土地を売却して利益が出たものの、税金を不安に感じる方は少なくありません。
土地売却の利益をふるさと納税に活用できるため、具体的な方法や限度額を理解すれば、上手な税金対策ができます。
この記事では、不動産売却による譲渡所得の計算方法から、ふるさと納税による控除限度額の考え方、さらにはシミュレーション方法までをわかりやすく解説します。
ぜひ本記事を参考に、土地売却による利益を賢く活用し、ふるさと納税で上手に節税対策しましょう。
土地売却後にふるさと納税による節税をおすすめする理由

ふるさと納税をすることで支払った税額に応じて返礼品を受け取ることができるため、土地売却によって納める税金が増えることはふるさと納税にとって有利だといえます。
土地を売却して利益が出た場合、その利益にかかる税金は決して少なくありません。
土地売却により所得が増えれば、ふるさと納税の控除上限額も上がるため、節税効果が高まります。
まずは、不動産売却と節税の関係性について、基本的な仕組みから具体的なメリットまで解説します。
不動産の売却益は分離課税
税金の課税方法は、大きく分けて次の2種類あります。
| 課税方法 | 特徴 |
|---|---|
| 総合課税 | ・給与所得 ・事業所得などが対象 ・所得区分により税率が異なる ・ほかの所得と合算して計算 |
| 分離課税 | ・退職所得 ・山林所得 ・譲渡所得などが対象 ・所得の種類ごとに独自の税率 ・ほかの所得と分けて計算 |
土地などの不動産を売却して得た利益(譲渡所得)は、給与をはじめとする所得にかかる総合課税とは別に、分離課税として課税されます。
そのため、売却により発生した所得は独自に税額が計算され、他の所得とは合算されないことが特徴です。
分離課税の対象には、土地建物の譲渡による譲渡所得のほか、山林所得、株式や退職所得などもあり、それぞれ税率が決められています。
分離課税は利益額が大きいほど課税対象も増えるため、節税対策が重要です。
所得が多いほど控除上限額が高い
ふるさと納税には控除上限額があり、上限額は所得が多いほど引き上げられます。
そのため、土地売却により譲渡所得が増えれば、全体の所得が高くなります。
また返礼品も受け取れるため、土地売却で高額な税負担が発生する年こそ、ふるさと納税を活用できるチャンスです。
土地売却後の譲渡所得の計算方法

ふるさと納税の控除上限額は、譲渡所得の金額をもとに計算されます。
また、ふるさと納税のみでなく不動産売却の税金計算をおこなうためには、譲渡所得の金額を正しく計算できなければなりません。
ここでは、譲渡所得の基本的な計算式と、特別控除の仕組みを解説します。
譲渡所得を求める
譲渡所得の計算式は、「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」です。
不動産の取得費とは、不動産の購入金額と、仲介手数料をはじめとする不動産購入時にかかった費用を足した総費用です。
いっぽう、不動産売却の譲渡費用とは、仲介手数料や印紙税などの売却にかかった諸費用を指します。
なお、取得費が不明な場合は「概算取得費」として売却価格の5%相当額を用いるケースもあります。
取得費が低くなるほど譲渡所得が増えるため、ふるさと納税の控除上限額にも影響を与えるでしょう。
特別控除を差し引く
譲渡所得には、一定の条件を満たせば特別控除を適用できます。たとえば、居住用財産の売却であれば最大3,000万円の特別控除を利用可能です。
特別控除の適用により売却益が大きい場合でも課税対象となる譲渡所得がゼロになるケースがあります。
控除後の所得金額がふるさと納税の限度額を左右するため、特別控除が利用できるかは重要なポイントです。
ふるさと納税の控除限度額の計算方法

ふるさと納税の控除限度額の計算は、次の3ステップでおこないます。
- 給与所得控除後の金額を確認する
- 住民税所得割額を算出する
- ふるさと納税の控除限度額を計算する
それぞれ詳しく解説します。
給与所得控除後の金額を確認する
はじめに、自身の給与所得控除後の金額(課税所得)を確認しましょう。
給与所得控除後の金額とは、年間の総支給額から給与所得控除を差し引いた金額で、控除額は収入により異なります。
一般的な給与所得控除後の金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄で確認できます。
売却益がある年は例年よりも控除上限額が上がることが多いため、正確に把握しておきましょう。
住民税所得割額を算出する
次に、住民税の所得割額を確認します。
不動産売却により譲渡所得が発生した場合、給与をはじめとする総合課税と譲渡所得にかかる分離課税とを分けて計算します。
総合課税の計算式は、「給与所得控除後の金額×税率10%」です。
分離課税の不動産譲渡所得は、不動産の所有期間により税率が次のとおり異なります。
- 所有期間5年以下(短期譲渡所得):9%
- 所有期間5年超(長期譲渡所得):5%
ふるさと納税で控除される住民税の上限は、住民税所得割額により大きく変わります。
ふるさと納税の控除限度額を計算する
最後に、住民税所得割額から控除上限額を計算します。計算式は、次のとおりです。
住民税所得割額×20%÷(90%-所得税率×1.021)+2,000円=控除上限額
所得金額ごとの所得税率は、次のとおりです。
| 課税対象の所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 1,000~1,949,000円 | 5% |
| 1,950,000~3,299,000円 | 10% |
| 3,300,000~6,949,000円 | 20% |
| 6,950,000~8,999,000円 | 23% |
| 9,000,000~17,999,000円 | 33% |
| 18,000,000~39,999,000円 | 40% |
| 40,000,000円以上 | 45% |
なお、所得税率は、給与所得の総合課税と不動産所得の分離課税の両方がある場合、総合課税の税率を適用します。
最適な寄付金額を把握し、効果的な節税につなげましょう。
土地売却後のふるさと納税の控除限度額をシミュレーション

不動産売却による譲渡所得の有無により、ふるさと納税の控除限度額が大きく異なるため、事前のシミュレーションは欠かせません。
ここでは、譲渡所得の有無による具体的な違いと、誰でも簡単に試せる総務省の計算シミュレーターについて解説します。
譲渡所得の有無による違い
譲渡所得がある年は、ふるさと納税の控除限度額が通常よりも大幅に上がる可能性があります。
たとえば、年収500万円の方が、土地売却で譲渡所得300万円を得た場合、課税所得は合計800万円相当となり、その分控除上限額も増加します。
ただし、3,000万円特別控除などの特例が適用され、譲渡所得がゼロになる場合は、控除上限額も通常の年収相当となり、控除限度額は増えません。
譲渡所得の有無は、ふるさと納税による節税金額を左右するケースがあるため、事前のシミュレーションは大切です。
総務省の計算シミュレーションを利用可能
ふるさと納税の控除額は、総務省が提供する「控除額シミュレーションツール」を利用し、誰でも簡単に試算できます。
年収や家族構成、住宅ローン控除の有無などに加え、寄付金額を入力すれば、具体的な控除額の目安が確認できます。
シミュレーションはインターネットでいつでも無料で利用できるため、土地売却後は一度チェックしましょう。
土地売却後にふるさと納税を利用すべきケース

土地売却後にふるさと納税を利用すべきケースは、次の3つです。
- 特例を利用しても売却益がある
- 住宅ローン控除を利用する
- 土地の取得費がわからない
それぞれ詳しく解説します。
特例を利用しても売却益がある
3,000万円の特別控除を利用しても利益が出る場合は、ふるさと納税を利用しましょう。
たとえば、4,000万円の譲渡所得があれば、特別控除後に1,000万円が課税対象となるため、ふるさと納税の控除上限額も大きくなります。
特例を利用しても売却益があれば、返礼品を受け取りながら、増えた税負担を一部相殺でき、効果的な節税対策ができます。
住宅ローン控除を利用する
住宅ローン控除で所得税と住民税を控除しきれない場合も、ふるさと納税を活用できます。
住宅ローン控除は、「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出した控除額を、所得税や住民税から控除できる制度です。
住宅ローン控除は、前述した3,000万円控除との併用はできませんが、ふるさと納税とは併用可能です。
住宅ローン控除を利用する場合は、シミュレーションを活用し、ふるさと納税が活用できるか確認しましょう。
土地の取得費がわからない
土地の取得費がわからず、売却価格の5%を概算取得費として計算する場合も、ふるさと納税が活用できます。
土地の取得費が分からない場合は、譲渡所得が大きくなりがちなため、ふるさと納税の控除上限額も高くなる傾向です。
そのため、ふるさと納税を利用すれば返礼品を受け取れるため、大きなメリットがあります。
土地売却後にふるさと納税を利用する際の注意点

土地を売却して得た利益をふるさと納税に活用する際には、次の3点に注意しましょう。
- ワンストップ特例を選択しない
- 土地売却した年にふるさと納税の決済を完了させる
- 必ず確定申告をおこなう
それぞれ詳しく解説します。
ワンストップ特例を選択しない
土地売却で利益が発生する年は、ふるさと納税でワンストップ特例の選択は避けましょう。
ワンストップ特例制度は、給与所得者などがふるさと納税をおこなう場合に、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる制度です。
制度の利用は、次の条件を満たす方に限られます。
- 確定申告不要の給与所得者
- ふるさと納税先の自治体が5箇所以内
不動産売買で売却益が出て譲渡所得が生じれば、確定申告が必要になるため、ワンストップ特例制度の対象外です。
すでにワンストップ特例制度で寄附金控除申請をおこなっていても、確定申告をした時点で無効になり、申請済みの内容を改めて申告しなければなりません。
二度手間を避けるためにも、ワンストップ特例を選択しないよう、気をつけましょう。
土地売却した年にふるさと納税の決済を完了させる
ふるさと納税の決済は、土地売却をした年に完了させましょう。ふるさと納税の控除は、寄付をおこなった年の所得に対して適用されます。
そのため、土地を売却して所得が増えた年にふるさと納税の寄付決済を完了させなければ、増えた控除限度額を活用できません。
寄付は年末の駆け込みが増えるため、12月初旬には手続き完了を目指しましょう。
必ず確定申告をおこなう
ふるさと納税で税控除を受けるためには、確定申告をおこなうことが欠かせません。確定申告時に寄付金控除欄に記載しなければならないためです。
基本的に、土地を売って譲渡所得がある場合、ふるさと納税利用の有無に関わらず確定申告は必須です。
確定申告の受付期間は、基本的に2月16日〜3月15日です。必要書類を揃え、期限内に申告しましょう。e-Taxを利用する場合は、入力ミスにも注意が必要です。
節税のつもりが単なる寄付で終わらないよう、確定申告を正しくおこなうことが大切です。
土地売却後の手続きに不安があるならファンズ不動産に相談を
土地売却後は、ふるさと納税の活用や確定申告など、確認すべき手続きが多く、不安を感じる方も少なくありません。控除を受けるための条件やタイミングを誤ると、思ったような節税につながらないケースもあります。
土地売却後の流れや判断に迷ったときは、早めに整理しておくことが大切です。売却後の手続き全般について不安がある場合は、ファンズ不動産に相談してみるのも一つの選択肢です。
専門的な視点から状況を整理することで、次の行動が明確になります。
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土地売却後のふるさと納税に関するよくある質問

最後に、土地売却後のふるさと納税に関するよくある質問をまとめました。
土地を売却してふるさと納税を検討する方に共通する悩みのため、ぜひ参考にしてください。
専業主婦や年金生活者でもふるさと納税すべき?
専業主婦や年金生活者の方でも、土地売却による譲渡所得が発生すれば、ふるさと納税はおすすめです。
基本的に課税所得がある方に、ふるさと納税はメリットがあります。
そのため、専業主婦や年金生活者でも、その年に課税対象の所得が生じていれば、ふるさと納税の控除を活用できます。
ふるさと納税はいつすべき?
ふるさと納税は、寄付した年の所得に対して控除が適用されるため、土地を売却した年のうちに寄付を済ませる必要があります。
12月31日を過ぎると翌年扱いになるため、タイミングには注意が必要です。
とくに年末に売却が決まった場合は、寄付先の選定や決済手続きに手間取らないよう、早めに行動しましょう。クレジットカード払いに対応している自治体なら、即時決済が可能です。
ふるさと納税は、売却益が確定し、控除上限額がわかったらすぐにおこないましょう。
ふるさと納税の確定申告に必要なものは?
確定申告時には、以下のものが必要になります。
- 寄付金受領証明書または電子発行された寄付証明書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 売却に関する書類(譲渡所得の明細など)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 銀行口座情報
とくに、土地の売却益を含めた確定申告をする場合は、譲渡所得の明細や取得費・譲渡費用の根拠資料も重要です。
ふるさと納税に関しては、すべての寄付先からの証明書がそろっているかを必ず確認しましょう。
まとめ

土地を売却して譲渡所得が発生した方は、ふるさと納税の恩恵が大きくなります。
譲渡所得は分離課税であるものの、所得が増えればふるさと納税の控除限度額も上昇します。
ただし、ふるさと納税の活用には、ふるさと納税の時期や確定申告が必要など、注意すべき事柄もあります。
ぜひ本記事を参考に制度を正しく理解し、より多くの自治体を応援しながら税負担を抑えましょう。


