土地を相続したものの、所有するか売却するか悩み、時間が過ぎるケースは少なくありません。
しかし、相続した土地はすぐに売却すれば多くのメリットがあります。
本記事では、早期売却の利点をはじめ、税金への影響や控除の特例、手続きの具体的な流れなどを詳しく解説します。
損をせずスムーズに相続土地を現金化する方法を知りたい方は必見です。
ぜひ最後まで読み、相続による負担や将来のトラブルを回避しましょう。
相続した土地をすぐ売却すべき理由とメリット
相続した土地をすぐ売却するメリットは、経済的にも精神的にも負担を大きく軽減できることで、具体的には次のようなものが考えられます。
- 現金が手に入る
- 固定資産税や土地の維持費が不要になる
- 資産価値が下がるリスクを気にする必要がなくなる
- 相続トラブルを避けられる
- 売却時に税金控除を受けられる
ここでは、相続した土地をすぐに売却することで得られる5つのメリットを紹介します。
現金を手に入れられる
土地を売却すれば、資産が不動産から現金に変わり、自由に使える資金が手に入ります。
たとえば相続税の納税期限が迫っている場合でも、現金化により納税資金を確保できます。
また、現金化すれば、ほかの不動産の購入や老後資金への充当など、ライフプランに合わせた資金活用もしやすくなります。
現金化した資金の使い道が明確な場合は、とくに早期売却が有効です。
固定資産税・維持費が不要になる
相続した土地をすぐ売却するメリットとして、固定資産税や維持費が不要になることも挙げられます。
土地を所有している限り、毎年の固定資産税に加え、草刈りや除雪などに必要な維持管理費が発生します。
使う予定がない土地にもかかわらず出費が続けば、長期的に見て非効率です。
すぐに売却すれば無駄な支出をおさえられるため、必要がない土地ならば早く売る方がいいでしょう。
資産価値が下がるリスクがある
不動産の価値は時間とともに変動し、必ずしも上がるとは限りません。とくに地方や郊外の土地は、人口減少や需要の低下により資産価値が下がる傾向にあります。
売却を先延ばしにしたばかりに、資産価値が下がり後悔するケースも少なくありません。
相続した土地を早めに売却することは、結果的に高く売るチャンスにつながります。
相続トラブルを避けられる
土地を複数の相続人で共有すると、管理や処分の判断を巡ってトラブルに発展する恐れがあります。分割が難しい土地の場合はなおさらです。
早期に売却して現金化すれば、遺産分割がスムーズに進み、相続人間の不要な争いを避けられるでしょう。
売却した際の税金控除を受けられる
相続した土地を売却する際には、一定の要件を満たせば節税効果のある制度が適用されます。一例は次のとおりです。
- 取得費加算の特例
- 空き家の3,000万円特別控除
それぞれの特例には適用条件が定められており、相続から一定期間をすぎると受けられなくなるものがあります。
タイミングを逃すと税負担が大きく増えるため、早期判断が重要です。
相続した土地をすぐ売却した際にかかる税金
相続した土地を売却する場合、譲渡益が出れば各種税金がかかります。
税負担について事前に把握しておかなければ、後から思いもよらない税金の支払いに慌てる恐れがあり注意が必要です。
ここでは売却時に必要となる代表的な税金について、わかりやすく解説します。
登録免許税
土地を売却する際には、相続登記をおこなう必要があり、登録免許税が発生します。税額は、次の式で計算されます。
登録免許税=土地の固定資産税評価額×0.4%
たとえば評価額1,000万円の土地なら、登録免許税は約4万円かかります。相続登記の手続きをせずに売却はできないため、初期費用として想定しておきましょう。
印紙税
土地の売買契約書には、契約金額に応じた印紙税が必要です。国税庁の公式サイトで紹介されている印紙税は、次のとおりです。
不動産売却価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
1万円以下のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円を超え10万円以下のもの | 200円 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 200,000円 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
電子契約にすれば印紙税が不要になる場合もありますが、一般的には紙の契約書を交わすため、印紙税の支払いは避けられません。
印紙を貼らずに契約書を提出した場合は、過怠税が課されます。本来支払うべき印紙税の額の3倍に相当する額が過怠税として徴収されるため、貼り忘れには注意しましょう。
譲渡所得税
譲渡所得が発生すると、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた譲渡所得税が課税され、保有期間によりそれぞれの税率は次のように異なります。
税金の種類 | 保有期間5年以下 | 保有期間5年以上 |
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
復興特別所得税 | 0.63% | 0.315% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
それぞれの税率を合計すると、5年以下なら約39%、5年超なら約20%です。
相続の場合は、被相続人の所有期間を引き継ぐルールがあるため、すでに長期譲渡に該当するケースも少なくありません。
譲渡所得が高額になる場合は、事前に専門家に相談しましょう。
相続した土地をすぐ売却した際に受けられる特例
相続した土地を早期に売却する最大のメリットのひとつが、税制上の特例を活用できる点です。
特例の活用により譲渡所得税を大きく軽減でき、手元に残る金額が増える可能性があります。
ただし、各特例には細かい適用条件や注意点があり、併用できないものも存在します。ここでは代表的な特例を3つ紹介します。
3,000万円の特別控除
相続した土地に被相続人が住んでいた住宅が建っていた場合、売却益から最大3,000万円まで非課税にできる被相続人の居住用財産の特別控除が適用される可能性があります。
たとえば土地の売却益が2,800万円であれば、課税対象額はゼロになります。
この特例は、売却までに解体済みであることや、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければならないなど、期限と条件があるため、できるだけ早めの売却が重要です。
(国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
取得費加算の特例
取得費加算の特例を使えば、相続税の一部を取得費に加えられるため、譲渡所得を圧縮できます。
結果として譲渡所得税の負担が軽くなり、資産の目減りを減らせます。
たとえば、相続税を納付している場合、そのうち一定の計算式で算出された金額を取得費に加算し、土地の売却益から差し引くことが可能です。
ただし、取得費加算の特例においても、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内の売却が条件のため、売却時期が期限を過ぎた場合は適用されない点に注意しましょう。
正確な加算額の算出には専門的な計算が必要なため、必ず税理士にご相談ください。
特例の併用はできない
3,000万円の特別控除と取得費加算の特例は、残念ながら併用することはできません。
どちらか一方しか使えないため、税額の試算をしたうえで有利な方を選択する必要があります。
たとえば取得費加算で節税できる額が250万円、3,000万円控除を適用した場合の節税額が350万円なら、後者が有利です。
税理士に相談しながら、最適な選択をしましょう。
相続した土地をすぐ売却すべきケース
すぐに土地を売るべきか迷ったときは、自身の状況が、売却を急ぐべきケースに該当するかを確認しましょう。
とくに資金がない場合や、土地の使い道がない場合は、速やかな判断が必要です。
ここでは、相続した土地をすぐ売却すべきケースを具体的に解説します。
相続税を支払う資金がない
相続税を支払う資金がない方は、相続した土地をすぐに売却する方がいいでしょう。
相続税の納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内で、現金で納める必要があります。
とくに都市部の土地など高額な不動産を相続した場合、相続税が1,000万円を超えることも珍しくありません。
相続税の支払いが困難な場合は、相続した土地をすぐに売却しましょう。
遺産分割が難しい
遺産分割が難しい場合も、相続した土地をすぐ売却して現金化しましょう。
複数の相続人で共有状態になっている場合、土地の分割の仕方が大きな問題になります。評価額のバランスが取りにくく、分割でもめることもあります。
相続した土地をすぐ売却して現金化すれば、金額で分けやすくなります。
感情的な対立を避けるためにも、換価分割は有効な方法です。
土地を活用しにくい
相続した土地が活用しにくく放置する可能性が高い場合も、無駄な手間と出費を抑えるためにもすぐに売却しましょう。
地方や山林、旗竿地など、使い道が限られる土地を相続した場合、維持していてもコストばかりがかかります。
さらに、草刈りや近隣トラブルの対応などに時間を取られるおそれも考えられるでしょう。
また、土地の資産価値が下がり将来的に売却が難しくなるケースも多いため、需要があるうちの売却が得策です。
放置していても資産価値は増えないどころか、逆に負債化するリスクが高いため注意しましょう。
相続した土地をすぐ売却する方法
相続した土地の売却方法は、大きく分けて仲介と買取の2種類あります。
ここでは、2種類の売却方法の内容を解説します。
それぞれの特徴を理解し、自身に合う売却方法を選びましょう。
不動産会社に仲介を依頼する
時間に余裕があり、少しでも高く売りたい場合は、不動産会社への仲介の依頼が一般的です。
複数の購入希望者の中から、希望価格に近い相手を探せます。
ただし、売却までに時間がかかるデメリットがあり、条件により数ヶ月~1年以上かかることもあります。
また、広告費や仲介手数料も必要となる点に注意が必要です。
業者に買取を依頼する
すぐに現金が必要な場合や、土地の状態が悪く売れにくいと判断された場合は、不動産買取業者に直接買い取ってもらう方法があります。
契約から入金までが早く、最短数日で現金化できることが魅力です。
ただし、一般的に買取価格は相場より2~3割ほど低くなります。
価格よりスピードや確実性を優先したい方に適した方法のため、用途や状況に応じて選びましょう。
相続した土地をすぐ売却する際の流れ
相続した土地をすぐ売却するためには、重要な手続きを正しい順番で進める必要があります。
順序を間違えれば、売却できないばかりか、税金の特例を受けられない恐れもあるため注意が必要です。
つづいて、実際に売却を進めるうえで必要な4つのステップを具体的に解説します。
1:遺産分割協議をおこなう
はじめに、相続人全員で、誰がどの財産を引き継ぐかを話し合う遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議がまとまらなければ、土地の名義を変更できず、売却にも進めません。
たとえば兄弟3人で土地を相続した場合、全員で売却し利益を等分することへの合意が必要になります。
協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印しましょう。
2:相続登記する
遺産分割で土地を誰が相続するか決まったら、法務局で相続登記をおこないます。
相続登記は、土地の名義を被相続人から相続人へと変更する手続きです。
相続登記が完了してはじめて、相続人が売主として土地を売却できます。
2024年4月からは相続登記が義務化されており、怠ると過料の対象になるため注意が必要です。
3:相続税を申告・納付する
相続税が発生する場合は、相続開始から10ヶ月以内に申告と納税をおこなう必要があります。
もしも怠れば、加算税や延滞税がかかる可能性があるため注意が必要です。
また、相続税を支払った場合、取得費加算の特例が適用できる可能性があります。
節税のための特例を正しく活用するためにも、税務署や税理士と連携して正確な申告を行いましょう。
4:土地を売却する
相続登記と税務手続きが完了したら、いよいよ土地の売却です。不動産会社へ査定を依頼し、仲介または買取のどちらかの方法で売却します。
スムーズな売却のためには、早めに複数社へ相談し、土地の状態や市場価格を把握する必要があります。
売却を急ぐ場合は、買取がおすすめです。
相続した土地の売却後には確定申告が必要
土地を売却して利益が出た場合、サラリーマンであっても原則として確定申告が必要になります。
確定申告を怠ると追徴課税やペナルティの対象になることもあるため、必ずおこないましょう。
ここでは確定申告の流れと、必要な書類を解説します。
確定申告の手順
はじめに、売却益(譲渡所得)を計算します。売却額から取得費や譲渡費用、税制特例で控除できる額を差し引いて出た利益が課税対象です。
申告期間は毎年2月16日〜3月15日で、税務署への提出、もしくはe-Taxでの電子申告が可能です。
事前に税理士へ相談すれば、節税の見込みや必要書類の確認もスムーズに進められます。
必要な書類
確定申告に必要な書類は複数ありますが、最低限次の書類は準備しておきましょう。
- 土地の売買契約書
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 相続関係を示す戸籍謄本や遺産分割協議書
- 譲渡費用の領収書(仲介手数料など)
- 相続税の申告書控え(取得費加算を使う場合)
書類に不備があると再提出や手続きの遅延につながるため、早めの準備がおすすめです。
相続した土地をすぐ売却するときによくある質問
相続した土地の売却は一生に一度あるかないかの経験です。そのため、多くの方が似たような不安や疑問を抱えています。
ここでは、特に多い3つの質問を紹介します。
土地を長期的に放置するのは危険?
土地の長期放置は避けた方がいいでしょう。雑草やゴミの放置で近隣から苦情が来たり、不法投棄・不法侵入などのトラブルが起きたりする可能性があります。
また、固定資産税や維持費の負担がかさみ、資産価値は下がる恐れもあります。使い道がない土地は、早めの売却を検討しましょう。
相続した土地が売れない場合の対処法は?
売れない理由を明確にしましょう。たとえば、価格設定が高すぎる、立地条件が悪い、接道義務を満たしていないなどが原因になり得ます。
土地が売れない場合は、不動産会社の変更や買取業者への依頼を検討しましょう。
とくに早期売却を希望するなら、買取がおすすめです。
兄弟で相続した土地を売る際の注意点は?
共有名義の場合、売却にはすべての相続人の同意が必要です。1人でも反対すれば売却はできず、話し合いが難航する恐れがあります。
そのため、早い段階で全員の意思を確認し、必要であれば弁護士や司法書士などの専門家に仲介を依頼すればスムーズです。
分割での対応が困難なときは、売却して現金で分ける換価分割も検討しましょう。
まとめ
相続した土地は、すぐの売却により現金化による柔軟な資金活用や、固定資産税・維持費の負担回避、資産価値下落や相続トラブルのリスク回避など多くのメリットを得られます。
とくに相続直後は、相続税の支払いや遺産分割の必要性もあり、売却によって問題解決につながるケースは少なくありません。
また、売却時には3,000万円の特別控除や取得費加算の特例などの節税措置も受けられる可能性があります。
特例を適切に活用するには、手続きの順序や確定申告も含めた計画的な対応が必要です。
土地を放置すると管理負担が増し、売却が難しくなる場合もあるため、売却すべきか悩んでいる場合は、専門家へ相談し、早期の判断を心がけましょう。