「土地を売却すると、住民税ってどれくらい上がるのだろう?」「土地売却で発生した住民税はいつ支払うの?」など、土地売却時の住民税に疑問や不安を抱える方は少なくありません。
土地や不動産を売却した際の住民税は、譲渡所得の有無や所有期間によって大きく異なり、事前に知らなければ思わぬ負担になることもあります。
本記事では、住民税の計算方法や支払いのタイミング、さらに負担を軽減するための特例や控除制度についてわかりやすく解説します。
自身のケースに応じた税額シミュレーションや節税のヒントも得られるため、ぜひ参考にして、無駄な税負担のない有益な土地売却をおこないましょう。
土地売却で住民税は上がる?

土地売却で住民税が上がるのは、売却益が発生し、売却した年の所得税が増えたときです。
ただし、土地売却では取得費や売却費用を差し引いたり、特例の活用ができたりするため、住民税が上がらないケースもあります。
ここでは、土地売却で住民税が上がるケースと上がらないケースを具体的に解説します。
住民税が上がるケース
売却によって譲渡所得が出た場合、その金額に応じて住民税が発生します。譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いたものです。
なお、特例が適用される場合は、さらに上記から特例控除額を差し引き、住民税課税対象の譲渡所得を算出します。
最終的に利益が出た場合には、翌年の住民税が上がります。
譲渡所得に対する住民税は、所有期間が5年超の場合は5%、5年以下の場合は9%が基本です。
住民税が上がらないケース
一方、住民税が上がらないケースは、譲渡所得がゼロまたはマイナスの場合です。
たとえば、売却価格が取得費や譲渡費用を下回る場合や、譲渡損失が発生した場合には課税されません。
また、マイホームを売却して3,000万円の特別控除を使えるケースでは、たとえ売却益があっても控除内であれば非課税となり、住民税は上がりません。空き家の特例なども同様です。
土地売却における住民税の計算方法

住民税の額は単純な売却価格ではなく、売却により生じた譲渡所得に税率を掛けて求めます。
ここでは、譲渡所得の出し方と、所有期間による税率の違いを解説します。
譲渡所得額を求める
譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得 = 不動産の売却額 -(取得費+譲渡費用)
取得費には、購入時の代金や登記費用、仲介手数料、リフォーム費用などが含まれます。譲渡費用は、不動産会社への仲介手数料や広告費などです。
たとえば、1,500万円で土地を売却し、取得費が1,000万円、譲渡費用が100万円掛かった場合の譲渡所得は400万円で、住民税や所得税が課税されます。
所有期間に応じた税率を掛ける
譲渡所得に対する住民税の税率は、土地の所有期間により次のとおり異なります。
- 所有期間5年超(長期譲渡所得):5%
- 所有期間5年以下(短期譲渡所得):9%
(※これは住民税部分のみであり、実際には所得税や復興特別所得税も合わせて課税されます)
所有期間による違いは非常に大きいため、あと数カ月で5年を超える場合は、売却時期を調整することで税負担を軽減できる可能性があります。
なお、所有期間は売却した年の1月1日時点を基準に判断されることに注意が必要です。
土地売却にかかる住民税の負担を軽減する方法

土地売却で譲渡所得が発生すれば住民税が課税されますが、工夫次第で負担を減らせます。
住民税の負担を軽減する方法は、次の3つです。
- 取得費や譲渡費用をもれなく計上する
- 売るタイミングを考える
- 適用できる特例制度を調べる
それぞれ詳しく解説します。
取得費や譲渡費用をもれなく計上する
住民税の課税対象である譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用を引いた額のため、節税には、取得費や譲渡費用の正しい計上が大切です。
たとえば、購入時の不動産取得費、登録免許税、仲介手数料、測量費、建物の解体費などは取得費や譲渡費用として計上できます。売却時の広告費や登記費用も対象です。
領収書や契約書をなくして取得費や譲渡費用がわからない場合、実際よりも計上できる金額が減り、課税額が増える恐れがあります。
そのため、費用の裏付け資料はなくさず保管しましょう。
売るタイミングを考える
適用される住民税の税率は、所有期間が5年超か5年以下かにより大きく変わるため、売るタイミングを考えることも大切です。
5年超の場合の税率が5%に対し、5年以下では9%になるため、あと少しで5年超になる場合は、売却時期を遅らせることで税率を4%抑えられます。
税率4%の差は数十万円規模になることもあるため、売却前に所有期間を必ず確認しましょう。
適用できる特例制度を調べる
住民税の負担を軽減できる特例制度の活用は、住民税の負担軽減に非常に有効です。
たとえば、マイホームを売却した場合に適用できる3,000万円特別控除や、空き家特例、買い換えによる繰延べ特例などが代表的です。
特例が適用されれば、大きな譲渡益が出ていても住民税がゼロになるケースもあります。
各特例制度が適用されるかは、売却物件の種類や所有期間、使用状況などにより異なります。事前に調べて有効活用すれば、効果的な節税が可能です。
土地売却で発生する住民税を抑える特別控除

土地売却では一定の条件を満たすことで特例制度が利用でき、住民税を大きく軽減、またはゼロにできます。
ここでは、利用できる特例制度をケース別に紹介します。
マイホームを売ったときの特例
マイホームを売却した場合には、3,000万円の特別控除が適用される可能性があります。
3,000万円の特別控除は、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるため、課税金額をゼロにできるケースもあります。
3,000万円の特別控除が適用されるおもな要件は、次のとおりです。
- 現在居住の不動産の売却
- 売却の前年・前々年に特別控除の利用なし
- 売却相手が親子・夫婦などではない
3,000万円の特別控除は、短期譲渡所得・長期譲渡所得の両方に利用できます。節税効果の大きい特例のため、ぜひ活用しましょう。
詳しい要件・内容を知りたい方は、「マイホームを売ったときの特例」のページをご覧ください。
特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを売却した後、一定期間内に新しいマイホームを購入したときは、譲渡益への課税を将来に繰り延べられる買い換え特例の利用ができます。
買い換え特例は、売却した家の譲渡所得が新たに購入した家を売却するまで加算されない特例で、所得税や住民税の納付を延期できる制度です。
買い換え特例が適用されるおもな要件は、次のとおりです。
- 現在居住の不動産の売却
- 売却代金が1億円以下
- 売却年の前年から翌年までの自宅購入
ただし、新たに購入した家を売却して譲渡損益が発生した場合、先に売却した家の譲渡所得と合わせて不動産売却の税金を計算しなおして納付する必要があります。
また、3,000万円の特別控除との併用はできないなど注意点もあるため、詳細なシミュレーションをおこなうことが大切です。
詳しい要件・内容を知りたい方は、こちらをご覧ください。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、長期譲渡所得の税率よりも低い税率で住民税を計算できる軽減税率の特例が利用できる可能性があります。
軽減税率の特例が適用されるおもな要件は、次のとおりです。
- 現在居住の不動産の売却
- 売却相手が親子・夫婦などではない
- 売却した前年・前々年に特別控除の利用なし
3,000万円の特別控除とも併用可能で、控除を利用しても譲渡所得が発生する場合に活用できます。
適用後の税率は、譲渡所得金額6,000万円までの住民税は4%、6,000万円を超える部分は通常の長期譲渡所得と同じ5%です。
詳細は、国税庁ホームページ「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」の部分で確認できます。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
亡くなった親の空き家を相続して売却する場合、最大3,000万円を控除できる被相続人居住用財産の譲渡特例が適用できるケースがあります。
特例が適用されるおもな要件は、次のとおりです。
- 相続直前において被相続人の居住用の物件
- 昭和56年5月31日以前に建築された物件
- 売却代金が1億円以下
上記の他にも細かい要件があります。空き家を相続する予定がある場合は、条件を満たせるよう事前に条件を調べ準備しましょう。
詳細は、国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」ページをご覧ください。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンの残っているマイホームを売却し損失が出た場合、給与所得など他の所得と損益通算できる特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用できます。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が適用されるためのおもな要件は、次のとおりです。
- 現在居住の不動産の売却
- 売却損失が発生している
- 売却年の1月1日時点で所有期間5年超
1回の損益通算で控除しきれない損失は、以降3年間繰越控除が可能です。
赤字の売却でも適切に申告すれば、将来の税負担を軽減できます。
国税庁ホームページで詳しい要件・内容は確認できるため、自身が利用できるか気になる方は確認してみましょう。
参考:国税庁「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
ふるさと納税
住民税の軽減策として、ふるさと納税も活用できます。
ふるさと納税は、寄付をした額から自己負担分の2,000円を差し引いた額が所得税・住民税から控除され、さらに返礼品がもらえる制度です。
大きな譲渡所得が発生した年は住民税の課税額も上がり、ふるさと納税の上限額が上がるため、増えた金額を活用して寄付をおこなえば、翌年の住民税から控除されます。
節税効果だけでなく、地域貢献や返礼品も得られるため一石二鳥の方法といえます。
ただしふるさと納税は寄付した額が還付される制度なので、厳密には節税できているわけではないため、注意が必要です。
土地売却で発生する住民税はいつ払う?

土地を売却して利益が出た場合、住民税の支払いは翌年になるため、売った年と納める年がズレている点に注意が必要です。
また、住民税は確定申告の内容が共有されて自動的に上がる税金で、自身で何か申告する必要はありません。
ここでは、土地売却における住民税の支払い時期や方法について解説します。
土地売却した翌年に支払う
土地を売った年の住民税は、翌年の6月頃から支払いが始まります。たとえば2025年中に土地を売却して譲渡所得が発生した場合、住民税は2026年の6月以降に課税されるのが一般的です。
住民税は、前年の所得に対して課されるため、売却益が大きいほど、翌年の住民税が大きく上がる可能性があります。
まとまった税額になることも多いため、売却時にあらかじめ税金分の資金を確保しておきましょう。
住民税の支払い方法は2種類
住民税の支払い方法は、普通徴収と特別徴収の2種類あり、確定申告時に選択できます。
土地を売却して所得が発生した場合、その所得に対する住民税は基本的に普通徴収で支払うことになりますが、ケースにより特別徴収が適用されることもあります。
それぞれの違いを理解し、税金の支払いに備えましょう。
普通徴収
普通徴収は、納税通知書が届いたあとに個人で住民税を納める方法です。
通知書は主に6月頃に各自治体から郵送され、一括払いまたは、年4回(6月・8月・10月・翌年1月)の分割払いが選べます。
おもに個人事業主、フリーランス、給与所得以外の所得者、退職して次の就職先が決まっていない人などが対象です。
特別徴収に比べて1回あたりの支払い額が大きくなりやすいため、納税時期に慌てないよう準備しましょう。
特別徴収
特別徴収とは、主に会社員などが対象で、給与所得と不動産売却で生じた譲渡所得を合算して勤務先の給与から天引きする方法です。
特別徴収では、6月から翌年5月までの12回に分けて支払います。
1回あたりの支払い額が小さく負担が少なく感じられるほか、税額の計算も代わりにおこなってもらえるため、面倒な手続きもいりません。
土地売却で発生する住民税以外の税金

土地を売却した際は、住民税のほかにも、次の税金がかかります。
- 所得税
- 印紙税
- 登録免許税
それぞれ詳しく解説します。
所得税
所得税は住民税と同様に土地を売却した際、譲渡所得(利益)が発生したときに課税される税金です。
土地を売却した年の1月1日時点の所有期間に応じて、税率が異なる点も住民税と同じで、所得税率は次のとおりです。
| 所有期間 | 所得税+復興特別所得税 |
|---|---|
| 所有期間5年以下 | 30.63% |
| 所有期間5年超 | 15.315% |
譲渡所得に上記の税率をかけた金額を納付する必要があります。
土地を売却した翌年に確定申告をおこない、納付しなければならない税金のため、必要に応じて税務署や税理士に相談してください。
印紙税
印紙税は、契約書を作成時に発生する税金です。土地の売買契約書を作成した際に、収入印紙として貼り付けて納税します。
印紙税の金額は、契約金額により次のとおり異なります。
| 契約金額 | 税額 | 軽減後の税額 (2027年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
なお、印紙代は売買契約書の原本を保有する人が負担するため、売主と買主両方が負担したり買主のみが負担するなどケースバイケースです。
登録免許税
登録免許税は、不動産の名義変更など登記に関わる手続きに対して課される税金です。
住宅ローンで土地を購入して残債がある場合、売却するためには完済したあと、抵当権を抹消する必要があります。
抵当権抹消時にかかる税金が、売主が負担する登録免許税です。また引き渡しの際、司法書士に依頼するタイミングで支払うケースが一般的です。
抵当権抹消のための登録免許税は、不動産1件に対して1,000円となり、土地と建物がある場合は土地と建物とそれぞれにかかり、合計2,000円かかります。
土地売却にかかる税金の判断に悩んだらファンズ不動産へ
土地を売却すると、住民税だけでなく所得税や各種税金の支払いが発生し、全体像を把握するのが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
税額の計算方法や納税時期を誤解したまま進めてしまうと、後から負担を大きく感じてしまうケースもあります。土地売却に伴う税金について判断に迷ったときは、一度立ち止まって整理することが大切です。
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土地売却における住民税に関するよくある質問

最後に、土地の売却における住民税に関するよくある質問をまとめました。
同じ疑問を抱く方は多いため、ぜひ参考にしてください。
取得費がわからない場合の計算方法は?
土地の取得費が不明な場合、原則として売却価格の5%を取得費としてみなします。
たとえば、1,000万円で売却した場合、取得費は50万円とされ、残りの950万円が譲渡所得です。
ただし、土地の取得費が明らかな場合は、実際の取得費を用いて計算する方が、節税できる傾向です。
領収書や契約書はなくさず保管し、正確な金額で申告しましょう。
売却益がない場合は確定申告は不要?
売却益が出ていない場合、確定申告は不要です。
ただし、利益が出ていない場合でも、特例を利用する場合は確定申告が必要です。
たとえば、売却した土地がマイホームの場合、損益通算及び繰越控除の特例を利用するときは確定申告が必要なため、必ず申告しましょう。
住民税や所得税以外に上がる税金は?
土地売却によって直接的に上がる税金は、基本的には譲渡所得にかかる住民税と所得税です。
会社員の方であれば、住民税と所得税以外に負担額が上がることはありません。
ただし、自営業の方の場合は高額な利益があると、翌年の国民健康保険料や介護保険料など、所得をベースにしたほかの公的負担額が上昇する可能性があるため注意しましょう。
まとめ

土地売却で譲渡所得が発生した場合、住民税が上がる可能性があります。
ただし、特例制度や控除の活用により、住民税の負担を軽減できるため、制度を事前に確認し、適切に利用しましょう。
また、土地売却をおこなった際は、利益が出た場合はもちろんのこと、各種特例を利用するときは確定申告が必要です。
正しく申告し、無駄な税金の支払いを防ぐためにも、ぜひ本記事を参考にし、不安な方は税理士など専門家に相談しましょう。


