「土地を売るために建物を取り壊したけれど、解体費用は控除できるのだろうか」と疑問を抱く方は少なくありません。
不動産売買は高額になるケースも多く、納付する税金をできる限り抑えたいと考えるときもあるのではないでしょうか。
結論、土地の売却を目的にした古家の取り壊しであれば、税金の控除対象となる場合があります。その場合、解体費用を差し引くことができ、節税効果が期待できます。
本記事では、土地売却時の解体費用を控除対象にするための条件や税金の計算方法、節税につながる制度などを詳しく解説します。
できる限り節税したい方や、古家の解体費用を控除に入れたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
土地売却時の解体費用は控除対象になる?

前述のとおり土地の解体費用は、一定の条件を満たせば、譲渡費用として所得税の計算時に控除が可能です。
また解体した場合、建物の未償却残高があれば控除の対象になるため、古家の価値が残っている方は、さらに節税できます。
土地売却時の解体費用をどのように差し引くのかや、未償却残高の控除に関して解説します。
解体費用は譲渡費用に含めることができる
土地の売却に直接関係する解体費用は、譲渡所得(課税対象の利益)から譲渡費用として控除でき、節税効果が期待できます。
不動産の売却で利益が出た場合に課税対象になる、譲渡所得の計算式は次のとおりです。
譲渡所得=不動産の売却額−(取得費+譲渡費用)
上記の譲渡所得に定められた税率をかけて納税額を決めるため、解体費用を譲渡費用に含められれば、結果的に課税額を少なくすることができます。
ただし解体費用はすべてのケースで控除の対象になるわけではない点に、注意が必要です。
1年を超えても譲渡費用に含められることがある
解体費用についてよくある疑問として、「解体費用は解体後1年が過ぎても譲渡費用に含めることができるのか」というものがあります。
結論からいうと、解体費用は解体後1年が過ぎても譲渡費用に含められる可能性があります。
譲渡費用の要件として、解体後の期間について明確な定めがありません。そのため、解体と売却に明確な因果関係が認められる場合は、譲渡費用として計上できる可能性があります。
1年以内のルールがあると思われる背景には、他の税制や特例にある記述が関係していると考えられます。
特例の適用を受けるための要件
引用元:国税庁「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」
(1)家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をしていること。
法人が建物の敷地を建物とともに取得した場合(中略)その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手するなど、初めからその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合には、その建物の取壊しのときの帳簿価額と取壊費用の合計額(廃材の処分によって得た金額があるときは、それを控除した金額)は、その土地の取得価額に算入することとされています。
引用元:国税庁「土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額」
これらはマイホームや法人税に関する話であり、譲渡所得税とは別です。他の特例の要件と混同しないようにしましょう。
土地売却を目的とした解体であることを証明する
解体費用を控除対象にするためには、取り壊しが土地売却を目的としたものであるとわかる証明が必要になります。
主に次の要件を満たす場合は、解体費用を譲渡費用として計上でき、売却益から控除可能です。
- 売却を成立させるうえで必要な解体である
- 売主自身の判断で解体をしている
- 売却活動開始〜引渡し前までの解体
たとえば古家の利用価値がなく、建物付きの土地としての売却が難しい場合、解体して更地で売るのは譲渡費用と認められるでしょう。
反対に解体後しばらく土地を活用せずに放置していた場合などは、売却目的と認められにくくなります。
建物の未償却残高も控除の対象になる
建物の帳簿上の価値がまだ残っている場合、未償却残高も譲渡費用に計上でき、譲渡所得から控除できます。
譲渡費用の主なものは次のとおりです。
(中略)
(4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
引用元:国税庁「譲渡費用となるもの」
未償却残高とは、資産にどのくらいの価値が残っているかを指し、木造住宅の場合は22年かけて定額で減っていきます。
たとえば、木造住宅を築15年で解体する場合は、残り7年分の価値が未償却残高として残っている計算になり、税金計算時に控除可能です。
ただし、正確な未償却残高の計算は複雑なため、専門家への相談をおすすめします。
土地売却における解体費用の相場と税金の計算方法

古家を解体する費用の相場と、税金の計算をシミュレーションします。
土地を売却する際に解体費用を控除したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
解体費用の相場
古家の解体費用の相場は、次のとおりです。
| 構造 | 1坪あたりの相場 | 30坪の解体費用 |
|---|---|---|
| 木造 | 3〜5万円 | 90〜150万円 |
| 鉄骨造 | 4〜6万円 | 120〜180万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 6〜8万円 | 180〜240万円 |
上記のとおり、建物が頑丈なほど解体費用は高くなる傾向があります。
また道路が狭くて重機が入りにくい、隣の家との距離が近いなど、古家の立地や周辺環境などによって、相場よりも高くなります。
建物の解体を検討している方は複数の業者から見積もりを取り、比較検討してから依頼しましょう。
譲渡所得税の計算例
以下のような条件で土地を売却したケースでシミュレーションします。
| 所有期間 | 30年 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 |
| 取得費 | 1,000万円 |
| 解体費用 | 120万円 |
| その他譲渡費用 | 80万円 |
まずは課税対象となる譲渡費用を次の計算式で算出します。
売却金額−(取得費+解体費を含む譲渡費用)=譲渡所得
3,000万円−(1,000万円+120万円+80万円)=1,800万円
上記の譲渡所得に20.315%(所有期間5年超)をかけて、納付する譲渡所得税を計算します。
※内訳:所有期間5年超 20.315% = 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(所得税×2.1%=0.315%)
解体費込み:1,800万円×20.315%=365万6,700円
解体費なし:1,920万円×20.315%=390万0,480円
上記のとおり、解体費を譲渡費用に含めると約24万円の節税になることがわかります。
実際の譲渡所得税の計算は、特例が利用できて課税されない場合もあるため、解体して節税できるかは専門家に相談しましょう。
土地売却時における解体費用の控除以外に利用できる特例

解体費用の控除以外にも、状況によっては節税効果のある特例制度が適用されることがあります。
ここでは代表的な3つの特例を紹介するため、要件に当てはまる方は活用しましょう。
マイホームを売ったときの特例
自宅を売却する際には、マイホームを売ったときの特例が利用できる可能性があります。
譲渡所得から最大3,000万円までを非課税とする制度で、条件を満たせば解体費用の控除と併用できます。
マイホームを売ったときの特例の主な要件は、次のとおりです。
- 自身が居住用に利用していた土地
- 建物を解体してから1年以内の売買契約
- 解体から売却まで事業用の利用なし
- 親族ではない第三者への売却
本特例を利用できれば、課税対象になる譲渡所得がすべて控除され、税金の納付がなくなるケースも珍しくありません。
特例が利用できるかや詳しい内容が知りたい方は、国税庁の「マイホームを売ったときの特例」のページや「チェックシート」を参考にしてください。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
親などから相続した空き家を売却する場合、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が利用できるケースがあります。
本特例も、建物を解体して更地で売却する場合に使える制度で、利用できれば大きな節税効果が期待できます。
主な適用条件は、次のとおりです。
- 故人が生前一人で住んでいた不動産
- 売却まで事業用の利用なし
- 相続開始から3年以内の売却
- 売却したのが親族以外
マイホームを売ったときの特例と同様、3,000万円まで譲渡所得から控除されるため、相続した不動産を売却するときに利用できる可能性があります。
詳しく知りたい方は、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」のページを確認してください。
各自治体による補助金制度
日本における空き家問題を軽減するため、多くの自治体では誰も住まなくなった家の解体に対して、補助金制度が用意されています。
たとえば東京都の場合、解体費を10万円まで補助する制度を用意しており、空き家の解体を促進しています。
※年度や予算によって変わるため最新情報の確認が必要です。
空き家状態の早期解決及び空き家の利活用等を推進するため、空き家の家財整理又は解体に係る費用の一部を補助します。
引用元:東京都空き家家財整理・解体促進事業
補助金の交付額や適用条件は自治体によって異なるため、空き家の解体を検討している方は、事前に担当窓口へ相談しましょう。
土地売却時の解体費用の控除や特例を受ける際の注意点

解体費用が控除の対象になるとしても、注意点を理解していないと損をする可能性があります。
土地売却時の解体費用の控除や特例を受ける際、注意すべき点を解説します。
解体すると固定資産税が高くなる
古家を解体して更地にしたあと、売却までに時間がかかると土地にかかる固定資産税が一気に高くなるため注意が必要です。
建物がある土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。
しかし、建物を取り壊して更地にすると特例が適用されなくなり、翌年からは最大で6倍の固定資産税になる可能性があります。
固定資産税は、1月1日時点を基準日として税額が決められる税金です。
そのため、建物を解体するのを1月2日以降にするか、売却できる見込みが立ってから取り壊しましょう。
控除や特例を受けるためには確定申告が必要
土地売却時の解体費用を譲渡費用として控除したい場合や、特例を利用する方は確定申告で正しく申告しなければなりません。
解体費用の控除や特例を受けるための証明書類、領収書や請求書を必ず保管しておき、税務署に提出しましょう。
また、期限内に申告を行わないと特例そのものが適用されなくなる可能性もあるため、スケジュール管理も重要です。
わからない場合や疑問点がある方は、税務署や税理士への相談も早めにおこない、抜け漏れのない申告を心がけましょう。
土地売却時の確定申告の流れや必要書類

土地売却時の確定申告に必要な書類や、手続きの流れを解説します。
解体費用を控除しようと考えている方や、特例を利用したい場合は、ぜひ参考にしてください。
必要書類
確定申告や解体費用を控除するためには、次のような書類を用意する必要があります。
| 必要書類 | 入手できる場所 |
|---|---|
| 売買契約書 | 不動産会社 |
| 確定申告書(第一表・第二表・第三表) | 国税庁の公式サイト、税務署 |
| 譲渡所得の内訳書 | 国税庁の公式サイト、税務署 |
| 取得費・譲渡費用を証明する書類 | 各業者 |
| 登記事項証明書 | オンライン、法務局 |
| 本人確認書類 | 市区町村窓口、免許センターなど |
土地売却での解体費用を譲渡費用に計上し、控除を受ける場合は、解体業者の請求書や領収書を必ず保管しておかなければなりません。
確定申告後も、領収書をはじめとした関連書類は、5〜7年間保管する必要があります。
また特例を利用する場合は、それぞれ別途必要な書類の提出が求められるケースもあるため、国税庁のサイトで確認するか税務署に聞いてみましょう。
手続きの流れ
土地を売却した翌年2月16日〜3月15日の間に、譲渡所得として確定申告をおこないます。確定申告の手続きの流れは次のとおりです。
- 必要書類の準備
- 譲渡所得の内訳書の記入(解体費用含む)
- 確定申告書の記入
- 税務署に書類の提出
- 納税、または還付を受ける
まず、譲渡所得の内訳書に、取得費や譲渡費用(解体費用を含む)を正確に記載して、土地売却で控除を受けられるようにしましょう。
譲渡所得の内訳書を作成したあと、記入した確定申告書に必要書類を添えて税務署に申告します。国税庁のe-Taxを使えば自宅からも手続き可能です。
申告後、税務署から控除の可否や不足書類の連絡がくるときのために、対応できるよう備えておくと安心です。
確定申告が不要なケース
譲渡所得(利益)がない、またはマイナスになる場合は確定申告をする必要がありません。たとえば、次のようなケースは確定申告不要です。
| 土地の売却費用 | 1,000万円 |
|---|---|
| 取得費 | 800万円 |
| 譲渡費用(解体費用含む) | 200万円 |
| 譲渡所得 | 0円 |
ただし、特例を利用する場合は非課税になったときでも、必ず確定申告をする必要があります。
確定申告が不要なのは譲渡所得がない、または特例を利用しないケースのため、当てはまらない方は忘れずに申告しましょう。
土地は建物を解体して更地で売却すべき?

土地を売却する際、古家を解体して更地にするかどうかは悩みどころです。
状況によっては更地のほうが売れやすくなりますが、解体費用や税金、買主のニーズによって最適な判断は変わります。
更地にするメリットやデメリット、解体するか判断するポイントを解説します。
更地にして売るメリット・デメリット
古家がある不動産を更地にして売るメリットとデメリットは、次のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・スムーズに売れやすい ・税金が増えるリスクを抑えやすい | ・販売が長期化すると税負担が増える ・解体費用がかかる ・建替えができないリスク |
更地にすれば買主候補が、日当たりや隣の窓の位置などを把握でき、スムーズに売れやすくなる点が解体する大きなメリットでしょう。
一方で、更地にしてから売却活動が長引けば税負担が増える、解体費用がかかるなどのデメリットも存在します。
更地にして売却しようと考えている方は、デメリットも理解したうえで解体するかどうかを慎重に判断する必要があります。
建物を解体するかどうかの判断ポイント
建物を解体するかどうかは、次の点を意識して決めましょう。
- 手元に残る資金
- リフォームする買主の需要
- 不動産市況
- 売却を急いでいるか
更地にして売却したほうが売れやすく、相場価格での契約が期待できますが、解説したとおりデメリットも加味する必要があります。
売主の希望や買主候補のニーズ、不動産市況にもよるため、解体したほうがよいかはケースバイケースです。
自分で土地や解体費用の相場を調べたうえで、複数の不動産会社に査定を依頼し、信頼できる業者に相談するとよいでしょう。
土地売却で解体するか迷ったらファンズ不動産に相談を
土地売却では、建物を解体して更地にするかどうかで、費用負担や税金の扱い、売却の進め方が大きく変わります。
解体費用が控除の対象になるのか、どのタイミングで判断すべきかなど、迷うポイントも多いのが実情です。土地売却における解体の判断に不安がある場合は、状況を整理することが重要です。
判断に迷ったときは、ファンズ不動産に相談することで、次の一手を考えるヒントが得られます。
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日中は仕事で時間が取れない方や、複雑な手続きをまとめて任せたい方でも、ストレスなく売却活動を進められます。
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土地売却時の解体費用の控除に関するよくある質問

土地売却時の解体費用の控除に関して、よくある質問と回答をまとめました。
古家付きの売却で解体を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
古家付き土地の解体費用は誰が払う?
原則として、売主が解体費用を負担するケースが多いですが、売り方次第では買主負担となることもあります。
たとえば古家付き土地としてそのまま売却する場合、買主が建物を取り壊す前提で購入するため、解体費用は買主負担になります。
一方、更地渡しで契約する場合は、売主が売却前に解体する必要があり、その費用は売主が支払うのが基本です。
なお、買主負担で建物を解体する場合は譲渡費用に含めることはできませんので、注意が必要です。
地下埋設物・残置物・庭木の撤去費用も控除できる?
解体と同時に発生する地下埋設物(古い配管や基礎など)や、庭木・残置物の撤去費用も、譲渡費用として控除の対象になる場合があります。
ただし、税務上控除が認められるのは売却を前提として実施した撤去の費用に限られるため、処分の目的やタイミングが重要視されます。
地下埋設物・残置物・庭木の撤去費用を控除したい場合は、売却が目的だとわかるよう証拠となる業者の見積書・領収書を必ず保管しておきましょう。
事業用の建物の解体費用は経費にできる?
事業用の建物を解体した場合、事業に必要な費用であれば原則経費にできます。
たとえば事務所を取り壊して新しい事務所を建てた場合、解体費用は経費計上が可能です。
ただし、事業用の建物を解体して居住用の家を新築で建てる場合は、解体費用は経費にできないため注意が必要です。
まとめ

古家付きの不動産を売却する際、解体費用を控除対象にする条件や依頼する業者の相場、利用できる特例などを解説しました。
土地売却に伴う解体費用は、売却を目的にしているのであれば、譲渡費用として譲渡所得から控除できます。
ただし、解体するかどうかは更地にするメリットやデメリットを踏まえたうえで、慎重に判断する必要があります。
更地にするかの判断や特例を利用できるかどうか、確定申告の準備などはそれぞれ専門家に相談して、スムーズに土地の売却を進めましょう。


