことが可能になります。領収書や契約書などの書類は必ず保管しておきましょう。
所有期間で税率が異なる
「土地売却時の税金の種類は?いつ払う?」の章で解説したとおり、所有期間で所得税や住民税の税率が次のように異なります。
不動産の所有期間 | 所得税+住民税+復興特別所得税 |
5年以下 (短期譲渡所得) | 39.63% |
5年超 (長期譲渡所得) | 20.315% |
売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年超なら「長期譲渡所得」となり、適用される税率が大きく変わります。
たとえば、譲渡所得が1,000万円の場合、短期なら約400万円、長期なら約200万円の税負担になるケースもあります。売却タイミングの調整だけで、大きな節税効果を得られることもあるため、所有期間が5年以下の場合は注意してください。
取得費が不明の場合
取得費がわからない場合、原則として「売却価格の5%」を取得費とみなして計算されます。たとえば1,000万円で売却したなら、取得費は50万円となり、950万円が課税対象となってしまいます。
この簡易計算は税額が高くなりやすいため、可能な限り取得費を証明できる書類(売買契約書や登記情報)を探し出すことが重要です。相続で得た土地でも、当時の資料があれば利用できます。
土地売却時の税金額をシミュレーション
土地の所有期間が3年と7年の2つのケースに分けて、譲渡所得の計算から税額までをシミュレーションします。
土地の売却を検討しており、どの程度税金がかかるのかが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
所有期間3年の土地を1,000万円で売却した場合
所有期間 | 3年 |
土地の売却価格 | 1,000万円 |
取得費 | 600万円 |
譲渡費用 | 100万円 |
上記のようなケースで試算してみましょう。
まず譲渡所得は、1,000万円 − 600万円 − 100万円 = 300万円です。
短期譲渡所得の税率は、所得税(復興特別所得税含む)が30.63%、住民税が9%で、合計39.63%となります。
したがって、300万円 × 39.63% = 約119万円が納税額です。
売却益のうち約4割が税金として差し引かれるため、手取り額は約781万円となります。短期売却では負担が重くなるため、できれば5年を超えてから売却したほうが節税効果は高くなります。
所有期間7年の土地を2,000万円で売却した場合
所有期間 | 7年 |
土地の売却価格 | 2,000万円 |
取得費 | 1,200万円 |
譲渡費用 | 150万円 |
今度は上記のようなケースで税額をシミュレーションしてみましょう。
長期所有(5年超)の土地を2,000万円で売却した場合、税率が低くなります。
譲渡所得は、2,000万円 − 1,200万円 − 150万円 = 650万円です。
長期譲渡所得の税率は、所得税と住民税をあわせて20.315%のため、650万円 × 20.315% = 約132万円が納税額となります。
売却益に対する税負担は2割程度に抑えられ、手元には約1,718万円が残ります。
長期保有による税率の差は、最終的な利益に大きく影響するため、売却タイミングの調整ができる場合は、所有期間が5年を超えてからにしましょう。
土地売却時の税金に適用できる控除
土地を売って得た利益には税金がかかりますが、条件を満たせば控除や軽減措置を活用できます。
所有している、または相続した土地を売却した際に利用できる控除を紹介するため、要件が当てはまる方は適用を受けて節税しましょう。
マイホームを売った場合の特別控除
マイホームを売ったときは、最大3,000万円までの譲渡所得が非課税になります。これは「3,000万円特別控除」と呼ばれる制度です。
たとえば、2,500万円の利益が出たとしても、この特例を利用できれば税金を納付する必要はありません。
マイホームを売った場合の特別控除の主な要件は、次のとおりです。
- 自身が住んでいる不動産
- 取り壊しから1年以内の売却
- 住まなくなってから3年目の年末までの売却
- 親族への売却ではない
詳しい要件を知りたい方は国税庁の「マイホームを売ったときの特例」のページを参考にしてください。
マイホームを売った場合の軽減税率
マイホームを10年超所有していた場合、次のように税率がさらに低くなります。
不動産の所有期間 | 所得税+住民税+復興特別所得税 ※軽減税率の特例適用後の合計税率 |
10年超 | 14.21%(6,000万円超の部分は20.315%) |
マイホームを売った場合の特別控除と併用できるうえに、5年超10年以下の20.315%から税率が下がるため、納税額を抑えられます。
軽減税率が適用される主な要件は、次のとおりです。
- 現在自身が住んでいる物件
- 売却した年の1月1日時点で物件の所有期間が10年超
- 指定された特例の適用を受けていない
- 親族への売却ではない
詳しい要件やシミュレーションなどは、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」のページを参考にしてください。
相続した場合の取得費の特例
相続した土地を売却した場合で、すでに相続税を支払っている方は、取得費の特例が利用できます。
納付した相続税額の一定金額を譲渡した土地の取得費に加算できるため、納税額を抑えられる特例です。
取得費の特例は、主に次の要件を満たしていれば利用できます。
- 相続や遺贈により不動産を取得している
- 不動産を取得した方に相続税が課税されている
- 相続税の申告期限から3年以内の売却
計算方法や提出書類などは国税庁の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」のページを参考にしてください。
相続した空き家を売った場合の特例
相続で取得した空き家を売却する場合、条件を満たせば最大3,000万円の特別控除を受けられる制度があります。これにより、譲渡益が実質0円になり、課税されないケースも珍しくありません。
相続した空き家を売った場合の特例の主な要件は、次のとおりです。
- 1981年5月31日以前に建築されている
- 相続から売却まで空き家
- 相続が発生した日から3年経過する年の年末までの売却
- 売却価格が1億円以下
親から空き家を相続した場合は、自身が特例を利用できるか「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」のページで確認してください。
譲渡所得に関するその他の特別控除
その他にも、特定土地区画整理事業や公共事業のための土地譲渡、農地転用に関する控除など、多様なケースに応じた特例があります。
利用できる特別控除の一例は、次のとおりです。
土地売却の種類 | 控除額 |
公共事業のための売却 | 5,000万円 |
特定土地区画整理事業のための売却 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業のための売却 | 1,500万円 |
農地保有の合理化のための売却 | 800万円 |
平成21年に取得した土地を平成27年以降に売却 平成22年に取得した土地を平成28年以降に売却 | 1,000万円 |
上記の特例の詳しい内容や注意事項などを知りたい方は、「譲渡所得の特別控除の種類」のページを参考にしてください。
土地売却時に確定申告が不要になるケース
土地を売却しても、すべての方が必ず確定申告をしなければならないわけではありません。
確定申告が不要になる、または必要なケースをそれぞれ解説するため、ぜひ参考にしてください。
売却益がない場合は不要
売却価格が取得費や諸費用より低かった場合、譲渡所得が発生しないため税金はかかりません。土地売却による利益がなく、基本的に確定申告は不要です。
たとえば、1,500万円で購入した土地を1,300万円で売却すると、譲渡損失になります。土地の売却による利益が出ていなければ申告義務はありません。
ただし土地の譲渡によって損失が出た方で、繰越控除の特例を利用したい場合は、確定申告が必要です。
特例を適用して0円になった場合は必要
土地の売却で利益(譲渡所得)が出たものの、控除や特例を利用して課税額がなくなった場合は、確定申告が必要です。
確定申告をしないと控除や特例を利用したのかがわからないため、指定された書類を用意して申告しなければなりません。
たとえば、マイホームを売った場合の特別控除3,000万円で納税がなくなったケースは、確定申告書と譲渡所得の内訳書を提出する必要があります。
土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日が確定申告の期間のため、申告が必要な方は忘れないようにしてください。
確定申告に必要な書類
土地を売却して、確定申告をする際に必要な書類は次のとおりです。
- 売買契約書(購入時・売却時)
- 登記簿謄本
- 仲介手数料や経費などの領収書
- 譲渡所得の内訳書
- 確定申告書
- 確定申告書第三表(分離課税用の申告書)
特例が利用できるかや確定申告は必要なのかなど、判断に迷う方は必要に応じて税務署や税理士などの専門家に相談しましょう。
土地売却の税金に関するよくある質問
土地売却の税金に関してよくある質問と回答をまとめました。
他の所得と損益通算できるのかや、土地をできる限り高く売る方法などを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
確定申告しないとどうなる?
確定申告が必要なのにもかかわらず無申告だと、後日「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があります。悪質と判断された場合は「重加算税」が課されることもあります。
ペナルティを支払わなくてもよいように、決められた期間内に確定申告をして、納税しましょう。
他の所得と損益通算できる?
土地売却で損失が出ても、原則として給与所得や事業所得などの他の所得とは損益通算できません。
ただし、不動産の売却によって損失が出た場合、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用できる可能性があります。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用できれば、給与所得や事業所得などから控除(損益通算)が可能です。
詳しい内容や要件を知りたい方は、国税庁のページを参考にして、自身が利用できるか確認してください。
土地をなるべく高く売る方法は?
土地をできる限り高く売るためには、不動産会社選びが大切です。信頼できる不動産会社は、次のポイントに注目して選びましょう。
- 土地売却を得意としているか
- 得意なエリア
- 査定価格の根拠を説明できるか
- 担当者の対応力や相性がよいか
まずは複数の不動産会社に、売却を検討している土地の査定依頼をして、上記の点を確認してください。
まとめ
土地売却にかかる税金の種類や支払うタイミング、計算方法や適用できる特例などを解説しました。
所有している土地を売却すると、次のような税金が発生します。
- 印紙税
- 登録免許税
- 所得税
- 住民税
土地の売却における所得税と住民税は、利益(譲渡所得)がない場合や、特例を利用してすべて控除されるケースは発生しません。
自身が所有している、または相続した土地を売却して税金が発生する際は、必要に応じて税務署や税理士などに相談してください。
またできる限り高く土地を売りたい場合は、信頼できる不動産会社を選び、不動産売買を成功させましょう。