「土地を売りたいけれど、何から始めればいいのか分からない」「費用や税金はどのくらいかかるの?」など、土地の売却に不安を感じる方は少なくありません。
土地売却には特有の手続きや注意点が多く、知識がなければ損をするケースもあります。
本記事では、土地売却の基本的な流れから、かかる費用・税金、失敗を防ぐためのポイントまで、初心者にもわかりやすく解説します。
あわせて、より高く・スムーズな売却ができる具体的なコツや相談先も紹介するため、土地の売却を考えている方は必見です。
ぜひ本記事を参考に、大切な土地を、納得のいく形で売却しましょう。
土地を売却する前に確認すべきこと
土地の売却は、不動産会社に依頼するのみで済むわけではありません。
実際には、事前にいくつもの確認や準備が必要となり、怠れば売却が進まない・損をする・後からトラブルになるなどのリスクが発生します。
ここでは、売却前に確認すべき重要なポイントをひとつずつ解説します。
名義変更する
土地を売却するためには、登記上の名義が現在の所有者であることが必須です。
親から相続した土地を、故人名義から変更していないケースは少なくありません。登記上の名義人が現在の所有者と同一人であると確認できなければ売却できません。
まずは法務局で登記事項証明書を取得し、名義を確認しましょう。変更が必要な場合は、司法書士に依頼して相続登記や名義変更手続きをおこなう必要があります。
手続きを後回しにすると、売却のタイミングを逃す恐れがあるため注意が必要です。
必要な書類を準備する
売却に必要な書類が揃っていなければ、売却手続きそのものが進みません。
代表的な書類は、次のとおりです。
- 登記識別情報(権利証)
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 固定資産税納税通知書
とくに古い土地では、登記情報が紙のままで、書類が見つからないこともあるため、早めに確認しましょう。
境界を明確にする
隣地との境界が不明確なまま売却を進めると、トラブルが発生する恐れがあります。
買主としては、どこまでが購入対象かわからない土地に安心してお金を払えません。
境界があいまいな場合は、土地家屋調査士に依頼して現地の測量と境界確認をおこないましょう。
とくに古い土地では境界標が失われているケースが多く、正確な確認が不可欠です。
住宅ローンの残債を確認する
土地に建物が建っており、ローンが残っている場合、売却時にローン残債の完済が必要です。抵当権が設定されたままでは、買主とトラブルになるためです。。
残債がある場合は、売却価格でローンを完済できるかを事前に金融機関に確認しましょう。
土地を売却したお金で住宅ローンを完済できない場合は、自己資金の用意や売却条件の見直しが必要です。
前面道路との関係を調査する
土地がどのような道路に接しているかにより、再建築の可否や評価額が大きく変わります。
接道義務を満たしていない土地は、再建築不可となるため売却しづらくなります。
原則として、4m以上の幅がある道路に対して2m以上接していないと建物は建築できません。
自治体の建築指導課で道路の幅を調べ、不明な点があれば専門家に相談しましょう。
契約不適合責任の内容を確認する
土地を売却する際、売主は契約不適合責任を負います。契約不適合責任とは、売買後に契約内容と異なる不具合があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
たとえば、地中に廃材が埋まっていた、利用していない井戸や浄化槽があったなどが後から発覚すると、買主から損害賠償を求められる可能性があります。
トラブルを避けるためには、事前に土地の状況を整理し、契約書に対応範囲を明確に提示しましょう。
売却価格の相場を調べる
相場を無視した価格設定は売れ残りの原因になるため、売却価格を知ることは欠かせません。
自身の土地と条件が似た近隣の物件の売り出し価格や売却価格を調べましょう。
不動産ポータルサイトや、国土交通省のWebサイト不動産情報ライブラリ、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するREINS Market Informationを利用すれば、効率よく調べられます。
また、複数の不動産会社から査定を受けて、相場感をつかむことも有効です。
土地売却の流れ
土地の売却は、感覚で進めるのではなく、正しい順序で進めることが大切です。
たとえば、不動産屋に行く前に、準備や相場を確認するなどです。
この章では、売却の開始から契約、最終的な引き渡しや税金の申告まで、具体的な7ステップを時系列でわかりやすく解説します。
1:準備
まずは、土地の状態や名義を確認し、必要書類を整理する事前準備です。
事前準備を怠ると、後の査定や契約時に思わぬトラブルが起こりかねません。
また、住宅ローンの有無や相続の問題が絡む土地の場合は、専門家への相談も検討しましょう。準備が整えば、スムーズな売却の土台ができます。
2:査定
準備が完了したら、複数の不動産会社に査定を依頼します。
査定額には差が出ることが多いため、1社のみで判断せず、比較して相場観を持つことが大切です。
一括査定サービスを使えば、手間をかけずに相場を把握できます。ただし、査定額は売れる保証額ではなく、参考値であることを理解しておきましょう。
3:媒介契約の締結
信頼できる不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
契約の種類は、一般、専任、専属専任の3タイプがあり、それぞれ販売活動の自由度と報告義務が異なります。
売却活動に力を入れたい場合は、専任媒介または、専属専任媒介の選択が一般的です。内容をよく確認し、納得のうえで契約を結びましょう。
4:売却活動の開始
媒介契約を結べば、不動産会社が広告や内覧対応などの販売活動を開始します。
買い手の目に止まりやすくするためには、土地の清掃や周囲の整理も大切です。写真撮影や掲載文の内容も成約スピードに大きく関係します。
売主自身が土地を魅力的に見せる工夫をおこなうことは、スムーズな成約には欠かせません。
5:売買契約の締結
購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。売買契約時におこなう重要事項説明は、不動産取引における最も重要なステップのひとつです。
条件の確認、手付金の授受、引渡し時期の合意などでは、内容を十分に理解し、納得したうえで署名押印しましょう。
6:決済・引き渡し
契約後、買主から残代金を受け取ると同時に、土地を正式に引き渡します。
決済・引き渡しの際は司法書士が立ち会い、所有権の移転登記や抵当権の抹消などの手続きを進めます。
売主は、売却代金の受領と引き渡し条件の履行を確実におこなうことが大切です。書類や土地上に建物がある場合はカギの受け渡しも忘れずにおこないましょう。
7:確定申告
土地を売却して利益が出た場合、売却した翌年に確定申告が必要です。
確定申告では、譲渡所得が生じたかどうかを税務署に申告します。
譲渡所得が生じた場合、確定申告と同時期に譲渡所得税を納付します。
3,000万円特別控除や、長期譲渡所得の軽減税率などの特例もあるため、条件に合えば大幅な節税が可能です。特例の対象であるかが不安な場合は、税理士に相談しましょう。
土地売却で発生する諸費用・税金
土地売却では、単に売却代金を受け取るのみでなく、さまざまな費用や税金の負担が発生します。
土地売却で発生する諸費用や税金を事前に把握しておくことで、資金計画を立てやすくなり、手取り金額の見込み違いによる失敗を防げます。
ここでは、土地売却で発生する費用や税金、節税のために活用できる制度についてわかりやすく解説します。
諸費用
土地売却にかかる主な費用には、仲介手数料、登記関連費用、測量費、解体費などがあります。
たとえば、不動産会社に依頼した場合、売却価格に応じた仲介手数料が必要です。
計算式 | 計算式の利用条件 |
仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円 | 売買金額が400万円を超える場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円 | 売買金額が200万円を超え400万円以下の場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 5% | 売買金額が200万円以下の場合 |
また、土地に建物がある場合は、解体費がかかるケースもあります。さらに、隣地との境界が不明瞭な場合には、測量費も発生します。
解体費は一括で請求されるのではなく、売却の進行に応じて支払うため、事前にいくらかかるのかを把握しておきましょう。
税金
土地売却により利益(譲渡所得)が出た場合、所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。
譲渡所得は、「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算され、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下か、5年を超えるかにより税率が変わります。
とくに注意が必要なのは取得費です。購入時の価格や取得にかかった費用を証明できない場合、概算で売却価格の5%しか認められません。
結果として課税額が高くなるため、取得時の資料はできる限り残しておくことが大切です。
節税に利用できる特例
土地売却には、上手に活用すれば税負担を大きく軽減できる特例があります。
代表的なものは、居住用財産の3,000万円特別控除で、土地を売却した際に、譲渡所得から3,000万円が控除されます。
さらに、土地を売却した土地の1月1日現在の所有期間が10年超の場合は、軽減税率の特例も併用が可能です。ただし、適用には細かな条件があり、事前の確認が欠かせません。
該当する可能性のある方は、税理士をはじめとする専門家に相談しましょう。
土地売却の状況別の注意点
土地の状態や取得経緯により、売却時に気をつけるべきポイントが大きく異なります。
同じ土地売却でも、家が建っているのか、相続した土地なのか、あるいは共有名義かなどで対応が変わるため、状況ごとの対策が必要です。
ここでは、よくある6つのケースについて具体的な注意点を紹介します。
土地に家が建っている
建物付きの土地は、そのまま売却するか、建物を解体して更地として売るかの選択が必要です。
築年数が古い場合、買主は解体を前提に検討することが多く、結果として土地の評価が下がるケースもあります。
事前に建物の価値や解体費を把握し、不動産会社と相談のうえ販売方法を決めましょう。また、古家付きのまま売る場合は、契約不適合責任の範囲も明確にする必要があります。
土地を相続した
相続で取得した土地は、登記名義を自身に変更していなければ売却できません。
売却前に必ず相続登記を済ませましょう。相続登記は法務局に申請する手続きで、戸籍や遺産分割協議書などが必要です。
また、相続で取得した土地は、取得費が不明なケースも考えられます。取得時の価格がわからない場合、税負担が増える可能性があるため注意しましょう。
土地が共有名義になっている
共有名義の土地を売却するためには、原則として全共有者の同意が必要です。1人でも反対すれば売却できません。
また、価格や時期で意見が割れることも多く、トラブルに発展するリスクがあります。
共有者が多いほど交渉は複雑になるため、事前によく話し合いましょう。調整が難しい場合は、弁護士への相談がおすすめです。
土地を貸している
土地を他人に貸している状態で売却する場合は、借地人との権利関係を整理する必要があります。
また、買主も借地関係のある土地は敬遠しがちです。そのため、収益物件として売り出すか、契約解除後に売るか、戦略を明確にする必要があります。
遠方の田舎の土地を手放したい
田舎の土地は需要が少なく、多くの場合、売却までに時間がかかります。
とくに古い家付きの土地の場合は、買主が見つかりにくく、価格交渉も不利になりがちです。
遠方の田舎の土地を売却したい場合は、売りたい土地のあるエリアの販売が得意な不動産会社へ依頼しましょう。
おすすめは、地元密着型で土地の活用法を知っている不動産会社です。古い家付きの土地も、リノベーションできる古民家付きの魅力ある土地として販売し、すぐに買主が見つかるケースもあります。
また、買主が見つからない場合は買取を検討する、空き家バンクに登録する、相続土地国庫帰属制度を利用するなどの選択肢もあります。
山林や農地を売りたい
山林や農地は、宅地とは異なる法律や規制が関係します。
たとえば、農地の場合は農地法に基づく許可が必要で、買主が農業従事者でなければ売却できないケースもあります。
専門性が高いため、農地・山林の売却実績が豊富な不動産会社や行政の担当窓口への相談がおすすめです。
土地をより高く売却する方法
土地の売却価格は、少しの工夫や行動の違いで、数十万円、場合によっては数百万円もの差が出ます。
ここでは、土地をより高く売るために実践すべき3つの方法を具体的に紹介します。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定は、1社のみでは提示された金額が適正かを判断できないため、複数の不動産会社に依頼しましょう。
実際、同じ土地でも不動産会社により査定額が50〜100万円以上違うことは珍しくありません。
一括査定サービスならば、複数社から短時間で査定を受け取れるため便利です。価格交渉の材料にもなり、売却活動を有利に進められるため、情報収集の第一歩として活用しましょう。
土地をきれいに手入れする
土地の手入れを怠り、雑草やごみが放置された状態は、買主に悪印象を与え、価格交渉で不利になりがちです。
いっぽう、きれいに整備された土地は管理が行き届いている印象を与え、早期売却にもつながります。
草刈りや不要物の撤去、敷地周囲の清掃などは、業者に頼むことも可能です。見た目の印象は、売却価格に直結する第一印象のため、手を抜かずに対応しましょう。
アスファルトは撤去する
一見すると整備された土地に見えるアスファルトですが、買主の立場からすると撤去費用がかかる土地として敬遠されることもあります。
とくに住宅用地として売る場合は、更地のほうが好印象です。
撤去費用は、土地の広さや面積によって異なりますが、一般的に10〜30万円前後必要です。アスファルトの撤去は売却額に反映させやすいため、結果としてプラスになる可能性があります。事前に業者に見積もりをとって検討しましょう。
土地売却で失敗しないための相談先
土地売却では、登記や税金、測量、契約条件など、さまざまな専門知識が必要です。
独力では対処しきれない問題も多いため、必要に応じて専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、より有利な条件での売却が可能です。
ここでは、相談先ごとに依頼できる内容と注意点を解説します。
不動産会社
土地売却を進めるうえで、最初に相談すべきは不動産会社です。
土地の査定から買主探し、契約交渉、引き渡しまで、実務の多くを任せられます。とくに、高値売却を狙うのであれば、地域の相場や需要を熟知している会社がおすすめです。
ただし、不動産会社により得意な分野や対応エリアが異なるため、複数社を比較し、自身の土地に最適なパートナーを選ぶことが大切です。
弁護士
名義や権利関係でトラブルがある場合や、共有者との協議がまとまらないときは、弁護士に相談しましょう。
法律の専門家として、契約書のリーガルチェックや紛争の予防・解決などを依頼できます。
とくに、相続や借地など複雑な事情を含むケースでは、早めの弁護士への相談により、後々のトラブルを防げます。
司法書士・行政書士
名義変更や相続登記などの登記とその登記に必要な書類の作成業務は、司法書士に相談しましょう。
たとえば、相続で得た土地を売却する場合は、相続登記が完了していなければ売却手続きに進めません。
また、農地法の制限がかかる土地を売却する場合や、開発許可などの行政手続きが必要な場合は、行政書士に相談しましょう。
司法書士や行政書士は、行政手続きや権利関係の確認など、法的な書類が関わる場面で頼れる存在です。
土地家屋調査士
土地の境界があいまいな場合、土地家屋調査士に依頼して測量をおこなう必要があります。
買主にとって境界線が明確でない土地は不安材料になるため、あらかじめ調査・確定しておけばスムーズな売却が期待できます。
とくに古い土地や、境界標が見当たらない場合は、専門家の測量が不可欠です。
税理士
課税額の計算や節税になる特例の適用可否を判断してもらうには、税の専門家である税理士に相談しましょう。
土地の売却では、所得税や住民税などの税金が発生する可能性があります。
確定申告でトラブルにならないように、税理士への相談は売却前からおこないましょう。
土地売却に関するよくある質問
土地売却の際、売主には今まで経験したことのない手続きや不安要素が多く発生します。
ここでは、よく寄せられる質問を通じて、多くの方が感じている疑問やつまずきやすいポイントを解消します。
土地がなかなか売れないときの対処法は?
まずは、価格設定が適正かを見直すことが重要です。相場とかけ離れた高値では、問い合わせ自体が増えません。
周辺の土地の売買実績や不動産会社の意見を参考に、価格の再設定を検討しましょう。
また、土地の状態が悪い場合は、草刈りや整地、ゴミの撤去などをおこなうことで印象を改善できます。
ほかにも、掲載写真の見直しや販売戦略の変更など、不動産会社と連携して柔軟に対応しましょう。
土地の売却価格の相場を調べる方法は?
売却相場を知る方法としては、不動産情報ライブラリや、レインズマーケットインフォメーションなどの公的なデータベースの活用が有効です。
地域の取引事例を調べることで、相場感をつかめます。
加えて、不動産会社の無料査定を複数受けて比較すれば、実際の販売価格に近い目安を得られます。単独の数値に頼らず、複数の情報を組み合わせて判断しましょう。
査定後は必ず売却しなければいけない?
査定を依頼したからといって、必ずしも売却に進む必要はありません。査定はあくまで価格の目安を知るための手段であり、基本的に無料で依頼できます。
ただし、しつこい営業を避けたい場合は、一括査定サイトで連絡方法を限定する設定の活用がおすすめです。
自身のペースで進められるよう、事前のルール設定をおこないましょう。
まとめ
土地の売却は、準備・手続き・税金・注意点など幅広い知識が求められるため、流れの正しい理解が大切です。
名義変更や必要書類、境界確認などの事前準備を丁寧に進め、信頼できる不動産会社へ査定を依頼すれば、より有利な条件での売却が期待できます。
また、譲渡所得税や仲介手数料、測量費などの費用や税金の事前把握により、資金計画に余裕が持てます。
相続や共有名義など複雑なケースは、専門家への相談がおすすめです。
本記事を参考に、土地売却の全体像を把握し、自身が納得できる売却をおこないましょう。