「土地を800万円で売却したときにはどのくらい税金がかかるの?」と、どの程度手元に資金が残るのか気になる方は多いでしょう。
売却代金を受け取れるものの諸費用や税金がかかるため、800万円で土地を売却した場合「必ずいくら手元に残る」とは言い切れません。
手元に残る資金を正確に把握するためには、土地売却時にかかる諸費用や税金の内容を理解することが重要です。
本記事では、土地を800万円で売却する際にかかる税金とその計算方法、節税方法について解説します。
税金について正しい知識を得れば正確な課税額がわかるため、悩むことなく800万円で土地を売却できるでしょう。
800万円で土地売却したときの税金は譲渡所得で異なる
800万円で土地を売却した場合の税金は、譲渡所得の金額によって異なります。
譲渡所得とは、土地を売却して得た所得です。
なお、税額については以下の条件で計算しています。
- 印紙税は2027年3月31日までの税額
- 登録免許税は抵当権抹消登記1件として計算
- 譲渡所得税は長期譲渡所得で計算
ここからは、譲渡所得の金額ごとにかかる税額を紹介します。
譲渡所得10万円のときは約2万6,000円
800万円で土地を売却して譲渡所得が10万円生じた場合、税額の合計は約2万6,000円です。
税金名 | 税額 |
印紙税 | 5,000円 |
登録免許税 | 1,000円 |
譲渡所得税 | 約2万円 |
税額合計 | 約2万6,000円 |
譲渡所得が10万円の場合、売却後の資金計画にはあまり大きな影響を与えない金額で収まります。
譲渡所得50万円のときは約10万6,000円
800万円で土地を売却して譲渡所得が50万円生じた場合、税額の合計は約10万6,000円です。
税金名 | 税額 |
印紙税 | 5,000円 |
登録免許税 | 1,000円 |
譲渡所得税 | 約10万円 |
税額合計 | 約10万6,000円 |
譲渡所得が50万円ともなると、譲渡所得税の課税額が10万円を超えます。
納付額が10万円ともなると高額な出費と感じる方も多いため、必要に応じて節税対策をするとよいでしょう。
譲渡所得100万円のときは約20万6,000円
800万円で土地を売却して譲渡所得が100万円生じた場合、税額の合計は約20万6,000円です。
税金名 | 税額 |
印紙税 | 5,000円 |
登録免許税 | 1,000円 |
譲渡所得税 | 約20万円 |
税額合計 | 約20万6,000円 |
譲渡所得が100万円になると、譲渡所得税だけで20万円課税されます。
売却後の資金計画に大きな影響を与えるほどの金額になりかねないため、売却前に課税額を理解する必要性が高いケースと言えます。
土地を800万円で売却する際にかかる税金
土地を800万円で売却する際にかかる税金は、次のとおりです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
それでは、それぞれの税金について解説します。
印紙税
印紙税は売買契約締結時に納付する税金です。
税額は、売買契約書に記載された売買金額によって変動します。
売買金額 | 印紙税額 |
50万円超え100万円以下 | 500円 |
100万円超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 5,000円 |
800万円で土地を売却する場合、印紙税額は5,000円です。
売買契約書に税額分の収入印紙を貼り、割印して納付します。
なお、2027年3月31日までに作成する売買契約書に適用される点には注意が必要です。
参照元:国税庁 印紙税額
登録免許税
登録免許税は、法務局に登記を申請する際に課される税金です。
土地を売却する際には、抵当権抹消登記や相続登記を申請する場合に課されます。
それぞれの登記の際に課される税額と納付時期は、次のとおりです。
抵当権抹消登記 | 抵当権の抹消1件につき1,000円 引渡し日に納付 |
相続登記 | 固定資産税評価額 × 0.4% 相続登記の申請時に納付 |
一般的に登記は専門家である司法書士に依頼するため、登録免許税の納付額分の金額を司法書士に渡します。
譲渡所得税
譲渡所得税は、譲渡所得(売却益)が生じた場合に課税される税金です。
所得税や復興特別所得税、住民税から構成されており、それぞれで納付の時期が異なります。
所得税 | 確定申告の時期 |
復興特別所得税 | 確定申告の時期 |
住民税 | 土地を売却した年の翌年6月以降 |
なお、確定申告の時期とは、土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日です。
所得税と復興特別所得税は税務署で現金納付したり、口座振替を利用したりして納付します。
一方、住民税は自治体から送付される住民税決定通知書に従って納付します。
参照元:国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
土地を800万円で売却するときの税金の計算方法
土地を800万円で売却するときにかかる税金は、次の手順で計算します。
- 譲渡所得を計算する
- 適用できる特例控除を確認する
- 税率を掛けて税額を求める
それでは、税金の計算方法について解説します。
1:譲渡所得を計算する
税金を計算する際は、次の計算式を用いて譲渡所得を計算します。
【計算式】 譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用) | |
収入金額 | 売却金額 |
取得費 | ・売却した土地の購入代金 ・売却した土地を購入したときの諸費用 |
譲渡費用 | 土地の売却諸経費 |
取得費や譲渡費用として認められる諸費用は限られています。
どのような諸費用を計上できるか気になる方は、国税庁「取得費となるもの」「譲渡費用となるもの」のページを参照してください。
2:適用できる特例控除を確認する
譲渡所得を計算した後は適用できる特例を確認し、課税譲渡所得を算出します。
特例の適用を受ければ、譲渡所得から一定の金額を控除できます。
課税譲渡所得の計算方法と代表的な特例は、次のとおりです。
【計算式】 課税譲渡所得 = 譲渡所得 – 特例の控除額 | |
収用による売却の特例 | 5,000万円 |
自宅を売却したときの特例 | 3,000万円 |
相続した空き家を売却したときの特例 | 3,000万円もしくは2,000万円 |
特例の適用を受ける場合、特例ごとに定められた条件を満たす必要があります。
条件については、国税庁公式サイトのページを参照してください。
3:税率を掛けて税額を求める
課税譲渡所得を計算した後は、税率を掛けて税額を求めます。
税率は所有期間によって異なるため、まずは適用される税率を確認しなければなりません。
【計算式】 譲渡所得税 = 課税譲渡所得 × 税率 | |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) | 39.63% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超え) | 20.315% |
なお、所有期間は土地を売却した年の1月1日現在で判定します。
たとえば、土地を売却した年の1月1日現在で所有期間が4年、引渡し日の時点で5年を超えていたとした場合には短期譲渡所得が適用されます。
800万円の土地売却で利用できる特例控除
土地を800万円で売却した際、一定の条件を満たせば次のような特例や控除を利用できます。
- マイホームを売ったときの特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
利用できる特例や控除を理解し、節税に役立てましょう。
マイホームを売ったときの特例
マイホームを売ったときの特例は、自宅を売却した際に譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
特例を利用するためには、次の条件を満たす必要があります。
- 現在の住まいを売却
- 解体した場合は一定の期間内に売買契約を締結
- 買主が親子や夫婦など特別な関係ではない など
土地の売却金額が800万円であれば、本特例の適用が受けられた時点で譲渡所得税は課税されません。
本特例は節税に大きく役立つため、条件を国税庁「マイホームを売ったときの特例」のページで確認し、利用を検討しましょう。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、自宅を売却した際に譲渡所得税の税率が下がる制度です。
特例を利用するための条件は、次のとおりです。
- 所有期間10年を超える現在の住まいを売却
- 自宅を退去した場合は一定の期間内に売却
- 過去3年間に本特例を利用していない など
軽減税率の特例 (所有期間10年超) | 14.21% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超) | 20.315% |
特例で税率が下がるのは課税譲渡所得6,000万円以下の部分で、6,000万円を超える部分には長期譲渡所得の税率が適用されます。
税率が下がれば譲渡所得税額も少なくなるため、特例を利用できるかどうか、国税庁公式サイト「軽減税率の特例」で確認しましょう。
特定のマイホームを買い換えたときの特例
特定のマイホームを買い換えたときの特例は、自宅を買い換えた際に譲渡所得税の課税を繰り延べできる制度です。
特例の条件は、次のとおりです。
- 2025年12月31日までに自宅を売却
- 売却代金が1億円以下
- 日本国内にある物件を購入 など
自宅を売却した際に譲渡所得が生じたとしても、特例を利用すれば課税時期が新居を売却した時点に変わります。
すぐに譲渡所得税を納付できない場合、特例を利用して課税時期を遅らせましょう。
なお、利用条件の詳細については、国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」のページを参照してください。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、相続した空き家を売却した際に一定の金額を控除できる制度です。
特例を利用するためには、次の条件を満たさなければなりません。
- 相続した空き家を売却
- 売却代金が1億円以下
- 1981年5月31日よりも古い建物 など
本特例の控除額は、次のように売却する土地の相続人の数によって変動します。
相続人が2人以下 | 3,000万円 |
相続人が3人以上 | 2,000万円 |
なお、特例の詳細については国税庁公式サイト「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」を確認してください。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続税の対象となった不動産を売却した際、納付済みの相続税の一部を取得費にできる制度です。
取得費の特例を利用する場合、次の条件を満たす必要があります。
- 相続や遺贈で土地を取得した方
- 取得した財産に相続税が課されている
- 相続開始された日から3年10か月以内に売却
特例の適用を受けた場合、次の計算式で算出した金額を取得費として計上できます。
相続税額 × 不動産の課税価格 ÷(相続全体の課税価格 + 債務控除) |
詳細については、国税庁公式サイト「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を参照してください。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、自宅を買い換えた際に譲渡損失が生じた場合、損益通算と繰越控除ができる制度です。
それぞれの用語の意味は、下記を参考にしてください。
譲渡損失 | 売却額が購入額を下回った際に生じる損失 |
損益通算 | 同一年分の利益と損失を相殺できる制度 |
繰越控除 | 損失を翌年以後に繰越できる制度 |
また特例の利用条件は、次のとおりです。
- 現在の住まいを2025年末までに売却
- 日本国内にある不動産を購入
- 新居を購入してから一定の期間内に入居
特例の適用を受ければ、通常は受けられない損益通算と繰越控除を利用できます。
詳しくは、国税庁「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」のページを確認してください。
800万円の土地売却時に節税する際の注意点
800万円で土地を売却した際に節税する場合、次の点に注意が必要です。
- 特例と住宅ローン控除は併用できない
- 譲渡所得がある・特例を適用する場合は確定申告が必要
- 取得費・譲渡費用がわかる書類を準備する
それでは、節税する際の注意点について解説します。
特例と住宅ローン控除は併用できない
一部の特例は住宅ローン控除と併用できないため、住み替えの際は注意が必要です。
住宅ローン控除と併用できない主な特例は次のとおりです。
- マイホームを売ったときの特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例 など
上記の特例を利用した場合、その特例を利用した年とその前後2年間(合計5年間)は、住宅ローン控除の適用は受けられません。
自宅を売却してすぐに新居を購入する場合、特例か住宅ローン控除を選択しなければならないケースが発生します。
特例と住宅ローン控除のどちらがより節税効果が高いかを比較し、有利な制度を選びましょう。
譲渡所得がある・特例を適用する場合は確定申告が必要
800万円で土地を売却した際に譲渡所得が生じた場合、もしくは特例を利用する場合は確定申告が必要です。
申告が必要な条件に該当した場合、土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告します。
確定申告する際には、次の書類を提出しなければなりません。
書類名 | 入手先 |
確定申告書 | 国税庁公式サイト |
譲渡所得の内訳書 | 国税庁公式サイト |
売買契約書 | 不動産会社 |
取得費と譲渡費用がわかる書類 | 不動産会社や司法書士 |
登記事項証明書 | 法務局 |
本人確認書類 | 運転免許センター 旅券センター など |
申告に必要な書類が多いため、早めに準備しておきましょう。
取得費・譲渡費用がわかる書類を準備する
確定申告する際は、取得費と譲渡費用がわかる書類を準備します。
取得費と譲渡費用がわかる書類とは、次の費用の領収書を指します。
取得費 | ・売却した土地の購入代金 ・購入時の仲介手数料 ・不動産取得税 ・司法書士の報酬 など |
譲渡費用 | ・売却時の仲介手数料 ・司法書士の報酬 ・測量費や解体費 など |
経費として計上できる費用は、支払いを証明できるもののみです。
確定申告前に各種領収書を準備し、取得費や譲渡費用を計上できるようにしましょう。
800万円の土地売却時の税金に関するよくある質問
800万円の土地売却時の税金に関するよくある質問は、次のとおりです。
- 確定申告しないとどうなる?
- 確定申告が不要なケースはある?
- 土地売却時の税金の納税時期は?
それでは、よくある質問とその回答を紹介します。
確定申告しないとどうなる?
確定申告しないとどうなるのかは、申告する必要性があるかどうかで異なります。
確定申告する必要がない方 | ペナルティなし |
確定申告する必要がある方 | 延滞税や無申告加算税が課される |
800万円で土地を売却した際、譲渡所得が生じた方と特例を利用する方は確定申告しなければなりません。
確定申告が必要な場合に申告しないと、罰則の対象となります。
確定申告が不要なケースはある?
確定申告が不要なケースは、次の条件を2つとも満たす場合です。
- 譲渡所得が生じなかった
- 特例の適用を受けない
2つの条件を満たしていれば、税務署への連絡や書類の提出も不要です。
800万円で土地を売却した際は、確定申告が不要なケースに該当するか確認しましょう。
土地売却時の税金の納税時期は?
土地売却時の税金の納税時期は、次のとおりです。
印紙税 | 売買契約締結時 | |
登録免許税 | 引渡し時 相続登記申請時 | |
譲渡所得税 | 所得税 | 確定申告時 |
復興特別所得税 | 確定申告時 | |
住民税 | 売却した年の翌年6月以降 |
納税時期は税金の種類ごとに異なります。
納付時期を確認し、事前に資金を準備しておきましょう。
まとめ
800万円で土地を売却した際に課される税額は、一定ではありません。
売主によっては税額の合計が1万円以下の場合もあれば、50万円以上になる場合もあります。
税額に大きな差が出る理由は、譲渡所得税の課税額が売主によって異なるためです。
土地を売却する前に譲渡所得税を計算し、課される税額の目安を理解することが大切です。
目安を把握しておけば正確な資金計画が立てやすくなり、手元に残る金額も把握できます。